ストライクウィッチーズの世界に転生して人型ロボットを造って乗る男の話。 作:メガテニスト(偽)
俺たちが前線に送られてからしばらくの時が経った。
もう何度も戦闘を経験した。
ここ最近は敵の活動が活発になり、怪異との衝突も多くなってきた。
俺たちは最前線にいるため自然と戦闘回数も多くなった。
航空ウィッチの制空援護任務で助けられたことも何度も。妹とその教え子もウラル方面に来てると聞いたのでもしかしたらあれは妹達だったかもしれない。
俺たちの所属している中隊の光武による功績を認められて、光武は増産された。とはいっても三体だけだが。成果を認められれば段階的に数を増やす予定らしい。今回の増産分も小隊を組んで俺たちの中隊に
入る。光武の中隊での運用を試験するらしい。
塹壕に身を隠しながら爆撃が去るのを待つ。
発見が遅れたために航空支援要請が遅れてしまい、爆撃が止むまでこうやって身を隠すしかない。
「ああもう!うざったいわねえあの爆撃機ども!」
「愚痴ってもしょうがないわよ。それより航空支援はまだかしら?」
「生き残りたかったら無駄口叩いてないで敵を射ち殺しなさい。
次!二時の方角距離500!続いて十一時の方角距離100!」
「了解!」
「了解!」
爆撃が一瞬止んだ隙をついて塹壕から顔を出して指定された方向へと砲撃する。あらかじめ狙いはつけているのであとは微調整して放つ。
小隊の他の人員はもう一つの指定された敵を倒す。
砲の射程距離の違いを鑑みて遠距離の優先目標は光武が。
陸戦ウィッチは近距離の優先目標を撃破するようにしている。
敵を倒すと、身を乗り出したために敵に狙われる。慌てて塹壕の中に身を引っ込めるとまた爆弾が投下されてきた。
塹壕の近くで爆発したが被害はない。
敵の爆撃機を見送ると別の編隊を組んだ何かが飛んできている。あれは…。
「ようやく航空ウィッチのお出ましね。」
支援要請を受けた航空ウィッチたちだった。
彼女らはすぐさま航空型怪異と戦闘を開始する。
それにより、爆撃が止んだ。
「今よ!総員、突撃!」
小隊長の合図でまず俺が塹壕から飛び出す。続いて他の小隊員も。
同じ中隊の小隊も同様に行動している。そしてまっすぐ敵に突っ込んでいった。
光武による陣形を組み、前へ前へとシールドを張って射撃しながら移動する。小隊員はタンクデサントの他、俺の後に続いて移動している。
当然相手も攻撃してくるが光武のシールドに阻まれて傷つけることができない。
そして敵の攻撃は光武に集中するため後ろの部隊は比較的安全となる。俺たちの突撃を支援するためにある一定の距離まで俺たちが接近するまで砲兵達の砲撃支援があった。それにより一時的に攻撃が弱まる。
その隙に彼我の距離はどんどん縮まり、中隊は怪異に肉薄する。そこで陸戦ストライカーの攻撃が牙を剥いた。
これまで後ろにいた陸戦ウィッチ達が一斉に光武の前に出たのである。また、怪異が光武の突撃に気を取られていた隙に側面から近づいていた陸戦ウィッチの部隊もいた。小回りの効く陸戦ストライカーの動きに翻弄される怪異。
しかし陸戦ストライカーに気をとられると光武に撃破される。
ろくな抵抗もできないまま、この攻勢によって怪異は速やかに撃破された。俺たちの戦術的な勝利である。
ふと、上を見ると上空でも勝負はついていた。航空ウィッチ達により航空ネウロイは撃退されていた。
速やかに帰投していく航空ウィッチ達。あの中に妹はいるのだろうか。とりあえず帰投していく姿を見送りながら手を振ってみた。
後から聞いた話だが、この戦いの後、帰投している最中に新型ネウロイと接触。妹は重傷ではないものの敵の攻撃で怪我を負ったそうだ。
