DOD(ドラッグオンドラグーン)からオリキャラを召喚したら大変なことになった(仮)   作:蜜柑ブタ

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ルイズの裸表現があります、注意。

オスマン達に契約についての説明をしてますが、筆者の見解と独断と偏見もあります。注意。


第二話  コントラクトサーヴァントがバグった?

 学院の教員らに連行され、現在スカイは、学院長のオールド・オスマン師と対面して座っている。他の教員達もいる。

 ルイズは、あの後、保健室に運ばれ、まだ意識が戻っていないらしい。

 教師達の鋭い視線を受けても、スカイは無表情なままだった。感情を失った彼には、相手から向けられる悪意にも何も感じられなくなっていたのだ。

「……大体の事はシュヴルーズから聞いた。ミス・ヴァリエール嬢がお主との契約でメイジの力を失ったとそうじゃな。」

「正確に説明を加えると、ルイズの魔法の力が消えたのは俺の責任じゃない。」

 スカイの無機質な声に教師達がどよめいた。オスマンも少し驚いていた。

 オスマンは、すぐに気を取り直し尋問を続けた。

「しかし、お主は、ヴァリエール嬢が力を失った原因を知っているかのようなことを口走っていたそうではないか?」

「あくまで俺の推論だ。原因は、調べないと分からない。俺から質問をさせてもらえるか?」

「なんじゃ?」

「この世界の『契約』とは、なんだ?」

「ふむ…、契約と一口に言うてものう…。そもそもメイジは、魔法を使うために杖を使うんじゃが、この杖を使うためにも何日もかけて契約を結ばねばならん。

杖を必要とせん先住魔法を使いこなすエルフも精霊の力を借りて初めて魔法を使えるんじゃ。つまり契約という言葉は様々な意味を持つんじゃ。」

「ふーん…。杖一つで何日もか……。古臭いな。」

 スカイの言葉に教師達が顔を歪めた。

 何か言いだす前にオスマンが静止したが、オスマンの目は更に厳しいものとなっている。

「古臭いとは…、随分な言い方じゃのう。では、お主はなぜそう思う?」

「簡単な話だ。俺は、この世界の人間じゃない。」

「その証拠は?」

「シルフ。出てこい。」

『はーい。』

 スカイの服の隙間からシルフが出てきて、教師達を驚かせた。

「それは?」

「風の精霊・シルフだ。俺が契約を結んだ三体の魔物の一体だ。」

『シルフでーす。よろしく、髭のおじいちゃん!』

 シルフは、明るくそして早口な言葉づかいで喋り、スカイとオスマンの間の空間でクルクル飛び回った。

「精霊と契約? しかも…三体と言ったな? 他にもおるということか?」

「ここに一匹。」

 スカイは、服のボタンを外して、胸に空いた穴に潜んでいる死神を見せた。

 途端に教師達の何人かが悲鳴をあげ、何人かが腰を抜かし、ある者は杖をスカイに向けた。

「これは、死神だ。」

「し…、死神とは…、命を狩りとっていく、あの死神か?」

「ま、精霊の一種だな。ゴーストに近いところもあるが。」

「むう…。あと一体は?」

「アースドラゴン。あいつは、マイペースで、地面の中から滅多に出てこないが、今、学院の下にいるぞ?」

「ドラゴン!? 精霊に死神、更にドラゴンのような高等な生物を使い魔としておるのか!」

 驚いた声をあげるオスマンを、スカイがヒラヒラと手で静止した。

「違うな…。使い魔じゃない。」

「しかし契約を結んでおるのじゃろ?」

「じいさん達の世界の契約とは根本的に違う。説明すると長くなるがいいか?」

 スカイは、ソファーに座り直して、オスマン、そして教師達を見回して確認を取った。

 そして許可を得ると、スカイは、語り始めた。

 自分の世界での魔物との契約のことを。

 

 

一.人間が魔物と契約すると、契約した人間は絶大な力を手に入れる。死ぬ寸前で契約を結べばすべての傷や病も治る。魔物の方が死にかけでも契約を結べば魔物は助かる。

 

