トリッパー列伝   作:ADONIS+

71 / 74
風間ちとせ その二

『マブラヴ』世界の地球、その惑星は現地では宇宙から飛来したBETAと呼称されている自動資源回収ユニットの資源採掘活動によって甚大な被害を受けていた。それは宇宙から見たユーラシア大陸の荒廃ぶりから一目瞭然だった。そんな地球近郊で400kmを超える機動要塞一基と艦艇500万隻で構成される三千世界監察軍第188特務基幹艦隊が次々にデフォールド(ワープアウトの一種)して周囲に展開していた。

 

 この特務基幹艦隊とはぶっちゃけるとホシノ・ルリ率いるバイド艦隊の事だ。バイドは『R-TYRE』で登場する敵対勢力である。無機物・有機物関係なく融合捕食して爆発的に増殖進化するというチートな生命体で、本来ならば極めて危険な存在であるが、監察軍のホシノ・ルリが転生特典として使いこなすことに成功していた。

 

 特務基幹艦隊は基本的に400kmを超える起動要塞一基と500万隻で構成されており、監察軍ではこの特務基幹艦隊が一千個近く存在しており、マクロスのゼントラーディ軍に匹敵するほどの量で、質にいたってはブリタニア帝国軍の旧式艦艇などを吸収してきた為に桁違いに優れていた。

 

 その役割はベヅァーが復活した時にベヅァーを足止めすることであったが、それ以外は待機させるだけにあまり活用されていなかった。というものいくらトリッパーによって制御されているとはいっても汚染の危険がある為、バイド艦隊を積極的に使いたがるトリッパーはそうはおらず、更にいたとしても使い勝手が悪かったからだ。とはいえ、単なる砲艦外交の見せ札としてならこの物量は十分に使える。

 

 ちとせは転生型トリッパーにしては個人戦闘能力が極めて低いので例のトリッパー個人に不用意に接触したら殺されてしまう危険性が高かった。その為、このバイド艦隊を用いた砲艦外交で現地勢力に圧力をかけてトリッパーの抑えとして利用することにした。

 

 本来なら監察軍はトリッパーがいる世界でこんな派手なことはしない。できるだけ現地が騒ぎにならないように密かにその世界のトリッパーに接触するのが常套手段である。ジローのように派手なことをしてしまうとその世界を縄張りにしているトリッパーに迷惑をかけてしまうからだ。

 

 しかし、この『マブラヴ』の世界を縄張りとしているトリッパーは、ちとせと同族殺しのトリッパーだけであった。監察軍において同族殺しの犯罪者に権利など認められない為、現時点ではこの世界はちとせだけの縄張りとして扱われていた。その為、ちとせならば自分の縄張りであるこの世界で派手なことをしても問題なかった。

 

 第188特務基幹艦隊が展開を終えた後に、一機の大型戦闘機が近くにデフォールドした。その戦闘機は青い大型宇宙戦闘機で側面から白い翼が出現していた。これこそがちとせが25年かけて作り上げた監察軍製紋章機GA-006シャープシューターであった。

 

 

 

「シャープシューターをブリタニア以外での運用するのは初めてですが、特に問題はないようですね」

 

 シャープシューターのコクピット内でちとせは自機の完成度の高さに満足していた。H.A.L.O.(ヘイロゥ)システムによってちとせの頭上には天使環が光り輝き、クロノ・ストリング・エンジンによって発生した膨大なエネルギーによって紋章機の側面からエンジェルフェザーを出現させている紋章機は正に無敵の天使なのだから。

 

 そもそも、ちとせの能力は何といっても紋章機を扱うことができるパイロットであるという事で、他に際立った能力などないのだからこれを活かす以外方法はなかった。

 

 実は紋章機に使用されるクロノ・ストリング・エンジンとH.A.L.O.システムの技術は以前から監察軍に存在していたが、クロノ・ストリング・エンジンは艦船用機関としては機関出力、信頼性、整備性などを総合的に評価すると縮退炉の方が優れていたため使用されることなく放置されてしまい、H.A.L.O.システムはシステムに適応できる者を揃えるのが難しい為に使用されることはなかった。

 

 しかし、ちとせというH.A.L.O.システムに適合するトリッパーが現れたことで、監察軍はクロノ・ストリング・エンジンとH.A.L.O.システムを搭載した紋章機の開発を許可した。勿論、ちとせが監察軍にそう要望を出していたのは言うまでもないが、当時の監察軍は対ベヅァー兵器として推進していたスーパーロボット計画が行き詰っており、無限力とは異なるが神の如き力をふるう事すら可能であるクロノ・ストリング・エンジンを搭載した紋章機の可能性に注目したからだ。

