トリッパー列伝   作:ADONIS+

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キャロル・キリング(大帝国)

 私の名はキャロル・キリング。元々は日本人の女子中学生だったが、私は生まれつき体が弱く病気で死亡してしまったところを死神にスカウトされて第二の人生を送る事にした。

 

 トリップする形式は転生と憑依があるが、私の場合は赤ん坊からスタートは嫌だったから4歳の幼女に憑依する形にした。まあ、条件として現代よりも文明が進んだ世界の大富豪の令嬢にして欲しいと頼んだ。その理由は文明が進んでいればそれだけ医療技術を進んでいるし、大富豪の令嬢であればやたらお金がかかる高度医療でも苦も無く受けられるからだ。

 

 前世ではあまり裕福でないにもかかわらず厄介な難病に苦しめられましたが、今回は健康でお金に困らない勝ち組になれました。これでも、他の仲間に比べたら随分と控えめですよ。私はチート能力なんて何一つ持っていないですから。

 

 さて、今の私はガメリカ共和国というアメリカっぽい国で軍産複合体を統括するキリング財閥の次女になっています。

 

 ここで軍産複合体といっても分からないと言う人もいるかもしれませんが、簡単に言うと軍需産業を中心とした私企業と軍隊、および政府機関が形成する政治的・経済的・軍事的な勢力の連合体の事で、特にキリング財閥はガメリカの兵器を生産する企業でガメリカの軍事を牛耳っている。ぶっちゃけると軍部を支配している武器商人(死の商人)で、戦闘になると兵器が売れてウハウハなブラックな財閥なんですよ。

 

 まあ、家業を継ぐのは長女のスカーレット姉さんなので私は気楽なお嬢様生活を送るつもりでしたが、監察軍と接触してこの世界が『大帝国』の世界であると判明して、その原作知識を知るとそういうわけにはいかなくなりました。何故ならスカーレット姉さんはガメリカに留学していた日本人士官東郷と結婚して勘当されてしまい、キャロルがキリング財閥のトップに立つ羽目になるからです。

 

 この事を知ったときには既にスカーレット姉さんと東郷が付き合っていて、どうこうすることはできない状況になっており、結局姉さんは娘を連れて日本に行ってしまった。

 

 こうして、私は予定外にもキリング財閥のトップにしてガメリカを動かす若草会のメンバーになる羽目になったが、一応原作知識を利用してあれこれやってみたものの第二次宇宙大戦や対日戦争は阻止できず、おまけに初戦が日本に押される羽目になった。というのも、原作を知る私はともかく他の三人は日本軍を侮り過ぎており、日本相手に下手に手を抜くとヤバいと言っても受け入れてくれなかったからだ。

 

 勿論、私は原作のキャロルのように軍の指揮官として出しゃばる事などせずに正規軍人に任せていたが、それでも主人公補正なのか東郷率いる日本軍に押される羽目になった。

 

 そんな中でドロシーがCOREを開発して実戦に投入して日本軍相手に大戦果を挙げる。これをもってドロシーはCOREを人工知能と偽ってCOREの正式採用と量産を推し進めようとした。

 

 当然ながらCOREといういつガメリカを食いつぶすか分からない危険極まりない代物を採用するわけにはいかない。私はCOREが犯罪者の脳を使用した天然のバイオコンピュータであることを指摘して、ついでに人道面の問題とCOREが記憶を取り戻した場合の危険性を主張してCOREの採用に猛反対したが、ハンナがCOREに賛成してクーもハンナに従った為にCOREが採用されることになった。

 

 これらの一連の事で私と他の三人との間には大きな亀裂が入る事になるが、COREが採用された時点でもうそんなことに構っていられる場合ではなくなった。いつCOREが叛逆するか分からないので、私は監察軍から身代りのコピーロボットを借りてガメリカから離れることにした。

 

 

 

 宇宙統一暦941年。私は原作のようにリンカーンの記憶を取り戻させるような事をしていない為にCOREの反乱が大きく遅れてこの時に発生した。

 

