小悪魔村雨の秘密の日記のイフ物だったので4/1以降は検索除外にしてましたが、まあ良いかな。と
村雨が鎮守府を出た後、ひょっとするとあり得たかもしれない並行世界のお話。
小悪魔村雨の秘密の日記の世界の並行世界でのお話。4月1日ネタという事で短期投稿です。
もしものお話です。
冊子を閉じる音が室内に響く。
「……すまんな、お前の帰る場所は守れそうにない。村雨」
――私の戻って来る場所なくさないでくださいね――
最後に養女とした娘の顔を思い浮かべる男。
大叔父であり、男がこの道に入るきっかけとなった恩師――脇田がまだ鎮守府の長を務めていた頃に建造された艦娘だった。士官学校を出た報告に鎮守府を訪れた自分を笑顔で迎えてくれた、初めて出会った艦娘でもあった。覚えてはいないだろうが。と配属後にさりげなく聞いたところ、案の定そのことを村雨は覚えてはいなかった。
その村雨は、自分がこの鎮守府に配置されたのは偶然ではないことを知らない。
村雨が配属されるまでに辿った経歴を思い返す男。
脇田が大将に昇進した事で彼の鎮守府は再編成され、村雨を始めとする彼の艦娘の多くは右腕であった近野提督の鎮守府へ異動となり、その後も南、沖田、人見、末永と彼の派閥の鎮守府を異動し続けた。そのままであれば村雨も順調に練度を伸ばし、大本営直轄鎮守府の何れかに配属になっていた筈だった。その流れが変わったのは大将として辣腕を振るった脇田の退役と後継と見られていた近野、南、沖田の相次ぐ戦傷による退役や戦死、大本営に異動し中将であった黒井、少将であった日向の対抗派閥への乗り換えであった。脇田閥の重鎮であった黒井の裏切りにより次の後継と見られた法政が左遷。この派閥抗争の影響による当時の鎮守府再編は村雨の成長にも影響を与えていた。左遷直前に法政提督から村雨に縁のある種子島提督の元へ異動した村雨は、種子島提督の退役後は金田、杉野、広瀬、横井、緒方といった解体された旧脇田閥に属していた提督の下を頻繁に異動することで練度が中々上がらなくなっていた。当時、黒井と行動を共にし艦娘の人事を一手に握った日向は、最前線の地や辺境に追いやられた脇田閥に余り気味の艦娘を送り込み続け、村雨も浜中、瀬尾と言った二階級特進間近と言われ続けた提督や山上、西野と言った名誉職に据え置かれ名誉昇進(即退役)間近の提督の下に配属されたりしていた。日向退役後の配属となった萩原提督は一定の戦果は挙げるが、艦娘に対する性的暴行や戦果と引き換えの無理な進軍による艦娘の轟沈等の噂が絶えない悪い意味でのブラック提督であり、当時大本営法務局に配属されていた杉野の摘発が後1週間遅れていれば村雨もその毒牙に掛かっていたと旧脇田閥の提督間では実しやかに噂されていた。
その後、一時的に大本営付とされた旧脇田閥系鎮守府で建造された艦娘が反脇田大将派であった提督達の下へ配属される直前に、大将に昇進していた西野が昇進から退役までにある半日の差を利用して各地の反脇田閥以外の鎮守府への配属を正式決定した。村雨もその一環として脇田大将の
そう言えば村雨の配属連絡は決定後だったと思い出す男。
『脇田閣下が可愛がっていた村雨を反脇田派の慰み者にするな』
その一言で、時が来れば。と腹をくくった。
その後は西野人事の報復措置として旧脇田閥の有力な艦娘が最前線に異動させられ、この鎮守府も戦力が大幅に低下させられた。だが須美寿島近海で被害を被った小笠原航路の大型輸送船に乗客として乗り込んでいた、やんごとない方の令嬢が顔に重傷を負ったことで全てが変わった。人事異動の権限を一手に握っていた反脇田派閥は令嬢がお忍びで乗り込んでいた為その乗船に気が付かなかったとはいえ、その責を取らされ主だった将校が悉く降格・退役に追い込まれ事実上の消滅。その空いた席には派閥を問わず実力派の将校が付いた。反脇田派の被害を被っていた鎮守府には資材や修復材の補填が行われ、大本営も各種開発や兵站の維持に更に力を注ぎ始めた。
