仕事場で、これをGeminiに読み込ませたら、対馬丸撃沈の比喩と,言われたんだ。
「――――こうしてみんな仲良く幸せに暮らしましたとさ。めでたしめでたし」
傍らの幼子の背中をポンポンとリズミカルに優しく叩く手。
「ふぁぁ……ムニュ」
母の声とリズミカルな振動に心地よくなってきたのか、幼子の目がトロンとし始める。
「そろそろお眠かな」
その声に抗議するかのように幼子が
「もう一回。もう一回さっきの」
とリクエストをねだる。
そんなリクエストに
「しょうがないわねぇ。じゃあもう一回だけよ」
再び母親の物語が紡がれ始める。
「昔々かずっと遠い先のことか、わからない――」
傍らの幼子が睡魔と闘いながら、紡がれる物語に聞き耳を立てる。
「昔々かずっと遠い先のことか、わからない頃、とある星の南の島々ではみんなが楽しく暮らしていました。綺麗なお花を集めて花の冠を作ったり、イルカさん達と一緒に泳いだり、亀さん達と仲良くしたり、美味しい果物も沢山ありました」
母親の言葉は鮮やかな絵を描き出し、眠気と戦いながらも幼子は真剣に耳を傾けていた。
「ところが、ある時、それよりももっと南から、怖~い人たちがやってきました。彼らは『ここを俺たちのものにする!』と言って、大勢で攻め寄せてきたのです」
「ここを取られちゃ大変だ、と、みんなも海で一生懸命戦いました。でも、みんな段々ひどいけがを負って、だんだんと島の方に、島の方にと、追いやられていきました」
「島の偉い人は、みんなが傷つくのはもう嫌だといって、ここを捨てて北の王様たちを頼ろうと言いました」
「真夏の暑い日だったけど、みんなで一生懸命準備して、怖い人たちに見つからないように月が出ていない日の夜にこっそりと島を出ていきました」
「怖い人たちはお日様が昇ったころ、島にやってきて誰もいない事に気が付きました。『やった~。ここは俺たちの物だ』とみんな大喜びしましたが、ちょっと頭のいい人が言いました。『ここに居た奴らはどこに行ったんだろう』と」
「皆で一生懸命考えると、一番偉い人が言いました。『北の王様に、俺たちを追い払ってくれとお願いに行ったに違いない。これは大変だ。急いで追いかけよう』と」
「その頃島から出て行ったみんなは、というと、一生懸命、北へ、北へ。と逃げていました。大きな大人に手を引かれた小さい子たちは泣きそうになっていましたが、それでも涙を拭いて、『絶対に島に帰ってくる!』って言いながら一生懸命ついていきました」
「みんな必死に頑張っていると、海がだんだん荒れてきました。すぐに大きな波とすごい風がみんなを襲ってきました」
「たいふう?」と心配そうに自分を見上げる幼子に、優しく微笑みながら背中をポンポンとあやす母親。
「そう、台風です。台風がやってきました。皆で必死に手を離さないようにしながらがんばりました。でも小さな子が手を離してあっというまに遠くに離れてしまいました」
「慌てて一人の大人が駆け出し救い上げましたが、その頃にはみんなとすっかりはぐれてしまったのです」
「ど、う……なった……の?」とウトウトと、目をしょぼしょぼしながら幼子が問いかける。
「じゃぁ、ふたりがどうなったか、追っかけてみようか」
「う、ん……ムニュ」と幼子は呟いていたが、もう半分以上は眠りに落ちていた。
「嵐が過ぎた後、ふたりはみんなを追いかけようと北へ北へと向かいました。そこに南の島から追いかけてきた怖い人たちがついに追いついてきました」
「怖い人たちは鮫や鷲たちを使ってふたりを襲います。ふたりは手足をばたつかせて鷲たちを追い払い、鮫も何とか振り切って、北に、北にと、みんなを追いかけます」
「夜になって、夜が明けて また日が暮れて また 朝になって。怖い人たちからは逃げられましたが、まだまだ皆に追いつきません」
「大きな大人も、小さい子もお腹が空いてきました。お魚を捕まえ、海藻を食べて、途中の島に上陸して、お水を飲んで。何日も何か月も過ぎた頃には小さな子もすっかり大きくなりました。そしてとうとう、みんなと出会えたのです」
気が付くと、いつの間にか我が子はすうすうと寝息を立てていた。
「あらら、いつのまにか寝ちゃってる」
と母親は、寝息を立てる我が子を見つめ微笑むと、起こさないようにそっと立ち上がり部屋から出ていく。
しばらくして「ただいま」という声が聞こえ、自分の伴侶の帰宅を知ると、迎えに出る。
「お帰りなさい」
「子供は……寝ちゃったかな?」
「ええ。ぐっすりと。今日は昔話を聞かせたんだけどね。あの頃の事」
「え~! あの話を聴いて泣かなかったか?」
「詳しくは話してないわ。昔話風にして話してみたの」
そうかと微笑む伴侶にそっと口づけをする。
ふたりを窓から差し込んだ月の光が照らしていた。