二.契約を結ぶと、契約した魔物と運命共同体となる。これは、互いの心臓を交換することで契約が成立するから。

  どちらかが怪我をすれば片方も同じ怪我をし、死ねば片方も死ぬ。これは、精霊やゴーストなどの実体のない魔物も例外なく死ぬ。

  例外として、魔物の方が石化するなど、死んではないが意識すら失っている状態になってしまった場合は、契約した人間は無事で、契約による力と払った代償がそのまま継続される。(契約相手のドラゴンが石化しているヴェルドレの例がある)

 

三.契約者となった人間は、契約の対価として体の器官、または目に見えない能力などを一つ失う。(目に見えない部分の例え、歌や、物を食べることや時間など)

  失われるものはその人物にとってもっとも大切な部分。(スカイの場合は、喜怒哀楽の感情を失った)

  体のどこかに契約を結んだ証の紋章が刻まれる。(刻まれる場所は主に対価で失った部分に出る。スカイは、額に刻まれた)

  個人により失われる部分が違うため、同じ種類の魔物と契約しても全く同じ紋章にはならない。

  対価にする部位や能力は、自分では選べない。魔物側は対価を払う必要はない。ただし魔物側は基本的に長命なので短命な人間と生死を共にすること自体が対価と言える。

 

四.魔物との契約は、よっぽどでのことがないとできない。例えばお互いに死にそうな絶体絶命の状態であることなど。

  契約を望む人間は、大抵は強力な魔物との契約を望むが、強い魔物ほど本当に本当に(エンドレス)よっぽどじゃないと契約を結んでくれない。

  魔物が脆弱で短命な人間との契約を許可するのは、人間だけが持つ持続的で強大な負の感情に惹かれる性質があり、魔物にとっては憧れであり、甘い蜜であるから。

  そのため魔物側が人間に契約を持ちかけるケースもあり、弱みに付け込んで無理やり契約させられる場合と、または精神が崩壊していて何も理解できない状態で契約が成立することがある。

  極稀なケースで、ゴーレムのように知性が低いなどの理由で何の見返りもない無償の愛で契約を結ぶということもある。

  更に凶悪な例として、人間側が魔物をも屈服させるほどの特殊な力がある場合は、誇り高く人間を見下すドラゴンですら契約なしで操られ、意思に関係なく人間との契約をやらされてしまう。(イゥヴァルトとブラックドラゴンの例)

  つまり本位不本意関係なく、契約は可能と思われる。その原理はいまだ不明。

 

五.一度契約を結んでしまうと、死ぬまで契約を破棄することはできない。

  ただし世界がひっくり返るような非常事態が発生したなどの理由で、強制的に契約が破棄される場合がある。

  契約が破棄されても契約前の危機的状態に戻ることはなく、互いに健康体である。ただし契約で得られる強大な力は失う。経験値は残るので契約してから力を付けるのを怠ってなければ契約状態を越えることも可能。

 

六.基本、一人につき一体の契約だが、稀なケースで、複数の魔物との契約が成立場合がある。(二体で常に行動するタイプの精霊などがあげられるが、三体の違う魔物と契約できたスカイは異例中の異例)

  複数の魔物との契約でも、無くなる部分は一つだけ。重複した契約は不可能と思われる。(前例がない)

 

 

 スカイは、自分の世界での契約の説明を終えた。

 オスマンも、教師達も言葉を失っていた。

 やがてオスマンは、呼吸を整えるために大きく息を吸って吐いた。

「なんと恐ろしく…、魅力に溢れた契約じゃな。」

「正直、この世界での使い魔の儀式と契約の魔法が、安っぽくて、まるで使えないなって思ったぞ。」

「何を言う! サモンサーヴァントは、始祖ブリミルの時代から伝わる、神聖な儀式なのだぞ!」

 教師の一人がたまりかねて叫んだ。

「なら、おまえらは、魔物と運命共同体で、体のどこかが無くなるけど、超越者になれる契約を結ぶか?」

「き……、貴様の言っていた契約が異常なのだ! そんな恐ろしい魔法があるわけがないだろう!」

「なら、ルイズに起こったことについて説明ができない。」

 食って掛かって来る教師の一人に手をヒラヒラさせてスカイは、そう言った。

「召喚した生物と契約を結び使い魔にするコントラクトサーヴァントだったか? 内容こそ違えど、契約は契約だ。術の構成を見てないからはっきりとしたことは言えないが、恐らく、俺の体にすでに刻まれていた契約に、コントラクトサーヴァントが影響されて、俺の契約とそっくりの作用を起こす魔法に変わったんだろうな。」

