トリッパー列伝   作:ADONIS+

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リリーシャ・ヴィ・ブリタニア その六

某皇族side

 

 リリーシャ皇帝が即位してから25年がすぎていた。リリーシャ皇帝を除けば神聖ブリタニア帝国唯一の皇族であった彼はそれ故に皇位継承権第一位を持つ有力な皇子だった。それだけに後見貴族も多数存在しており誰がどうみても次の皇帝になるのは間違いないと思われていた。

 

 しかし、そんな彼はここ数年というもの皇族らしく政務や軍務に携わるでもなく、ひたすら女を抱く事しかしていなかった。というのも皇帝から皇位継承の試練として子供を100人以上作るように言われたからだ。また、その際に皇帝から50人の女を与えられた。彼女たちは彼の後見貴族の娘たちである。

 

 リリーシャ皇帝は今回の為に15歳~18歳までの未婚の娘を後見貴族たちに集めさせたわけであるが、貴族たちはそこいらの娘を用意するのではなく自分の娘たちを差し出してきた。これは別に皇帝が貴族たちに強制したというわけではない。

 

 第一皇位継承者である彼はどうみても次の皇帝となる筈だから(他に皇族がいない)彼に自分の娘を与えれば皇族との結びつきを強くできる。更に娘が子供を産めば当然ながら皇族となるのだからその皇族を擁して家を盛り立てる事さえ可能になる。それを考えればそんな機会をみすみす他人に譲るわけもなく、自分の娘を使うことを躊躇うわけがなかった。

 

 皇子としても皇族が不足している事態打開の為に皇族を増やすの(子づくり)が必要なのはわかる。そして、この場合三十代の女であるリリーシャよりも若い男である皇子の方が有利であるのもわかるために皇子が沢山子づくりをしなければいけないという理屈も理解できるが、そもそも男嫌いのリリーシャが20数年も男を遠ざけていたのが原因なのだ。その尻拭いをやらなければいけないというのは納得がいかない部分がある。

 

 とはいえ、もしリリーシャ皇帝に子供がいたら自分の立場がかなりやばかったのは言うまでもないだろう。本来、後ろ盾となりうる父はとっくに失脚しているし、彼とてあの一件で皇帝にかばわれて何とか皇族としての地位を保っていられたにすぎないのだ。もしあの時に皇帝に子供がいたらと彼も皇族を追われていた筈だ。

 

 結局、彼は差し出された女たちを抱いて子づくりに励むしかなかった。毎日毎日女を抱いて妊娠させまくる。世の中にはハーレムに憧れる男もいて、そうして男たちからみれば理想に思えるかもしれないが、よほどの絶倫でもなければ耐え切れないだろう。事実、そうなった彼の日々はかなり辛いものがあった。

 

 一人の男に対して50人もの女たちが子供を求めてくるので、体が持つわけがない。セックス三昧の爛れた生活のおおかげでつい先日70人目の子供ができたが、ノルマ達成にはまだまだ遠かった。最近は太陽が黄色く見えるほどで腹上死するのではないかと心配になるほどであるが、それでも彼は今日も50人の妻たちに精を注ぎ込んで子づくりに励むのであった。

 

 

 

新ナイト・オブ・ワンside

 

 リリーシャ皇帝が即位して30年が過ぎたこの時期になると、ラウンズが著しく弱体化していた。ラウンズは帝国最強の騎士であるというのは、ブリタニアでは常識であるが、遺憾ながらリリーシャ皇帝の御世においては例外であると言わざるをえないだろう。高齢で引退した前ナイト・オブ・ワンであったジェレミア卿を除き、リリーシャ皇帝のラウンズたちはお世辞にも強いとは言えない血筋がいいだけの貴族のボンボンから選ばれているからだ。当然、ジェレミア卿の後を継いでナイト・オブ・ワンとなった彼も決して強くはない。

 

 こうなった原因はリリーシャと名門貴族たちの密約にあった。確かに神聖ブリタニア帝国は騎士を重んじる国だ。その為、帝国貴族の男子ともなれば騎士としての英才教育を受けることが多い。特に家督を継げない次男や三男などは政府や軍で立身出世でもしないとやっていけないから普通はそうなるだろう。