1937年11月20日。
衰えを知らない怪異の攻勢と新型怪異の脅威を重くみた皇国上層部はここに“大本営”の設置を発令。第一次大戦以来となるこの発令によって扶桑は後に“扶桑海事変”と呼ばれる戦役に正式に突入した。
そしてかねてより新型怪異撃滅の可能性を探る撃一号作戦が発令されたーらしいが基本的に空でのことなのでまず俺には関係ない。
詳しい内容は後で知った。
作戦は成功。新型怪異は撃破されたとのこと。このことを受けて国内外を問わず広く、諸外国からテスト用に購入または提供された種々の新兵器が前線に集まり始めることとなる。
1938年の一月。冬季の厳しい寒波襲来によってネウロイの活動が若干の鈍りを見せたことに併せて、新型武装の試験が進められる。その中には光武の新しい武装もあるようだ。
これまでの成果から俺にも何か新しい武装が与えられることとなり、何がいいかと問われた。俺は迷わず、
「カールスラントの8.8cm高射砲がいいです!」
と言ったらその場にいた全員から呆れられた。
ちなみにちゃんとアハトアハトはもらった。
新型の航空型の怪異は数は少ないながらも依然として猛威を振るっているらしい。確たる対抗策もないままだという。戦況もより厳しくなってきた。
1938年の初春。部隊の再編があった。ウィッチの消耗を重く見た軍上層部による、新戦力の補充と戦力の平均化を図るためのものだ。
俺たちの中隊も例外ではなかった。まず中隊の5つの小隊を3つに分けてそれぞれ別の中隊に編成。
この中隊とほかの兵科の中隊とで装甲歩兵大隊を編成する。
中隊において小隊の抜けた穴や新しい中隊に空いている枠を新しい光武を使う小隊が埋めるというもの。それに合わせて光武の追加注文が増えた。生産ラインも増えたらしい。
合計15小隊で光武を運用していく。期待されてる主な役割としては“火消し”であった。中隊規模で動いて苦戦している、より攻撃の激しい場所へ遊撃に入る。かなり危険な任務である。
また、陸戦ストライカーを使う小隊員もかなり入れ替わりが激しくなるようだ。理由としては新人の教育である。
光武のいる部隊は光武に守られることが多いため比較的損耗率が低かった。
新人を入れることで消耗を抑え、練度の向上に伴う戦力の増強を期待されていた。
なんで火消し任務させるのに新人入れるんですかね?とも思ったが、より激しい戦場に入れることでより早く戦場に慣れての練度の向上を期待してのことと、冬季の寒波が和らいで再び怪異の活動が活発化すれば戦況がより厳しくなり、
地上においては光武による防衛が重要になる。比較的安全な場所での戦いに回す余裕はないとのこと。
再編では、第一小隊と第三小隊が第一中隊に、第四小隊と第五小隊は第二中隊に。残った俺たち第2小隊は第3中隊に回された。
訓練において、新しい小隊における光武とその連携の訓練はベテランの小隊による教導になるらしい。
つまり俺たちはこれから来る4つの小隊の訓練を教導することになる。魔導甲冑はかなり新しい兵器のジャンルではあるものの、これまでの戦いでそれなりに戦術が確立されている。
それなのに後方での訓練でないあたりよほど余裕がないらしい。教えられる人物が全員前線に出ていて戻す余裕がない。また、光武は完成次第前線に回すので教導に使えるものがない。
俺たちはこれから来る新人教育に不安を抱きながらひとまず再編で解散する前に共同で話し合って全員の戦訓を基に光武の操縦の教本と小隊での連携の教本を作っておくこととした。負担は少なく、また、わかりやすいほうがいいからね!
