トリッパー列伝   作:ADONIS+

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御堂麻耶 その二

 さて今回の第五次冬木聖杯戦争は衛宮士郎が主人公として描かれている。その為、彼の動きがストーリー展開上かなり重要なので、私は士郎には使い魔で監視していた。

 

 その結果、セイバーの召喚とそれによるサーヴァントがすべてそろった事をいち早く察知できたわけですが、ここで少々予定外の事がありました。というのも遠坂凛のサーヴァントがアサシン(佐々木小次郎)だったことが判明。

 

 どうも私がアーチャーを引っ張ってしまった為に、遠坂凛にはアサシンが回ってきてしまったようですね。それ自体はどうでもいいですが、どうしたものでしょうか?

 

 あのアサシンとセイバーだとバーサーカー相手に勝利を収めることは難しいでしょうね。何しろ十二の試練というチート宝具がありますから単独であれを倒せるのは多数の宝具を持つギルガメッシュかアーチャーぐらいなものです。

 

 それを考慮すれば、まともな宝具すら持っていないアサシンとマスターが未熟すぎてまともに力を使えないセイバーでは二人がかりでもバーサーカーには勝てないでしょう。

 

 ここで彼らが脱落すると、私たちがバーサーカーとガチでやり合わなくてはいけなくなる。いえ、その前でギルガメッシュがバーサーカーを潰してくれるかもしれませんね。

 

 さて、どうしましょう。幸いアーチャーは遠距離狙撃に長けているからバーサーカーはともかくそのマスターであるイリヤスフィールなら容易く殺せる。小聖杯でもある彼女を殺せば聖杯の器を破壊することになりかねませんが、別に聖杯などいらないので躊躇する必要はありません。それでも心臓ではなく頭部を打ち抜けば、運が良ければまだ何とかなるかもしれない。

 

 しばし思考の末に、私はアーチャーにイリヤスフィールを狙撃するように命じて、アーチャーはその命令に従ってイリヤスフィールを仕留めました。バーサーカーはセイバーとアサシンと戦っていた為にこの狙撃に対応できず退場する事になりました。

 

 ちなみにこの時の私は冬木市にはいません。というのもアーチャーは単独行動に長けたクラスである為、わざわざサーヴァントと共に戦う必要がなかったからです。使い魔を使用して状況を確認して、後はアーチャーに念話で命令を出しただけです。

 

 流石に卑怯ではないかって? いえ馬鹿正直に表にでるなんて私の趣味じゃありません。大体アインツベルンにしてもサーヴァントの能力に自惚れて油断し過ぎです。だからこんな奇襲を許す羽目になったわけですよ。

 

 そういう意味では衛宮切嗣はすごかった。まさに「サーヴァントの性能の違いが、戦力の決定的差ではないということを・・・教えてやる!」と、言わんばかりでしたから(笑)。

 

 

 

 思わぬ収穫(バーサーカーの脱落)もあり、私たちは一端引き上げてしばらく様子見をしたわけですが、その後も聖杯戦争は進みセイバーとライダーの戦いとなって、セイバーの宝具によってライダーが脱落した。とはいえセイバーの魔力切れでまともに動くこともできなくなった。

 

 正直言ってセイバーは第四次聖杯戦争の時に比べて明らかに弱体化しています。最優のサーヴァントといえどマスターがヘボではどうしようもありません。聖杯戦争ではマスターとサーヴァントの相性も大切ですが、セイバー陣営の場合はそれ以前の問題でしょう。これでよく原作で生き残れたものです。

 

 更にキャスターのルール・ブレイカーによってセイバーがキャスターに奪われるという事態になる。これは今回のキャスターがアサシンを召喚する事ができなかったので、戦力確保を優先したため発生したものだと思われる。

 

 こうして、現状は私たちアーチャー陣営、キャスター&セイバー陣営、アサシン陣営+α、ランサー&ギルガメッシュ陣営となった。こうなると何処かの陣営に攻撃を掛けると別の陣営から奇襲を受ける恐れがあって迂闊にうごけないので、しばらく様子見することにしたが、その結果キャスターとアサシンが脱落した。

 

 事の顛末はセイバーを奪われた士郎が遠坂凛とアサシンと共にキャスターの拠点に攻め込んで交戦した事であるが、そこにギルガメッシュが乱入。大量の宝具を投射してキャスターとアサシンを仕留めた。

 

 どうもギルガメッシュからすれば我の物であるセイバーを魔術師風情(キャスター)がものにしていることに怒りを覚えてキャスターを誅殺したのだろう。ついでにアサシンは数合わせの為に始末したようだ。

 