 正直、キャロルが余計な事を言わなければCOREにされた犯罪者たちの記憶が戻らないかもしれないと期待していたが結局無理だった。ドロシーもCOREの記憶を消去したと言っていたくせにキャロルが少し余計な事を言っただけで記憶が戻るというとんでもない欠陥があったから何らかの原因でこうなったと思うが、今となってはどうでもいいことだ。

 

 この時期にはガメリカ海軍が完全にCOREに置き換えられていた上に、軍以外にもCOREが幅広く普及していて、それが致命的であった。原作よりもCOREとCORE対応艦が多く生産されており、COREに依存する割合が大きかった為にガメリカは一気に叩き潰されてしまった。

 

 更に世界的にはドクツ第三帝国はエイリス、ソビエト、ガメリカによってとっくに降伏していた。

 

 日本帝国もCORE対応艦隊の圧倒的な能力によってハワイ星域を失い、日本艦隊は壊滅して、東郷以下主だった将兵は戦死していた。若草会が戦争を引きのばしていた為にまだ降伏していないけどで、最早降伏寸前だったのだ。当然ながらこの状況では各国はCOREの反乱に後手に回り、COREに各個撃破された。

 

 かくして、宇宙人類は壊滅して生き残った人々もCOREによって蹂躙されて次々に虐殺されていった。

 

 そして、人類蹂躙を終えてすぐキングコアがプリンセスと共に姿を消してから統治者も狩りの対象も失ったCOREは同士討ちを初め、何千年かけて宇宙に版図を広げた人類をあっという間に滅ぼしてしまった機械人たちは、それ以上の速さで自分たちを滅ぼした。

 

 もしかしたら、何体か何人か生き残りがいるのかもしれないが、それはこの世界に見切りをつけて監察軍本部に移住したキャロルにはどうでもいいことだった。

 

 そして、長き月日が流れたある時、キャロルは戯れに『大帝国』のある惑星のある廃墟に訪れた。

 

「よう、やはり生きてやがったのか。ツインテールのお嬢ちゃん」

「私が生きていた事に驚かないのねキングコア。いえ、リンカーン」

 

 廃墟の中には機能を停止したプリンセスを抱えた朽ち果てたキングコアがいた。

 

「てめえは他の若草会の連中と違ってわざわざ身代りを用意して行方をくらませていたんだ。そうそう簡単に死ぬわきゃねえとふんでたんだよ」

 

 若草会の三人はCOREの反乱の際に三人とも私のコピーロボットと一緒に捕らえられてしまった。クーは男だとばれて早々に殺されたが、ハンナとドロシーはCOREから凌辱された末に死亡している。また私のコピーロボットもその正体がばれてしまい破壊されていた。

 

「だが、その姿のままという事は、てめえも真っ当な人間じゃねえようだな」

「そういう事よ」

 

 キャロルは生体強化を施してゴッドブレスを投与された14歳のときから一切外見が変化していない。その為、何十年、何百年すぎても老いることはなかったのだ。

 

 原作のキャロルはどちらかというと貧乳でツインテールという外見から18歳という実年齢よりも若く見えたが、この世界のキャロルはそれよりも4年ほど外見年齢が若い状態で固定されていた。

 

「まっ、ここであったのも何かの縁だ。ちょっと長いがバカげた話を聞いてくれよ」

「ええ、時間があるからいいでしょう」

 

 キャロルはリンカーンの話を訊くことにした。キャロルとしても暴走の果てに人類を滅ぼしてしまった男の話には興味があったのだ。




解説

■キャロル・キリング
『大帝国』の世界でキリング家の次女に憑依したトリッパー。憑依型なので転生特典を持たない。文明の発達した世界で大富豪の令嬢という勝ち組になるようにしていたが、COREの反乱でその世界の文明どころか人類そのものまで滅びてしまったのでそれが無意味な代物となってしまう。その為、COREの反乱直前から監察軍で活動している。
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