気が付いたら老人になっていた。な、何言ってるんだが自分でも意味不明であるが、確か俺はただのサラリーマンだったはずなのに、いつの間にかそうなっていたのだ。
しばらく混乱していたものの、俺は別人の記憶を持っていることに気が付いた。それによるとこの老人はDr.クレー(ドクター クレー)という名前で銀河でも有数の科学者だ。とはいえ、性格が最悪で周囲から嫌われてアカデミーから出ていく羽目になっていた。ええ、『天地無用! 魎皇鬼』で鷲羽にタコと呼ばれていたクレーですよ。
クレーは確かにこの世界でも有数の科学者であったが、性格と野心がそれを台無しにしていた上に、原作ではギャラクシーポリスに逮捕されてしまっている。といっても、未だに訪希深(ときみ)と接触していないことから原作開始からかなり前のことだろう。
俺は原作のクレーのように野心家ではないので、訪希深と接触するつもりはない。どう考えても厄介事にしかならないからな。
幸いにもクレーは科学者として優秀なだけに資産もかなりあり生活に困る事はないから、この世界の超技術を用いていろいろと研究をしながら生活することにした。
それからしばらくして、監察軍という俺と同じトリッパーたちの組織と接触した。元々この世界ではあまりやる事もなかったこともあり、彼らに興味を持った俺はこの世界の技術を持ち込めるだけ持ち込んで監察軍に参加することにしたのだった。
こうして、科学者として監察軍で活躍することになり、俺が持ち込んだ『天地無用! 魎皇鬼』の世界にある、亜空間、時間凍結、生体強化、延命調整などの技術、特に生体強化が監察軍で重宝されるようになるのだった。
この生体強化とは、筋肉、反射神経、運動中枢などをナノマシンによって別組織に再構成する技術で、身体能力の驚異的上昇や持久力の増加を促し、更には細胞の再生回数の増加することで寿命の延長すら可能となる技術だ。
また、この時に肉体だけでなく精神面にも効果を及ぼすことで、長い寿命に心が耐えられるように処置するが、言うならば洗脳のようなもので対象者の精神を長寿に対応できるように調整する形になる。
しかし、生体強化だけでは百五十年~二百年程度生きられる程度しか寿命を延ばすことができない。そこであの世界では延命調整を行う事で生体強化で引きのばした寿命を更に数千年~数万年まで引き延ばすのが一般的になっている。
監察軍ではゴッドブレスというナノマシンで不老長寿と驚異的な再生能力を得ることができていたが、ナノマシンを用いた強化に関してはあまりやっておらず、この生体強化でスペックを向上させるのがある種のブームとなった。これには監察軍ではゴッドブレスのおかげで面倒な延命調整は必要ないので使い勝手が良かったというのもある。
このように生体強化には長所があるものの勿論短所もあり、特に戦闘用に調整された生体強化の場合、力のコントロールが難しく日常生活に支障をきたすことになる。考えてみれば当然であるが、いきなり力が劇的に上昇したら、手加減を間違えてうっかり物を壊してしまうだろう。その為、力加減を学ぶための訓練が必要になるのであった。
勿論、クレーはそんな訓練はとっくに終わらせたことであるが、監察軍本部では他のトリッパーたちが四苦八苦しつつも訓練する光景がよく見られるようになるのであった。
「やっぱこれ面倒ね」
と、力加減の訓練の為に積み木をやっていた金髪ツインテールの少女が愚痴る。
「苦戦しているようだねキャロル」
「ええ、積み木なんて子供の遊びだと思っていたけど中々に難しいわ」
少女の名はキャロル・キリング。クレーと同じ憑依型トリッパーで、憑依型であるがために不足する能力を補うために戦闘用の生体強化を受けていたが、その為にパワーコントロールがやたら難しかったのだ。
キャロルがやっている積み木は子供の遊びであるが、微妙なバランスや力加減が要求されるだけに今のキャロルにはかなりの集中力が必要な遊びで、強化された体になれる訓練には最適であったので、クレーが生体強化を受けたトリッパー達の訓練として推奨していた。
「まあ、やっていればなれるぞ。継続こそ力なりというだろう」
クレーは悪戦苦闘するキャロルにそう励ますのであった。
解説
■Dr.クレー
『天地無用! 魎皇鬼』の世界のクレーに憑依したトリッパー。憑依型なので転生特典はないが、銀河でも有数の科学者の知識と能力をそのまま使用できるためにかなり優秀なトリッパーである。元キャラは性格の悪さと野心の所為で能力を生かし切れていなかったが、別人になったことで監察軍の技術部で頭角を現して活躍することになる。
あとがき
監察軍はゴッドブレスで不老長寿や再生能力を確保しているけど強化処置にはあまり一般的でなかったので天地無用の生体強化の技術を取り込ませる事にしました。それとキャロル・キリングは後で登場するトリッパーなので彼女の話は次の機会に書こうと思います。