 

 こうして監察軍製紋章機開発が行われることになったが、その特徴は最大出力を求めたためGA-001ラッキースターと同じくクロノ・ストリングを一つしか積んでいないことだった。最もラッキースターのようにパイロットの運だよりにするのではなく、その安定性の悪さを補助機関である特異点炉と時流エンジンで補うことで性能を発揮できるようにしていた。

 

 特異点炉は、『スーパーロボット大戦』で登場するグランゾンに搭載されたブラックホール機関を改良した代物だ。オリジナルのブラックホール機関はむき出しの特異点を発生させて通常では発生する確率の低い偶然を多発させて地球圏を混乱させたが、監察軍ではこの偶然を操る特性を応用してあらゆる確率を無視してクロノ・ストリング・エンジンを安定させている。その他、不安定なクロノ・ストリング・エンジンを補う補助機関としても活用されている。

 

 時流エンジンは『スーパーロボット大戦OGs』に登場する燃料無用の永久機関。一定のエネルギーしか発生できないという欠点があるが、それを補って余りあるほどの価値がある。というかクロノ・ストリング・エンジンの不安定さにほとほと手を焼いたちとせにとって永久機関である時流エンジンはとても魅力的だった。

 

 この特異点炉と時流エンジンは監察軍ではマイナーな技術である。というのもブリタニア帝国や監察軍が使用している可変戦闘機ルシファーはサイズが小さく複雑な可変機能まである為、どうしても機体の積載量が少なくなってしまうのだ。こうなるとトロニュウムエンジンのようなコンパクト&ハイパワーな動力源が主流となってしまい、これらの技術は採用されなかったからだ。

 

 しかし、紋章機の場合は可変戦闘機よりも大型で変形しないことから積載量に余裕があり、かさばる動力機関であっても搭載可能であるためデータ収集もかねて採用していた。同じようにデータ収集の為に防御手段も監察軍で主流となっているディストーションフィールドではなくグラビティ・テリトリーを使うなどシャープシューターは試験機として活用されていた。

 

 こうして完成したシャープシューターは監察軍本部防衛隊に所属しており、ブリタニア帝国の宇宙海賊相手にその性能を見事に発揮した。この成果に気を良くした監察軍では紋章機の増産とエンジェル隊の結成も検討されていたが、パイロットの確保の難しさから難航していたのは余談である。

 

 

 

「これだけやれば地球は混乱しているはずです」

 

 これほどの規模の大艦隊がステルスすら行わずに展開されたらそうなるのは当然で、ちとせとしてはそうなってくれなければわざわざ特務基幹艦隊を借りてまで砲艦外交をしている甲斐がなかった。

 

「さて、予定通りアメリカにコンタクトを取りましょう」

 

 ちとせは事前の予定通りアメリカ合衆国に通信を送ることにした。本来ならば問題のトリッパーと前回接触した時のデータから相手は日本帝国軍に所属していると思われるため、日本帝国と交渉したほうがよいのだが現在日本帝国は崩壊状態で、まともに交渉できる状態ではなかった。だからと言って国連と交渉しようにも国連は多数の国が集まっているだけに扱いにくく、特に『マブラヴ』世界の場合は問題が多すぎた。

 

 こうなると、この世界最大の大国でバビロン作戦前なので未だに勢力を保っているアメリカが有力なのは言うまでもなく、ちとせもアメリカとの交渉(砲艦外交)に踏み切ったのだった。

 

 

 

アメリカside

 

 さて、突如として地球近郊に現れた常軌を逸した大艦隊。それもやたらと生物的というかグロテスクな形状をしているそれらに地球各国は脅威を抱いた。どう考えても地球外の存在であり、BETAの同類もしくはBETAとは異なる別の宇宙人であることが一目瞭然だった。

 

 そんなアメリカであるが、正体不明の大艦隊(恐らく宇宙人)からコンタクトを求められたとき反応に困った。そもそも宇宙人とのコンタクトはBETAの時に失敗に終わっている。とはいえ、彼らの側から人類にコンタクトを取ってくるというBETAとは異なる行動から彼らはBETAとは別種の存在ではないのかと考えた。

 

 この新たなる宇宙人勢力との接触にはアメリカでも警戒する者もいたが、下手に突っぱねるわけにもいかなかった。どう見ても地球を蹂躙できるだけの戦力を整えていると思われる相手にそんなことをすればどんな行動をするかわかったものではない。

