トリッパー列伝   作:ADONIS+

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ザビーネ・クライバー その二

「メドローア!」

 

 ザビーネが遠距離から放った巨光が、魔王を根城にしていた城ごと消し飛ばした。討伐対象の魔王は私の奇襲の一撃で死亡。身も蓋もないやら狡いなどと突っ込まれそうですが、魔王とまともにガチンコなんてやってられません。

 

 ついでに今回は新開発の魔術を使いました。私が『DRAGON QUEST -ダイの大冒険-』からネタを引っぱり出して開発した大魔術で、決まれば魔王でもイチコロです。

 

 真祖の凄いところは欲しい知識は星の方から教えてくれる所です。おかげで今の魔術だけでなく失われた神代の魔術まで使えます。私はそれらの知識をかき集めてより効率的に術式を開発しています。

 

 私が魔王狩りに無理やり参加させられてから、早くも50年が過ぎました。魔王との戦いで最初は苦戦してしまいましたが、何とか生き残った。

 

 そして30年ほど前に監察軍という他のトリッパー達の組織に関わるようになり、結構問題なく物事が進むようになりました。

 

 当初は自分以外にも作品世界にトリップした人間がいたことや、彼等の隔絶した技術には驚いた。純粋科学技術だけでも、元いた21世紀の地球と比べると千年は進んでいたし、優れた魔法技術まであった。ただ彼等の魔法は神秘を含まない科学技術の延長としての技術であったので、神秘を扱う私にはその分野の協力を求められた。

 

 そんな訳で技術交流が行われたが、監察軍との交流は私にとっても大いに有意義だった。最も彼等の技術によって多くの魔法が魔術に墜ちてしまったのは複雑な思いがあった。特に彼等は、『異世界転移』『並行世界の運営』『時間旅行』という三つの魔法を独自の技術で実現していた。

 

 私は彼らの技術を元に異世界転移(私自身は世界門(ワールド・ゲート)という名称を付けている業)の魔法を開発したことで根源の渦に到達した。これは監察軍やブリタニア帝国では魔術ですが、この世界では立派な魔法。五つの魔法とは違うので第六魔法です。

 

 第二魔法の並行世界の運営は隣り合う可能性の世界に行く事が出来る魔法で、異世界転移の場合は隣り合う世界ではなく全く違う異世界に行くことができる。これで数多の下位世界を行き来する事ができる。

 

 分かりやすくいいますと、第二魔法の場合は型月世界の並行世界しか移動できないが、私の第六魔法ならばこの型月世界からリリカルなのはの世界に行き、更にネギま!の世界に行くなど、様々な下位世界に自由自在に移動できるのです。

 

 こういうと凄いと思うのだが、実は監察軍では魔術を用いずに技術としてこれが実現されて誰でも施設を利用すればできるので、私の使う魔法は監察軍ではそれほど評価されていない。

 

 

 

 さて、そんな私の派手な魔術にお供(監視役?)の二人の真祖も空いた口が塞がらない。真祖は通常魔術を使わない。空想具現化や身体能力を用いた肉弾戦がメインだ。

 

 そもそも魔術で真祖を倒すのは難しい。それが魔王ともなれば尚更です。神代の魔術でも難しく現在ではほぼ無理な事であった。私がその常識をぶち壊したけどね。

 

「さて魔王は片づけたわ。後は残敵の掃討ね。準備はいいかしら?」

 

 魔王は部下にした死徒や死者を囲っている事が多い。城ごと消し飛ばしても生き残りはいるはず。

 

「……ああ、分かっている」

 

 ある程度動揺から立ち直った真祖が答えた。そして私達は突撃して、案の定生き残っていた死徒たちを葬った。

 

 後日、真祖たちの間で私の評判が更に悪くなった。なんでもあまりにも卑怯とのこと。いや確かに遠距離から大魔術で奇襲攻撃するのは正々堂々とは言えないけど、スポーツではないので騎士道精神を主張されても困ります。大体貴方達は騎士じゃなくて吸血鬼でしょうが。

 

「それは災難だったわね。ザビーネ」

 

 そんな私はアルトから慰めの言葉を貰った。

 

「無理やりやらせておいて、やり方が悪いだなんて言われたらたまらないわ」

「でも魔術で魔王を倒すなんて凄いわね」

 

 アルトルージュの言う通りそれは偉業ともいえるでしょうね。人間の魔術師がそれを成していたのならばだけど。私の場合はチートスキルに頼っている部分が大きいのであまり喜べない。思いっきりズルをしていますから。

 

「……それほどでもないわ」

 

 ザビーネは曖昧に言葉を濁す。

 

「そういえばザビーネ。たまに貴女の反応が消えることがあるのだけど、どうしてかしら?」

「……世界との繋がりを一時的に切っているだけよ」

「繋がりを切るって、そんなこと可能なの?」

 

 異世界に行っているわけですから、この世界の地球との繋がりも当然切れる。その場合は、力の供給を失ってしまい空想具現化が使えなくなるし、力も死徒二十七祖と大して変わらなくなってしまう。そうなっても改めて現地の星と契約すればいいだけですから、それほど問題はないですが。

 

 通常真祖は世界と常時繋がっている。そもそも真祖は自らを蝕む吸血衝動を己の力の大半を使って押さえ込んでいる。それは世界と繋がっていて力の供給を受けているからこそ出来ることで、仮に供給が無くなれば当然吸血衝動を抑えきれなくなり魔王となってしまう。だからそれを行う真祖は皆無だし、その方法も検討すらされていない。

 

 しかし、私は例外。真祖でありながら人間でもある私は吸血衝動なんてないから、戯れに血を吸っても吸血衝動に飲まれる事はない。だから供給が途切れても問題ない。

 

