吾輩は炎龍である。名前はまだない。ってネタに走ってしまった。私はキルケ。といってもこの名は親から付けられた物ではなく自分で勝手にそう名乗っているだけです。まあ、親と言っても古代龍だから子に名をつけるという習慣なんてないからそれも当然です。
私は気が付けば炎龍になっていました。自分でも何を言っているかわからないが、そうとしか言いようがなかった。事故で死亡したと思ったら死神からトリッパーにならないかとスカウトされた私は“人間離れした丈夫な体”という転生特典を選んで異世界転生した。そこまではいい。
しかし、気が付いたら私は卵から産まれてしまい、巨大なドラゴンに育てられていた。確かに人間離れした丈夫な体になったけどドラゴンにしてくれとは頼んでいない。転生物で人外になるという話はあるだろうが、まさか自分がそうなるとは予想だにしなかった。
第二の人生ならぬドラゴン生は正直言ってきつい。生まれてすぐに親ドラゴンからは人間や人間に近い姿をした亜人を餌として提供されてそれを食べなければならなかったからだ。勿論、それには抵抗があったが、生まれたばかりの新生龍の身体は成長の為に多くの食事を必要としていたこともあり飢えには勝てず、結局むさぼるように人間や亜人を食べていった。
人としての意識が薄れて怪獣(ドラゴン)になってしまっているのが実感できるが、だからといってどうにかなるものでもなかった。自分で狩りができるようになり巣立ちをして以降は野生動物や怪異などを狩りの対象にしていた。人間や亜人を殺すには抵抗があったので必然的にそうなったのだ。
そんなドラゴン生活を数百年も過ごしていたが、ある日私と同じ前世もちの元日本人たちに出会った。当初はドラゴンと人間という種族の違いからコミュニケーションに問題があったものの監察軍の技術で意思疎通が図れるようになった。
彼ら三千世界監察軍のこと知った私はとにかく人間の姿になれるようにして欲しいと頼んだ。ドラゴンの姿は確かに自然界においては最強だ。純粋に野生動物として生きるのであれば生態系の頂点に君臨しているといってもいいだろう。
しかし、なまじ元人間としての記憶があるばかりに、何かと小回りが利かない上に、文化的な生活をすることができないドラゴンとしての生活は苦痛でしかなかったのだ。
そんな私の要望に対して監察軍から提示されて手段はヒトヒトの実を食べる事だった。このヒトヒトの実は『ONE PIECE』に登場する悪魔の実の一つで、これを食べると人間と同等の知能を得るのと獣型、獣人型、人型の三形態になることができるようになる。要するに人間の姿になることができるわけである。
この手の悪魔の実を食べると海に嫌われて一生カナヅチになるというデメリットがあるが、元々、炎龍が海を泳ぐことなどないので、まったくデメリットになっていない。当然ながら私はヒトヒトの実を食べて人の姿になることを選んだ。
人型になった私は赤い髪のロングヘアに白い肌の白人の美少女な容姿になっていた。前世が女で現世でもメスドラゴンなので女性なのは当然でしょう。
私は何気に前世よりも美少女なこの姿を気に入り、通常は人型であるが必要に応じて炎龍の姿になるようにした。人型であることからこの世界の人間たちと接触することも可能となった。彼らの言葉は前世で使用していた日本語とは異なる為、言語習得にはかなりの手間がかかったが、それは時間をかけることで何とか出来た。
また、人型の恩恵として燃費が非常によくなった事があげられる。そもそも炎龍は爬虫類の一種になるため哺乳類よりは燃費がいいとはいえ、この巨体なのでそれを維持するためには桁違いにたくさんの食料が必要だ。それは象の一日の食事量を見ていれば一目瞭然だろう。
それが人型であれば人間一人分の食事ですむのだ。こうなれば燃費の良さはいうまでもないだろう。
こうして、人間に関りながら必要に応じて炎龍の力をふるうという生活していた私は炎龍王キルケと呼ばれるようになった。通常、炎龍は古代龍に属するが、人間の姿になって人語を話したりしない。古代龍にとって人間や亜人などはあくまで食料でしかないのだ(そもそも不可能だ)。
しかし、元人間である私はヒトヒトの実によって人間と交流することができる。その他の古代龍と隔絶したあり方からそう呼ばれるようになったのは無理もない事だろう。
さて、『ゲート 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり』において炎龍といえば人間(特地限定)では対処できない天災のような存在として扱われていたが、自衛隊にやられてしまい彼らの引き立て役になってしまっていた悪役である。更に言うなら、冬眠している所を亜神に無理やり起こされた挙句、子作りさせられていたね。
ふむ、となるとかなりまずい。いくら現世がドラゴンでも元人間としては獣姦もとい竜姦されるのは勘弁してほしいし、英雄譚なんかで登場する引き立て役のドラゴンとしてやられるのはもっと嫌です。
もちろん私が原作で登場する炎龍とは限りませんが、危険は避けた方がいいから原作時期が近づくと監察軍本部に避難して様子を見ることにした。その甲斐あって自衛隊が私とは別の炎龍を撃破したのを確認した。
さて、これからどうするか? 正直な話原作に関わるというのも魅力的ではあるが、死亡フラグを回避したとはいえ、私が自衛隊と関わるのはいろいろと拙い。あの炎龍のせいで自衛隊がドラゴンを見つけたら問答無用で攻撃しかねない。いくら私でも戦闘能力自体は他の古代龍とかわらないから自衛隊とガチでやりあうのは危険すぎるのだ。
こうなるとこの世界で活動するのは好ましくないだろう。仕方ないので、この世界から引き上げて監察軍に住む方がいい。
そう判断した私はこの世界から引き上げたのであった。
解説
■キルケ
『ゲート 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり』の世界の炎龍に転生したトリッパー。転生特典の影響で古代龍に転生してしまってドラゴン生活に苦慮していたところを監察軍からヒトヒトの実を与えられた為に人間として活動できるようになった。
◇転生特典
人間離れした丈夫な体