絶対零度の熱き漢   作:ケツアゴ

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オーフィスは蛇入りディオドラに一誠が勝てないって思ってた。最上級クラスの黒歌の三種類ミックス攻撃は正面から食らっても平気だった一誠。

強化若手貴族>特殊系の最上級悪魔 って事だろうか……? 実際、強化した攻撃で鎧有りでダメージ有るし




前半推奨BGM タカイトコロ


第八話

「さあ! 目標まで後少しッす! まだっ! そう、まだまだやれる筈っす! 限界とはっ! 乗り越えるために有るのだからっ!!」

 

 この度、匙は無事にソーナの兵士として転生を果たした。事前に神器が変化し、駒の消費数を上昇させる為のトレーニングの甲斐もあって六個を消費したので恩恵も大きい。つまり、その分トレーニングはいっそうハードになっていた。重りを背負ってのトライアスロン、人口減少によって軍団は解体されるも残っている警備隊などの兵士との組み手、現在行っている腕立て伏せなどの筋トレ、等々。

 

「ぐぎぎぎぎっ! 438,439,440……」

 

 目標回数は五百回であり、到達が見えると同時に疲労もピークに差し掛かる。此処まで来た時、人は(彼は悪魔だが)誘惑の囁きを耳にするのだ。もう十分頑張った、きりの良い四百五十で良いじゃないか、と。実際、匙も心の奥から聞こえる誘惑に流されそうになるが、そのタイミングでジェラの檄が飛んでくる。耳が痛くなるほどの声量は誘惑の囁き等吹き飛ばし活力を湧かせてくれていた。

 

「夢を叶える最大の敵は自分自身っ! 次頑張ると言う奴は次も次って言うっす! 今頑張れっ! 思い出せっ! 自分が何故頑張っているのかをっ!!」

 

 匙の背中には重りとして分厚い氷塊が乗っている。台を挟んでいるからか冷たさは感じないが、百回ごとに一個二十キロはありそうな氷塊が追加されていき、最初から乗っているのと合わせて現在百キロの重りを乗せてのトレーニングの真っ最中。そして、腕立て伏せならぬ片手逆立ち腕立て伏せをしているジェラは足の裏でバランスを取りながら匙の背中に乗った氷塊の十倍の大きさ、推定千倍の重量の氷塊を乗せて居るではないか。

 

「俺はもっと強くなるっ! 期待してくれる人の為っ! 鍛えてくれた人の為っ! 何より自分の夢の為にも立ち止まる訳にはいかないんっす!!」

 

 当然、ジェラにも疲労の色は浮かんでいる。彼の回数も匙の十倍の五千が目標であり、此処まで来ると多少ふらつきさえ見えてくる。汗でビッショリの身体を奮い立たせ猛進する彼の姿を見せられれば甘えてなど居られないと匙も気合いを入れて励んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

「相変わらず熱いよね、ジェラ君。一昔前のスポ根漫画の主人公みたいでさ。あっ! そういえば前に好みは泥臭いタイプって聞いたけどもしかして……」

 

「うーん。彼の場合、男とか女とか関係無く付き合える友人って気がしてね。どうもそんな目で見られない。実際、体育会系が好きって女子も彼は範疇外とする者が多いそうだ」

 

 そんな二人の姿を見ながらガールズトークに花を咲かせる他の眷属達だが休んでいる訳ではない。風や水で自分が乗った板を持ち上げて落ちないようにしているのだ。ジェラの影響も有ってか彼女達もトレーニングに熱を入れており、戦車や騎士の駒で転生した前衛組は筋トレに重点を置いた為か力こぶが出来たと少し落ち込んでいた。

 

 

 

 

 

「ジェラさん、お疲れ様です! 皆さんもお疲れ様でした!」

 

「ありがとうっす、アーシアさん!」

 

 トレーニングが終了して汗だくのジェラにタオルを差し出したのはアーシアだ。あの後、彼女の処遇でリアスとソーナは頭を悩ませた。存命である以上は転生悪魔にするには本人の意思を尊重したいが、信仰心が有るので難しい。だが、ディオドラが狙っているので放逐も出来なかった。

