1
放課後、まどか達はマミと共に昨日逃した魔女の行方を追っていた。
捜索する場所は以前戦闘を行った病院から少しだけ離れたところにある住宅街。
前の戦いで魔女は恐らく病院付近を危険な場所と判断して、狩場を変えている可能性が高いというマミの推測からこの場所を探ることになった。
「まどかや転校生と一緒にやってた時も思ったけど、魔女探しって思ってよりも地味ですよねー
何か魔力を感知するレーダーを使って即はっけーんみたいなものを期待してたんだけども」
「確かにあれば便利そうだけども、ないものねだりをしても仕方ないわ。
そういえば美樹さんは、どうして鹿目さん達と一緒に魔女を追っていたのかしら?」
「えっ?! そ、それはですね……」
不意の質問にかなり慌てた様子を見せるさやか。
何か話しにくいことなのだろうかマミが疑問に思っていると反対方向から。
「マミさん! 魔女の結界を見つけました!」
「鹿目さん、すぐに向かうからそこで待ってて!」
まどかの呼びかけで話が中断されてしまったが、今は結界の元に向かうのが優先。
「美樹さん、今の話はまた今度にしましょう」
「あ……そうですね! 早くまどかのとこに行きましょう」
二人は頷いてまどか達の元へと急ぐ。
そこには入り口が大きく広げられた魔女の結界があった。
「そうだ。結界に入る前に……これを」
リボンから武器を作り出したマミは、まどかとさやかにそれぞれ持たせる。
「わぁ…!!」
「すっご……」
「気休めにしかならないけども、ないよりはマシと思って」
「いやいや、とってもありがたいですよ。こんな頼もしい武器があれば魔女なんか怖くないですよ。まったくどこかの誰かさんも見習ってもらいたいもんだ」
「宝の持ち腐れって言葉を知ってるかしら、美樹さやか」
二やっと意地悪そうな表情を向けるさやかだったが、全く動じないで返答するほむら。
そんな姿を見て、少しふてくされた様子で話を続ける。
「そうじゃなくてせめて護身用の武器くらい渡してくれたっていいじゃないってことだよ。仮にもアンタの体を預かってるんだからさ」
「肩を脱臼したいのならばいつでも持たせてあげるけども?」
「さやかちゃんの身体に優しい武器の提供を所望する!」
「何言ってるのよ。私が扱っている武器でそんなものはあったかしら?」
「…………」
思い返してみると、ほむらがまどかに使わせていた武器はどれも魔法なんかとはかけ離れた近代兵器ばかりだった。
まどかの放ったバズーカ砲の爆音で鼓膜が逝きかけたのは、まだ記憶に新しい。
「私には私なりの、巴マミには彼女なりの戦闘スタイルや配慮があるってことをよく覚えておきなさい」
「ぐぐぐぐ……」
二人のやり取りを見て、微笑ましい顔をするまどかと苦笑するマミ。
「ほむらちゃん、それじゃあ行こっか」
「待って鹿目さん」
いつもと同じように変身しようとほむらに手を差し出そうとしたがマミが制する。
「今回の魔女退治では変身はしないで欲しいの。話を聞く限り、あなたと暁美さんの変身はまだまだ謎が多い。
それに私はこの戦いで暁美さん自身の力を見ておきたいの」
「!」
その発言にほむらの目が少しだけ見開く。
しかしその反応は誰にも気づかれることなく話が進められる。
「今後二人が協力して魔女と戦っていくなら、少しでも鹿目さんの負担を減らした戦い方を意識していかなければならない。
その為には暁美さんがどこまで鹿目さんの力を借りずに魔女と戦えるのかを知る必要があると思うの」
「なるほど。つまりここの魔女は私一人で倒してみろと言いたいことね」
「簡単にまとめるとそうなるわ。でもあなたが危険な状況に陥った時は即座に助けに入るつもりだから心配しないで」
「……それはどうも」
今の自分一人で魔女退治をさせる理由は、恐らく表向きのもの。
マミはそれと共に同じナワバリで戦っていくことになるほむらの力もこの戦いを通じて測るつもりなのだろう、とほむらは推測していた。
これまでの時間軸通りなら、あまり手の内を明かさないように戦う姿を見せようと考えていた。
しかし力の大半を失ってしまった今のほむらには、そんな器用な戦い方は出来ない。
少しでも気を緩めるとマミの手助けが入る前に一瞬で満身創痍になってしまう。
(この戦い、多分全力で挑みにかからないとダメみたいね……)
ほむらは久しぶりに一人での魔法少女の姿に変身し、盾から己の武器を取り出す。