 こうしてマスターを失ったセイバーであるが、ここで遠坂凛と再契約するという事態になった。これは私にとっても計算外であったが、よくよく考えてみればバーサーカー戦によるHイベントを潰してしまった以上、三流以下の士郎にセイバーとの再契約などできなかったのだ。そこで遠坂凛がセイバーのマスターになる事にしたのだろう。

 

 これでセイバーは思う存分戦えるでしょうが、地味にアヴァロンを取り戻すイベントもなくなっているからセイバーではアーチャーに勝つことはできないでしょうね。ギルガメッシュの宝具の物量と乖離剣は脅威です。

 

 仕方ない。こちらから動くべきでしょう。具体的にはセイバー陣営との同盟です。流石に言峰綺麗がギルガメッシュとランサーを抱えている以上、こちらは単独では勝利できない。というわけで私とアーチャーは衛宮邸を訪問して同盟を結ぶことにした。

 

 遠坂凛とセイバーは私たちを警戒したが、私が言峰綺麗がやった事を教えてやったら上手くいきました。何を言ったのかというと、言峰が前回の聖杯戦争で凛の父親を殺して、アーチャーのマスターになった事と、言峰が前回の聖杯戦争のアーチャーを十年間も確保し続けていた事。おまけにランサーのマスターを騙し討ちにして令呪を奪いランサーを手に入れている事です。これには凛も堪らなくなったようですね。こうして柳洞寺にて決戦が行われる事になった。

 

 ちなみに今回はイリヤスフィールが死亡しているが、どうも言峰陣営がイリヤスフィールの心臓を確保していたらしく、それを間桐慎二に植え付けていたようです。

 

 

 

 柳洞寺の決戦。まずセイバーがランサーの相手をして、アーチャーがギルガメッシュの相手をするというものだった。これは相性の問題である。

 

 ギルガメッシュは大量の宝具を持つが、担い手になれるほど個々の宝具を使いこなしているわけではない。あくまで所有しているだけなので、矢として投射するしかできない。普通のサーヴァントならばそれで十分ですが、物量に対抗しうるアーチャーであればギルガメッシュと対等に渡り合えるわけです。

 

 今回のアーチャーは原作よりもやたら強い。投影魔術を多用するのは変わらないが、他の魔術もサポートに使用してギルガメッシュとやりあっていた。そして、アーチャーが固有結界を展開して流れが変わった。

 

 固有結界は術者の心象風景を異世界として現実世界を侵食する魔術の奥義であるが、世界からの修正を受けるので維持に凄まじい魔力を食う。現にアーチャーが私の魔力をガンガン吸い取っており、このペースだと一時間ぐらいしか維持できないだろう。ここで情けないと思ってはいけませんよ。アーチャーの燃費が悪いせいもありますが、固有結界はそれだけ維持が難しい魔術なんです。

 

 魔力を効率よく使える私自身が固有結界を使うならば一時間どころかもっと長時間展開できると思うのですが、残念ながら私は固有結界を使えない。いくらチートな魔術回路を持っていても固有結界にはそうそう簡単に至れないわけです。

 

 死徒になりたてで固有結界を使えるようになった弓塚さつきやへっぽこ魔術師の癖に固有結界を使える衛宮士郎を見て難易度が低いように見えるかもしれませんが、そうではなくこの二人が規格外なだけです。

 

 アーチャーの固有結界『無限の剣製』はその展開速度がギルガメッシュのそれよりも勝っている為に戦いはアーチャーが押していた。

 

 しかし、ギルガメッシュには切り札というべき乖離剣がある。これは対界宝具という規格外な代物で第四次聖杯戦争でもライダー(イスカンダル)の固有結界“王の軍勢”を粉砕している。乖離剣を放たれたら一気に形勢が逆転してしまうだろう。その為、アーチャーにはギルガメッシュに乖離剣を使わせる余裕を与えずに倒すように指示しておいた。

 

 こうした戦いはセイバーだったら反発したかもしれないが、その点アーチャーは難なくやってくれるので使い易い。結果としてアーチャーはギルガメッシュを倒すことに成功した。

 

 原作では士郎でもギルガメッシュを倒せているから、アーチャーなら戦法さえ間違えなければ勝てます。

 

 セイバーもランサーを倒すことに成功している。流石は遠坂凛と契約して十全の力を発揮できているセイバーですね。士郎がマスターだった時とは比べ物になりません。

 

 今回降臨した聖杯はイリヤスフィールを用いた正規の物ではなく、間桐慎二に埋め込んで使うという無茶な事をしている為に、思いっきり歪んでいる。例えイリヤスフィールを使ったとしてもあの聖杯はどうしようもないけどね。

 