 だから召喚者であるはずのルイズにスカイの紋章(=使い魔のルーンの変異)が刻まれてしまった。

 スカイは、自分の考えを言った。

 オスマンは、それを聞いて考え込んだ。

 スカイの説明で聞き、スカイの世界での契約は、ハルケギニアの使い魔の儀式など足元に及ばないほどの強力な代物だ。

 しかも契約を結び、その証であるルーン(紋章)が刻まれるという部分だけが似ていた。だがこの世界の使い魔の儀式は、一方的なものだ。使い魔はルーンを刻まれることで主に従属し、目となり耳となり、主人が求めるモノを探し、主人を守るために存在する。

 つまり、利を得られるのは、主人であるメイジだけだ。使い魔は死ねば、次の使い魔を呼ぶだけで使い捨てられる、使い魔は損しか得られない。

 体のどこかを失い、運命共同体となり、痛みも死も分かち合う危険を冒してでも力が手に入るのなら…。説明にあった通り、凄まじい負の感情が発生する状況に立たされたなら、何を犠牲にしてでも人間は、力を求めるだろう。それが人間の性というものだ。

 スカイが結んだ契約は、学院で神聖な儀式としていた使い魔召喚の儀式が霞んで消えるほどの魅力がある。

 しかも話を聞く限りでは、負の感情さえあれば、誰でも契約が可能ということなので、もしこの世界にスカイの世界の契約が存在したら、貴族達に虐げられている平民達から契約者が続出していただろう。

 スカイの世界の契約がこの世界になくて本当によかったと、オスマンは、心底安堵した。

「ホッとしてる場合じゃないだろ、じいさん。」

 スカイの言葉でオスマンは、現実に引き戻された。

「お主の契約が破棄できないものであるというなら、やはり…ヴァリエール嬢の紋章も消すことができないということかね?」

「おいおい、ちゃんと話聞いてたのか? ボケてんのか?」

「スカイ殿! 口を慎んでください!」

「はっきり言っておく。俺の推測が正しければ…、ルイズの契約は、破棄できるぜ。」

 スカイの言葉に、オスマンも教師達もスカイを見た。

「ルイズに出たあの紋章は、コントラクトサーヴァントが俺についてるこの契約の紋章の影響を受けて、俺の契約とよく似た形に変化した代物だ。契約者に発生する対価と、身体能力の強化が起こった。だが魔物と契約を結んで運命共同体になったわけじゃない。

それは、俺が一回死んだときに証明されている。死どころか、痛みすら共有していない。つまり、ルイズの右胸に刻まれた俺の紋章そっくりの紋章は、コントラクトサーヴァントだ。コントラクトサーヴァントの構成する魔法の式を解析すれば、解除する方法が見つかるはずだ。」

 スカイは、机に手を着いてソファーから立ち上がり、身を乗り出してオスマンの顔を見た。

「……わしらになにを求める?」

 スカイの眼力に負けまいとオスマンは、体に力を込めてスカイに言った。

「この学院の魔法に関する書物とか、薬を作る道具とか、魔法の研究をする権利をくれ。あと、文字の読み方を教えろ。」

「それでヴァリエール嬢のメイジの力が取り戻せるのか?」

「できることはすべてやってやるさ。手段は択ばないぞ。場合によっては、あんたらに協力してもらうかもしれないから、覚悟しておけ。」

 スカイは、ジロッと教師達を見回した。

 教師達は、急に萎縮し顔色を悪くしている。

「それが嫌なら、さっさとルイズをこの魔法学院から退学させればいい。」

「そ、それだけはできぬのじゃ…。」

「そうか。やたらルイズをあんた達が特別視しているから、よっぽど良いところのお嬢さんなのかもしれないとは思ったが、本当にそうだったのか。もしかして国の姫か? なら、ルイズに魔法の力が無くなったって知れたら、大変だな……。」

「いや、ヴァリエール嬢は、このトリステインで名を知らぬものはいないくらいの貴族、ヴァリエール家の令嬢じゃよ。して、どのくらいすれば、ルイズの紋章を消せるんじゃ?」

