トリッパー列伝   作:ADONIS+

13 / 74
シオン・カーライル(機動戦士ガンダムSEED DESTINY)

 私の名はシオン・カーライル。所謂憑依型のトリッパーだ。元は日本のフリーター女性で、近年の不況で定職に就けずアルバイト生活をしていた私はアニメやゲームなどの二次元の世界を楽しんでいた。そんなオタクな私は唐突に不慮の事故に会う。

 

 そして気が付けば、金髪碧眼で7歳程の美少女になっていた。つまり私の事故で死んだ私の魂がこの少女に入ったという訳です。私の中に元の少女の魂というか人格が感じられないので多分この身体から追い出してしまったというわけでしょうね。南無~。

 

 でも少女の記憶は読みとれたのは幸いでした。おかげで自分の状況を把握することに成功しましたから。と考えていた時期もありましたよ。

 

 現在はCE(コズミック・イラ)70です。『機動戦士ガンダムSEED』の世界ですよ。私の今の身体はシオン・カーライル(7歳)ナチュラルの少女で、両親は普通の仕事に就いている平凡な家庭。現在地はユーラシア連邦。

 

 現状を把握したのは良かったんですが、その後すぐにエイプリルフール・クライシスが発生してしまった。

 

 それで経済の混乱、エネルギー不足などで私の家庭も滅茶苦茶。一家諸共飢えてしまいました。私は食べる物がなくてぐったりと横になっていたんです。人間腹が減ると動く気力すら無くなりますよ。異世界に憑依して早々餓死するとは、思わなかった。

 

 

 

 そんな私が次に気が付いたときには、またしても異世界にいました。リリカルなのはの並行世界ですね。すでに本編とはかなり変わってしまっていましたから。シオンはそんな次元世界の一つブリタニアにある監察軍本部の病院にいた。この監察軍本部は宇宙空間に存在する巨大なスペースコロニー群で構成されています。

 

 監察軍は私と同じくあちこちの創作物の世界にトリップした人達の組織。今回は私のいたガンダムSEEDの世界にトリップした私と接触しに来たらしいのです。

 

 ちなみに監察軍は様々な創作物の世界(彼等は下位世界と言っていた)の並行世界に干渉できて、更にその世界にトリップしたトリッパーを感知して探し出す技術を持っていた。でも、さすがに私が飢えて餓死しかかっていたのは予想外だったらしいですね。慌てて監察軍本部の病院に運ばれました。

 

 本来はトリッパーと話し合いをするところだったんですが、私の場合はそんな悠長なことをしている場合ではなかったですから。

 

 彼等に助けられなかったら私は死んでいたでしょう。今の家族も死んだしね。憑依早々家族を失ってしまいましたが、家族との関わりはあくまでシオンの記憶上の物でしかない。こういうと冷たいと思うんですが、記録を見ている第三者という感じがして、どうも現実感がないんですよね。だから家族の死もあっさりと流してしまっています。

 

 それで私シオン・カーライルは監察軍の基準でいうと憑依型トリッパーになります。この憑依型のトリッパーは、死神による能力の付加という特典がないので、憑依した身体の社会的地位や能力などで生きるしかないらしいです。例えば権力者に憑依して、その地位を使ってあれこれ活動している者もいれば、高い魔力資質を持つ人間に憑依して優秀な魔導師になった者もいるそうです。

 

 でもシオン・カーライルは平凡な家庭の娘だから社会的地位は普通でしかない。能力も魔力資質なし、レアスキルなし、超能力などなし。折角ガンダム世界にトリップしたのに、ニュータイプでもなければ空間認識能力もありません。

 

 これで実はスーパーコーディネイターだったといかいう厨設定ならまだ救いはあったんでうすが、私は容姿がいいだけのナチュラルの少女です。

 

 私、オワタ…。これでは何もできない。

 

 折角ガンダム世界にトリップしたんですから、MSを乗りこなしてガンダム無双でもやりたかったんだけどね。とへこたれていたんですが、監察軍のトリッパー達が慰めてくれました。確かにトリッパーにはチートも多いそうですが、私のように平凡な者も少なくないそうです。

 

 そんなこんなで色々と話を聞いた私ですが、監察軍の総司令官のシリウスさんに会うことになりました。

 

「他の者に話を聞いているでしょうが、私が監察軍の代表のシリウスだ」

 

 最初に自己紹介されました。

 

 この人は『ヴァンパイア十字界』では未登場ですが、太陽を克服したヴァンパイアなんです。憑依型のトリッパーだから私と同じで転生特典が付いていないのですが、あの世界のヴァンパイアだけあって凄く強いらしい。憑依先のスペックが違いすぎるんだよ。

 

「シオン・カーライルです」

「まあ、堅い話はなしにして、何か質問とかはないかね?」

「それでは聞きたいのですが、何故監察軍の代表をシドゥリさんがなさらなかったんですか? あの方もトリッパーだとお聞きしましたが…」

 

 監察軍はその性質上トリッパーは優遇されている。幹部の殆どがトリッパーだしね。でも、監察軍の創始者で支援者のシドゥリさんが後見人止まりなのが気になりました。

 

「ああ、その事か。確かにシドゥリさんが監察軍を率いるべきかもしれないが、彼女はブリタニア帝国の皇帝だから多忙なのだよ。監察軍の総司令官までできないからね。だから私がやっているわけだ」

 