 

 しかし、いくら弱肉強食を国是として切磋琢磨している名門貴族出身だからといって必ずしも有能とは限らないのだ。というか官僚や軍人として使えない無能者はそれなりにいる。リリーシャはそうした無能者をあえてラウンズにした。

 

 これは無能であるが故に自力で立身出世できない者にラウンズという箔づけしてやることでその家に名誉を与えてやる意味があった。その配慮の代価としてその家はリリーシャ皇帝に借りを作るのはのは言うまでもない。

 

 こうした背景もあって現在のラウンズたちははっきり言って弱い。帝国最強の騎士とは名ばかりで武術の腕やNMFの操縦などは一般の騎士にも劣る有様だ。当然そんなラウンズたちをリリーシャ皇帝が重用するはずもなく、いるだけ足手まといと言わんばかりに皇帝の騎士でありながら皇帝の身辺警護すら任されることはない。現在では公式行事などに出席するだけで、まさに数合わせの存在となっていた。

 

 これで、戦場で活躍できていればラウンズとしての名目がたったであろうが、能力のなさからそれもできなかった。当然ながらラウンズという肩書を得ても無能者が無能であることは変わらないので、テロリスト掃討などの実戦に出したりしたら返り討ちにあい即座にメッキがはがれてしまうのがわかりきっている。その為、リリーシャはジェレミア以外のラウンズを戦場に投入しなかった。

 

 このリリーシャ皇帝の扱いにラウンズたちは不平不満を持つも、リリーシャ皇帝にボコボコにされて(生身の白兵戦で束になってもかなわなかった)本人から直接「お前たちを護衛に使っても足手まといにしかならないわ」と罵倒されてはどうしようもなかった。

 

 彼らにとって不幸だったのが、リリーシャ皇帝が生身の戦闘能力において人間離れした強さを誇っていたことだ。リリーシャは元々マリアンヌ譲りの身体能力と双剣の剣技があったが、監察軍の生体強化によって化け物じみた強さを得ていた。これでは枢木スザクのような卓越した身体能力があるならともかく、武術において一般的な騎士にすら劣る彼らが束になってもかなう相手ではないかった。

 

 彼もこの状況が好ましくないのはわかっていた。しかし、根本的な理由は彼ら自身の実力不足なのだから、それこそ現ラウンズを解任して実力を持つ騎士をラウンズにするという解決策しかなく、それは論外であったためにどうしようもない有様だった。

 

 ここで、自分たちがラウンズにふさわしい実力をつけると豪語する者もいるかもしれないが、彼はそんな事は言ったりしない。先帝が主張したようにそもそも人間は平等ではなく、才能の差というものはどうしようもない壁として立ちふさがっているのだ。

 

 例えばそこいらの一般兵でも努力すればラウンズに相応しいほど強くなれるかといえば普通は否だろう。もちろん中には強くなれる者もいるかもしれないが、そんなのは極わずかな才能に恵まれた天才だけだ。誰もがそんなに簡単に強くなれるなら苦労はしない。特に彼らは才能のなさから挫折して無能者扱いされているだけにその事は人一倍理解していた。

 

 彼らは不遇であるとわかっていてもその待遇に我慢するしかないのだ。中には我慢できずに自らラウンズを止める者もいるが、彼はやめるわけにはいかなかった。正当な理由もなく止めたら評価がガタ落ちになってしまうからだ。故に彼にできることは偽りの帝国最強の看板を背負い続けることだけだった。

 

 

 

新皇帝side

 

 リリーシャ皇帝が即位してから40年が過ぎると、リリーシャ皇帝は次の皇帝を指名して退位した。こうして神聖ブリタニア帝国の第100第皇帝として即位した彼は、先帝の双子の弟であるルルーシュの孫にあたる皇族だった。皇帝に選ばれたにしては随分と先帝とは縁が遠いように感じるが、これは先帝が未婚で子供を産まなかった事と、先帝の甥にあたる父が早死にした事が原因だった。

 

 父は先帝から子づくりをやらされていた。それは皇族が激減していた当時の状況からすれば当然の行動であったが、父がそれに耐え切れずに腹上死してしまったのは計算外としかいいようがなかっただろう。まあ、父はある意味男の本願をかなえたのかもしれないが…。

