二周目提督がハードモード鎮守府に着任しました   作:ベリーナイスメル/靴下香

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南一号作戦編
鎮守府が形作られてきたようです


 ようやく鎮守府を運営することが出来ている。

 

 そんな風に最近思う。

 いや、もちろん今の今まで運営していなかったのかと言われれば違うんだけどさ。

 

 艦隊、艦娘を選抜して海域へ出撃してもらう。遠征へ向かってもらう。

 

 そう、今にしてようやく選ぶって事が出来るようになったからそんな風に思うんだろう。

 

 実際、今までの事を振り返ってみれば正面海域を突破した時も資材に追い立てられてだったし。突破したと思えば六駆の件、製油所地帯沿岸をなし崩し的に攻略できて。

 基本的にうちの鎮守府は後手に回っていたんだな、なんて感じる。

 

 だからこそ、南一号作戦が発令された時は気張った。

 鳳翔、天龍を筆頭に、皆の協力を得て戦術研究を必死こいてやってみたり。

 うちに戦力が集まるというのなら運用するための資材を集めなければと回収任務に勤しんだり。

 

 大淀と頭を突き合わせては考えた企画書と言うか計画書。

 

 てっきり今回もまた、自分でなんとかしろと言われるもんだと思って入念な準備を進めていたんだけども。

 

 この南一号作戦についての詳細が書かれた電文で無駄に……と言えば聞こえが悪いか。まぁ、心配が無くなった訳で。

 

「すまん、大淀。あれだけ色々考えてくれたのに」

 

「いえ、むしろこうなってくれた分、他のことが進められるというものですよ」

 

 笑ってそう言ってくれる。くぅ天使か。

 

 作戦に使用される資材は大本営、横須賀鎮守府より捻出される。

 

 その一文のおかげで急に余裕が出来た。

 

 急な大盤振る舞いに何か裏があるんじゃないかと疑っていたけど、これは製油所地帯沿岸を攻略出来たからって話だそうで。

 横須賀方面から製油所地帯までの海域にある程度の安全が確保出来たお陰で資材、主に今回は燃料だけどその運搬に海路を使用できることになった。

 陸路と違い、より多くの燃料を運搬でき、また最前線であるこの鎮守府へと持ってきやすい海路。

 聞けば、あの海域が安全だった頃は横須賀方面の鎮守府へ海を使って燃料を運搬していたそうだ。

 

 多分、艦これではそういった機能が自然回復する理由だったのかも知れない、なんてふと思ったり。

 

 そう思えば、うちがあの海域を攻略できたのって日本からしたらすごく大きいことなんじゃねぇのとかも思う。

 今回の作戦上うちに精製される燃料が集まってくる事になってるけどさ。南一号作戦が終われば平時に戻り、各鎮守府に分配されるようになるってことなんだとしたら。

 

 ……あれ? もしかしなくてもすんげぇ功績なんじゃ……。

 

「ですが提督? タンカー護衛任務は……その、本当に第三艦隊の方々で良かったのですか?」

 

「うん? ……あぁ、心配する気持ちはわかるけど。大丈夫だよ、それは大淀もよく知ってるだろう?」

 

「それはそう、なんですけども」

 

 心配なんだな。

 大丈夫、こんな事言ってる俺もすんげー心配してるから。

 

 ここまでの海路にある程度の安全が確保出来たとはいえ、やっぱり深海棲艦の襲撃は見込まれる。

 そのため、燃料を運搬するタンカーを護衛する事。それがうちに求められた任務の一つだった。

 

 そしてそのタンカー護衛任務に出撃させたのがうちの那珂ちゃん率いる第三艦隊。

 

 最初のうちは第二艦隊を護衛の護衛につけようとしていたんだが、やっぱりそうしてしまうと出費が激しく本末転倒。

 何より那珂ちゃんに大丈夫だからと怒られてしまい、今回第三艦隊単隊で初めての出撃となる。

 

 まぁ、演習の様子を見た天龍と鳳翔からお墨付きを貰ったとはいえやっぱり心配なんだよ。

 

 とは言え、だ。

 考えた第三艦隊の運用方法は、先の作戦でもしたように、四十ノットとはっやーい島風に次ぐ三十八ノット(快速)な第六駆逐隊を活かした戦場へのバケツ運搬。

 そして、こういった燃料タンカー船等の護衛任務をしてもらうこと。

 

 だが六駆は海の経験が殆ど無い。謂わば練度のみならず、余裕がまったくない状態。

 以前天龍に相談したのはそんな六駆をどうするかって事で。その答えが夕立と龍田の相手をすることだったりする。

 

 ――深海棲艦の百倍怖いあの二人を相手にしてたら深海棲艦なんて怖いとも思わねぇさ。

 

 とは天龍談。

 

 六駆が海に対して持っていたものの正体の一つ。それは恐怖だ。

 自分のせいで誰かが傷ついたらどうしよう。そういう思いで足を竦ませてしまう。

 

 だから平たく言ってしまえば怖がる余裕すら無くしてやろうって事で。それは見事に実を結んだ。

 今や、出撃すること自体に恐怖を覚えたりはしてないみたいだけど……それでも――

 

「!!」

 

「あっ」

 

 音を立てた無線機の応答ボタンに指先をシューッ!!