 シリウスは私は無職だったからねと笑った。

 

 何でもシリウスはアーデルハイトの暴走直後に血族をこの世界の辺境惑星に導いたらしい。その為、血族の中には再建させる夜の国の王にシリウスを押す者も多かったらしい。

 

 これには一度はストラウスを処刑しようとした事から、いくら状況が変わったからとはいえ手の平を返すかのようにストラウスを王として支持する事への抵抗感があった。おまけにあの災厄を招いたのは彼の妻だ。そうした声を抑えるためにシリウスはストラウスの血族を任せて、監察軍を率いる立場になった。

 

 シリウスとしては、ブリタニア帝国のお情けで辺境惑星に居住することを許されているだけの少数民族を束ねる小国の王などには興味がなかった。それよりも自分と同じトリッパー達と幾多の異世界を渡る監察軍の方が遥かにいいとのこと。

 

「まぁ細かいことは言わないが、注意点としてはトリッパー以外の者にこの世界が創作物の世界である事を知られないようにして欲しい」

「それは何故ですか?」

「その前に、君は『ラスト・アクション・ヒーロー』という映画を知っているかい」

「ええ、確か異次元へのパスポートである魔法のチケットを使って映画の世界に行き来するという話でしたね」

「そう、この話しでも描かれているが、創作物として登場している人物達も辛いことや悲しいこと嬉しいことなど様々な事を経験して生きてきたんだ。それなのにそれは他人が作った作り話です。偽物です。なんて突き付けられたらどう思う?」

「……確かに拙いですね」

「知らなければ幸せでいられるなら知られない方がいいよ」

「成る程分かりました。トリッパー以外の者には知られなければ良いのですね?」

 

「そうだ。因みに監察軍のトリッパーは赤い制服を着ていて、トリッパーでない者は緑の制服を着ているから、制服の色でトリッパーかそうでないかを判断してくれ」

「分かりました。それで私はこれからどうなるのでしょうか?」

「そうだね。出来れば監察軍に入って貰いたいけど無理強いはしないよ。嫌なら君の元いたガンダムSEEDの世界に送るから」

 

 あの世界ですか。聞いたところでは私達は元の上位世界には帰ることはできないらしい。トリッパーはトリップする前の人生には戻れない。だから各々で生きる道を探して行くしかない。そのために各世界のトリッパー達の相互協力組織として監察軍が作られた。

 

 そして今あの世界に帰っても、あの世界での家族は死んでいるし、幼女一人であの最悪の状況の世界で上手く生きられるとは思えない。十中八九のたれ死ぬだけ。ならば…。

 

「分かりました。監察軍に入ります」

「うむ、ではこれが君の制服とIDカードだ」

 

 私はシリウスから子供サイズの赤い制服とカードを受け取る。

 

 そういえば私の色々と説明してくれた人も赤い制服を着ていたから、その人もトリッパーだったのだろう。まあ、いつまでも私服でうろうろするわけにも行かないし、この制服を着ないと他のトリッパー達とも満足にお話できない。

 

 後から聞いたところによると監察軍はその性質上、トリッパーであれば年齢制限無しで入れるらしい。それ以外だと15歳以上でないと駄目らしいけどね。

 

 私のいた世界はガンダムSEEDだ。エイブリルフール・クライシスはもう起きてしまいましたが、ブレイク・ザ・ワールドはまだ起きていません。だからこのユニウスセブンの落下テロを阻止しようと思えば不可能では無いはず。あの被害を防ぐことが、そして戦争開始を抑えることが出来るかもしれません。となれば一応確認しておくか。

 

「シリウスさんちなみにトリッパーが自分がトリップした世界をより良くしようと干渉するのは駄目なんですか?」

「その事ですか、確かにトリッパーがむやみにあちこちの下位世界に行って過度の干渉するのは好ましくないけど、自分のトリップした世界ならばかなり改変しても構わないですよ。実際私もシドゥリさんもそうしていますから」

「では私がトリップしたガンダムSEEDの世界をより良くしようと干渉しても?」

「ええ、良いですよ。必要ならある程度の支援をします」

 

 これは大丈夫のようですね。でも、ユニウスセブンを防ぐといっても私には何も能力がありません。となると質量兵器それもガンダム世界ですからMSを使うしかないですね。そうだ! あのMSあれなら…。一応聞いておくか?

 

「……シオンさん確かにそれなら可能でしょうね。でもあれを使うとなると相当な訓練が必要ですよ。IFSがあるので、その点はかなりマシになっていますが」

 

 IFSとは機動戦艦ナデシコで出てきたイメージ・フィードバック・システムのことです。思考をダイレクトに機械に伝えて操縦するシステムで、MSのように人型兵器の操縦には極めて有効で、かなり前からブリタニア軍では採用されている。IFSを使った機動兵器もあるので、パイロット訓練も受けられる。だから早速頼んでみます。時間があまりないですしね。

 

 それじゃ頑張りますか。青き清浄な世界のためではなく、私の望む世界のために。




解説

■シオン・カーライル
 ガンダムSEEDの世界にトリップした憑依型トリッパー。CE70の時点で7歳の金髪碧眼の美少女。通常は黒のゴシックロリータの格好を好んでしている。能力、特典、社会的地位などが無いので、現在MSのパイロットになるために訓練中。ガンダム世界のトリッパーなのにニュータイプではなければコーディネイターでもないただの凡人。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。