「可能よ。詳しい方法は言えないけどね」

 

 ちなみにアルトルージュには、それどころかこの世界の者には監察軍の事を教えるつもりはありません。ゼルレッチだけはいずれ気づくかもしれないが、わざわざ言う必要もない。

 

「そう、特に問題がないならいいわ」

 

 私が話したくないのだと理解したアルトルージュは、それで話を切った。深く追求してこないので有り難かった。本当は色々と話しておきたかったけど、原作の流れを変えすぎる可能性がある以上、それは避けなければならない。第一、まだアルクェイドが生まれてもいないのだし。

 

 

 

「ご主人様、こちらにおられましたか」

「あら、エルザどうしたの?」

「長老方がお呼びです」

「……またですか」

 

 忌々しい。どうせ小言を言うのでしょう。会いたくもないが、無視するとそれこそなに言い出すか分からない。

 

「仕方ないわね。エルザ貴女も同行しなさい」

「かしこまりました」

 

 エルザは恭しく頭を下げて長老の所に向かう私の後ろを付いていく。

 

 エルザは20歳ほどのメイドで、多少魔術の才があったので10年以上前に奴隷として売られていたのを私が買い取った。以来、自分のメイド兼魔術の弟子として育てた。

 

 実のところ私は、エルザが魔術師として大成する事を望んではいない。

 

 何処の魔術師の家系もそうだが、初代は土台作りが主であり、知識と魔術刻印を後継者に残すことが主です。極稀に衛宮士郎の様に初代でありながら強力な力を発揮する者もいるが、そんな者は例外でしかない。(士郎は、切継とは血が繋がっておらず、魔術刻印も知識も継承していない)

 

 多くの初代の魔術師は大した事はできない。精々、手品に毛が生えた程度でしかない。勿論、それなりの才能があれば、特化型の魔術師として育てることも出来たが、それは見送っている。だからエルザは魔術刻印持っておらず、魔術の属性も火という平凡な物。魔術回路の数も一般人よりはマシだが、魔術師として大成するには足りない。

 

 しかし、ザビーネはエルザに土台作りをやらせるために魔術を教えていた。それは魔術刻印の実験の為だ。

 

 魔術刻印は、魔術家系の技術の結晶と言っても過言ではないが、血縁者にしか移植出来ないという問題点がある。

 

 血縁者に継承者になる者がいないとマキリのように家系自体が衰退して刻印も失われてしまう。それに血縁者とはいえ他人から受け継いだ刻印は保有者に副作用をもたらす。だが、もし魔術刻印を肉体にではなく、別の物に移植して利用できるならば状況は変わる。

 

 幸い夜天の書(魔法少女リリカルなのは)のデータなどがある。魔術刻印を別の物に移植して、それの所有者が利用できる道具があるならば、血縁を問わず継承者に魔術の継承ができる。

 

 そもそも魔術師は根源を目指す物であるが、彼等はあまりに自己中心的であるので、一般人の迷惑は相当なものであろう。ハッキリ言って、魔術師は何一つとして社会に貢献せずに、裏で好き勝手している厄介者でしかない。

 

 一般人には到底理解できないだろうが、それをいかにも崇高な目的であるかのように考えて自己中心的に活動する。それで、彼等のやっていることが実を結んでいるか?と聞かれればハッキリ言ってNoとしかいえない。

 

 根源に到着できずに、家系が途絶えるのは当たり前。出来もしないことを大義に、好き勝手して終わるだけというのが大まかな結果です。

 

 また魔術の歴史を調べると、彼等の秘匿主義により知識の継承が上手くいかず知識が失伝してしまうというのは日常茶飯事。魔術が停滞ではなく衰退している一因はこれかもしれない。

 

 時代が下る事に神秘が薄れていき、そして失伝していく知識。これでは魔術師が徐々に衰退していくのは当然のことだろう。

 

 

 

 今のところは試行錯誤の段階だが、実用化の目処が立っているので、もうすぐ完成するだろう。

 

 しかし、この技術は極秘にしておく。知識の秘匿と独占という以上に、アプローチのやり方が魔術師の方向性とは相容れないからだ。

 

 通常魔術師は血筋を大切にする。親から子へ、魔術刻印と知識を託される。親は優秀な魔術師の子を得るために品種改良して子を作る。これが彼等の大前提だ。

 

 しかし、私は血筋を度外視して、才能があればその者に魔術刻印と知識を継承させるという物だから、他の魔術師達の反発は当然起こるだろう。

 

 バレなけらばいい。わざわざ知らせてやる必要はない。それにアレは元々この世界の技術だけでなく、監察軍の技術まで使うつもりだからどう考えてもオーパーツとなるでしょうから。




解説

■第六魔法・世界門(ワールド・ゲート)
 トリッパー列伝オリジナルの魔法でその内容は異世界転移。型月世界では並行世界とも異なる完全なる異世界に行くことはどんなにお金と時間をかけても不可能なので、これも立派な魔法。この時代はまだ多くの魔法が残っていますが、月姫の原作開始時期には魔法は六つしか残されていないという設定です。元々は監察軍の異世界転移技術(ユクドラシル・システム)の機能を参考にして作り出した大魔術。

■エルザ
 ザビーネが人買いから買った奴隷。千年以上前の欧州では人身売買は当たり前の事で、貧しい農民などは凶作の時に子供を売っていたという設定です。事実、近代までは世界的に見ても人身売買は珍しくなかったそうです。エルザはこの時代の奴隷としては破格の待遇で、食事も教育もちゃんと受けていて、その扱いの良さから主人のザビーネを慕っている。
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