二周目提督がハードモード鎮守府に着任しました   作:ベリーナイスメル

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那珂ちゃんは忙しいようです

 暗くて冷たい。

 

 私が私だって分かる前に分かった事はそんな事。

 

 とっても居心地が悪いはずなのに、今すぐにもその場から離れたいって思ってるのに動けない。

 

 何処に動けば良いのかわからなかったから。

 

 だからずっと身を縮こめていた。

 早くこんな感触無くなってしまえばいいのにって思いながら。

 

 早く消えてしまいたい。

 

 そんな事をずっと思っていた時だった。

 ふとすっごく明るくて温かい感触があった。

 

 思わず身体が動いちゃった。

 

 その温かさに触れたいって思った。その明るさの下で動きたいと思った。

 

 そう思ったら思い出した。

 

 ――あぁ、私は那珂。川内型軽巡洋艦三番艦の那珂だ。

 

 私の使命は? 私のしたいことは? 私は?

 

 一度にすっと胸に入ってきた。

 

 ここから出たい。だからそう願った。

 

 こんな暗くて冷たい場所は那珂ちゃんには似合わない。

 

 この先には明るい世界(ステージ)が私を待っている。そう思った。

 

 ここから出た先はファンが待っている私のステージ。

 

 手は? ――動く。

 足は? ――動く。

 

 私は? ――やれる。

 

「もうすぐ、会えるね」

 

 ほら、言葉だって喋れちゃう。

 

 さぁ、目を開けよう。そして浮上しよう。

 きっと私を待ってくれている人がそこにいるはずだから。

 

 そして目の前に広がった景色は。

 

「艦隊のアイドル、那珂ちゃんだよ! いつも……って誰もいないっ!?」

 

 だだっ広く誰もいない建造ドックだった。

 

 嘘だー、アイドルを迎えるのはファンの役目なんだよ? こんな私の声だけが響くステージなんて嫌だよー?

 

 普通艦娘が着任したら誰かが迎えに来てくれるものなんじゃないかなー? ほら、提督とか提督とかー。

 

 もしかして私、必要とされてないっ!?

 

「い、いやいや。違うよね? 違うって言ってよー。誰かー?」

 

 あーん。やっぱり返事がないよぅ!

 

 うぅ、困ったなぁ。どうすれば良いんだろう? とりあえず着任の挨拶はしなくちゃいけないよね? そうだよね? うん。

 

「もー。アイドルが出迎えに行くなんてー……見つけたらファンの心構えとか作法とか教えてあげないとー!」

 

 うん。そうよね。

 ファンを育ててあげるのもアイドルの役目だもんねっ!

 

 那珂ちゃん、ファイトっ!

 

 

 

「貴様っ! もう一度言ってみろっ!」

 

「ひゃん!?」

 

 そうしてうろうろしてたらいきなり聞こえたおっきな声。

 思わず変な声が出ちゃったーもう。

 

 えっと、こっちの方からだよね?

 

「やれやれ。そう何度も言いたいことでは無いんだけどね? ……キミを懲戒免職とすると言ったんだよ。不名誉除隊とでも言ったほうが良いかい? なんにしても今後自由があるとは思わない事だ」

 

「そうではないっ! 何故私がそのような扱いを受けないとならんのだっ!」

 

 あ、こっちだね。ってなんだか怖い? うん、怖い!

 

 アイドルを怖がらせるなんて……ふぁ、ファン失格なんだよー?

 

 えっと……ここは執務室?

 

「キミ自身がよくわかって……あぁいや。わかっていたらこんな事にはなっていないか。うん。すまないね?」

 

「ばっ! 馬鹿にしているのか!? 優秀な提督であるこの私をっ! 死にぞこない如きがっ!」

 

 う、うわぁ……しゅ、修羅場ってやつだよ! 那珂ちゃん初めて見ましたっ!