出来上がったものをまず初版としてこれから来る新人たちの教育に使う予定だ。
これは司令のほうにも提出していて、そちらは扶桑本国に送られた。
1938年4月。部隊の再編が終わり、新人たちの教育もある程度進んでいたころ、
怪異の活動が再度活発化。手ごわい新型の航空怪異相手に戦力を平均化したばかりの航空ウィッチ各部隊は苦戦を強いられ、ベテラン、新兵を問わずにその戦力を削られているらしい。
それにより制空権を取られ、地上部隊への爆撃も激化。
しかも今までは見られなかった高速の爆撃機型ネウロイも出現。これに対抗する有効打もないままウィッチたちの疲弊や深刻な補給の不備も重なって各地の前線基地はより一層厳しい状況に追い込まれていた。
俺達も地上部隊の火消しとして転戦を重ねていたが、爆撃による前線基地への攻撃によって後退せざるを得ないことが多くなった。また、爆撃による光武の戦闘不能(幸い搭乗者は無事だった。)、廃棄された機体や、整備を受けられずに故障によって廃棄される機体も出た。予備機はあったので数を減らさずにはいるが補給の不備があるのでいつ満足に戦えない状況になるかわからない。
爆撃の増加により損耗率としても以前より上がった。それでも他の部隊よりははるかにましという状況だ。
そんな中、俺に扶桑本国からようやく研究していたものが完成したとの連絡が入った。数もある程度あるらしい。
すぐさま送ってもらうように手配した。司令との交渉により、特別に輸送機を飛ばしてもらい、小隊を残して、予備機の光武とともに即座に輸送機の来る航空基地へと向かった。
航空基地に着いた時、見知った顔を見つけた。
「ふみ…北郷少佐、こちらの基地にいらしてたのですか。」
「兄上?なぜこちらへ?それと、いつもの話し方でいいです。兄上にかしこまった話し方されるとむず痒い。」
「かしこまりました。今日届く荷物の受け取りに来たんだ。光武に乗せる新武装だ。」
「ああ、あの輸送機に乗ってきた。それだけのためにわざわざこちらまで?」
「ああ。一秒でも早く受け取りたいものだったんだ。」
「兄上がそれほどまでに受け取りを急ぐようなものとは、気になります。教えていただけませんか?」
「さっそくここで搭載して試験していく予定だから、失敗したときに落胆させないためにも期待させないでおくよ。」
「つまり、教えていただけないと。」
「そういうことだ。」
「兄上は意地悪です!」
「まあ、焦らないでも試験の時に教えてあげるからその時の楽しみに取っておいてくれ。では。」
「ああ!兄上、待ってください!一緒に行きますよ!第一、どの格納庫にあるか知らないでしょう!」
基地の司令に挨拶してから章香と一緒に格納庫へと向かう。司令は陸軍の方なので、司令にも実験を見てもらうことにした。
受け取り表にサインして、受け取った荷物の中身を早速持ってきた光武に乗せる。光武のエンジンを起動させて、外に出た。そして、とある魔法を発動させた。
「う~む、ん~、ん、んー?うーん…。」
うなりながら発動させている魔法の反応を確かめる。ゆっくりと光武を回転させる。まだ反応はない。
「あの、曹長?そろそろ何をなさってるのか教えていただけませんか?」
「うむ、私も何をしているのか気になる。教えてくれんかね。」
「む!…………む、む、む…。」
「あの、もしもし?兄上?」
反応があった!しかしまだはっきりとしたものではない。一層神経を集中させる。反応はだんだん強くなってきた!
「少佐殿!確かあなたの部下に遠くを見通せる魔眼を所持されてる方がいましたよね!」
「え、ええ。坂本一飛曹のことですか?」
「ちょっと呼んでいただけませんか!確かめたいことが!」
「えっと、私がどうかしましたか?」
「方位320!高度6000!距離40000!見えますか!?」
「兄上?やたら具体的な…まさか!坂本一飛曹!」
「えっ、は、はい!遠いですけど頑張ってみます!…………………見えました!敵多数!新型の爆撃機型もいます!」
「北郷曹長!もしやそれは電探かね!噂には聞いた事があったが完成していたとは!」
「すぐに出撃準備だ!兄上、それのこと後でちゃんと詳しく教えてください!これで迎撃しやすくなる!」
「そのためにはまず無事に帰って来てくださいよ!」
「ご心配無く!私には優秀な教え子達がいます!では!」
「私にも後で詳しく聞かせてもらおう!だが今は迎撃せねば!」
「その前に一つよろしいですか司令!実は…。」
章香達は出撃していった。俺がとあることを伝え終わると司令もあわただしく指揮所に戻っていった。
さて、こちらもデータ取りと…万が一に備えておこう。
光武を移動させて格納庫にあるものを取りに行った。
報告を受けて飛び立った航空ウィッチたち。高速で移動する1群に対して迎撃に向かった。
怪異たちと基地から1キロほど離れた場所で会敵。直掩の戦闘機と上空で戦う者たちと、
爆撃機型の迎撃に向かうものに分かれて戦闘を開始する。
戦闘を開始してしばらく。敵は味方の数より多く、手いっぱいだった。味方は傷ついたものも多かった。
爆撃機はまっすぐに基地へと向かっており、このままでは基地に被害が出てしまう。それだけは避けたかった。
爆撃機の後方上を一人のウィッチがとった。第一二航空隊の若本徹子。北郷章香の教え子の一人だ。
「さっさと…堕ちろぉ!!」
20mm機関砲を怪異に浴びせかける。しかし、傷ついたそばから修復されていく。
「くそっあい変わらず20mmじゃだめか!美緒!コアは!?見えるか!?」
「待って…きゃっ!?ダメ!敵の攻撃が激しくて見れない!」
何事もなかったかのように飛び続ける怪異。基地へとまっすぐに向かっていく。
「くそっ!させるかぁ!」
「まずいな…!このままでは基地がやられる!」
その時、章香少佐のインカムに通信が入った。
「誰だ?…兄上!?しかし、今離れたら爆撃が……わかりました!兄上を信じます!
