トリッパー列伝   作:ADONIS+

18 / 74
ザビーネ・クライバー(TYPE-MOON)

 私はこの暗い空間にいた。夜のように暗いのではなく、何か違和感を抱いた。私は確か……。

 

 そう、私はどこにでもいる日本人の青年。最近では『Fate/stay nigth』を再プレイしていてセイバーに萌えていた。良いゲームは何回しても飽きないと聞くけど、数年ぶりの再プレイで色々と萌えたね。そんなこんなで生活していたら火事が起こって気が付いた時にはもう遅くて…。

 

 ……。

 

 もしかして私は死んだのでしょうか? ここって死後の世界? いや、タダ悪い夢を見ているだけかもしれない。

 

「ここは何処だ?」

 

 私は薄々感じている答えを無視して疑問を口にする。

 

「ここはこの世とあの世の境界じゃ」

 

 不意に聞こえてきた声の方角を見ると、漫画とかで見た死神がいた。大鎌を持った黒衣を纏った骸骨。

 

「儂は死神じゃよ、お主に少々話しがある」

「はあ」

 

 お話ですか、何でしょうか。

 

 

 

「カクカクジカジカ、というわけじゃ。そこで希望先にトリップできるぞ」

「そうですか」

 

 死神の説明に戸惑った。私は死ぬ予定ではないのに死んでしまった。その為、このまま記憶を抹消して転生するか、それとも特定の条件で記憶を持ったままで別人に転生や憑依するなりしなければならないらしい。

 

 それと転生の場合、希望する幾つかの特典を付けてくれるらしい。さすがに無茶苦茶すぎる特典は無理らしいです。

 

 さて、どうしましょうか?

 

 いくら死神の間違いで死ぬはずではなかったのに死んでしまったといっても生き返る事はできない。本来なら生き返らせろと狼狽えて暴走する所でしょうが、無理な物は無理ですね。でも、このまま普通に転生するのは面白くない。ここは第二の人生をエンジョイするべきかな。

 

「ちなみに転生したら『月姫』『Fate/stay nigth』とかで出てくる空想具現化や魔法とか使えるようになれますか?」

 

 そういう凄い能力は、ゲームやっていて正直憧れていたんです。

 

「ふむ、その場合は転生するのは型月世界の真祖になるぞ」

「真祖ですか、それだと吸血衝動がやばいのでは?」

「確かにそうじゃな。だが、吸血衝動をなくすとなるとあからさまにおかしいので、それなりの辻褄合わせが必要になるぞ。そうじゃ! 真祖と人間のハーフならどうじゃ? これなら吸血衝動がなくても不審に思われまい」

 

 真祖と人間のハーフ、なんかアルトルージュみたいだね。でもアルトルージュは混血だから力が不安定だって話がネットであった。あれって正式設定ではなく創作かな?

 

 それはともかく混血の場合、力が不安定になる恐れがある。『巣作りドラゴン』の主人公など良い例です。となると一応聞いておくか。

 

「あの、その場合は力とかは安定しているのですか?」

「ふむ、ではスペックは平均的な真祖の八割ほどの力で安定しており、魔法だけでなく強力な魔術を使えるようにしておこうかの」

 

 平均的な真祖の八割のスペックですか。確かアルクェイドは真祖の中でもずば抜けてスペックが高かったから、それに比べるとかなり見劣りしますが、混血の場合はこれ以上高いスペックを持つと不信に思われるらしいです。でも純血の真祖と違って人間の特性もあるので吸血衝動がなく全力の力を発揮できるし、流水や陽光を克服しているし、別に吸血しなくても問題ないらしい。なんか真祖と人間の良いとこ取りした存在ですね。

 

「それと任意の星と契約する能力を与えておく。実は真祖の星からの力の供給じゃがな。あれは本来真祖が作られた地球から送られる物にすぎん。つまり他の星系のように地球から離れすぎた場所に移動したり並行世界に行ったりすると供給されなくなる」

 

 なんでもこの特典があれば、移動した星と契約を結び力の供給を受けることができるようになるらしい。

 

「あとついでに私の使う魔術に関してですが、もう少し強力に出来ませんか? 正直言って型月世界の魔術って術式の効率が悪い上に、リスクがやたら大きくて見劣りします」

 