 

 顔を真赤にして怒ってる人と、人の良さそうな笑顔のまま話す人。笑顔を浮かべてる人の後ろにはピシッと気をつけの姿勢で微動だにしない軍の人が二人。

 

 えっとー那珂ちゃんのファンにはー怒る人はちょっと遠慮したいかなーって。

 

「うん、その通りだね。だけどね、キミの上官だ。そう、キミのこれからを左右出来る、ね」

 

「ぐっ! だ、だが懲戒免職とは一体どういう事だ! 私は何もしていないぞっ!」

 

 あ、あの人すごい。

 あんなに怖い顔で迫られてるのにずっとニコニコしてるー。

 

 那珂ちゃん知ってるよ? 営業スマイルって言うのだよね?

 

 ……うん、やっぱり嫌な笑顔だなぁ。

 

「よく言えたものだね、感心してしまうよ。……艦娘への暴行。性的暴行未遂。それによって艦娘を使い物にならなくした。あぁ、キミ達風に言うのなら建造物等損壊罪っていうのかな?」

 

「そ、そんな事はしておらんっ! 貴様が勝手に使えないと判断して墓場送りにしただけだっ! 私の下でならまだまだ――」

 

「黙りたまえ」

 

 こ、怖いっ!

 笑顔が急に真顔になった! 

 

 え? 那珂ちゃんのファンはあのどっちなの? どっちも嫌だよぅ!

 

「そうだね、キミ達は実に良く働いてくれた。予想外ではあったけど、期待通りにね。だからこうして予想外のフォローが出来る」

 

「い、言っている意味がわからんっ! 帰れっ! 貴様と話すような事は――」

 

「何故キミは……あの鎮守府(墓場)に行ったのに生きて帰ってきているのかな?」

 

「ぐっ……」

 

 あ、那珂ちゃん駄目。

 ちょっと見てられないかなー? 怖すぎるかなー。

 

 だってー。あの人……。

 

「……黙れ、黙れぇええええええ!!」

 

 ワナワナと震えながら軍刀に手を持っていってたもん。

 

 あれ? でもあの人……全然余裕がありそう?

 

 って、えぇ!?

 

「はぁ……キミの大事にしている軍学校に、刀の扱いを教える機会は無かったのかな? ほんとに……何を教えているんだか。こうして対応出来ているのはそのお陰とも言うべきだけど……複雑だね」

 

「ひ……!?」

 

 あの人より遅く刀を振ったはずなのに……す、すごい!

 あれ? これってもしかして映画の撮影かな? 

 

 そうだったら那珂ちゃん嬉しいなー?

 

「諦めたまえ。これは上が認めた事だ、大人しく先の決まっている軍法会議に出廷しろ。……連れて行け」

 

「「はっ!!」」

 

 あ!? こっちに来ちゃう!? 

 

 どどど、どうしよう!?

 

「わわっ!?」

 

「っ!? 申し訳ありません! 急ぎ故ご容赦下さいっ! 失礼致しますっ!」

 

 あわわ……え、えっと、と、答礼!

 

「ありがとうございますっ!」

 

 うわー。人一人抱えながら綺麗な敬礼だなぁ……あ、抱えられてる人は見ない振りっ! 見ない振りっ……! 

 

 だってもうなんだか可愛そうなくらい落ち込んでるもん。

 

「……参ったな。もうここで艦娘は……あぁ、いや彼が来たのか。期待通りじゃなかったなぁ……」

 

「え!? あ、ご、ごめんなさい!」

 

 あ、あれ? 何で那珂ちゃん謝ってるの? うー。でも、なんと言うか……謝らないといけない気がして。

 

「あはは、謝ることは無いよ。期待以上に困ることが出来るなんて嬉しい限りだからね。……ただ、僕はアドリブに弱くてね」

 

「あ、アドリブ?」

 

「うん。僕はキミと違って台本が無ければトチってしまうんだよ……初めまして、那珂」

 

「は、はい! 初めまして!」

 

 初めましてって言うことは? この人が那珂ちゃんのファンなのかな?

 

 嬉しいような、怖いような……。

 

「えーっと……うん。そう、そうだね。那珂もあそこに行ってもらおうかな? 色々手順をすっ飛ばしちゃってるけど、紛れもなく彼の艦娘だろうし」

 

「え? あ、あの? あなたが那珂ちゃんの提督じゃ……?」

 

 あれ? 違ったのかなー?