総員!今すぐ爆撃機型から離れろ!
「先生!でも、今離れたら追いつけなくなります!それに高射砲なんてまず当たらないですよ!」
「少なくとも今は手がない!いいから離れるんだ!」
「……くそっ!わかりました!」
納得できないまま爆撃機型から離れる。基本的に対空砲は当たらない。あるにはあるがそれは大量の対空砲を打って初めてそのうちのいくつかが当たる程度だ。
偶然当たってくれるのを祈るしかなかった。
爆撃機に追従しながらも距離を取った。もうすでに爆撃圏内だ。すでにかなり高度を落としている。
基地が蹂躙されるのを見てるしかないのか。そう思った瞬間、地上からまっすぐに光の弾が飛んできて、
そのうちの一つが吸い込まれるように爆撃機型のネウロイにあたり、爆撃機型の怪異は爆炎に包まれた。
当たった!?しかもかなり正確にとんできていた!。
「当たった…!まじかよ!…いや、あいつまだ生きてやがる!」
不幸なことにこの時、信管は少し遅れて作動した。すなわち、怪異の体を貫いた後に爆発したのである。
しかし、砲弾の当たった主翼は折れ、大きく傷ついた怪異は修復しながらもかなり速度を落としていた。
貫いた後の爆発による破片が上の部分を襲っていたため、
機銃座にあたる部分も大きく傷つき撃てないようになっていた。その隙を見逃しはしない。
「見えました!胴体の真ん中!」
「よしっ!いくぞ!」
高射砲により爆撃機型は抵抗する力を失っていた。上空を飛ぶウィッチたちにろくに攻撃もできないままコアを破壊され、撃破されたのであった。
爆撃機をやられた戦闘機型は撤退を始め、やがて見えなくなった。
「こちら第十二航空隊。爆撃機型を撃墜。怪異は撤退した。」
「了解。直ちに帰投せよ。」
帰ったらたっぷりと話を聞かせてもらわねば。あれはこの戦線における光明となるかもしれないのだ。
北郷章香少佐はそう思いながら基地へと帰還を始めた。
上空でウィッチたちが戦っているころ、俺は光武とともに持ってきたもの、8.8cm FlaK18、すなわちアハトアハトを取り出していた。そして光武用に改造した指揮標定装置(始めはなんでそんなものを欲しがるんだと思われていた。)と
高射砲部隊は既に準備を終わらせていた。高射砲部隊へと近づいていく。
「装甲歩兵第一中隊、第一小隊の北郷曹長です!ただいま到着しました!」
「あんたが司令の言っていたやつか!よろしく頼む!で、あんたは何をするつもりだ!」
「俺はこいつで射撃に必要な数値を調べて皆さんに伝えます!」
「なんだって?そいつは信用できるのか?」
「少なくとも目視と音よりは!」
「そうかい!そいつはいい!しっかり頼むぞ!」
持ってきていた対空砲を設置して照準するための位置に着く。そして魔法を発動させた。
「おい!いきなり昼寝を初めてどうした!」
「光武一機で撃つにはこれが一番やりやすい体勢なんです!仕事はきっちりこなしますよ!それよりもこいつの算定具の入力と信管の設定お願いします!」
光武が対空砲を撃つ時には寝ころばせている。仰角の調整が一番しやすかったのだ。
レーダーで爆撃型の現在位置と高度、そして速度を測定。それらの具体的な数値を高射砲部隊に伝えていく。
それらを算定具に入力。未来位置の予測が数字としてはじき出されていく。
それに合わせた角度に調節。時限信管をセットした砲弾を装填して、あとは予定された時間に打つだけだ。
しかし、爆撃機型の周囲に航空ウィッチがいる。基地を守るために奮闘してくれている。
このままでは撃てない。時間がない。即座に無線を入れた。
「章香!爆撃機型から少し距離を取ってくれ!このままじゃ高射砲が撃てない!」
