絶対零度の熱き漢   作:ケツアゴ

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第十三話

 梅雨入り間近、球技大会の開催が迫り各部活で部対抗の球技の練習に励む姿が所々で見られる中、駒王学園の制服を身に纏ったレイヴェルとアーシアの姿があった。

 

「アーシア、分かってるすね? 編入する際の設定は……忘れたっす!」

 

「いや、堂々と言う事ではないですわよ? 私は社長令嬢で、アーシアはお付きの使用人。留学の際にサポートとしてついて来た、ですわ。……よく高校生レベルの日本語の読み書きを学べましたわね」

 

 ソーナが勉強の指導をしていたと思いだし、どれだけ苦労したのだろうと尊敬の念すら浮かべるレイヴェル。その横に立つアーシアは何と言っていいのか困った様子だ。

 

「だ、大丈夫です、ジェラさん。他に良いところが沢山有りますし、ちょっと頭を使うのが苦手でも……」

 

「フォローになってませんわ。……まあ、良いでしょう。二人共、眷属として今後とも宜しく頼みますわ」

 

「「はい!」」

 

 二人の返事に嬉しそうに微笑むレイヴェル。彼女にとって一番目と二番目の眷属となった二人は特別な存在だった……。

 

(それにしても、まさかアーシアが眷属にして欲しいと言ってくるなんて……)

 

 憧れていた学校を見ながら目を輝かせるアーシアを見ながらレイヴェルは先程の事を思い出していた……。

 

 

 

 

「私の眷属に? 確かに貴重な能力ですし、ジェラから人柄は耳にしていますが……」

 

 数日前、ソーナを通して訪ねて来たアーシアの頼みにレイヴェルは紅茶を飲む手を止める。敬虔な信者である彼女が、というよりも、何故自分に、という疑問だ。当然、アーシアもそれは理解している様子だった。

 

「……ソーナさんの夢の役に私が立てるか疑問ですから。私以外には出来る事で他人に教えられるほど得意な事はないですし、それにジェラさんもレイヴェルさんの眷属になると聞いて……」

 

「彼と一緒にいたいという事ですね? ……好きですの?」

 

「はい。大切な最初のお友達ですから」

 

 少し警戒を感じさせる口調だが、アーシアの表情を見て杞憂だと悟る。恥ずかしいと感じている様子はなかった。本当に唯の友人としか思っていない顔だ。アーシアは気付かない……がっ、目ざとく気付いた者がいた。

 

「ケケケケ。おいおい、嬢ちゃんアンタもしかして……」

 

「五月蠅いですわよ、ラタトクス。大体、貴方はジェラの使い魔なのに鞍替えですの?」

 

 アーシアの肩に乗って揶揄する様なラタトクスにレイヴェルは静かに視線を向ける。僅かに警戒しているのはジェラを騙して金を巻き上げているから嫌っているのかも知れないのも関わっているだろう。

 

「いや? オレは彼奴の使い魔だ。命の恩人で友人だ。誰が何と言おうともな。それは誰にも否定させねぇ。……信じるかはそっち次第だがな」

 

「……そう。まあ、良しとしましょう。では、早速手続きをしますわね。ジェラにも教えに行かないと……」

 

 確か中庭で訓練している筈だと顔を向ければ宙に浮く巨石。唖然として見ているとフワフワと浮いて空の彼方へと消え去って行く。彼処だと気付いて向かえば既に一緒にいるはずのカーラマインの姿がなかった。

 

「……さっきの岩は何だったのでしょうか?」

 

「ああ、恐らくジェラの母親でお母様専属の護衛部隊隊長のジェネットですわ。躾の一環でしょうね」

 

「あれで躾なんですか!?」

 

「ええ、躾です」

 

 改めてアーシアは思う。悪魔の世界は自分の知る常識とは余りに違いすぎる、と。他の悪魔が知れば抗議する事だろう……。

 

 

 

 

「……よく眠っていますわね」

 