 那珂ちゃんちょっと覚悟決めようとしてたのにー。

 

「僕じゃないんだ。色々あってね……すまないが少し待っていてくれ。すぐに迎えを手配する」

 

 そう言って執務室の電話に手をのばすこの人。

 

 じゃあ、この人は……。

 

「あ、あの!」

 

「ん? なんだい?」

 

 人の良さそうな笑顔で、少し悲しそうに笑うこの人は一体。

 

「あなたは……私の提督じゃなければ、誰なんですか?」

 

「そうだね……言うなれば」

 

 

 

 ――死にぞこないの無能な元提督さ。

 

 

 

 そうして、今。

 

 ――生まれる前から那珂ちゃんのファンでした!!

 

 ――艦隊のアイドル、那珂ちゃ――えぇ!?

 

 そんな事を言って私を迎えてくれた人の後ろについていきながら案内してもらう。

 

 那珂ちゃんの新しいステージは複雑みたい。

 色々教えてもらったけどどれにも驚くことばっかり。

 

 中でも妖精さんには驚いた。

 あんなちっちゃなかわいいのが色んな設備とかを開発してるんだって! すごいねぇ!

 

「まぁこんな所かな? どうだ? 大体わかったか?」

 

「うん、バッチリだよ! ありがと! 提督ー!」

 

 移動中も楽しくおしゃべりできたしっ! 那珂ちゃん大満足ですっ!

 

「そっか、良かった。……それで、だな。着任したての那珂ちゃんに頼みたいことがあるんだけど……」

 

「ん? 何かなー提督。ファン第一号だからねっ! 聞いてあげちゃうよー!」

 

 那珂ちゃんはファンを大事にするんです!

 

 あ、でもー。清純派アイドルだからー。そういう事は……だ、駄目だからねー!

 

「よっし。それじゃちょっとついて来てくれ」

 

「はぁい」

 

 え、何処行くんだろう? まさかお城みたいな……きゃー!? な、那珂ちゃんはー! そういう事はー!?

 

 ってあれ? ここ鎮守府の裏手に向かう道、だよね?

 

 えっえっえっ!? もしかしてこんな所で!?

 

「さぁ、ついたぞ?」

 

「て、提督! 那珂ちゃん! こういう事はちゃんと普通の女の子になってから……ってあれ?」

 

 あ、なんだか提督の目が冷たい。くすん。

 

 う、ううん。那珂ちゃん負けないっ!

 

 でも提督と目を合わせられないから違う所見るね? って……あの子達は?

 

「あ……司令、官」

 

「よう、暁。調子はどうだ?」

 

 とてて……っと近づいてきたのは……えっと、六駆の暁ちゃんだったかな? 見知ったこと無いけど、知ってる。

 

「わから、ないわ……ちゃんと、出来てる、かな?」

 

「おう、俺にもわかんねぇ。だからな? 今日は助っ人を連れてきた」

 

「助っ人?」

 

 あ、目が合った。

 あ、提督の後ろに隠れられた。

 

 ……那珂ちゃん泣いていい?

 

「あらら……。暁? この子は那珂ちゃん。アイドルなんだぞ?」

 

「あい、どる?」

 

「うんっ! 那珂ちゃんはー艦隊のアイドルでぇす! きゃはっ」

 

 こ、こういう時こそスマーイル! ね!

 

 あ、余計に隠れられた。

 

 辛いよぅ。

 

「アイドルってーのはな? 言うなら皆に好かれる立派なレディなんだ。那珂ちゃんを見習えば暁だってすぐに立派なレディになれる……かもしれない」

 

「……かもしれない?」

 

「な、なれるっ! 大丈夫だ! 問題ない!」

 

 立派なレディって言うよりは、憧れの可愛い女の子路線ですっ!