「しかし、今離れたら爆撃を止められなくなります!そうなれば…!」
「大丈夫だ!必ず当てる!俺を信じてくれ!」
「…わかりました。兄上を信じます!」
無線が切れた後、レーダーで航空ウィッチが離れたのを確認したことを伝えた。
「あーあ、いいのか?曹長のくせにそんな真似して。失敗すれば間違いなく首が飛ぶぜ?物理的に。」
「安心してくれ。失敗してここに爆弾が落ちてきてもあんたらだけは必ず生きて帰してやる。」
「それは頼もしいことだ。」
発射の時間が迫る5,4,3,2,1…!
「砲撃開始!」
高射砲が一斉に砲撃を開始する。俺もそれに合わせて一射。
そして一射すると同時に全神経を集中させ始めた!レーダーで敵と砲弾の距離を測り続ける!
そして砲弾は敵に命中し爆発!しかし、敵の反応は消えていない。
だが、離れていた航空ウィッチたちが爆撃型に近づくと敵の反応が消えた。倒してくれたみたいだ。
「第十二航空隊より無線!爆撃機型を撃墜。怪異は撤退したとのこと!」
「つまり俺たちは助かったってことか。」
「よかった…。」
周りの人たちも安堵している。撃退できてよかった。
基地に章香たちが戻ってきた。章香はいの一番に駆け寄ってきた。
「お疲れ様です!兄上!戻ってきたのですから約束通り詳しく聞かせてもらいますよ!電探のこと!それとあの砲弾のことも!」
「なんだ気が付いていたのか。」
「当たり前です!あんな奇妙な弾道していたらわかりますよ。」
「私にも詳しく聞かせてもらおうか。」
司令が話に入ってきた。
「あの、私たちもいいですか?」
章香の教え子たちも聞きたいようだ。
とりあえず会議室へ移動して説明することとなった。
電探(レーダー)とは、簡単に説明すると電磁波を照射して目標にあたって反射した電磁波を受信することで敵の位置を探るものである。人間の目がみている可視光線よりもはるかに波長が長い電波を使用することから、雲や霧を通して、はるかに遠くの目標を探知することができる。
「ほう、つまりそれがあれば哨戒において見張り員の負担が少なくなると。」
「まあそうなりますね。数さえそろえば線で警戒と探知ができるから発見次第近くの航空基地に無線で要請、
という形が理想ですかね。数さえそろえば。」
「つまり…足りないと。」
「前線をカバーするのに必要な光武も装置も全然足りませんね。」
「あの、なぜ光武ではないとだめなのですか?」
「いい質問ですね。レーダーの魔法を使った際に光武の頭部に奇妙なものが出ていたでしょう?」
「ああ、そういえば。」
「あれは魔導針といいまして、東北皇国大学の教授・八木さんと講師・宇田さんが発見した「特定の呪術陣を描くことで魔法に高い指向性を持たせられる」というものを実用化研究した結果完成した正式な名前を「八木・宇田式呪術陣」といいます。
今現在、各国においてこれを広域魔法探査に活用する研究が行われているそうです。扶桑はしてませんけど。
まあ、それはそこまで関係ないのですが。」
「関係ないのかよ!」
「いい突っ込みありがとう。話を戻しまして、それとは別に魔法力を流すことで術式とともに魔法力を加工し、マイクロ波によく似た性質のもの…仮にこれを魔力波と呼称します。これを出せる魔導マグネトロンというものがリベリオンで開発されていたのです。
そして扶桑でも改良されていたのです。これまた東北皇国大学の岡部という方が「分割陽極型魔導マグネトロン」
というのを開発しました。
八木・宇田式呪術陣とともに発表されたのですが、いかんせん要求される魔法力が大きかったのです。それに既により効率のいい広域魔法探査の魔法があったので、こっちはあまり見向きされませんでした。固有魔法に関して研究を進めたほうがいいと判断されたのです。