 

 結果として皇位継承最有力候補を失ったリリーシャ皇帝は父が残した88人の皇族から次期皇帝を選ぶ羽目になるが、それは皇位継承競争の激化と長期化を意味していた。何故なら皇族たちの母親は名門貴族出身で、皇族たちにはその貴族を含めた後見貴族がついているため、皇族本人だけでなく後見貴族たちすら巻き込んだ政争が国内で繰り広げられることになるからだ。

 

 こうなると、腹違いの兄弟姉妹たちともやたらとギスギスした関係になるから一般的な兄弟関係など結べようがない。腹の探り合いや足の引っ張り合いなど日常茶飯事で、血の繋がった家族というより潜在的な敵と言えるほどの存在となってしまった。

 

 そんな過酷な後継者競争を彼が勝ち残れたのは、卓越した頭脳とそれによる実績の賜物であった。彼は祖父ルルーシュによく似て運動などは苦手であったが、とても優れた知能の持ち主だったのだ。その為、エリア総督などの役職で優れた実績を上げた彼はそれを評価されて先帝から皇帝に指名されたのだ。

 

 しかし、その先帝は彼に帝位を譲り退位して僅か数日で行方不明となってしまい、その後の足取りは一切わかっていない。

 

 考えてみれば、先帝は本当によくわからない人だった。そもそも先帝は皇帝になれる立場にはなかった。あの不自然な皇族怪死事件がなければ皇族として表に出る事すらできなかっただろう。また即位直後の謎の天災にしても他国は軒並み壊滅したにも関わらずブリタニアだけは無傷だった。そのおかげで先帝による世界征服があっさりと実現できたので強運というしかないだろう。最も彼は決して口には出さないが、この二つには先帝の仕業だと思っていた。そうでないとあまりにもおかしいからだ。

 

 また、50代であるというのに自分よりも若い10代の少女にしかみえなかった。というか先帝は即位してから外見が全く変化することがなかった。彼どころか彼の父親が生まれる前から少女の姿で、今でも少女の姿をしていた先帝だ。正直な話皇位を狙う皇族たちですら、「リリーシャ皇帝はこれからも少女のままで、自分たちが老人になっても少女のままで皇帝として君臨し続けるのではないか?」と不気味に思う皇族は多かった程だ。

 

 そんな先帝もついに退位していなくなった。正直すっきりしないものがあるが、そんな事よりも彼は自らの治世を固める必要があった。彼としては先帝の政策を継承するつもりなので特に改革などはしないが、他の皇族たちを押さえておかないといけないのだ。

 

 かくして、リリーシャ皇帝の後を継いで神聖ブリタニア帝国第100代皇帝となった彼は、ブリタニアを人類を統一する超大国として更に発展させることに成功し賢帝としてその世界の歴史に名を残ることになるのであった。




解説

■リリーシャ・ヴィ・ブリタニア
『コードギアス 反逆のルルーシュ』の世界でルルーシュの双子の姉に憑依したトリッパー。憑依型トリッパーなので転生特典は有していないが、元々の優れた身体能力と剣の才能を監察軍の生体強化によって引き上げた為ある程度は生身での戦闘能力を有している(この世界では超人的な強さであるが、トリッパー基準では護身術の範囲を逸脱していない)。ゴッド・ブレスによって外見年齢は16歳で固定されているが、16歳とは思えないほどのナイスバディの美少女である。とはいえ、TSした元男だけに男と付き合う気は毛頭なく、皇帝でありながらも男に肌を許さず、自ら子づくりをすることはなかった。



あとがき

 これでリリーシャ・ヴィ・ブリタニアは終わりです。流石に不老のままでは怪しまれてしまうのでいつまでも君主として君臨できず適当な時期に退位して雲隠れする必要がありました。リリーシャは本来ならもっと早くルルーシュの息子に皇位を譲るつもりだったのに、彼が腹上死してしまったために40年もかかっています。勿論、ギアス世界から引き揚げたリリーシャは監察軍本部でトレーズたちと共に働いていています。
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