 

 あ、でも隠れるの止めてくれた。嬉しい。

 

「じゃ、じゃあ……えっと。よろしく、お願いするわ」

 

「うんっ! 那珂ちゃんにぃ! まっかせてっ!」

 

 よっし気合の入れどころだよぅ!

 

 あれ? でも、何を頑張ればいいんだろ?

 

 そう思ってると、暁ちゃんに手を引かれて連れて行ってもらったのは。

 

「花壇?」

 

「うん……司令官が、育ててって」

 

「おう。一人前のレディなら花の一つや二つ嗜むもんだからな!」

 

 あ、なんかドヤ顔してる。

 

 ……ちょっと可愛いな。提督。

 

「だ、から……やってるの。けど、ちゃんと、出来てるかわからないの」

 

「そこで那珂ちゃんの出番ですよ。提督命令です! この花を六駆の皆と育てるように! 花の世話は六駆の皆交代でやってるからな? 今日は暁、明日は響って感じで。あぁ、もちろん俺も来るようにするから心配するな」

 

「え、えぇ!? な、那珂ちゃんだって……」

 

 お花の世話なんてしたこと無いよっ!?

 

 ん? 袖を引っ張られる感触?

 

「でき、ない?」

 

「出来ます」

 

 ちっくしょうてやんでぇこのやろうめ! ってもんだよっ! こんなに可愛く不安そうに言われて出来ないなんて言えないよっ! アイドルの名折れだよっ!

 

 そんな気合を入れてたらそっと提督が耳打ちしてきた。

 

 ――心配すんな、後二、三日したら花図鑑と育て方載ったのが来るし、一緒に勉強しよう。全員と顔合わせするまでは俺も来る。その後も時間作って見に来る、言った通り放置なんてしないから。

 

 だって。

 

 ……何か理由があるのかな?

 

 そう言われてみれば、暁ちゃんってこんな子なのかな? なんだかわからないけど違和感。

 

 きっとその違和感が理由なんだろうねっ!

 

 よっし! 那珂ちゃん! センター! 見せ場ですっ!

 

 

 

「えっとー? 響ちゃん?」

 

「……」

 

 暁ちゃんの次は響ちゃん! がんばるぞって気合入れてきたんだけど……。

 

 反応がないよっ!? ぼーっと花壇を見ながら水やりしてるよっ!?

 

「響、やりすぎじゃねぇかな?」

 

「……うん」

 

 あ、じょうろから水が止まった。というか止めた。

 

 え? 何々提督? あ、うん。わかった。

 

「えっとー。この花は乾燥に強くて加湿を嫌うからー……水は土の表面が乾いてたらあげる程度でいいんだよっ!」

 

「……わかった」

 

 今度はじーっと苗を見守る響ちゃん。

 

 その隣に提督が座って一緒に眺めてる。

 

「……司令官」

 

「うん?」

 

「……何で?」

 

 えーっと何が何で? なんだろう。

 那珂ちゃんわからなかったけど、提督はわかったみたい。

 

「花が咲いたらわかるよ」

 

「……うん」

 

 私もいつかわかる様になるかな?

 

 それっきりまた二人してじーっと眺めだした。

 

 とりあえず那珂ちゃんもよくわからないけど、響ちゃんの隣に座る。

 

 そうすれば、不思議そう……なのかな? じーっと見られた。

 

「どんなのが咲くか、楽しみだねぇ」

 

「……楽しみ?」

 

「そうだよっ! 可愛いお花かな? それとも綺麗なお花かな? 響ちゃんはどんなお花だと思う?」

 

「……わからない」

 

「そっかぁ。じゃあ一緒に咲く所見ようね」

 

「……うん」

 

 良かった。一緒にお世話していいみたい。楽しみだね!

 

 

 

「えっと……これでいいの?」

 

「おう、いい感じだと思うぞ」

 

 今度は雷ちゃん! すっごく恐る恐るだけどちゃんと出来てる!

 

「ほんと? ほんとに出来てる?」

 

「どうなんだろう? 那珂ちゃん」

 

「えっとー。バッチリだよっ!」

 

 アブラムシ気持ち悪い! でもしっかり取らないとねっ!

