「大変残念なことに、SAO事件に巻き込まれた在田が先日亡くなったそうだ」
ホームルームの際に担任の教師から伝えらえたクラスメートの訃報に周囲の生徒たちは騒めいていたが、そんな中で俺は微笑した。
俺の名前は岩本三郎(いわもと さぶろう)。死神によってこの『ソードアート・オンライン』の世界に転生したトリッパーだ。
最も死神はサプライズとかいって転生先を教えてくれなかったが、一つだけ能力をくれた。それが『すべての原作とその関連商品のコピー』だ。
これはどういったものか説明すると、まず、すべての下位世界にはすべからず元となった原作が存在している。そして原作はメディアミックスによる各種メディアで登場する事が多い為に、原作とその関連商品という物が多数出てくるのだ。
例えばライトノベルが原作である『スレイヤーズ』はアニメ、映画、漫画、ゲームなど幅広くメディアミックス展開されている。つまり原作とメディアミックスされた関連商品が誕生しているワケだ。
そして、この能力は上位世界で一度でも商品化されたことのあるすべての原作とその関連商品を制限なく自在にコピーできるのだ。その為、漫画、ライトノベル、アニメDVD、ゲームソフトなどいくらでも出せる。
この能力のおかげで俺は様々な娯楽品を楽しむことができた。前世で続きが気になっていた漫画も見れるし、全く知らなかったアニメとかも見れるとあって、この能力はオタクにはたまらない物であった。
ちまみにこの能力は俺によっては唯の娯楽にすぎなかったが、俺が所属している監察軍はこのコピーに興味を持って、俺がコピー可能な物を一通りコピーして渡したら大変喜んでいた。なお、それらの物品は監察軍で大いに有効活用される事になるが、それは余談である。
そういう風に俺は平凡に第二の人生を送る日々であったが、2022年5月にナーヴギアが開発されてVRが実用化したことで、この世界がデスゲームで有名な『ソードアート・オンライン』の世界である事に気付いた。
これまでは目立つ特徴がなく近未来な日本だなとしか思っていなかったので原作が何かわからなかったが、これで色々とできるだろう。
さて、皆さんは『ソードアート・オンライン』(以後SAO)の世界に転生してしまったとしたらどうしますか? ここで、デスゲームに参加して俺が英雄になってやると思う人もいるかもしれません。
しかし、よく考え直してください。原作ではデスゲームに参加した一万人のうち四千人が死んでいますし、原作のようにちゃんと上手くいったとしても二年間も昏睡状態になってしまうワケなんです(場合によっては二年どころか三年、四年とかかる可能性も大きい)。
そうなったら当然ながら、進学もキャリアも終わりです。おまけに体がろくに動かせないから厳しいリハビリ生活を余儀なくされるという、人生オワタな感じになるのです。
それを考えれば、SAOを自分でやるという選択肢はありませんが、折角のデスゲームの機会です。これを有効活用しようと思った私は、ナーヴギアとSAOを購入して在田というクラスメートに渡した。
その際に。「SAOを購入したはいいけど初日は用事があってプレイできないので、代わりにやってみないか?」と進めてみたのだ。
何故そんな悪質な事をしたのかって? 実は在田は俺をイジメている嫌な奴だからですよ。
正直思いっきりムカついて鬱陶しかったから始末したかったけど、まさか監察軍にイジメられているから在田を排除してね、とは情けなくてとても言えないのだ。
しかし、在田を罠に嵌めてデスゲームにぶち込んでやれば合法的に始末できるのだ。まさに完全犯罪だよ。もしも、在田が俺をイジメていた事や、俺が在田にナーヴギアとSAOを渡した事を警察にしられても俺が意図的にやったことだとは誰も思わない。
俺が原作知識持ちだと言う常識外れの存在だからこそできることだね。
こうして在田が私の仕掛けた罠にまんまとハマって、ログアウト不可能のデスゲームをやる羽目になったときには内心で大笑いしたものだ。
在田は不良ぽい奴だから案外しぶといかなと思っていたが、割とあっけなくデスゲーム開始から一ヶ月も経たないうちに死亡した。まあ、二年後に生きて帰ってきても学校に居場所何てないけどね。
邪魔な奴も消えたし、これからの高校生活は快適に暮らせそうだ。
デスゲームは自分でやるのは嫌だけど、嫌いな奴にやらせるのは面白い物だな(邪)。
解説
■岩本三郎
『ソードアート・オンライン』の世界に転生したトリッパー。凡人でアニメなどのサブカルチャーが趣味。原作知識を利用して自分をイジメていた奴をデスゲームに放り込むなど意外と腹黒いやつである。
◇転生特典
すべての原作とその関連商品のコピー