「それは、分からん。俺もこんなケースに遭遇したのは始めてだからな。一から調べつくして、紋章を消すための魔法か、道具を、一から作るしかないな。」

「できるだけ早くしてもらいたい…。」

「じゃあ、許可をもらえるんだな? 協力もしてくれるんだな?」

 スカイが確認する。

 教師達が固唾を飲んでオスマンを見つめている。

「……許可をする。教師達が必要なら、まずわしに言ってくれるか?」

「十分だ。なら、さっさと作業に取り掛かる。どっか空き部屋ないか? できれば、学生達が来ない場所がいい。」

「…それならば、ある。コルベール。案内してあげなさい。」

「はい…。」

 オスマンから空き部屋のことを聞くと、スカイは、コルベールに案内され、教師達をかき分けて学院長室から出て行った。

 残された教師達は、スカイがいなくなったことでどっと疲れが押し寄せたのかすっかり元気をなくしていた。

 スカイと直接会話したオスマンは、もっと疲れていた。

 正直、寿命が十年以上は縮んだような錯覚をおぼえるほどだ。優れたメイジとして学院を任せられている身だけあり、相手の力量を見抜く自信はある。そのためスカイの圧倒的な強さが分かってしまい他の教師達以上に疲労したのだった。

 トリステイン全土のメイジが一度にスカイに戦いを挑んだとしても、スカイに傷一つ負わせられるかどうか分からない。それぐらいスカイは強い。

 オスマンは、スカイが自分達の敵にならなくて本当に本当に(エンドレス)よかったと、心の底から思った。

 

 

 

***

 

 

 

 

 保健室で目を覚ましたルイズは、しばらくベットの上で放心していたが、やがて起き上がり、ブラウスをはだけさせて右胸を確認した。

 そこには、スカイの額にある紋章そっくりの痣がくっきりと刻まれている。

 授業中に起こったあの出来事は、すべて現実だった。夢であってほしかったのだが、右胸の紋章がそんなルイズを嘲笑うように彼女の白い肌の上にある。

 ルイズは、ブラウスを握りしめ、声を押し殺して泣いた。

 スカイの言葉が耳から離れない。

 『契約を結んだ時に、大切な部分を失うというルール』。

 ルイズは、立派なメイジになりたかった。

 名門のヴァリエール家の娘として恥じないように、爆発しか起こさないメイジとして欠陥品な自分を変えるために努力してきた。

 彼女にとって貴族であること、メイジであろうとすることは生きる理由だった。

 だからメイジの力が対価として失われてしまったのかもしれない。

 メイジがメイジの力を使えなくなったなら、それはもうただの平民と同じだ。

 そうなればこの魔法学院にはいられない。ヴァリエール家にだっていられなくなるかもしれない。

 ルイズは、絶望し、ただ泣くことしかできなかった。

 その時。

 

「起きてたか、ルイズ。」

 