 それで定番の約束された勝利の剣(エクスカリバー)で破壊して、士郎たちに別れを告げるというイベントとなりセイバーは消失した。

 

 こうして聖杯戦争は終わったとなれば美しかったのでしょうが、この世界ではそうはいきません。アーチャーが士郎に襲い掛かったのだ。

 

 慎二を助ける為に無茶をした凛は戦闘不能で、士郎は単独でアーチャーに戦わなければならない。更に聖杯戦争の時には驚異的な再生力を発揮した聖剣の鞘もセイバーとの契約が切れた事で機能しないという悪条件で士郎がアーチャーに勝てるわけもなく、士郎はアーチャーに殺された。

 

 

 

「それで、憂さ晴らしになった?」

 と、勝手に士郎を殺したアーチャーに私は皮肉をいった。

 

「ああ、麻耶すまなかったな」

 

 そんな私にアーチャーは苦笑する。

 

「分かっていると思うけど貴方の行動は無意味ですよ。確かに過去の自分自身を殺したとしても一端座に付いた以上は取り消すことはできません」

「わかっている。それでもやらずにはいられないのだ」

 

 まあ、理性では無駄と知っていても感情はそうではないという事でしょうね。彼のように理想に溺死した人間は過去の自分など黒歴史などという生易しい代物ではなく、抹殺すべき存在なのでしょう。

 

 彼と私は同じ師匠に魔術を習っている為、アーチャーは私の兄弟子に当たるのだが、こうなる前に何とかならなかったのか、と思いたくもなる。

 

 恐らくザビーネも忠告ぐらいはしていただろうが、士郎はきかなかったのでしょうね。忠告しても相手が受け入れてくれなければどうにもなりません。

 

「では、さらばだ」

 

 その言葉と共にアーチャーは消えた。彼にとってもはやこの世界に留まる必要はなかったのだろう。こうして、私の聖杯戦争は終わった。ただの暇つぶしであったイベントであるが、イレギュラーの存在はそれなりに楽しめた。

 

 と、ここで終われば良かったのですが、どうも私の刻印の書の事が魔術協会にばれたらしく襲撃を受けるようになった。最初の襲撃は何とか切り抜けたが危うく死にかけたほどでした。

 

 後でわかった事ですが、時計塔が冬木聖杯戦争を監視していて、それでばれたようです。確かに神秘の隠匿とかを考えると監視ぐらいしているでしょうね。

 

 已む得ず、この世界から撤退することにしたわけですが、腹の虫がおさまらない私は時計塔に爆弾を転送してやりました。よくそんな事ができるなですか?

 

 確かに魔術師の一大拠点時計塔は守りがかなり固くて魔術による転移は無理ですが、魔術ではなく跳躍砲を使えば一発なんですよ。あれって何気にチートですからね。

 

 こうして、私はこの世界から引き上げて監察軍に本格的に参加するようになりました。さて、これからどうなるかわかりませんが、ぼちぼちやりますか。




解説

■御堂麻耶(みどう まや)
 型月世界に転生したトリッパーで、転生特典により魔術師として天才的な才能を得ているが、魔術師の家ではなく一般人家庭に生まれた。その為、魔術の師匠や魔術刻印がないという状況であったが、他のトリッパーに弟子入りして魔術刻印は刻印の書と契約する事で克服した。なお刻印の書は魔術師に喧嘩を売るような代物なので他の魔術師の目に留まらないように使用を控えざるをえなかった。それでも聖杯戦争に参加した事で刻印の書のことがばれてしまい時計塔に狙われることになって逃げ出すことになる。魔術師としての能力は一流であるものの、魔術基盤がある下位世界は稀であるために使い勝手はかなり悪かったりする。

◇転生特典
①魔術回路が180本
②魔力の使用効率がいい(通常の80倍ぐらい)
③魔力の回復が早い(一日で魔力容量の3分の2が回復する)

■サーヴァントの性能の違いが、戦力の決定的差ではないということを・・・教えてやる!『機動戦士ガンダム』の名セリフをもじったもの。

■第四次聖杯戦争
 セイバー(アルトリア・ペンドラゴン)が衛宮切嗣をマスターとして参加した聖杯戦争で、この時はエクスカリバーを使用しても問題なく行動できていた。



あとがき

『トリッパー列伝 ザビーネ・クライバー』で用意した伏線をやっと回収する事ができました(笑)。今回は刻印の書をマスターとなった衛宮士郎のなれの果てであるアーチャーが登場しています。マスターが冷淡な御堂麻耶だったためにアーチャーの自分殺しが達成してしまいました。憂さ晴らしにしかならない不毛な行動ですけど。
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