ストライクウィッチーズの世界に転生して人型ロボットを造って乗る男の話。 作:メガテニスト(偽)
1940年。カールスラント。ゼーロウ高地。ベルリンからわずか60kmほど東にあるここには実に10万人ほどの兵隊が残されていた。
小ビフレスト作戦。カールスラントから民衆、政府、工業を避難させ南リベリオン大陸ノイエ・カールスラントへと疎開させるビフレスト作戦のうち、ベルリン近郊から民衆を避難させる作戦。
その作戦のためには避難が完了する間、ネウロイを食い止めておく必要があった。接近と撤退を繰り返して徐々に後退していく遅滞作戦を行い、何とか避難は完了したもののそれにより退路がふさがれた兵士たちはカールスラントに取り残されてしまう。
そのうちの一つがゼーロウ高地の部隊だった。
ゼーロウ高地から見渡すとそこには地を埋め尽くすほどの小型を引き連れた中型、大型ネウロイが何体も攻めてきていた。
近くでは味方の砲兵がひっきりなしに撃っている。
「デカ物もここまで多いと壮観だな。」
「司令!我々の部隊は包囲されています!」
「航空ウィッチの支援は?」
「現在、リバウからここまで扶桑の派遣航空部隊が飛んできてくれていますが、空の相手だけで手いっぱいな状況です。」
「…陸戦ウィッチの支援は?」「それまでの戦いで消耗して数が足りません。」
「…ベルリンは無事に撤退できた。しかし、空軍の地上支援も戦車の支援も期待できない。
何か一手なければ包囲殲滅も時間の問題…か。」
場面変わって防衛線、オーデル川北側の歩兵部隊。
そこでは激しい戦いが繰り広げられていた。
「撃てえ!撃ち込め!奴らに突破されたら我々はおしまいだ!何としても食い止めるぞ!」
歩兵部隊の奮闘によって防衛戦は守られていた。
しかし…
「シャイセ!大型ネウロイだ!」
大型ネウロイ。それは他のネウロイよりも装甲も火力も段違いで、ウィッチなしの戦力であっては撃破が非常に困難な存在である。
「ウィッチに支援を要請しろ!」
「了解しました!…支援要請!魔女部隊!支援要請!」
無線で支援要請をする。しばらくして返答があった。
「…支援要請は通りました。地上部隊はですがどうやっても一時間はかかるそうです。
空の部隊も30分はかかると。」
「1時間に30分か…。わかった。それまで持ち堪えるぞ!全部隊に伝えろ!」
「了解!」
「ネウロイどもめ。ここは通さないぞ…!」
「撃て!撃ちまくれ!…畜生!30分も持たないぞ!」
「頼む!早く来てくれ…!」
市街で爆発が起きる。見るとネウロイがすぐそばまで侵入してきていた。
「くそ…。こいつで吹っ飛ばしてくる!支援を頼む!」
収束手榴弾を持った兵士が突っ込んだ。遮蔽物を盾にして少しづつ近づいていく。そして…。
「くらえっ!…どうだ見たか!くそったれめ!」
収束手榴弾はネウロイにあたって爆発を起こしネウロイは撃破された。
しかし、兵士の近くで爆発が起きた。
「ぐあっ!」
幸い、けがをしたものの軽傷だった。しかし、顔を上げるとそこにはネウロイがいて兵士に大砲を向けていた。
「あ、あ…。」
恐怖のあまり腰を抜かす兵士。大砲が光を帯び始め、兵士は顔をそらす。数秒後には炭も残らず消し飛ぶであろうことが予想された。
しかし、それはどこからともなく飛んできた砲撃によって覆された。
ネウロイへの砲撃による爆風で吹き飛ばされる兵士。しかし、彼は生きている。
「ダイジョブだったねー?ちょっと手荒になっちゃったけど、ま、ダイジョブならそれでよし!」
「助けに来ましたー!」
「もう大丈夫でーす!」
彼を救ったのは魔導甲冑だった。リベリオン製の魔導甲冑、スタアⅢ。それが先ほどまでいたネウロイを吹き飛ばしたのだ。スタアⅢにはリベリオンの二人の陸戦ストライカーを履いたウィッチも乗っている。
突然の乱入者に矛先を向けるネウロイ。一斉にその照準がスタアⅢに向けられていた。
「ヘ、ヘロー。みなさん、こんにち…。」
言い終わらないうちに大量の光線がスタアⅢに飛んできた。慌ててシールドを張るスタアⅢ。
「きゃ、きゃー!手厚い歓迎ねー!」
雨のように飛んでくるそれらを全部防ぎながらも移動できないでいる。
その時、スタアⅢが来た方向からからネウロイに対して大量の砲撃がとんできた。