 

 

「……恐らく、彼女を浚いに行って怪我をしたのでしょう」

 

「聖女が好みの貴族の子息が教会の陣地にいるのだからそうでしょうね」

 

 彼の性癖をラタトクスから聞かされた二人は可能性が高いとされる予想が気に入らないと彼の利益に繋がりそうな真似をしない事にし、取り合えず保留として表向きは眷属候補として保護する事に決定した。ジェラと仲良くなった事や医療が発達している事から回復系の神器を持つシトリー領で預かり、今は道具で解決出来ない文字の読み書きの勉強をしながら高校に通う為の準備を進めていた。

 

 

 

「ジェラさん。編入試験の模擬試験も順調ですし、もうすぐ同じ学校に通えますね! 私、ずっと憧れていたんです」

 

「そりゃ幸いっす。俺も師匠から夢の中まで使って勉強させられたっすからね。アーシアさんは良い子っすから直ぐに友達が出来るっすよ」

 

 ニカッと笑いながら親指を立てるジェラに釣られて笑ってしまうアーシア。そんな中、彼女の頭の上に乗って寝ていたラタトクスが目を覚ました。

 

「俺の金がっ! ……夢か。札束で作った家が火事になるとか悪夢だったぜ……」

 

「もう。相変わらずお金が好きですね、ラタトクスちゃ……君は」

 

「そう! 小さいからって年上をちゃん付けで呼ぶなよ、アーシア。お前は聖女でもなんでもねぇ普通の小娘なんだからな!」

 

「……はい! 気をつけます」

 

 ラタトクスの悪態にも嬉しそうに返事を返すアーシア。普通の女の子扱いされるのが嬉しかったらしい彼女だが、ふと何かを思い出した様子だ。

 

 

「あっ! 先程ジェラさんのお姉さんって名乗る方から電話がありましたよ。放課後の時間帯に人間界のお前の学校に行くから、ライザー様の用事が終わったらショッピングの案内と荷物持ちをする約束を忘れるなって……」

 

「……あっ。忘れてたっす……」

 

 昨日、カーラマインからだいたいの時間を指定されていたジェラだが、忘却して今はその時間が目前。ボスと舎弟に近い姉弟関係ではギリギリに行っては許されず、そもそも氷と風以外の形で魔力を使えないジェラは特別な魔法陣を必要とする。本日、帰宅後に調子が悪いからと検査中の魔法陣だ。

 

 

 

 

「え、えっと! 怪我をしても私が癒しますから任せて下さい!」

 

「うっす! やっぱ持つべきモノは友達っす!!」

 

「はい! 私はジェラさんのお友達です!」

 

 ジェラの言葉に心底嬉しそうなアーシア。ソーナの眷属の女子達とも仲が良い彼女だが、ジェラと一番仲良くしていた。今もジェラに教わった様に差し出された拳に拳を軽くぶつけているが、後で知ったソーナに学校ではやらないようにと注意され、ジェラは怒られる。

 

 

 

 

 

 

 

「遅いっ!! 姉を待たせるとは何事だっ!!」

 

「姉ちゃん、勘弁っすっ!!」

 

 駒王学園の校門前、まだ残っていた生徒が帰宅する中、腕を組んで不機嫌を露わにしたカーラマインに対して姿を見るなり土下座をしたジェラ。何事かと視線を向けられるもジェラだと分かると特に問題はないだろうと去っていく。そんな中、不機嫌なままのカーラマインの背後から二人に声を掛ける者が居た。

 

 

 

 

 

 

 

「ほら、その程度になさい、カーラマイン。ジェラも早く頭を上げて街を案内して下さいな。……取り敢えずコンビニという所に行ってみたいですわ」

 

 レイヴェルは優雅に微笑みながらカーラマインを諫め、ジェラにエスコートしろとばかりに手を差し出した……。




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