やっとこさ終わった……
村雨と村雨、水無月と水無月の和菓子ネタ。
和菓子の日には間に合わなかったか……。
2018.06.19
火を入れるが陽を入れるになっていたりと誤字脱字が酷過ぎたので挿絵載せる序でにアチコチ修正しました。
2019.07.11
村雨の日記と同じ世界です
普段は艦娘と提督併せて15人に満たない、武蔵の小京都とも称される埼玉県小川町の市街を離れた山間部にある小さな鎮守府。
この鎮守府は元々江戸時代初期から続いた農地も所有する山林地主の家に生まれた男が提督と呼ばれる存在になったことで設置された。
男は、生まれつき奇妙な存在が見える風変わりな――この都市には時たま現れる――子供として育ち、アグロフォレストリーとしてそれなりに一生を終える筈であった――深海棲艦戦役が始まらなければ。
深海棲艦戦役が始まると妖精と交流が持てる人間が希少とされ、特に生まれつき奇妙な存在が見えると称する人間は半強制的に適性検査を受けさせられ、提督としての素質があるか見極められた。その適性検査で奇妙なものが見えると称する人間の大多数は適正無しとして弾かれたが、男は間違いなく適正があると認められ提督候補生となった。そこで可もなく不可もない成績で教育を終えた男は提督として沿岸の小さな鎮守府の一つを任されるはずであった――内陸へのPT小鬼の襲撃がなければ。
襲撃の報を受け内陸部へも鎮守府の設置を余儀なくされた大本営は、土地勘のある出身者から希望するものを配属する事とし希望者を募った。
新設される鎮守府候補地に自分の故郷があるのを確認した男は迷うことなく手を挙げ――予定地の地主の家系でもあったことから問題なく承認された。
鎮守府も一級河川の支流の源流が敷地内を流れる男の先祖が脈々と山林原野を開拓して切り開いた10町程(戦後所有していた山林を開拓した)ある農地を借り上げる(男は国に貸与している土地の他に先祖から山林を30町程受け継いでいる)事で当初予算の10分の1に抑えられ――代わりに出世後も異動を行わない条件も付随したが――財務関係者を喜ばせることになり、男が鎮守府を自宅に設けても特に苦情も起きなかった。
鎮守府敷地
いつもは静かな鎮守府が朝もやの立ち上る中で珍しく、飼育しているニワトリやカナリアの鳴き声以外の喧騒に包まれていた。
車庫を兼用した農機具小屋から作業に使うトラクターは庭に出され、提督が祖父から受け継いだクラウンと仲良く並んで駐車している。代わりに車庫には携帯式の竈と蒸し器が置かれ盛んに湯気を出している。
「はいっ。小豆上がったわよ、持ってって」
「次、温度どうだ?」
「もうちょっとかな」
「じゃあ間宮の手伝いに行って。っと、村雨と水無月の帰りっていつだ?」
「今日の18時。さっき香取さんから連絡あって間に合いそうになかったら帰還少しだけ遅らせますが? だって」
「いや。怪しまれると却って面倒だ。間に合わせるから時間厳守でって伝えてくれ。早く帰ってくるなよって」
「了解」
慌ただしい時が過ぎ、小豆が茹で上がる。
台所で小豆を茹で上げ材料を揃え目的の菓子を間宮と提督が作りはじめる。とは言っても、メインは間宮が作り提督は助手に過ぎないが。
茹で上げた小豆から漉し餡を作り上新粉を入れてよく混ぜる間宮。その間宮の指導を受けながらざるを使用し裏ごしの要領で生地を押し付けるようにしてボロボロと落とし軽く平らになるようにならす提督。生地を蒸気の上がった蒸し器で10分蒸しよく冷まし、完全に冷めてたのを確認し適当な大きさに切り分ける。
「伊良湖ちゃん、こっちは良いから水無月の方をお願いね」
間宮に声をかけられた伊良湖が鳳翔と共に水無月に取り掛かる。
葛粉をボールに入れて水で溶かしながら白玉粉を加えて入れて混ぜ合わせる伊良湖。