 感情のない棒読みな独特の男の声が聞こえた。

 ルイズは、その聞き覚えのある声に反応し、ベットのカーテンの向こうにある影に向かって飛び掛かった。

 カーテンが裂け、スカイは、ルイズによって床に押し倒された。

「あんたのせいよ!」

 ルイズの拳がスカイの頬を殴打した。

「あんたのせいで、私はメイジじゃなくなってしまったわ!」

 反対の手でスカイの逆の頬を殴打する。

「返してよ! 私の誇りを! 私の大切なものを!」

 ルイズは、涙をまき散らしながら何度も何度もスカイの顔を殴り続けた。

「返しなさい! 返せ、返せ、返せーーーーーー!!」

 ルイズは、叫びながら数えきれないほどスカイを殴り続けた。

 やがてルイズが、息を切らして殴るのをやめた。

 彼女の下には、顔の原型が分からないほどルイズに殴られたスカイが、微かに呼吸をしている。

 ルイズは、ハッと我に返って自分の両手を見た。

 血で汚れてはいるが、格闘の経験がないはずの柔らかい手には傷一つない。

 ルイズは、教養として、実家で使用人の平民を折檻するために道具を使って怪我をさせたことがあるが、生身の手で怪我をさせたことはない。

 ルイズの下で虫の息になっているスカイは、ルイズの強力な殴打で顔の形が分からない有様になっている。

 ルイズは、恐怖し、スカイの上からどいて床にへたり込んだ

「……気は……、すんだか?」

 声は弱っているが、はっきりとスカイが言葉を紡いだ。

 まるで痛みなど感じていないようだ。

『もう、スカイってば、お人よしなんだからー。』

 するとスカイの服の隙間から、シルフが出てきて、スカイの腰の鞄の中から薬のような物が入った小瓶を取り出し、器用に蓋を開けてその中身をスカイに振りかけた。

 すると瞬く間にスカイの傷が完治し、スカイは、ゆっくりと起き上がった。

 ルイズは信じられないものを見るような顔でスカイを凝視した。

 ハルゲニアには、傷を癒すための秘薬として水の秘薬があるが、非常に高価で、ここまで早く傷を治せない。

 それにスカイの服の中から出てきた緑色の光る物体もルイズは始めて見るものだ。しかも喋っている。

「すまん、ありがとう。」

『どういたしましてー。でもさー、無抵抗に殴られないでよー。僕も痛いんだよ?』

「悪かった。」

「あんた……。」

「ルイズ。話がある。だから、来い。」

 スカイは、素早く立ち上がり、へたり込んでいるルイズの傍に来ると無理やり立ち上がらせて保健室から連れ出そう引っ張った。

「や、やめて! 何するの!」

「おまえにかかった魔法を解くんだよ。」

「えっ?」

 ルイズは、驚いてスカイを見た。

 スカイは、無表情な顔でルイズを見返した。

「学院長のじいさんと取引して、ルイズを元に戻す方法を探す許可をもらってきた。おまえが来ないと意味がないんだよ。だから来い。」

「本当に? 本当に私…、私の魔法の力…、戻せるの?」

「いいから、とりあえず来い。」

 スカイは、ルイズの腕を引いて、歩いて行った。

 やがて学院でもあまり人が入らない場所につき、そこにある部屋の一つを開けて、中にルイズを連れ込んだ。

 ルイズは、部屋の中を見て驚いた。

 とんでもない数の魔導書と、見たこともないマジックアイテム、秘薬か何かを調合するための道具と、机の上や床に積み上げられた書類が大量にあった。

 足元にある書類をしゃがんで拾い、目を通すと、ルイズの知らない文字と数式がびっしりと書かれていた。

 背後で扉が閉められる音して、スカイが歩いてきた。

「ルイズ、脱げ。」

 いきなりとんでもないことを口走った。

「は、はあ!?」

 ルイズは、書類を落として赤面した。

「紋章が体にどう作用しているのか、紋章の正体を探るから、裸になれ。」

「え…、ええ…、で、でも…。」

「俺。感情が無くなったせいか、性欲とかもなくなってな。女の体を見たってなんも感じないぞ?」

 スカイは、恥ずかしがるルイズに、淡々と説明した。

 スカイに、性欲はないらしい。あくまで感情からくる性欲が消えただけで生物としての機能は無くなったわけじゃないので、実は女性経験はそれなりにあったりするのだが…。

 ルイズは、それを聞いてスカイを疑るような目で見た。

 やがて背に腹は変えられないと覚悟したのか、服を脱ぎ始めた。一応背中を向けて。

 スカイの視線を感じるので涙目であるが、メイジに戻るためには仕方ないのだと涙をこらえ、ついに下着もすべて脱いだ。

「……こ……これで……、いいの?」

「そこの椅子に座れ。」

 言われるままルイズは、椅子に座った。

 スカイが目の前に来てかがむ。

「右胸を見せろ。」

 ルイズは、胸や恥部を隠すために手を置いていた。言われた通り胸を隠していた手をゆっくりとずらし、右胸部分を晒した。

 スカイは、指先でルイズの右胸にある紋章にそっと触れた。

 厭らしい手つきではなく、本当にただ調べるために事務的に触っているだけだ。

 異性に裸体を晒し、触られたことがないルイズは、震え、目に涙を溜めて我慢した。

「………やっぱりか。」

 スカイは、ルイズから離れ、どこから出したのか分からない白紙の書類に文字を記入し始めた。

「やっぱりって?」

 ルイズは、急いで脱いだ服を纏めて前を隠しながらスカイに質問をした。

「その紋章だ。やっぱり、コントラクトサーヴァントが変異した魔法だった。」

「これが、コントラクトサーヴァント? 私に使い魔のルーンがついちゃったってこと?」

「それなんだがな…、なんというか、どうも俺の契約の紋章に共鳴反応を起こして、良く似た効果を擬似的に起こす魔法になっちまったらしい。」

「つまり…、どういう意味?」

「そもそもコントラクトサーヴァントは、この世界の魔法使い…つまりメイジが召喚した生物に一方的に契約させて従属させるルーンを刻み付けるって魔法だ。俺の世界の契約は、魔物と心臓を交換して運命共同体になる、……大体は利害の一致で結ばれる、互いに得があるものだ。」