 

「もしもし那珂か大丈夫か誰か怪我してないかもしかして危機か今すぐ救援指示をだしたほうがいいかそれとも――」

 

「えーっと……間違えました?」

 

 切れたっ!! なんてことだっ! 

 

「じゃねぇ!! ――もしもし? 那珂ちゃん? 俺だよ俺」

 

「……那珂ちゃんまだ子供産んでませんっ!!」

 

 あぁん! 切れぇた!

 

 いや、まだだっ! キレテナーイ!

 

「はい、こちら提督。那珂? 正直すまんかった。どうした?」

 

「詐欺じゃない?」

 

「サギジャナーイ!」

 

「ふぅ……那珂ちゃんびっくりしました。えっと、もうすぐ帰投するよー。タンカーから燃料の積み下ろし手伝って欲しいみたいだからよろしくねー」

 

 そうか! もうすぐ帰ってくるか!!

 

「大淀っ! ちょっと行ってくる!!」

 

「えっ!? あの!? 提督!?」

 

 止めてくれるな大淀よっ! 電文が届いた様な気がするし、無線機もまだ切って無いかも知れないけど。

 

 俺は今、風になる……っ! 風になるんだっ! 俺が疾走ればそれが風になる……俺は……止まらねぇからよっ!! 止めるんじゃねぇぞっ!

 

 

 

「暁ぃ!!」

 

「あ、司令官! 今戻った……わっきゃあああ!?」

 

 うおおおお!! 暁! 無事か!? 無事なんだな!?

 いやっほおおおおおおお!! 超エキサイティン!! 何時もより多く回してやるぜぇええええ!!

 

「しれ、しれーかんっ!? ちょ、ちょっと……目が、めがぁ……」

 

「暁ちゃんを放すのですっ!!」

 

「ぐほぅっ!?」

 

 電さん……。

 主砲ぶっぱやめて頂けたのは嬉しいんですが……そこはあかん。あかんこれ。

 

「はう、あう、あー……」

 

「あ、暁? 大丈夫? うわ、目がぐるぐるしてる……」

 

「ちょっと司令官っ! そんなんじゃ駄目よっ! 暁をぐるぐるしちゃう前にちゃんとやることがあるでしょっ!」

 

 お、おう……すまん、いやほんとすまんかった。

 

 腰を叩きながらなんとか姿勢を正してみれば、そこには呆れたような那珂ちゃんの顔。

 

「提督……流石の那珂ちゃんも言葉がないかなー?」

 

「う、うぐ……いやまぁなんだ……心配だったもんでつい」

 

 そう言ってみれば大げさに肩を竦める那珂ちゃん。くそう。

 

「と、とりあえず。報告貰っていいか? 見た所……うん、皆無事だな。良かった」

 

「はーい。第三艦隊、全員小破未満で只今帰投しましたっ! 途中少数の深海棲艦と会敵はしたけど、作戦は成功。見ての通りタンカーも無事だよっ!」

 

「よくやったぁあ!!」

 

「えっ? あっ……」

 

 ひゃっはーっ! やっぱり我慢できねぇっ!

 目を回した暁の背中を擦ってる響をがしっとな! そぉれぐるぐるー!!

 

「こ、これは……ハラショー……!」

 

「ふはは! 良いぞぉ! 実にハラショーだ!」

 

 ったく駆逐艦は最高だぜぇ!! 

 

「……那珂ちゃん」

 

「……何かなー? 電ちゃん」

 

「やっぱり撃って良いのです?」

 

「良いかも知れないねぇ……」

 

 おお? 次は電ちゃんの番か? 良かろう! 本懐である! 望むところだ!

 

「ち、近寄らないでほしいのですっ!」

 

「ふははっ! 嫌よ嫌よも好きの内という言葉があってだなぁ!!」

 

 主砲を構えた電ににじり寄る。

 あぁ……今の俺……すっごくキモいんだろうなぁ……!!

 これも艦娘って奴が悪いんだっ! 俺は悪くねぇ!!

