長良が走り高跳びに挑戦中。さてどうなる事やら
なぜこうなった……
灼熱の太陽が照りつけ、巨大な入道雲と抜けるような青空が広がる。
鎮守府対抗陸上競技大会当日はそんな空だった。
なぜ海の守護者たる艦娘が『陸上競技』で大会を行わなければならないのか。
色々と言われているが、すでに明確な理由を知る者はいない。
鎮守府対抗陸上競技大会は過去数度実施され、海防艦娘が戦艦娘を破るなど番狂わせも幾度かありそれなりに白熱したものとなっている。
そんな中、一人の艦娘が走り高跳びに挑んでいた。
……暑いわねぇ。これだから……。
少女が一人ゲートをくぐる。
……ハァ、今回はさすがの私でもきついかなぁ~。
大会前最後の練習でも跳べる感じが掴めなかった。
……困ったなぁ。決勝までは行きたいんだけどなぁ。
午前中はいつもよりかなり苦しい状態ながらなんとか競技を終えることが出来た。
昼食を食べながら思わず愚痴が出る。
「駄目だ~! 今回はさすがの長良さんもきついわ」
「何言ってるの、長良らしくないわよ?」
「え? ……五十鈴!」
……驚いたぁ。……あれ? でも五十鈴……今日は確か……?
「今日、出かける予定あったんじゃないの?」
「ええ。あったわよ、長良の応援に行く予定が」
「なんだぁ。……じゃあ、司令官と名取は?」
「提督? 今日はやっぱり手が離せないみたいね。大体、常日頃から甘い計画立てているからこんなことになるのよ。名取も放っておけばいいのに。……提督の執務室凄かったわよ。まるで誰かさんの部屋みたい」
「……悪うござんしたね。がさつで」
「誰もそんな事言ってないわよ。長良の部屋みたいだなんて」
「ほらやっぱり。どうせ私は2人みたいにお淑やかじゃありませんよーだ」
「ごめんごめん、はい、差し入れ」
「ラッキー! ありがと、五十鈴」
……食べ物で釣られるなんて私も現金だよね。
「で、どう? 行けそう? って言ってもさっきの様子じゃ無理かしら?」
「さすがにきついわよ。今回、みんなレベル高いんだもん」
午後からようやく調子が出てきた。
……これなら決勝まで行けるかもね。
あれ? 霧島さんがなんか言ってる。珍しい。
「長良、司令がお見えよ」
「え! あ、ホントだ、名取まで。今日来れないって言ってたのに……。無理しちゃって……ホントに馬鹿な司令官なんだから」
「そんな言い方しては駄目よ? せっかく駆けつけて頂いたのに。……長良、貴女も無様な姿は見せられないわね。しっかりやって頂戴」
……霧島さん、勝手な事言ってくれるなぁ。……そりゃ跳ぶのは私であって、霧島さんじゃないからね。いくらでも好きなこと言えるけどさ。
……いけない、どうもさっきから気が立っているみたい。平常心、平常心。
……でも、確かに司令官が見ている前で無様な姿は見せられないわよね。仕事休んでまで来てくれたんだから。あまりにも無様な姿見せたら後で何言われるかわかったもんじゃないわよ。
スタート位置に立つ。
目の前にあるのは、さっきの試技で呉の鬼怒が跳べなかった高さ。
……これが跳べれば大会新記録で優勝か。
……司令官、見てるのかな?
おっと、余計なことは考えないようにしなくちゃ。
今は目の前のバーを跳ぶことだけ。それだけを考えないとね。
呼吸に合わせて右手を握る。
そして開く。また握る。
早く、次第に早く。
『いけぇ~』
世界が一つになったようなこの感覚。
私とバーとの距離が0になる。
『よし。行ける!』
足が、身体が、腕が、目に見えない力によって私のいるべき処へ導かれる。
余計なことは考えない。
高く、高く、もっと高く。
風に、身を任せ、空に溶け込む。
そして……私は鳥になる。
深夜の変なテンションでの投稿は止めよう……。