リリーシャが世界征服に乗り出してわずか五年で世界はブリタニアに征服された。その過程にしてもまともな戦闘は発生しておらず、ブリタニア軍が侵攻してあっさりと制圧することを繰り返していただけであった。
ここまで、呆気なかったのはやはりブリタニア以外の国が軒並み壊滅していたからだろう。ブリタニア軍に抵抗しようにもまともな軍事的抵抗などできなかった。精々が小規模なレジスタンス勢力が散発的な抵抗をしたのみで、そのようなものがブリタニアに通用するわけがなく、あっさりと踏み潰されていった。
こうして世界統一をしたリリーシャは、各地のブリタニア化を推し進めていった。ナンバーズたちに文化や教養など必要ないと、文化財、学校、図書館などを撤去して、民族としてのアンデンティティーを消去していく一方で、征服されてナンバーズとなった者たちを積極的に名誉ブリタニア人として取り込むために、名誉ブリタニア人の待遇をある程度改善したり名誉ブリタニア人になる為の規制を緩和していた。
このように、ナンバーズに対する弾圧は一切緩めていないが、ブリタニアに従って名誉ブリタニア人になるのであれば、以前よりも多少はマシな待遇が認められるようになるので、ナンバーズたちは渋々名誉ブリタニア人になるのであった。
現実問題として、故国に対する愛着を持っていたナンバーズでもそれだけでは生きて行けず、生活の為にはプライドを捨てて名誉ブリタニア人になるしかなかった。というか、ナンバーズとして激しい弾圧を受け続けるよりはプライドを捨てて名誉ブリタニア人になるという逃げ道をリリーシャは用意していた。
最も、リリーシャは『分割して統治せよ』という統治技術を用いて、名誉ブリタニア人とナンバーズが協力してブリタニアに反抗する事がないように名誉ブリタニア人とナンバーズが反目するように悪質な工作活動をやっており、別に穏健な統治ではなかった。
そんな統治をしているだけにこの世界では正しい手段で日本を取り戻すという枢木スザクの主張は夢想以外の何物でもなかった(原作でも論外である)。スザクはランスロットのデヴァイサーになれたもののその扱いは騎士ではなくロイドのモルモットという扱いで、原作のようにラウンズに出世などできていなかった。
ブリタニアはスザクの働きもあって第七世代KMFのデータを取ることができ、ヴィンセントやガレスといったKMFだけでなくエナジーウイングを搭載した第九世代KMFすらも量産されるようになったが、世界征服した今となっては戦場で一兵卒として戦うしか能のない無学な名誉ブリタニア人など重用する価値はない。
むしろ原作でナイト・オブ・ワンになるために主君として忠誠を尽くすべきシャルル皇帝を暗殺しようとしたように自分が出世するためにリリーシャの暗殺を企む恐れすらあった。というか、スザクにとって日本を取り戻す為ならそれが一番現実的な方法だ。その為、リリーシャはスザクがどれだけ功を立てても出世させなかった。リリーシャにとってスザクは利用できるところまで利用して用済みになったら捨てる使い捨ての道具でしかなかったのだ。
しかし、皇族に復帰したルルーシュが枢木スザクを選任騎士にしたことで話がややこしくなった。ルルーシュは前に枢木スザクをナナリーの騎士にしようと考えていたが、ナナリーの皇族復帰は認められていなかったので、スザクを自分の選任騎士にしたのだろうが、それは悪手としか言えなかった。
ブリタニアは弱肉強食を国是としており、以前よりは名誉ブリタニア人の待遇も改善されたが、それでもある程度に過ぎず、名誉ブリタニア人が純ブリタニア人よりも低い立場で差別されている事には変わりはなかった。それなのに、ルルーシュがナンバーズ上がりの名誉ブリタニア人を選任騎士にしたことで、「ナンバーズ上がりの名誉しか騎士にできない皇族」と周囲の評価を著しく低下させてしまう。
それに、スザクは体を動かすことしか能がなく宮廷作法や臣下としての振る舞いなどの皇族の選任騎士として持つべき教養や常識がない無学のナンバーズであった。その為、スザクの言動が周囲の反感を買ってしまい、それが余計に主のルルーシュの足を引っ張る結果になってしまう。
ここでルルーシュの止めとなってしまったのはスザクがリリーシャを襲撃した事だ。
スザクにとって世界統一に拘り日本を返す気など更々ないリリーシャは非常に都合の悪い皇帝だった。おまけにリリーシャはまだ若く退位するのはかなり時間がかかると思われる為に直接始末するしかない存在だった。