 

 ……うーアイドルはーお世話する側じゃなくて貰う側なんだけどなー? ねぇ? 提督?

 

 そんな目で見てみれば、困ったように頬を掻く提督。

 

 あ、目を逸らした。

 

 もー!

 

「で、でも司令官? 私、ちゃんと出来る気がしないわ……だって――」

 

「雷はさ、頼りになる人ってどんな人だと思う?」

 

「えっ……?」

 

 頼りになる人……。

 

 そうだなぁ、包容力が合ってー男らしくてー……。

 

「俺はな、応えようとしてくれる人だと思ってる」

 

「応えようとしてくれる人……?」

 

 う……違うのかなー? 那珂ちゃん失敗した?

 

「そうだ。不格好でも失敗しても……結果じゃないんだ。持ち合わせている能力でもないんだ。ただ求められた事に一生懸命になれる人だと思ってる」

 

「一生懸命に……」

 

「雷。お前は今この花に頼られている。お前が居なかったら花を咲かせることが出来ないだろう。だから無垢に全力で一生懸命に頼られている」

 

「……うん」

 

 応えようとしてくれる人、かぁ。

 

 あ、だったら那珂ちゃん今提督に頼られてるんだもん。応えようとしてくれる人だって思ってくれてるのかな?

 

 ……思ってくれてたらいいなぁ。

 

「うん、雷ちゃん! 那珂ちゃんも一生懸命頑張るから! 一緒に頑張ろうっ!」

 

「うん……わかったわ!」

 

 応えられる人になるために。

 

 

 

「こんなの……やって何の意味があるのですか」

 

「はっはー! 電は厳しいなぁ!」

 

 あ、提督ちょっと泣いてる。

 

 那珂ちゃんも直球で言われたらなんだか悲しいよ。

 

 ううん、何でこんな事を言えるようになっちゃったのかを考えると悲しくなる。

 

 だって、そんな事を言ってる電ちゃんがすごく辛そうだもん。

 

「巫山戯ないで欲しいのです。司令官が悪い人じゃなさそうっていうのはわかったのです。ですけど……意味の無いことなんて、やらせないで欲しいのです」

 

 あ、待って待って! 何処行っちゃうの!?

 

 ふいっと背中を電ちゃんは向けるけど。

 

「……意味がないからやるんだよ」

 

「……それこそ意味がわからないのです。電を怒らせたいのですか?」

 

 提督が言葉をかければ、電ちゃんは足を止めてくれた。

 

「別に何だっていいんだ。やりたくねぇけど穴掘ってそれを埋めるの繰り返しみたいなことだって良い。これはな? 意味を見つけるためにやるんだから」

 

「……意味を、見つける?」

 

 そう言えば提督言ってたな。花を育てる事自体に意味はないって。

 

 花を育てたいと思う事に意味があるって。

 

「電。やりたくないならやらんでもいい。前に言った通り自由にしてくれたら良い。海に出ろなんて言わない。けどな」

 

 ――何もしないって、むっちゃくちゃ暇だぞ?

 

 提督は笑ってそう言った。何か心当たりでもあるのかな? 何処かちょっと自虐的だったけど……。

 

「電ちゃん! 花の冠って知ってる?」

 

「……花の冠、なのです?」

 

 あ、その反応は知らないな? ふっふー。

 

「うん。作ってあげるよ! だから――」

 

「この花が咲いたら作ってくれるのですね。わかったのです。……確かに何もしないのは暇なのです」

 

 戻ってきてくれた! 良かったー!

 

 提督? 褒めてくれても良いんだよー? 那珂ちゃんサイコーって言ってくれて良いんだよー?

 

「……サンキュ」

 

「……へへー」

 

 うん! よし! 頑張ろう!

 

 

 

 そうやって私と六駆の皆で花壇弄りは始まった。

 

 提督がなんでこんな事をさせてるのかはわからないけど。

 

 那珂ちゃんの最初の見せ場が海じゃなくてコレだって言うのもよくわからないけど。

 

 綺麗に咲くと良いな、カランコエ。


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