 ぶっちゃけ『魔法少女リリカルなのは』とか『スレイヤーズ』などの強力な魔法が出てくる作品と比べると今一だしね。固有結界とかはオリジナリティに溢れているし派手なのは結構ですが、それ以外の魔術はちょっと地味です。

 

「あれは術式そのものがそういうものだから仕方がない」

 

 なんでも型月の魔術は本来根源に至るための手段に過ぎず、それを戦闘などの別の目的に流用している。つまり本来の使用目的ではないので最適化されておらず、無駄が多いので効率が悪い。だから戦闘や日常で使う目的で最適化された術式を一から新しく作った方が良いとのことです。

 

 一から術式を作るか。一応その為に必要な知識は世界から教えて貰えるらしいです。真祖は世界から必要とする知識を与えられる。それは魔術も例外ではない。

 

「では転生特典はこんなものでいいじゃろう。転生するのは原作から1200年前の欧州になるがそれでよいか?」

 たしかアルクェイドが暴走して真祖が全滅するのが800年前だから、その400年前か。時期的に丁度良いでしょう。

 

「はい、かまいません」

「では細かい要望はこの用紙に書いてくれ」

 

 渡された用紙には幾つかの項目があった。

 

 性別 男・女

 髪を含めた体毛の色 金・銀・赤・茶・黒

 肌の色 白・黄色・黒

 魔術資質 特化型・万能型

 固定する外見年齢 9歳・16歳・22歳・28歳・50歳・70歳

 

 性別は女が良いですね。男として生きていたので、女の状態での自慰などの快楽に興味があるし、何よりむさい男よりも美女・美少女の方が良い。

 

 髪は金髪、肌の色は白。

 

 魔術資質は万能型にしましょう。衛宮士郎のような特化型もいいですが、下手に魔術回路の方向性が特化されると魔術の研究に支障が出てくる。

 

 外見年齢は生まれたときは赤子ですが、ある程度まで育って外見年齢が固定されるそうですね。そうなると幼すぎるのも歳を取りすぎるのも駄目なので、16歳にした。22歳も捨てがたいけど現役女子高生の年齢が綺麗でしょう。白人女性は15,6が一番美しいという事を聞いたことがあるから。

 

 ちなみに瞳の色は真祖や死徒の場合は赤なので私も通常は赤で、力を高めると金色になるそうです。

 

「ではこれでお願いします」

 私は用紙に記入して死神に渡した。

 

「ふむ、性転換希望者か。珍しいのう」

「そんなに珍しいですか?」

「そうじゃ、美女・美少女が好きという男は多いが、TSして自分がそうなりたいと思う者は少ない」

「前回は男だったので、女の人生なら新鮮味があると思うのですが?」

「そうか、それは人ぞれぞれじゃしのう」

 

 死神がしみじみと言う。

 

「そういえば結構特典を付けて貰いましたが、宜しかったでしょうか?」

 ちょっと欲張りすぎたかなと今になって思うのです。

 

「まぁ構わんじゃろ。この内容じゃとそこまで強くなるわけじゃないしの」

「そうですか、結構強いと思うのですが」

 

 型月の真祖と人間のハーフでこのスペックだよ。

 

「そなたと同じように転生した者の中には神々をも凌駕するのがいての。それに比べれば可愛い物じゃよ」

 

 神々をも凌駕する。何その化け物は? なんか聞くのが怖くなるね。まあ、型月系列の世界にはそんな化け物はいなかったから、会うことはないだろうから別にいいけどね。

 

「では、この条件で転生させよう」

 

 死神がそういうと私の意識が消えていった。

 

 

 

「そういえばトリッパー達の組織の事を話すのを忘れておったの」

 

 その場に一人残った死神がこぼす。

 

「まあ、彼等と接触すれば説明してくれるから問題ないかの」

 

 死神はそう考えた。

 

 

 

 八世紀の欧州。朱い月が作り出した真祖とよばれる種族がその欠陥から墜ちてしまい魔王となる事がしばしばあった時代。そんな中に一人の実験体が生を受けた。

 

 それは真祖と人間の子。先に誕生して失敗作とされたアルトルージュの次に作られた実験体ザビーネ・クライバー。それが実験体に与えられた名前。

 