 スカイは、床に座り込み、次々と書類に文字と数式を書いていく。

「あの…、もう、服、着ていい?」

「いいぞ。」

 返事を聞くなりルイズは、大急ぎで服を着た。

 服を着込んだルイズは、スカイの傍に腰を下ろして、スカイの作業を見物した。

 さっきまでの羞恥が嘘のよう。一旦乗り越えてしまえば人間慣れるものだ。

「何してるの?」

「魔法を一から分析して、ルイズにかかった、バグったコントラクトサーヴァントを解く方法を考えてるんだ。」

「バグ? 魔法をいちから? あんたそんなことできるの?」

「これでも一応、世界の平和を管理していた神官長の弟子だったからな、それにもともと魔法が好きだったから毎日寝るのも食べるのも忘れるぐらい夢中になって魔法を研究してたからな。」

「……あんたって、この世界の人間じゃないのね。当たり前か…。あんたの言う契約なんて聞いたことなしい、神官長が世界の管理なんて…。」

「俺の世界じゃ、世界を封印して、神から世界を守ってんだよ。」

「かみ…から? 何それ? 神様が敵なの?」

「敵というか…。人間だけが自分の思い通りにならない生物だったからな、だから滅ぼうそうとして、あれこれしてくるわけ。」

「信じられない…。なんて身勝手なの…。」

「どっちが? 人間か? 神が?」

「……神様よ。」

「どっちが正しいかなんて分かんねえよ。人間は滅びたくないから世界を封印して、創造主の神が手出しできないようにしたんだ。俺からしてみりゃどっちもどっちだな。」

「私なら、そんな神様なんて願い下げよ。言うこと聞かならいからって滅ぼしていいわけないもの。」

「ふーん。ルイズは、そう思うのか。」

 そこまでルイズと会話したところで、スカイは、書く手を止めた。

 頭をかいて、何か考え込んでいる。顔は相変わらず無表情だが。

「こりゃ…、思ってたより長期戦になりそうだな。」

「そんなに難しいの?」

「契約を結ぶって意味じゃ、俺が結んだ契約も、コントラクトサーヴァントも種類は同じ魔法。

パワーは圧倒的に俺の契約の方が上なのに、弱いはずのコントラクトサーヴァントが俺の契約とほぼ同じ形になって発現した。

対価としてルイズの大事なものが無くなって、代わりに身体能力が異常に発達しているしな。

しかも契約者の証の紋章まで再現されてて、刻まれている場所も魔力の供給源といえる心臓の上だ。

ルイズが無くしたのがメイジの才能なら紋章が出た場所はこれで合ってる。契約は、完璧な形で機能してるってことだ。

これを無理やり引っぺがすと命の保証が……。

よりによって急所だから。」

「嘘でしょ……。」

 スカイが失敗であるはずのコントラクトサーヴァントが完璧な形でルイズに作用していることに頭を悩ませ、ルイズはそれを聞いて信じられないと首を振った。

「なあ、ルイズ。メイジやめて、別の将来を考えるってのはどうだ?」

 くるっとルイズの顔を見たスカイがそう言った。

「はっ? じょ、冗談じゃないわよ! 私は、ヴァリエール家の令嬢よ! メイジは貴族の証! それを捨てるなんて私のプライドが許さないわ!」

「いや、冗談抜きで、頭の隅で考えとけ。元に戻せる保証がかなり低確率になったからな。」

「ちょっと! 私を元に戻すって約束でしょ! 死んでもなんとかしてよね!」

「俺、死なないし。」

「じゃあ、何が何でもやって!」

「五体満足で、感覚とかも全部無事なんだから生きていくぶんには何の問題もないんだし…。大の男を素手で殺せるぐらいなんだから肉体労働で十分食っていけるぜ。俺が知ってる契約者の中じゃ、おまえ随分と恵まれてると思うぞ?」