 

「それよりもー提督? 燃料積み下ろしは誰がしてくれるのかなー?」

 

「……あ」

 

 あーあー……うん、積み下ろし作業ね。うん。確かに言ってたね。

 

 忘れてたね。

 

「おーい! 提督! 大淀に言われて積み下ろしを手伝いに来たぜー!」

 

 大淀、お前が神か。

 

「とのことだ、那珂。決して忘れてなんかいないぞ?」

 

「う、うん。えっとー……そういう事にしておくねー?」

 

「……絶対忘れてたのです」

 

 ははは、なんのことかなー?

 っと、とりあえず。

 

「天龍ー! あっちにつけてるみたいだから、行って船員さんの指示に従ってくれー!」

 

「了解ー! すぐに龍田達も来るー!」

 

「おうっ! 俺もすぐに行くー!」

 

 そう言ってみれば天龍は手を振ってタンカーの下へ走っていってくれた。

 

 うん、落ち着こう。

 

「ふぅ……。それじゃ、第三艦隊の皆は軽傷だけど順次入渠していってくれ、報告書はそれからでいい。……ありがとう、お疲れ様」

 

「はぁい、了解ですっ!」

 

「ま、まだ目が回ってるぅ……」

 

「ふふっ! 司令官! これからも頼りにしてくれていいからねっ!」

 

「……は、はら……しょー」

 

「いい加減響ちゃんを放すのですっ!」

 

 あ、こりゃまた失礼。

 

 

 

「作戦成功おめでとうございます、提督」

 

「言ったろ? 大丈夫だって」

 

「ええ、はい。……まぁ……いえ、何も言いませんとも、はい」

 

「いや、ちゃんと言ったほうが良いぜ? 鳳翔さん」

 

「いえいえ天龍さん。目は口ほどに物を言うというものです」

 

「あ、あははー……」

 

 何かな君たちその目は? 実に提督らしかっただろう?

 

 ……そうだと言ってよ神様。

 

「げふん。ともあれ、報告書読んだか?」

 

 夜、那珂が持ってきてくれた報告書。

 それを各艦隊旗艦である天龍、鳳翔に読んでもらった後の会議。

 

「あぁ、第三艦隊も立派になったもんだ」

 

「はい。会敵したのがはぐれであろうと、しっかり戦えた様で何よりですね」

 

「うん、皆すっごい頑張ってくれたんだよっ!」

 

 護衛中の会敵が二回。

 いずれもはぐれ深海棲艦だったようで、駆逐ロ級三隻の隊と駆逐ロ級エリートが二隻の隊。

 そのどちらに対しても目立った損傷なく護衛任務を果たせす事が出来たようだ。

 

「六駆の様子はどうだった?」

 

「そうだね。会敵した瞬間はちょっと顔が強張ってたけど……夕立ちゃんや龍田さんより全然怖くないよって言ったら笑ってたよ?」

 

「く……ははは! ほらな? 提督! 言った通りだろ?」

 

「あぁ、御見逸れしたよ天龍」

 

 うん、まぁ確かに効果的だったみたいだけど。

 

 夕立はともかく、龍田には聞かせられんなぁ……これ。

 

「うん、被弾率は全然だったよ。けど……」

 

「命中率、ですか」

 

「うん……那珂ちゃんもだけどね。やっぱり中々当てるのは出来なかったな、提督の指示通り護衛自体はしっかり出来たんだけど……結局相手が諦めて撤退するって形になって、撃沈は出来なかったんだー」

 

 ちょっと落ち込む那珂だけども。

 

 いや、メインの目的である護衛が出来たなら万々歳だしなぁ。

 それに、だ。

 

「正直、そこまで完璧に戦闘をこなされたら逆に驚くって話だ」

 

「はい、天龍さんの言う通りです。護衛任務程度であれば大丈夫だと思っていましたが、本格的な戦闘となると……まだ少し心配が残りますね。実際緊急出動(スクランブル)に備えてはいましたし」

 

「だよね。那珂ちゃんもまだちゃんとした相手と戦えるとは思えないかなぁ」

 

 いやいや、何をおっしゃいますやら皆さん。

 

「いや、それで良いんだ。というよりは、だ。相手を撃破せずとも退けられたという事実。こっちの方が大きい」

 

「あ……言われてみればそうですね。那珂さん、どうやって相手を諦めさせたんですか?」

 

「え? えっとー……何で諦めたかは分からないけどー。やったのは、とことん相手の砲撃を邪魔するように砲撃したり、飛んできた砲撃からタンカーを庇ったり……だけど」

 

 うっし、見込み通り。

 

「……なるほど、提督。オレにもようやくわかったよ」

 

「はい。そういう事でしたか」

 