この鎮守府にとっても良い風が吹き始めたように思えた1年であった。
そんな鳥島鎮守府に沖ノ鳥島より姫級7鬼級10を中心とした深海棲艦の出撃情報が齎されたのは遡る事16時間前。
直ちに民間人の避難が始められ、同時に小笠原諸島と火山列島からの増援を受けて迎撃に向かった艦隊は轟沈寸前の大破者を多数出し継戦能力を完全に失った。
侵攻は止まらず、鳥島到達予想時刻まで3時間程となっている。
「提督……」
「……飛龍か。民間人の避難状況は?」
「先程満潮と島風から明神礁沖20kmを通過中との連絡がありました。小笠原諸島並びに火山列島諸鎮守府の結婚艦娘や養子艦娘も護衛についているので不覚は取らないでしょう。青ヶ島・八丈島両鎮守府からの増援も確認されています」
提督に対しての報告を終え、私人としての顔になる飛龍。
「……でも、本当に良かったの? あなた」
自身の結婚艦娘と養子艦娘も護衛としたことで鎮守府に艦娘は飛龍以外に残っていない。初期艦の責務を果たすと最後まで愚図っていた五月雨は男が「ここから先は大人の時間。子供はお眠の時間だ」と気絶させ姉妹艦に引き渡した。
「かつては平均練度95を誇っていた鳥島鎮守府も昨年の異動騒ぎで見る影もない。何とか回復できないかと手は尽くしたが時間は味方しなかった。今回の大敗北でこの鎮守府は陥落する。私にできるのは残った優秀な娘達を無駄死にさせない事だけだ。飛龍、できれば君にも逃げて欲しかったんだがな」
「ここで逃げたら靖国で多聞丸に顔向けできないもの。それに、最後の時に提督の周りには結婚艦娘や養子艦娘も艦娘は誰一人として居ませんでしたなんて鳥島鎮守府の名折れよ。たとえ最後の一艦になっても貴方の傍で戦うからね。そ、れ、に、貴方って実は寂しがり屋だもんね。靖国に向かうまで一人だったら泣きべそ掻いちゃうじゃない、一人になんてしておけないわよ」
冗談交じりの飛龍の言葉に
「ソーデース」
垢ぬけた声が被さる。
「金剛!」
「榛名もお供します!」
「形だけの養子でしたが私達もお供します」
「扶桑! 香取! お前達まで……。飛龍、何故逃がさなかった!」
護衛に就け、退避させた筈の妻達を認めた男が飛龍を睨む。
「確かに護衛に就けて出て行ったのは確認したんだけどな……」
首を傾げる飛龍に
「飛龍さんが来ませんでしたから、もしかしてって須美寿島付近で引き返しました」
「一人だけで提督と一緒なんてズルイネ。私達も一緒ネ」
「靖国では娘ではなく妻として愛して下さいね」
此処にいる理由を述べる姿に、
「流石に予想外かな。護衛の途中で引き返されるとはね……」
肩を竦め首を振る飛龍。
「この、大馬鹿者が! さっさと逃げんか! この戦訓を伝える大人が必要なんだ、早く、早く行かんか!」
「その役目は鳳翔が引き受けたネ」
「正確には金剛お姉さまが押し付けた。ですけど」
「貴様ら……」
後の言葉が出ない男。
「まぁ、ここまで来たらもう遅いよね」
と飛龍の言葉に
「そうです。こんなにお嫁さんに囲まれて提督も寂しくないですよね」
榛名が珍しく軽口をたたく。
沈黙の時間が流れる。
深く溜息を吐き、顔を上げ、ニヤリと男が笑みを浮かべる。
「よし、ここまで来たらどこまでも付添ってもらうぞ」
『はい。三世の後までもお供します』
妻たちの声が揃う。
この時が来ることを恐れていた歴代の提督達が掘り進め全島を地下壕で結んでいた鳥島鎮守府は以後陸戦妖精と数名の艦娘で2か月の籠城戦を行い陥落した。
鳥島陥落と時を同じくして小笠原諸島と火山列島も陥落。南の戦線は青ヶ島まで押し込まれる。
そして――
「父さん……」「親父……」「父上……」「お父さん……」「お父様……」「パパ……」
【無念は必ず!】
父を失った復讐鬼も数名誕生する事になった。
何時まで引きづるんだというお叱り受けそうですが、これで最後です。
あくまでもIFのお話と言うことで。(by2018/04/01時点の後書き)
……当時は、追加の予定無かったんですけどね。このあとも、村雨の日記は何話か追加してます。