「…えっ?」

「そもそも俺の世界の契約なんて、大抵の場合、不幸のどん底なり死にかけたり、精神ぶっ壊れて現実の区別もできないほどならないとできない代物だからな…。いざ契約者になって強大な力を手に入れても幸せにはなれないんだよな…。余計に不幸になる奴ばっかり。俺が知ってる契約者のほとんどが早死にしたし。」

 スカイは、もとの世界で見てきた契約者達のことを思いだし淡々とそう言った。

「……あんたは、なんで契約したの?」

 それほどの辛い思いをしてまで、なぜ危険な契約に踏み切ってしまったのか、ルイズは、単純な疑問を抱いてスカイに聞いた。

 しかしスカイは、口をつぐんだ。

 しばらく静かな空気が部屋を支配した。

「は、話せないようなことがあったの?」

 ルイズは、スカイの説明で契約者が重い事情を抱えていることを思いだし慌てて喋った。

「決めてるんだ。」

「えっ?」

「俺が契約した理由は、何があっても喋らないって。自分で決めた。だから、俺の従弟にも師匠にも俺が契約者になった理由を教えてない。」

「どうして?」

「絶対に言わないからな。」

「あんた…、意外と頑固?」

「どうとでも思えよ。」

「余計気になるじゃない。」

「あー、そうだ。ルイズ、おまえ今日からこの部屋で一緒に暮らしてもらうからな。」

 急にスカイが話を変えた。

「はあ!? なんで?」

「おまえさ…。メイジじゃなくなったってのが、学院中に広まってるぞ? 何を意味するか分かるだろ、ゼロのルイズ。」

「うっ…。」

 ルイズは、その嫌な二つ名を言われ、言葉に詰まった。

 メイジ主義の、しかもメイジが学を学ぶためのこの場所で、ただでさえ落ちこぼれなのに、メイジでなくなったならどうなるかなど簡単に予想できる。

 日ごろ魔法が使えない平民達が虐げられているのを見ているだけに、ルイズは、自分が今同じ立場に…いやそれ以上に悪い立場に立たされたのだと実感して身を震わせた。

「寮には戻るな。何をされるか分からないぞ。元に戻るまでできる限り他の生徒と会わないように気を付けろ。ま、何かあったらすぐ駆けつけてやるからな。守ってやるよ、ルイズ。」

「あんたが、私を? あんた強いの?」

「何を言うか。契約者は、みんな強いぞ。数千人の軍隊相手に一人で戦ったことぐらいあるぞ。」

「嘘っ!」

「マジだ。山のひとつふたつ、吹っ飛ばして、大平原に大穴開けたり、メチャクチャやったなー。」

 棒読みだが、懐かしい思い出を語るようにとんでもないことを口走るスカイ。

「やりすぎだって、従弟にどつかれたっけなー。あいつも契約者だったから、頭蓋骨陥没したなー。」

「やめて。それ以上話さないで…。」

 ルイズは、気分が悪くなったらしい。

 するとスカイがルイズの前に右手を差し出した。

「ま、そういうわけだから、しばらくよろしくな。ルイズ。」

 握手をするために手を出したらしい。

 ルイズは、ムスッとしてスカイを睨み、息を整えてからスカイの手を握った。

「あ、そうだ。俺、ついでにもとの世界に帰る方法も探すから。メイジに戻れたら次は、ちゃんとしたサモンサーヴァントをしろよ。」

「えっ、帰るの? 帰る方法なんて…。あんたなら、できそうね。」

「理論上じゃできるぜ。まったく、この世界の魔法の古臭さには驚かさるぜ。六千年も経ってるのにいまだに古い魔法を普通に使ってるって、ありえないだろ。」

「なによ。違う世界のあんたがどうこう言わないでよね。」

「言いたくなるほど、時代遅れだってことだ。」

「腹立つー!」

 

 こうしてスカイは、ルイズにかかったバグったコントラクトサーヴァントを解くために研究を始めた。

 そしてルイズとの共同生活が始まった。




とりあえず、書いてるのはここまで。

おそらく連載はしない。暇つぶしに書くかもしれないけど。

もしゼロ魔の世界に、DODの契約の力が存在したら、大事になってたでしょうね。差別で虐げられて絶望に落ちた人々がかなり多そうだから。
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