 羽毛布団でスヤスヤと眠るジェラの頬を指で突っつきながら顔を眺めるレイヴェルの横でアーシアもつられる様にウトウトし始める。最近やっている事による疲労から睡魔に襲われ眠ったのを確かめたレイヴェルは左右を更に見た彼女はそっと手を伸ばして枕を取ると自分の膝に乗せた。

 

 

「……貴方の事が好きだと言ったら驚くのかしら? まあ、私から告白などしませんが。絶対に振り向かせて貴方から告白させてみせますわ」

 

 人差し指を自分の唇に当て、次にジェラの唇にそっと当てて微笑むレイヴェル。誰も見ていない、それを確かめたからこそ出来たのだろう。耳まで真っ赤になっていた。

 

 

 

 

(……うむ。まあ、この小娘ならジェラを任せても良いか? まあ、今後の観察次第だな)

 

 尚、神器に宿るアルビオンも歴代所有者もアーシアのポケットの中のラタトクスもしっかり目撃していたのは言うまでもないし、一時間後に気付く。

 

 

 

 

 

 

 

「しっかし驚いたっすよ。膝枕されて嬉しかったすけど、どうしてっす?」

 

「……まあ、眷属との触れ合いと思って下さいまし。参考になりそうなのはライザーお兄様くらいですし。他のお兄様達は……うっかり忘れていましたわ」

 

 ジェラの発言にデリカシーの欠如を感じながら顔を背け、適当な誤魔化しをするが本人も拙いと思っていた。どうにか誤魔化そうと考えるが、それよりも前に二人が口を開いた。

 

「そうなんですか? じゃあ、今度私もしてあげた方が良いのでしょうか?」

 

「いやいや、こう言うのは友達同士ではしないもんすよ? でもラッキーすよ。惚れた相手に膝枕して貰えたんすから」

 

「……あの、ジェラ。私のことを好きだとか惚れてるとか聞こえたのですが……」

 

 レイヴェルは我が耳を疑う。今、あっさりと告白した気がしたが間違いだろうと自分に言い聞かせる。まさか先程の言葉の通りになるなど信じられなかった。

 

「言ったっすよ! 可愛らしい容姿も、役割に直向きな所も、普段強気なのにいざという時に不安になる所も、全部ひっくるめて惚れてるっす!」

 

「あ、あわわわっ!?」

 

 だが、聞き間違いでも言い方が紛らわしい訳でもなく、一切ムードを考えない告白が直球で叩き込まれる。此処まで行けば取り繕いなどする余裕もないレイヴェルであった。故に自爆する。

 

 

 

「ちょ、ちょっとっ! 両想いなのは嬉しいですけど、もう少し告白の仕方をお考えなさい! 全く、貴方は……あっ」

 

「両想いだったんすかっ!? 最高に嬉しいっす!」

 

 思わず口から飛び出た言葉に返ってきたのは一切裏表を感じない笑顔。レイヴェルが好きになった表情だ。この瞬間、胸が高鳴ったが、やっぱりムードは感じられなかった。当然不満であり、少しだけ腹が立ってきた。

 

「……学校周辺の見学が終わったらお茶に付き合いなさい。その後でちゃんと雰囲気を考えて告白なさい。命令ですからね!」

 

 後から考えれば自分でも何を言っているのかと羞恥心がこみ上げてくる台詞だが、この時には余裕が無いのだから仕方がない。そして先程から横で見ているだけだったアーシアはというと……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お二人共おめでとうございます! でもジェラさん、さっきの告白は私から見てもあり得ませんからね!」

 

 ジェラの友人として普通に喜んだ上で女としての意見を言っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして学校周辺の見学も終わり、気を利かしたアーシアが用事もあるからと何時もの様に姿を早々に消して二人がデートに出掛けたのだが、人通りのない場所をジェラから躊躇無く手を繋いで来た時、襲撃者が現れる。

 

 

「悪魔ちゃんに天誅あれっ!」

 

 聖剣を振り上げたフリードが頭上より襲い掛かって来た。




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