また、ブリタニア皇族はリリーシャが死亡すればルルーシュとその息子の赤子しかおらず、必然的にルルーシュが次の皇帝になれる。そうなればルルーシュの騎士であるスザクはナイト・オブ・ワンになり日本を取り戻せるという計算が働いたのだろう。
しかし、リリーシャは毒殺を警戒していた為、飲食物は監察軍のレプリケーターを使って自分で用意した物しか口にせず、調理人や毒見役など存在しなかったから、どんな大貴族でもリリーシャに毒を盛ることが不可能だった。まあ、そうでなくても名誉ブリタニア人の騎士にすぎないスザクでは皇帝に毒を盛れなかっただろう。
スザクの不意打ちでリリーシャはゼロレクイエムの時のルルーシュのように心臓の辺りを剣で突き刺されたが、ゴッド・ブレスを投与されたリリーシャはそれぐらいでは死なない。リリーシャを仕留めたと油断したスザクを双剣で強烈な一撃を加えた。
ちなみにリリーシャは幼少期から剣の鍛錬をしており、試しに双剣を使ってみると母マリアンヌ譲りの才能からか双剣が自分にあっていたのでリリーシャは双剣を使うことが多かった。
スザクは普通の人間に比べて身体能力が高かったが、リリーシャも元々スザク並に身体能力が高かい上に戦闘用の生体強化によってそれが更に強化されていた。おまけに最初の一撃がスザクの痛手となっており、リリーシャに太刀打ちできず始末されたのだった。
こうしてリリーシャを襲撃したスザクは返り討ちにあったが、話はそれで収まらなかった。選任騎士が皇帝を襲撃したとなれば、その選任騎士の主たる皇族もただでは済まない。当然ながらルルーシュは拘束された。
今回のスザクは、ルルーシュにリリーシャの暗殺を唆したものの却下されたために勝手に暴発したようで、皇帝暗殺未遂事件はルルーシュにとって寝耳に水だった。考えてみればルルーシュは情に厚い為、いくら統治方針が合わないとはいえ母を同じくする双子の姉を暗殺することを許可するわけがない。
しかし、選任騎士が皇帝の暗殺未遂事件を引き起こしたのは事実である以上、いくらルルーシュがスザクの独断だと主張しても誰も認めてくれない。結局、ルルーシュは皇籍奉還特権で罪に問われることは免れたものの市平に下ることになった。リリーシャとしてもルルーシュの落ち度はかばいようがなく、ルルーシュの息子にまで類が及ばないように対処するぐらいしかできなかった。
その後は、ブリタニアの統治に特に支障はなかった。ブリタニアに服することを拒むナンバーズを徐々に排除しつつ、名誉ブリタニア人の完全なブリタニア人化を進める一方で、宇宙開発を推進して新たなるフロンティアの開拓に力を入れることになった。
いくら世界人口の調整を行い増えすぎた人間を間引きしたとはいえ、限りある資源などの問題を考えると宇宙開発は必要だ。宇宙進出の弾みをつけるために監察軍の技術を極一部とはいえ流用したので、ブリタニアは『機動戦士ガンダム』のようにスペースコロニーを建造するまでに至った。
このように国としては問題ないが、さすがにリリーシャが即位してから40年がすぎると老いることのないリリーシャに不信の目を向ける者も出てきた。これはある意味当然のことなので、ルルーシュの孫に皇位を譲って退位して、この世界から撤退した。
この時期になるとナイト・オブ・ワンのジェレミアも故人となっていた。ジェレミアはリリーシャが即位してから30年ほどはナイト・オブ・ワンを務めていたが、さすがに歳には勝てず騎士を引退しており、当時のナイト・オブ・ワンを初めとしたラウンズたちはいずれも当り障りのない貴族のボンボン上がりばかりとなっており、リリーシャにとってどうでもいい相手だった。その為、彼らはリリーシャに捨てられるような形でラウンズの地位を失うことになるのであった。
ちなみに、皇帝となったリリーシャに縁組を申し出る貴族は多かったが、リリーシャがそれをすべて断り独身を貫いていた。そうすると後継者問題が出てくるものであるが、ルルーシュの息子を皇族にしたことで後継者問題はなくなった。とはいえ、本来ならもっと早く皇位を譲るつもりであったが、ルルーシュの失脚とその息子が早死にしてしまったために予定よりも時間をかける羽目になった。
かくして、リリーシャ皇帝が退位して第100代皇帝が即位したが、その陰でリリーシャ元皇帝が行方不明になり、その世界に二度と姿を見せることはなかった。