絶対零度の熱き漢   作:ケツアゴ

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使い魔今回登場です


第五話

「あー、自分はナースっすかね? それか秘書さんっす。献身的に仕事に励む姿からのエロとかギャップがたまらないっすよ」

 

 悪魔は夜こそが真骨頂といえど、基本的には朝起きて夜寝るという人と同じ生活を送っている。なので夜も更けて静まった頃、男だけで集まった場で猥談が始まっても不思議ではなかった。

 

「あと、恥ずかしがりながらも一枚一枚自分で脱いでいくとか最高っすねっ! それとモロ見えよりもチラッと見える方が好きっすっ!」

 

「馬鹿、声が大きい」

 

 何時もは大声が多いジェラも声を潜めながら好みのシチュエーションや服装を語っていく。途中熱が入りすぎて声が大きくなるも直ぐに注意されて声のトーンを落とした。

 

「……要するにお前は下手に露出した格好よりきっちり着込んだ姿の方が好みで、一方的なのより互いに奉仕する方が興奮するのか。……今度、そういう店に連れて行ってやろうか? 金ないから自腹だが」

 

「いやいや、悪魔が未成年とか何とか言うのもなんっすけど、高校生相手に何言ってるんっすか……。まあ、興味がなくはないけど、自分は遠慮するっすよ」

 

「ははは。此奴、変なところで理想主義だからな。ヤるなら惚れた相手とって所だろ。ってか、お前は通い過ぎなんだよ。ウチは次期当主が真面目なソーナお嬢様何だし、少しは控えとけ」

 

 ジェラ以外の使用人達は酒が入っているのか非常に陽気な雰囲気で話し続ける。そんな中、話題は猥談からジェラの幼少期に移った。

 

「確か十二年前くらいだったか? 離婚して家追い出された親父さんがお前連れて伝手頼って屋敷に雇われたの」

 

「母ちゃん怖かったからっすねっ! んで、引っ越したのか音信不通になってた姉ちゃんと仕事先で再会したのが三年前っすよ。……ぷぷっ。いや、この前アルバムを借りたんっすけど、俺と一緒に写した写真のページに二十点のテストが挟まってて。俺なら三十五点は取れたっす」

 

「そりゃ酷い。色んな意味で」

 

 勿論百点満点のテストでの話で、非常にレベルの低い争いだ。ただ、家族の話をする時の彼は非常に楽しそうだったので皆は思ったことを口には出さなかった。此奴、どうして今の高校に合格して進級出来たのだろうか、と。その背景には彼を心配するソーナの並々ならぬ努力があるのだが、今後詳しく触れるだろう。

 

 

「そーいや、あの兄弟の生活を世話してる匙って小僧、絶対にお嬢様に気があるよな」

 

「かかっ! 許婚が居るし、無理だけどな。出来婚なら……無理か。あのお嬢様が婚前交渉、しかも出来にくい悪魔が孕むまでとか不可能だもんな。……如何にも貴族のボンボンって感じの奴だったから破談になるのは賛成だがよ」

 

「よせよせ、聞かれたら面倒だ。同意だがな。小僧も厄介な恋をしたもんだ。今は暢気に寝てるだろうが、せめて夢の中だけでもくっ付ければ良いよな」

 

 そろそろ宴もたけなわとばかりに解散を始める男達。何人かは飲み足りないのか酒とツマミを持って部屋へと向かう中、ジェラは重要な事を思い出した。

 

 

「あっ! 宿題残ってるっすっ!」

 

『……だから余裕のある内に終わらせろと何度も……さっさとやれ。終わらせるまで歴代所有者による乱闘は禁止だ』

 

 まるで宿題が終わるまでゲームを禁止する母親のようにジェラを叱るアルビオン。最近、少し丸くなったと所有者達に指摘されるのが目下の悩みであった……。

 

 

 

 

 

 

 

「今だっ!」

 

 匙がフリードの右腕にくっつけたラインで力を吸収しつつ引っ張れば脱力感も有ってか体が傾く。合図を受けた一誠は戦闘経験など当然皆無なことも有ってか戸惑いを見せながらも殴りかかった。今の彼の腕に出現しているのは龍の腕と呼ばれる神器。まだ未覚醒な為に本来の力と違い一度だけ能力を倍にするのみであるが、其れほど鍛えていないとはいえ悪魔の力が倍になれば強力だ。