それでもカールスラントの技術者がさらに改良していたのを発見して、その技術者を招いて広域魔法探査と仕組みは違いますがほぼ同じ効果を得られるように開発されたのがこの装置です。八木・宇田呪術陣と併用することで指向性を持たせています。
しかし、この装置、実用性のある出力を出そうと思うとかなりの魔法力を要求されます。
航空ストライカーは夢のまた夢。陸戦ストライカーであっても出力が足りないのです。
これが光武にしか載せられない理由です。また、光武に載せたとしても要求される魔法力の大きさから航空ストライカーと同じく、シールド強度などが犠牲になります。なので運用を変える必要があります。」
「なるほど…。では今すぐ増産はできないのかね?」
「その増産のための試験です。テストが良好だったらすぐにでも生産される予定です。
まあ、すぐに不要になるでしょうが。電気で動くレーダーもすぐ作られるでしょうから。」
「それでも今必要なんです。早い増産を願います。
それと、もう一つの砲弾のほうは?」
「あれは念動を受けやすくする術式を刻んだ特殊な砲弾で、発射した後に弾道を変えられるというものです。
制御の念動の魔法を魔導マグネトロンで加速し、八木・宇田呪術陣によって指向性を与えることで弾道を制御しやすくして、レーダーの情報を基に動かすことで高速の敵が回避軌道をとっても合わせられるようにするためのものです。」
「なるほど、つまりこちらも高射砲を使えてレーダーも使える光武のためのものだと。」
「そうなりますね。」
「こちらも増産できないのですか?」
「ムリダナ。」
「ん?」
「ごほん!こちら、弾頭に刻む術式の分、弾薬としてはかなりお高めになってまして…これくらいするので…。」
「…なるほど。早々に数が揃えられないのか。残念だ。これがあれば爆撃型に対抗できるというのに。」
「命中率を改善したとしても当たらない確率は高いですからね。これにお金をかけられないことはわかります。
それと、どちらのデータもほかの国にも送る予定です。爆撃機に悩まされてるのはどこも同じですからね。
見向きされるかは別ですが。」
「なるほど。ありがとう。よくわかった。」
「お役に立てたなら光栄です。」
説明が終わった後、解散となった。俺は一旦小隊に戻ることとなった。
ちなみに、越権行為は今回の功績で不問となった。
ここからおまけ。
新人たちが入ってきて教育が始まって一か月。そのうちの一人が光武の上に乗って指揮を執る練習をしている。
「いいなあ~。」
うちの小隊に入ってきた犬房がそんなことをつぶやいている。
…なにがだろうか。そんなに光武の上に乗るのが名誉なことなのだろうか?
「ええっ!?知らないんですか!?今、光武に跨乗できることはとても名誉なことなんですよ!?」
知らないよそんなこと…。
「私たちの小隊の小隊長さんの西沢中尉(この前昇進した)がいるじゃないですか?
あの人にあこがれている人は多いです。光武にまたがって指揮するその姿に勇ましさを感じるとか。」
「ふーん。光武を操縦することよりも名誉なことなのか?」
「…それはそれ、これはこれです。いいなあ、私も光武の上に乗って突撃ー!とかしじだしてみたいなあ。」
わからないでもない気がするが割とこどもっぽい理由だな…。
「それにしてもお前、この前は航空ウィッチになりたい!とか言ってなかったか?」
「…それはそれ、これはこれです!」
ちなみに、名誉割合で言うと
光武の上に乗って指揮≧光武を操縦>光武のタンクデサントらしい。
タンクデサントが名誉なのかと問うと、光武と一緒に突撃することは対等になれた感じがするらしい。よくわからん。