次々に撃破されるネウロイ達。残ったネウロイ達が砲撃が来た方向を向くと別の魔導甲冑、光武改が二刀の扶桑刀を抜いて二刀流でネウロイに迫っていき、迎撃をかわしながら次々に切り伏せていく。
「オー!助かりましたねー!隊長さーん!」
「スタア小隊!だからうかつに出るなって言ったでしょ!」
「ごめんなさーい、でも急がないとやられちゃうところだったよ!」
「それはそうだけど!」
言い合いをしていると砲撃がとんできた。まだそこらにはネウロイがいる。
「ああ、もう!とりあえず話はあとだ!目の前のやつら全部倒すぞ!」
「了解でーす!」
市街に侵入した10体ほどのネウロイはあっという間に殲滅されてしまった。
倒し終わったころに2機の魔導甲冑が来た方向から更に4機の魔導甲冑と8機の陸戦ストライカーが来た。
「たいちょーう!おいていかないでくださいよー!」
もう一つの光武改。こちらは少し大きい。複座型のようだ。
「一郎!あっちの平原に大型が2体!恐らくこいつらはあいつらに率いられてる!」
カールスラントの魔導甲冑、アイゼンクライト。StugⅢの後継機にして最新鋭機。
「私たちだけでもやれなくはないですが勝手するとやかましいから仕方なく指示を仰ぎに来て差し上げましたわ!」
ブリタニアの魔導甲冑、セイバー。
「はいはい、そうですね。…それでどうする?二人とも。っと、またお代わりだ。」
ガリアの魔導甲冑、エトワール。
みると、ネウロイ達がさらに20体ほど進軍してきている。
突然現れた6機の魔導甲冑を中心とした部隊はそいつらに攻撃を加えていく。
しかし、そのどれもが国籍がバラバラの装備だった。
目の前に来ていたネウロイ達を砲撃と近接攻撃で次々に撃破していく魔導甲冑たち。
20体は来ていたはずなのにあっという間にいなくなってしまった。
「よしっと。それで、どうするんですか?」
「そうね…、その2体の位置と距離はどれくらい?進行方向は?」
今度は無線を通じて別の女性の声が聞こえてきた。どうやら指揮官のようだ。
「3kmくらいかな。相手はお互いにギリギリカバーしあえるかどうかくらい。位置は右がポイント2-3-5。」
「そこなら…。よし!まずは右側の敵に30度右斜めから進撃して右側から撃破!その後左側も撃破するわよ!」
そして今度は突撃開始地点へと移動して護衛を引き連れた大型へと向かっていく。
「各員!パンツァーカイルを組め!突っ込むぞ!」
「了解!」
きれいに楔形陣形へと編隊していく。先頭は魔導甲冑、両翼に陸戦ストライカー。
そして後方は先ほどまでいた場所から来た歩兵たちが。しかし、歩兵たちの数は少ない。
我々もただ見ている場合ではない。
「そこの陸戦ウィッチの部隊!我々も一緒に突撃する!後方は任せろ!」
「了解した!」
そこからはすさまじかった。敵の砲撃をものともせずに進撃していく。横からくる敵に対しては陸戦ストライカーが寄せ付けなかった。
あっという間に大型に接敵すると、パンツァーカイルを崩して今度は魔導甲冑と陸戦ストライカーは横隊を組む。そして一斉に大型へと砲撃をくわえる。
ひとたまりもなくやられる大型。
続けてもう一体に対しても同様の突撃と砲撃をくわえる。しかし…。
「隊長さーん!こっちもう弾少ないねー!」
「こっちもだ!あと3発!」
「僕も!あと2発!」
連続した戦闘により砲弾が残り少なくなっていた。
「よし!じゃあいつものだ!支援頼む!」
そういうと光武改は大型ネウロイに向かって突撃を仕掛けた。
「了解!近づかせないよ!」
「はいはーい、邪魔しちゃダメデスよー?」
「やれやれ、たまにはそれもなく仕留めたいものですわ。」
「あはは…。それはそうなんだけど…ねっ!」
彼女たちの援護によって光武に対して護衛達は横から砲撃を光武にくわえることができない。
光武改が扶桑刀を抜きながら大型ネウロイの目の前へと進んでいく。
そして大型ネウロイのビームをシールドではじくと目の前で跳躍。何メートルも大きく跳んで4本ある足のうち2本を切り飛ばした。
とたんにバランスを崩して倒れこむネウロイ。
そして光武改は反転すると扶桑刀に魔法力を込め地面に倒れてきていた頭を切りつける!