「まぁ、な」

 

「え? え?」

 

 困惑する那珂ちゃんを余所に頷く天龍と鳳翔。

 

 皮肉なもんで、六駆と大淀がここに来ると知らせた電文で閃いた事。

 それが護衛、防衛のエキスパートとして第三艦隊を運用するという物だった。

 

 うちの鎮守府だけで言うならば、前線を第一艦隊、第二艦隊。そしてそれを支える第三艦隊といったイメージになるか。

 

「あの時確信したんだ。ダメコンが無いここでも、似たような仕組みを作ることは出来るって」

 

「ダメコン? ダメージコントロール、でしょうか?」

 

「いや、まぁダメコンは良いか……。高速修復材を戦場で使えるってのはかなり大きい。それこそ精神的な部分や燃料、弾薬つった資材の問題を除けば継戦能力を飛躍的に高める手段になる」

 

「えっとー……それをする専門部隊が那珂ちゃん達って事かな?」

 

「あぁ。もちろん、それ以外の運用方法も考えている。けど、当面はそういった運用がメインだ。言い方はアレだが、これからしばらく続くだろうタンカー護衛任務でしっかり護衛技術を磨いて欲しい」

 

 第三艦隊はうちの鎮守府で一番足回りが良い。

 六駆はもちろん那珂だってそうだ。

 

 艦これでは速度は高速か低速としか表現されていなかったが、実際に目の当たりにすれば結構違うもので。

 例えば夕立は三十四ノットの速力を持つが、六駆は三十八ノット。那珂にしても三十五、三ノットと、夕立や時雨を超える。

 

 要するに第一、第二艦隊に数字上ではあるが、確実に追いつくのだ。

 逆に言えば、誰も第三艦隊に追いつけない。だからこそこの役目は第三艦隊にしかできない。

 

「うん、わかったっ! 見せ場がちょっと地味かも知れないけどー……アイドルだって下積みが大事だもんねっ!」

 

「おう、さっきも言ったけどちゃんとアイドルらしい見せ場は考えてるから安心してくれな?」

 

「はぁい! 那珂ちゃん……ううん、フラワーズ、がんばりまっす!」

 

 よしよし、腐らず頑張ってくれそうだな。

 

「天龍、鳳翔もそのつもりで頼む。ただ、高速修復材があるからと言って変に慢心するなよ?」

 

「へっ! 誰に言ってやがるっ!」

 

「ええ、もちろんです」

 

 ドヤ顔天龍も可愛いし、むんっと握りこぶしを作って気合を入れる鳳翔も可愛い。

 

 はぁ、可愛い。

 

 っと、そうだ。まだ連絡があるんだった。

 

「それと、だ。明日、うちに横須賀鎮守府から南一号作戦の先遣隊が来る予定になっている」

 

「お……ついに、か」

 

「あぁ、うちの状態とか海域の状態を確認って名目だな」

 

 うちに着任するって訳じゃないのが残念だけど。

 まぁいい加減余所から来て着任するってのがおかしいと思うべきなんだろうな。

 

「提督? 横須賀鎮守府から誰が来るのでしょう?」

 

「……金剛型戦艦、四隻」

 

「戦艦四隻!? す、すごいねぇ……!」

 

 あぁ、凄いな。

 

 ただ……。

 

「提督……?」

 

「あぁ、いや……」

 

 鳳翔が心配そうな顔を向けてくる。

 天龍も俺と同じ様な事を考えているのだろうか、複雑な顔だ。

 

「今度は……らしい艦娘であってほしい。ってな」

 

 そう。

 俺が知っている提督ラブな金剛。金剛お姉さまラブな比叡。いつも大丈夫な榛名。ちょっと抜けてる頭脳派霧島。

 

 そんな艦娘であるように。そう願わずにはいられない。

 

「だいじょーぶですっ!」

 

「那珂?」

 

「大丈夫だよっ! 提督っ!」

 

 にっこにこと笑顔を向けてくれる那珂ちゃん。

 

 ……不思議とほんとに大丈夫な気がしてくる。

 

「だってね、提督」

 

「うん?」

 

「どんな子が来ても、きっと笑顔になってくれるからっ!」

 

 ……。

 

 あぁ、そうだな。そうだった。

 

「那珂」

 

「はいっ!」

 

「ありがとな」

 

 那珂の頭を撫でる。

 アイドルにお触り厳禁かな? なんて思ったがくすぐったそうに受け入れてくれる。

 

「よっし! そうと決まれば、歓迎会の計画立てるぞっ!」

 

「了解っ!」

 

 誰が来ても笑顔になる。そんな鎮守府にする。そう決めたんだからな。

 

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