「石動会長、これはどういうことでしょうか?」
「あなたは宇宙人とどんな関係を持っているのですか?」
記者会見の場に集まっていたマスコミからの質問の数々。私はそれにうんざりしていたが、それは表情に出さずに話すことにした。この世界の人間の注意を反らすにはこいつらを利用したほうが都合がいいからね。
①地球外には様々な地球外知的生命体が所属している組織が存在している事。
(事実、監察軍には『ドラゴンボール』のサイヤ人とナメック星人、『封神演義(藤崎竜版)』の始祖、『神秘の世界エルハザード』のバグロムなどが所属しているし、監察軍が存在するのはブリタニア帝国のスペースコロニーなので地球外なので嘘ではない)
②その組織は極めて稀な資質を持つ者に接触してスカウトする。そして石動ミイナがその資質を有していたが為に、十一年前に彼らの組織にスカウトされて所属することになった事。
(監察軍は極稀にしかいないトリッパーしかスカウトしていない)
③また組織には守秘義務があるため、機密事項は話せないこと。
(当然監察軍の機密情報は話せない)
とまあこのような事を話したが、マスコミの質問が相次ぐ。それには監察軍の機密に触れるものもあったので、「それは機密事項です」と答えておいたがそれで満足する訳もなく、「説明責任を果たせ!」だの「国民の知る権利を侵害しているぞ!」といった言葉まで出てくる始末。
「そうですか。皆さんそこまでおっしゃるのなら、それがもたらす結果には当然責任はとってもらえますよね?」
責任をとるという言葉にその場のマスコミが固まる。
「そ、それはどういうことですか…」
マスコミの男性が戸惑いながら質問してきた。
「言うまでもありませんが、私は地球人の一人として彼らと関わっています。その私が彼らと交わした守秘義務を破ったとあっては、「地球人は約束を破る種族だ」とか「地球人と交わした契約など当てにならない」などといった悪印象を宇宙人たちに与える事になるでしょう。そうなった場合、それによって被るであろう被害の責任を貴方達は負えるのか?と言っているのです」
私の言葉に彼らの顔が引きつる。マスコミというものは他人を責めて非難することを日常茶飯事で行う癖に、自分が責任を取らされて非難されるのは嫌がるものだ。
「どうしました。すべての責任を取ると言う方はおられないのですか?」
私はマスコミを見渡すが、彼らはそろって沈黙してしまっている。
「では、私は守秘義務に抵触しない範囲で話すということで宜しいですね」
私の言葉に彼らはしぶしぶ頷いた。ここで下手なことを言うとやばい事になると理解したのだろう。こういった連中はこうしておかないとすぐに付け上がるから面倒です。
でもここまで言っておけば今後はマスコミだけでなく政府関係者も私から情報を聞き辛くなるでしょう。誰だって責任は取らされたくないですから。
さてと、そろそろ本題に入るか。
「さて、では本題に入りますが、実は私は彼らとある計画を立てています」
「計画ですか?」
「兵藤、マーズ計画の資料を配布して」
「はい」
打ち合わせどおりに兵藤はマーズ計画の資料をマスコミに配布していく。その資料を見たマスコミは騒然となった。それは当然だろう。それには前代未聞の大事業が書かれていたのだから…。
五年後。
東京石動ビル最上階。そこでは石動グループの最重要セクションが存在していた。
「しかし、本当に火星に海ができましたね」
マーズ計画の資料を眺めていた社員の男が感慨深げに職場の先輩に話しかけた。
「ああ、火星のテラフォーミングも終わったから、火星進出がいよいよ始まる。いよいよマーズ計画の本格始動ということだな」
マーズ計画。それが石動ミイナが進めている計画であった。
それは、まず火星で環境用ナノマシンを使って大気成分や土壌を最適化し、北極海と火星にワープゲートを設置して地球の海水の一部を火星に送り込む事で火星に海を形成させるというものだった。これにより地球の海面が1mも下降するという試算が出ていた。
火星のテラフォーミングをやりつつ、地球温暖化による海面上昇問題を解決させるという一石二鳥の計画であったが、当然ながら誰もが実現不可能だと判断するだろう。だが、その計画に宇宙人が関わっているとなると話が全く違ってくる。
実際、監察軍からすればこの程度の事は大した手間ではない。
ブリタニア帝国は惑星開発を積極的に行っていたためその手のノウハウの蓄積は膨大なものになる。環境用ナノマシンによるテラフォーミングなど常套手段にすぎないし、海水にしても北極海と火星にチューリップ(機動戦艦ナデシコ)を降下させて北極海の海底から海水を火星にボソンジャンプさせればいいだけだ。
ここまでが第一弾で、そうしてテラフォーミングが完了した火星に各国から移民を集って送り込むのが第二段だ。この第二段では石動グループのこのセクションが盛大に動いていた。
「うちの会長は本当に凄いですよ。宇宙人に火星をテラフォーミングして貰うなんて、まるで映画のようですね」
「ああ、あの人は普通じゃないからな。見た目は女子高生にしか見えないけど」
「あれですね。テレビで宇宙人の技術で老化を克服して不老長寿になったと言ってましたね」
実はミイナが世間に公表した情報の中には自らの体に関することも一部含まれていた。最も彼女は本当は不完全ながらも不老不死であるが、不死という言葉を使わずに説明することで、周囲に不老長寿であると誤認させる辺りは抜け目がなかった。
現在では31歳になるミイナもさすがにこれ以上外見年齢を誤魔化しきれないと判断して公表したのだが、これは思わぬ反響を呼んだ。
「永遠の16歳ですか。アニメならともかく本当にそんな人がでてくるなんて思いませんでしたね」
「それで、会長は世の女性達から嫉妬されているらしいぞ」
女性は教養とか才能とかにはそこまで嫉妬しないが、若さとか美貌に関する妬みは激しくミイナを困らせた。
「それだけじゃなくて、各国の有力者からも会長にその件で問い合わせが殺到して騒ぎになったしな」
ミイナはこれらに関しては機密として切って捨てていたが、本人曰く「無茶苦茶面倒でした」とうんざりした表情で発言している。
「しかし、この大事業よく各国が認めましたね」
「地球温暖化の影響で今世紀末までに海面が1mも上がると言われるからな。各国もそれを考えると拒否できなかったらしいな」
地球の海面が1mも上がれば各国で多くの土地が海に沈む事になる。この件は原作でも問題になり、原作のエデン計画は埋め立て技術が各国で注目されたが、ミイナが主導しているマーズ計画は海水を火星に移動させることで地球の海面を下げて対処するという発想から計画されていた。
これの良い所は各国がコストをかけることなく海面上昇という深刻な問題を解決できる事だ。各国は北極海から火星に海水を送り込むことを承認するだけで済む。勿論、承認するだけならタダだ。
「ただ問題もあってな」
「問題ですか?」
「ああ、テラフォーミングが終わった火星の領有権だよ。どこの国の物かって国連で散々揉めてるだろ?」
「そういえばニュースでやってましたね。でもあれは宇宙人たちや会長の権利が大きいんじゃないですか?」
火星をテラフォーミングしたのは宇宙人だし、宇宙人と協力してそれを計画したのは石動ミイナだ。当然ながら地球にいただけの各国とは主張できる権利が違う。
「ああ、だから各国も会長が何を言い出すか注目しているって訳さ」
「そうなんですか本当に会長は凄いですね」
社員は自分達の会社の会長に思いをはせた。彼はもしかしたら会長がまた世間の度肝を抜く事をするかもしれないと内心期待していたのであった。