艦これ短編集――艦娘のごった煮――   作:fire-cat

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艦娘の名前が出ていないのは仕様です。決めてなかったんです。


想い――ある閑話(??)

「ケッコンカッコカリは――と行う」

 周囲から感じる視線。

 ――どうして? 

 ――あの娘が秘書艦だったわよね、何で秘書艦でもないあの娘なの?

 ――あんなに仲睦まじそうにしていたのに

 そんな言葉に混じって

 ――かわいそう、捨てられたんだ、あの娘

 ――あの娘の愛が重いって提督言ってたもん

 そんな声が聞こえる。

 

「そっか……」

 私の口からはそんな言葉しか出てこなかった。

 仲の良かった仲間が人込みを掻き分けて近づいてくる。

「ちょっと、あれ、どういう――」

 知られ過ぎちゃったか

 そんな言葉が浮かんできた。

 私を知りすぎたのね……。私のすべてを。どんな想いを抱いていたか、何を貴方に託していたか。

 もう、この恋は終りよね。良い女に付き物の秘密もないもの。

 色々貴方に言ってきたけど、もう貴方には私が話す言葉も虚ろに響くだけよね。

 あんなこと言っても嫌われたくなくて……嫌われたくなかったから全部貴方に捧げちゃったけど……。

 馬鹿な私が捨てられただけなのよのね。

 私は貴方に――。

 提督が、私と視線を交わす。一瞬気まずそうな雰囲気も見えたけど――。

『良いのよ、作り涙なんか浮かべなくても』

 提督は、花から花へ蝶々が舞うようにいつも他の誰かに恋していたものね。

 そんな提督を失いたくなくて。

 嫌われたくない、嫌われたくないって。

 全て貴方に捧げてしまった馬鹿な私――。

 捨てられたのは当然よね。萎れた花は所詮捨てられる運命にあったんだから。

 

「辞令だ。君には――に異動してもらう」

 


 

 此処で出会った貴方。

 どことなく自信無げな貴方。訳アリの提督だって聞いていたけど――。

 色々貴方にはきつい言葉を投げたわよね、何度も何度も――。

 貴方はいつも困ったような頼りなさげな顔をして。

 でも、私は知っているの。あなたの机の鍵のかかった引き出し。

 貴方はいつも秘書艦がいなくなるとそこから写真立てを取り出してじっと見ている事を。

 其処にあるのは貴方の何? 貴方の過去なんて知りたくないけどね。

 

 ――ね。そこの引き出しに隠してある写真に写っているのは誰?

 

 ――ふ~ん、艦娘なんだ。大切な娘なの? 

 

 ――覚えがない? でも大切な娘だったのは覚えている?

 

 ――ああ、貴方ここに来るまでの記憶が無いって言っていたわね、それなのに覚えているの?

 

 ――もう会えないって、済んでしまったことは仕方ないじゃないの。

 

 そんな言葉を何度も交わしていく中で――私達は結ばれた。

 

 ――あの娘のことは忘れてほしい。

 

 貴方の机と引き出しを見るたびにそんな想いが私を押し潰す。

 そこにあの娘の写真があるのは知っているから。貴方が大切に大切にしているのは知っているから。

 

 ――例え私があの娘の事を聞いても言わないで。

 

 ――貴方の愛が真実ならそれだけで嬉しいの。

 

 ――貴方を愛しているから知りたくないの。

 

 ――愛しているなら早く昔の恋を忘れて、欲しいの。

 

 

 ――貴方の記憶が戻らないうちに――

 

 




むぅ。書いているうちにアッチに引き摺られた……。

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