鳳翔が薄力粉を振るい砂糖と混ぜ合わせた生地に伊良湖が混ぜた生地を入れ更に混ぜ、生地を笊で濾す。その生地を少量、別の容器に取り耐熱容器を水で濡らして残りを流し入れる。
蒸し器に割り箸を2本置き竈に火を入れる鳳翔と上に容器をのせる伊良湖。
布巾を掛け蓋をして強火で20分ほど蒸す。
蒸しあがった生地に箸を入れ硬さを伊良湖が確認し満足気に頷いたのを見計らい上に茹で小豆を散らし取り分けておいた生地を流し込む鳳翔。
生地を流し終え更に蒸す。蒸し上がった生地を冷ましてから容器から取り出し三角形に切る伊良湖。
「この三角に切るのって氷を表してるんですよね。こういう事もしっかりとあの娘達に教えていかないといけませんね、間宮さん」
三角形に生地を切りながら、傍らの間宮と話が弾む。
今日は6月16日――嘉祥の日。もとい、和菓子の日。
その前日――。
「明日は――か。ふむ、夜には村雨と水無月を食べるとするか」
そんな言葉をカレンダーを見ながらつぶやく提督。
偶々廊下を歩いていた水無月がそれを聞きつけ青ざめる。
「嘘――。私達が――」
足音を立てないように静かに、しかし急いでその場を立ち去る水無月。
「どうしよう。どうしよう――」
提督の言葉に出ていた村雨に相談を持ち掛ける水無月。当然いい答えが出るわけでもなく、教官役の香取に相談を持ち掛ける。曰く、明日の夜に提督が私達を襲おうとしている。と。
その言葉に疑問を覚え、香取が自分の考えをまとめようとし周囲に視線を配ると傍らのカレンダーが目に入った。日付を見ながらふと明日は何があったかを考えると、思い当たるモノがあった。
この娘達の名前のアレがあったような――。
二人を宥め、万が一に備え自室に籠らせると事情を確かめに愛用の鞭を持ち執務室へ。万が一にも提督が不埒な考えを持っていた場合には矯正するために。
のんびりとお茶を飲んでいた提督を問い詰め、自分の予測通りの答えに満足する香取。そのまま二人で数時間かけてじっくりと互いの情報の齟齬をなくし、夕方には遠洋練習航海に二人を連れだす香取の姿があった。
遠洋練習航海が終わった夕方――
「はぁ。……香取教官は心配しないでって言うけど……」
前方を進む香取を盗み見ながら、水色の髪の少女――水無月が憂鬱そうに言葉を漏らす。
「香取教官がキラキラしていたのって提督とアレしてたからだよね、絶対」
その言葉に薄いカフェオレ色の髪を結わいた少女――村雨が応えを返す。
「うん。……教官は大丈夫だって言ってたけど、その大丈夫って信用できそうにないよね……」
足取りも重く水面を進む水無月と村雨。一方香取は――。
(準備も間に合った様ですしこれなら時間通りに戻れそうですね。アレも待っているので遅れないようにしましょう)
夕日を背に足取りも軽く水面を進む。
「遠洋練習航海ご苦労」
予定時間通りに帰還し報告する香取に提督が言葉をかける。そして
「さて、村雨、水無月の両名は2200に執務室に来るように」
提督の言葉に来るべき時が来たかと身を固くする両名。
「はぁ、いよいよ覚悟を決めないといけないかな、初めてはもう少しムードがあった方が良かったんだけど」
「ここがブラック鎮守府なんて聞いてなかったよ……」
そんな二人の呟きに、香取は
(そうでしょうね。ブラック鎮守府なんて評判は聞いてないでしょうね。提督は貴女達の名前で遊んでいるだけですし……)
提督の目が笑っているのを確かめ、そっと溜息を吐く。
2100時――二人が浴室に入ったことを確かめ、監視の為に残った青葉とすでに寝てしまった五月雨を残し夕張・香取と裏方を預かる大淀・鳳翔・伊良湖・間宮が執務室を訪れる。
「提督、あの娘達に夜遅くに甘いものをだすのは困ります。甘味を夜遅くに出すのは今回限りにしてくださいね」
そう皆を代表して苦情を述べる鳳翔に