 

 顔面めがけて繰り出される拳。先ずは二人が先制……とは行かなかった。

 

「喰らうかよ、素人がぁっ!!」

 

 崩れた体勢から無理矢理身体を捻ったフリードは光の弾丸が込められた銃を一誠に発砲、光の剣を匙に投擲した。発砲音もなく発射された弾丸は脇腹に命中して焼けるような痛みを一誠に与え、横回転しながら飛んでいく光の剣はフリードの腕にくっついたラインが伸びる腕を深く切り裂く。一誠と匙は悲鳴を上げながら苦痛に顔を歪ませ、神器も消え去った。

 

 

「お前ら甘いんだよ。ちっとばっかし強くなった程度でトーシローが戦士に勝てるわけねぇだろうが」

 

 当然といえば当然の帰結だった。悪魔になって上昇した身体能力が更に倍になった一誠に、ジェラとの修行によって神器が変化した匙。これが一般的に強い相手なら結果は違ったが、相手はそんな力の持ち主相手に戦ってきた。オーバーワークによる疲労や深夜故の眠気が無く万全だったとしても勝てる可能性は極めて低かったのだ。

 

 淡々と当然のことを諭すように二人に話しかけるフリードが匙へと近寄っていく。悪魔の弱点である光力を脇腹に喰らった一誠と腕を怪我しただけの匙。狙うのは当然後者だ。

 

「くそっ! こんな所で死ねるかよっ!」

 

 腕の痛みに耐えながらフリードに殴りかかるも匙の動きはぎこちなく、大振りの拳はフリードに易々と避けられ無防備な腹部に拳が入り、怯んだ所を足を払われて転んだ所を腕めがけて蹴りが叩き込まれた。

 

「ぎゃっ!?」

 

「さてと……悪魔の味方する悪い人間は罰を与えなきゃなっと」

 

 逃がさないためか傷を踏みつけて押さえ込み、もう一本の光の剣を取り出すフリード。匙の首筋めがけて剣を突き出し、途中で切っ先を背後に向ければ忍び寄ろうとしていた一誠の足に深々と突き刺さった。太股を貫通した刃に焼かれて煙が立ち上り、一誠は悲鳴すら上げられない。

 

「だから素人が何しようが通じるかっての。バレバレだって。まあ、君から死にたいってんなら……ばいちゃっ!」

 

 最後に再び狂った態度で銃を一誠の眉間に押し当てる。後は引き金を引けば終わりだが、不意に投擲された小瓶を迎撃する為にその瞬間は来なかった。フリードも直前まで気付かなかった不意打ちで投げられた小瓶は小サイズのペットボトル程であり、空中で破壊され中身が混ざった時、フリードは咄嗟に口と鼻を押さえて飛び退いた。

 

 

「ぐぁっ! 誰だ、妙なもん投げつけやがって。……覚えてろっ!」

 

 周囲を見ても人影はなく、今すべきなのは撤退とばかりにフリードは撤退を開始する。何が起きたのかと呆然とする一誠達の耳に聞き慣れない声が届いた。

 

 

 

 

「ありゃプロだな。不確定要素が有れば即座に撤退とか下手に強いヤローより厄介だぜ。……おい、お前達。そこから離れた方が良いぜ? 混ぜるな危険って薬品が混ざってるからな」

 

 

 先に発見できたのは夜目が利く一誠だ。声のする方向、ゴミ箱の影に視線を向ければ匙も気付く。声の主は不機嫌そうにしながら物陰から姿を現した。

 

 

 

 

 

 

 

「オレは命の恩人だし、今後はお前らオレの舎弟な。取り敢えず地面に額こすりつけて礼を言え。デカいからって見下ろしてんじゃねぇよ」

 

 声の主の正体は非常に偉そうで態度が悪い栗鼠。まるで絵本の世界の住人のような存在が二人を見上げ不満そうに鼻を鳴らしていた……。

 

 

 




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