 その個体はスペックが平均的な真祖の八割ほどしかなく、その明らかな能力不足から失敗作の烙印を押された。とても朱い月のよりしろになりえない。そんな周囲の失望を余所に、その子は成長していった。

 

「私はザビーネ・クライパー、華の16歳だよ」

 

 今の私は外見年齢16歳の金髪赤眼の絶世の美少女だよ。

 

「ザビーネ、誰に向かって言っているの? それに貴女は30歳じゃなかったかしら」

 と、お友達のアルトルージュに突っ込まれました。

 

「電波が、もとい読者サービスだよ」

「はあ!? 貴女時々訳の分からない事をいうのね」

 

 アルトに突っ込まれる私。

 

 アルトルージュ・ブリュンスタッド。私と同じ真祖のハーフで失敗作。同じような境遇の為か、よく話すようになり友達になりました。

 

「アルト。気にしないでよ」

「ザビーネ、そのアルトっていうの止めてくれない」

「まぁ良いじゃない。私と貴女の仲なんだしね」

 

 私はアルトに抱きつく。

 

「はぁ、しょうがないわね」

 

 溜息を付いて呆れるアルトルージュ。

 

「ところでザビーネ。貴女魔王狩りに参加させられるらしいわね」

 

 アルトルージュが心配そうに言っています。そういえば明日出掛ける予定ですね。

 

「全く長老たちも勝手なものね。失敗作と言って冷遇している癖にそんな危険な事をやらせるなんて」

 

 魔王。吸血衝動を我慢できなくなり人の血を吸って暴走した真祖。それは最早地球の精霊ではなく、吸血鬼の王というべき存在です。

 

 元々死徒二十七祖の中には真祖に匹敵する力を発揮できる者もいるが、それは真祖が吸血衝動を抑えるために自らの力の大半を使っているためだ。そして吸血衝動を抑える必要がなく全力を発揮できる真祖が魔王だ。それは並の真祖では太刀打ちできる訳がなく、複数の真祖が徒党を組んで魔王と戦うという形になっている。

 

 この時代にはまだアルクェイドがいないので、魔王狩りは真祖達の仕事だった。それで何でそんな事に私がでてくるかというと、真祖達が私に参加するように命令してきたからです。

 

 私は吸血衝動を抑える必要がなく全力で戦えるから、スペックがそれほど高くないのに、現存する真祖の中では最強を誇ります。だから私を失敗作と見下している真祖たちも戦闘では私に勝てないんです。そうなると、「それだけ強いなら魔王狩りに参加しろ」と言われるわけです。

 

 拒否すると真祖たちに殺されるでしょうね。さすがの私も一対一ならばともかく複数の真祖と戦うのは分が悪すぎる。逃げだそうにも、なまじ真祖は世界と繋がっているものだから、地球にいる内はどこにいても居場所が丸分かりです。という訳で渋々従っています。

 

 ムカつくので、アルクェイドの暴走の時は助けずに見殺しにして上げます。本当は何人か助けて上げようと思っていたけど、その気も失せました。

 

「アルト心配しないで。ちゃんと帰ってくるからね」

 

 心配するアルトに微笑む。大切な友達を悲しませるつもりはありませんし、折角トリップしたのですから、そう簡単に退場するつもりもない。精々トリッパーのチート振りを試してみましょう。




解説

■ザビーネ・クライバー
 身長160㎝、体重47㎏、スリーサイズ87/57/85(16歳の時に外見年齢が固定して、それ以来変化なし)。金色の髪を膝裏の辺りまで伸ばした美少女。前世は日本人男性で、転生でTSしている。朱い月のよりしろとして作られた実験体だったが、スペックが低くて失敗作の烙印を押されている。その後、他の真祖から失望されていたが、本人はトリッパーなため気にせずマイペースに生活している。上記の事情から真祖たちから評判はあまりよくないので親しい者もいないから、ザビーネは彼等を見捨てるつもりである。転生特典によって、地球に限らず好きな星と契約してバックアップを受けることができる。能力も安定している上に割と高く、特に魔術の才能には優れている。本人は様々なネタからアイデアを出して色々と研究している。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。