「まぁ、今回は村雨と水無月という娘達がいたからの話だしな。今後はないと……雲龍があったな、そう言えば」
そんな事を宣う提督に鳳翔達から叱責が飛ぶ。
「提督!」
「冗談だよ、うちに雲龍が来るわけないじゃないか」
降参と両手を軽く上げながらぼやく提督。
「それにしても最初に村雨ちゃんと水無月ちゃんから提督に襲われるって訴えられた時は驚きました。提督がついに
その香取の言葉に
「酷いな、それは。……手を出すならあの娘達より先に手をつける娘がいるだろ、なぁ夕張」
本日の秘書艦を見遣る。
「ちょっと。何で、私!? 大淀さんとか明石さんは? それに間宮さんや伊良湖ちゃんも手出してないでしょ」
「直轄鎮守府から派遣されている大淀さん達に手を出したら俺が塀の中に入る事になるわ! それに間宮さんと伊良湖ちゃんはここの鎮守府というより自治体で雇っているようなもんだろが。練度99で手を出していない俺の艦娘はお前だけ。……まぁ
「ちょっ、メロン言うな! ……って、あぁ、もう。時間もないし、さっさと始めちゃいますか」
夕張の言葉で朝から総出で用意した【村雨】と【水無月】、近隣の某市で購入してきた【福蔵】と呼ばれる最中に小ぶりの【十万石】と焼き印の押された饅頭に、提督が某店で購入した【紫陽花】と書かれた二層羊羹を準備する。
そこに鳳翔と間宮が、
「あら? これでは嘉祥7ヶ盛には二品足りませんね」
「しまった。……買い忘れがあったか」
「仕方ないですね。こんなこともあろうかと、用意しておきました」
と【艶干し錦玉】と某市銘菓の【長寿らかん餅】を並べる。
「そうか! ありがとう、二人とも。助かった」
和菓子を人数分並び終えたところで青葉が執務室に入り、そろそろ二人が来ますと伝える。
隣の部屋に皆が隠れ、青葉がカメラを扉の隙間から構えたところに風呂から上がった二人が絽の長襦袢姿でやってくる。
扉の前で立ち止まり、互いに顔を見合わせ覚悟を決めて頷くと村雨が失礼しますという声とともに控えめに扉をノックする。
二人の姿を知らない提督は気軽に湯呑を手に持ちながら声を掛け入室を促す――。
入ってきた二人の姿を見て、湯呑を落としかける提督。
二人の姿を見て慌てて飛び出す鳳翔達。息の合った連携で提督の視線を遮る。
一悶着の末――自分たちの誤解に頬をこれ以上ないまでに染め上げる二人。
その表情を青葉がさりげなく写真に収め――隣の自身の部屋から持ってきた紗合わせを二人に頭から被せ身支度を整えさせる。
「これが村雨ですか……私の名前と一緒なんですね。へぇ……提督、私のお味は如何?」
茶目っ気たっぷりに宣う村雨。
「ん? 甘みもほどほどで美味いな。さすが間宮さん。棹物は天下一品だね」
その言葉に、詰まんない、少しは慌てて欲しい。と頬を膨らませる村雨。
「こっちが水無月……綺麗……」
自分の名前が付いた和菓子を繁々と見つめる水無月。
食べるの勿体無いという水無月に、30日にも出す筈だから早く食べるようにと香取が諭す。
「え? 30日にも同じもの出るの?」
首を傾げる二人に、夏越しの祓とその日に食べる伝統的な和菓子について香取達から簡単な説明があり――。
和やかな日常が過ぎていった。
早くに寝てしまった五月雨が菓子はあっても除け者にされたと不貞腐れているのを宥める提督の姿を見て水無月と村雨が秘かに留飲を下げるのは翌日の事である。
後でこの鎮守府の間取り載せます。
2018.06.18追記
鎮守府本庁舎と中のイメージを本文中に追加
2018.06.19追記
内陸鎮守府本庁舎周辺50mイメージを本文中に追加
納屋の下は田圃と畑です。挿絵の下の方に小川があり、そこから艦娘は出撃するという設定です。
2018.06.20追記
イメージ図を庁舎以外撤去。庁舎ももう一度書き直します。
2018.06.22追記
イメージ図修正。