扶桑刀はすさまじいまでの魔法力によって光り輝いている。それに切り付けられた大型ネウロイはバターのように切り裂かれ3枚におろされた後、消滅した。
戦いが終わると彼女たちは部隊へと近づいてきた。
「ありがとう、助かった。君たちは?見たところ装備がばらばらのようだが所属は一体?」
「私は扶桑陸軍欧州派遣団第1戦車中隊第1小隊の北郷一「私はカールスラント第1装甲師団第5戦車大隊第一戦車中隊第4小隊のミカエラ「私はリベリオン陸軍欧州派遣団第2戦車中隊第2小隊のアリサ「私はブリタニア陸軍第27装甲師団第2戦車中隊第1小隊のセシリア「私はガリア陸軍第41戦車大隊第1中隊第2小隊のピエレット・アル…」
とたんにそれぞれが同時に所属を言い出した。
「待ちたまえ!君たちは同じ隊ではないのかね!?先ほどは見事な連携をしていたようだが!?もっとこう、共通の隊名とかないのかね!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
とたんに沈黙が訪れた。
「そういわれましても…私たちは原隊とはぐれたいわゆる迷子たちの寄せ集めでして…。」
「すぐに味方と合流できると思って一時的に組んだだけで隊名とか考えずにそのままずるずると…。」
「撤退しても撤退しても一向に味方に会えず、合流しても小さい規模、たまに連隊規模の集合場所に行っても補給を受けた途端襲撃にあって殿を務めたらまたはぐれるの繰り返しねー。」
「無線を拾っていってみたら襲撃にあってて襲撃を撃退して生き残りとともにまた後退なんてこともあったね。」
「すべての魔導甲冑と陸戦ストライカー、航空ストライカーに精通している隊長がいなければ危ないところでしたわね。」
「南側からようやくベルリンまで来たと思ったら小ビフレスト作戦でみんな撤退を始めてたし…。」
なんということだ。彼らはここまでずっと運悪く撤退を繰り返していたのだ。
この迷子大隊ともいうべき彼らはここまでずっと戦い抜いてきたのか。共通の隊名もなく。
このスオムス独立義勇軍のように国際色豊かな部隊は一体だれが指揮官をしているのだろうか。
「失礼します。私は扶桑陸軍欧州派遣団第1装甲師団第2連隊の横山一美少佐です。一応この部隊の指揮を執っております。」
ようやく指揮官が出てきた。どうやら後方で指揮を執っていたようだ。それで戦闘が終了したのでこちらに来たのだろう。
お互いに所属と階級と自己紹介をかわす。
「それで、あなたがこの部隊の指揮官ということだが…。一体あなた方を何と呼べばよろしいのだろうか。」
「えっ。…そうですね…。」
リベリオンの魔導甲冑のパイロットが横から入ってきた。
「あれでいいんじゃないですかー?ほら、隊長さんがよく歌ってる曲の…。」
「ああ、いいかもしれない!みんなあの曲歌ってるし。」
「半ば隊歌みたいになってますものねぇ…。」
「そうね、それじゃあそれでいきましょう。」
何やら目の前で隊名を決めている。そんなに適当でいいのだろうか。
「えー、ごほん。改めて紹介します。我々は統合戦闘戦車団」
「「「「「「「帝国華撃団です!」」」」」」」
ここまでに至るまでの話は、俺がカールスラントへと転属した時にまでさかのぼる…。
「…ところで統合戦闘戦車団ってなんなのー?指揮官さーん。」
「…最近結成が噂されてる統合戦闘航空団の戦車版を想定した名前よ。」
つまり割と適当にでっち上げた名前であった。
「ところで、一応隊長と指揮官は決まっているのだね。」
「あっ、はい。一応隊長を務めさせていただいてる北郷一郎中尉です。」