俺の名は鳥橋裕紀(とりばし ゆうき)。『学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD』の世界に憑依したトリッパーだ。トリッパーといっても憑依型だから転生特典なんか持っておらず、原作知識と前世の記憶を除けばただの男子中学生と変わりない。
正直、トリップした世界があのゾンビ漫画の世界だったことに絶望を感じた。ハッキリ言って生き残れる自信はまるでなかった為にXデーが近づくにつれてビクビクしていたものである。
しかし、監察軍と接触した事で俺の現状が一変した。この世界に見切りをつけた俺は高校生活も家族も捨てて監察軍本部に保護してもらう事にした。幸い監察軍も俺の現状に同情してくれた。
ちなみに監察軍本部に保護してもらうのは俺だけで、家族は放置することにした。何故かというと確かに中学生であれば親の保護が必要で、親が死んでしまうと進学やその後の生活に困るだろう。
しかし、それは通常の場合だ。この世界は奴らによって社会が崩壊してしまうから進学や就職などと言ってられなくなる。そうなると親の保護というのは必ずしも必要というワケではない。
むしろ監察軍に保護してもらう際に家族がいれば説明が面倒というデメリットがあるのだ。大体どう説明するのだ。まさか「これから世界上でゾンビが現れて危険だから異世界の組織に保護してもらおう」とでも言えと、そんな事をしても両親から精神異常者扱いされるだけだろう。
かといって、実際に奴らが猛威を振るってから家族を救出するのはこちらが危ないし、大体奴らの発生メカニズムがはっきりしていないのが問題だ。多分ウイルス感染か何かだと思うのだが、確証がないため、奴らが発生直前以降はあの世界の地球上で活動は禁止されているのだ。
下手をして奴らが監察軍本部で発生したら目も当てられない。その為、俺と監察軍は面倒だから家族を放置することにした。といっても監察軍では俺の行動に賛否両論がある。
監察軍の目的はトリッパーの支援もしくは保護なので、トリッパーの家族は正直どうでもいいが、流石に家族を見捨てるトリッパーはあまりいないから監察軍はその負担を背負う事になる。その為、組織として監察軍の利益だけをいうならトリッパーが家族を見捨ててくれた方が都合がいい。
しかし、人間としての情でいうなら家族を見捨てる行為を嫌がる者が多い。そういった者は俺を軽蔑しているが、逆にトリッパー以外の人間を軽視しているトリッパーなどは俺の行動をどうでもいいという考えているようだ。まあいいけどね。
そして、時間が流れ原作開始の時に、俺は監察軍の巡洋艦で宇宙空間から地球の様子を確認していた。すでに日本だけでなく世界中で奴らが猛威を振るっていた。人々はその異常事態に全く対処できず社会が崩壊して国家さえも壊滅状態になっていた。
無理もない。こんな非常識極まりない事を想像することも対処する事も不可能だ。完全に奇襲を食らった形で各国はろくに動けずに大打撃を受けていた。
俺はそれを巡洋艦のウィンドウで見ていたが、本当にゾンビ映画そのまんまな光景にドン引きしていた。まったくいかれた世界です。某国がどさくさまぎれに核兵器まで打ち込んでいたからもうあの世界は終わりですね。終末という言葉がこれほど似合う光景はそうはないでしょう。
恐らくこの世界は人類絶滅か、人類壊滅という形になるだろう。奴らだけでも問題なのに、なまじ原子力技術が世界中に存在しているのが拙い。これじゃ核兵器や原子力発電所などはまともに運営できずに放射能によって地球に致命的な環境汚染を招くことになるだろう。そうなれば人類は生き残れない筈だ。
こういう混乱状態になると、核兵器や原子力関係施設があるのは致命的だ。あれはきちんと管理できる体制で初めて安全を確保できる代物だからな。こうした不測の事態にはどうしようもないだろう。
巡洋艦のウィンドウを使っていることもあって、まるで映画を見ているようだが、これはまぎれもない現実で死体が生きている人間を襲っている凄惨が光景が広がっていた。本当に監察軍に助けを求めて正解だった。あんな地獄みたいな場所にいたくありませんよ。
そしてゾンビ映画そのまんまなデータは数か月に渡って取られて、その後監察軍に提供されることになった。それを見た監察軍の反応は「ゾンビ映画そのまんまだな」だったりする。
解説
■鳥橋裕紀(とりばし ゆうき)
監察軍に亡命して所属することになった憑依型トリッパー。転生特典は持たず、前世の記憶以外はただの男子中学生にすぎなかったが、不運なことに学園黙示録の世界にトリップしてしまう。この為、この世界での進学就職といったごく普通の生活や親の加護もまったく無意味となった。更にもともと憑依によって両親に馴染めずに家族よりも自分を優先する性格になっていた為にあっさりと見捨てている。尚、裕紀の家族は勿論死亡している。