 

 結局、アメリカはワシントンD.C.にて会談を行うことにしたのであった。だが、彼らは想像すらしていなかった。彼らが脅威に感じている監察軍が『マブラヴ』世界のことなど相手にしておらず、この世界の者たちを問題のトリッパーに対応するための道具としか思っていないことを。




解説

■ジロー
『トリッパー列伝 石動ミイナ』及び『トリッパー列伝 ジロー』で登場したトリッパー。あまりにも考えなしの行動で石動ミイナが縄張りとしている世界を荒らしてしまい、ミイナに多大な迷惑をかけた。

■紋章機
『ギャラクシーエンジェル』に登場する全長30~60mの一人乗り大型宇宙戦闘機。原作ではEDEN(エデン)の紋章機としてGA-001 ラッキースター(万能型紋章機)、GA-002 カンフーファイター(近接用格闘型紋章機)、GA-003 トリックマスター(長距離用戦略型紋章機)、GA-004 ハッピートリガー(中距離用多武装型紋章機)、GA-005 ハーベスター(補給修理用支援型紋章機)、GA-006 シャープシューター(遠距離狙撃型紋章機)などが主に登場している。監察軍ではGA-001~GA-0005までの五機は設計図のみで実際に製造された紋章機はGA-006 シャープシューターのみである。

■クロノ・ストリング・エンジン
『ギャラクシーエンジェル』で登場する一般的な艦船の推進機関。クロノ・ストリング・エンジンは極めて膨大なエネルギーを放出することすら可能であるが、そのエネルギー出力が極めて不安定であるため膨大な数のクロノ・ストリングを集めて確立を平均化する必要があり艦船にしか搭載できていないが、H.A.L.O.システムを用いれば少ない数で使用可能になる。

■H.A.L.O.(ヘイロゥ)システム
『ギャラクシーエンジェル』で登場するパイロットの頭の上にある「天使環(エンジェルリング)」によってパイロットの脳と直接連結するシステム。クロノ・ストリング・エンジンのエネルギー噴出の確立に干渉できる為、パイロットのテンションによってクロノ・ストリングから自由にエネルギーを取り出すことができる。宇宙創造すら可能になり、限定的な予知能力や使用者の望む未来を実現する力まであり、これらの神にも等しいその能力から天使と呼ばれる程である。その反面、H.A.L.O.システムはパイロットのテンションに敏感に反応するので、同じ機体でも状況次第で能力の上下が激しく、戦力として極めて使いにくいのが難点である。更にH.A.L.O.システムを使用するには特殊なテンションが必要なため非常に使い手を選ぶシステムである。尚、天使環は稼働時に発光している。

■グラビティ・テリトリー
『スーパーロボット大戦α』で登場するグラビコン・システムにより展開可能となる重力障壁の一種である。グラビティ・フォールの強化版でその分エネルギー消費が激しい。監察軍ではディストーションフィールドが主流であるが紋章機には試験的にグラビティ・テリトリーが採用されている。

■GA-006 シャープシューター
『ギャラクシーエンジェル』で登場する烏丸ちとせの専用紋章機。機体の左腕部にある盾状のパーツは索敵のための大型レーダー、右腕部にある筒状のパーツは精密な攻撃を行うための超望遠照準器と、とことん遠距離戦闘にこだわった装備をしている。監察軍によって魔改造されており紋章機としての潜在能力、攻撃力、防御力、機動力、稼働時間などが飛躍的に向上している。

◇武装
・グラビトロン・ロングライフル
 機体中央よりやや右のハードポイント部に装備されているシャープシューターの主砲。収束した重力波を打ち出す攻撃で可変戦闘機ルシファーを撃破できるほどの威力を誇る。また必殺技のフェイタルアロー(マイクロブラックホールキャノン)も併用しており、その威力は監察軍の巡洋艦すら撃沈できる。
・マイクロミサイル
 可変戦闘機ルシファーのミサイルと同じ物で、ISの量子変換技術を採用しているのでマイクロミサイルを補充して弾切れが発生しないようにしている。
・ビームバルカン
 近接防御用のバルカン砲。機体に張り付かせないようにするための武装。



あとがき

 監察軍が魔改造したシャープシューターですが、パイロットのテンション次第ではルシファーを圧倒する戦闘能力を発揮します。とはいえ、絶滅寸前の『マブラヴ』世界を相手にするにはどう考えても過剰戦力で実戦に使用されることはないでしょう。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。