そして小さく深呼吸をし、眼前に広がる結界の内部へとゆっくりと歩を進めた。
2
『蜈ィ縺ヲ縺ッ蠖シ螂ウ縺ョ縺溘a縺ォ?』
「くっ……」
不規則な軌道で襲い掛かってくる使い魔に翻弄されるほむら。
以前の時間軸で戦ったときは、時間を止めてその隙に本体もろとも簡単に撃破したが正規の戦い方はほむらにとってはかなり厳しかった。
「うわわっ、こっちくんな!」
「美樹さん、不用意に刺激しちゃダメよ!」
さやかの周りを旋回している使い魔をマミが銃で撃ち落とす。
一般人二人を守りながらの戦いをしなくてはならないため、マミの方も少し手こずっていた。
「こうなったら…! 巴マミ、奴等は私がまとめて始末するから二人の身を守りなさい!!」
「分かったわ!」
銃で一体ずつ狙ってくままじゃ埒が明かないと踏んだほむらがマミに指示する。
それを受けたマミは周囲にリボンを張り巡らせ結界を作り、自分とまどか達の守りを固めた。
安全の確保をしたことを見届けたほむらは盾から手榴弾を取り出して、使い魔達目掛けて放り投げた。
『繧「繝?ぇ繧、繝シ縲√い繝??繧・繧、?√☆縺?∪縺帙∈縺?∞?槭s?』
手榴弾の爆風が使い魔達に引火し、彼らは奇妙な言葉を発しながら消滅していった。
「ふぅ…何とか片付いたようね」
「なかなか無茶をするわね……暁美さん」
「やっぱアンタいろんな意味でぶっ飛んでるよ……」
『確かに彼女の戦い方はあまり効率的とは言えないね』
「キュゥべえいたんだ」
「酷いなぁ……」
「こうするのが一番手っ取り早いと思ったからよ」
ほむらの戦闘スタイルに引き気味のマミとさやか。
しかしまどかは特に気にした様子を見せずにほむらと会話をしていた。
「ほむらちゃん大丈夫? 怪我とかしてない?」
「心配は不要よ。この程度の相手なら何ともない」
「本当? ツラかったらいつでも私に頼ってね」
「ふふっ、何だかあなたの方が先輩な様に感じるわね」
「えっ? そ、そうかな…?」
「まーたイチャついてるよ」
「本当に仲がいいのね」
二人の様子を微笑まし気に見るマミだったが、何かの異変に気付いたのか結界の奥に視線を向けた。
「どうしたんですかマミさん?」
「いえ、やっぱり前回来た時と比べて様子がおかしいと思って」
「そうなんですか?」
「通路にいる使い魔の数や雰囲気もかなり違っていたわ。私達の襲撃を受けたから相当気が立っているのでしょうね」
「ゲキオコ…ってやつですか」
「そんな感じね…………ッ!!」
瞬間、結界内の様子が一変して辺りに重苦しい空気が漂い始める。
ほむらとマミは異変をすぐに察知して戦闘準備をする。
「まどか、危ないから巴マミの元に戻ってなさい」
「何が起きてるの…?」
「……魔女がこちらに迫ってきている」
「えっ?!」
『二人とも来るよ!』
キュゥべえが警告した瞬間、結界の奥から物凄いスピードで魔女がほむら達へと突っ込んできた。
それを捉えた魔法少女の二人はまどかとさやか、それぞれを抱えて横へ大きくジャンプした。
『繧ウ繝ュ繧ケ繧ウ繝ュ繧ケ繧ウ繝ュ繧ケ繧ウ繝ュ繧ケ』
「「わあああああああああ!!!」」
「二人とも怪我はない?」
「大丈夫です!」
「わ、私も……」
二人の安否を確認したマミは視線を突然現れた異様な魔女へと向ける。
鳥かごの魔女。その性質は憤怒
本来魔女は結界の最深部に佇んでいるはずの存在。それが使い魔がいるにも関わらず自ら侵入者の元にやって来るのは普通なら考えられないことだ。
「何なのこの魔女……」
「まるで制御を失った機械みたいね」
今まで経験してきた中で一度も起きたことのないイレギュラー。
一体これで何度目なのだろうか……立て続けに起こる予期せぬ事態にほむらの脳裏に一つの憶測が立った。
だが今はそれについて考えてる暇はない。
「何にせよ倒さなくちゃいけないわね」
「そうね。今度は手早く片付け__」
『繧「繧ア繝溘?繝?繝ゥ繝イ繧ウ繝ュ繧ケ』
マミが最後まで言い終える前に魔女は動いた。
大量の使い魔達を召喚してそれらをまとめてほむらに向けて放つ。
「うぐっ…?!」
「暁美さん?!」
突然の出来事に反応しきれなかったほむらは、次々と突撃してくる使い魔達を避けることが出来なかった。
腕、腹、脚と身体のあちこちに鈍い衝撃が加わる。あまりにも激しい猛攻にほむらは顔を腕で覆い攻撃を受けるしかなかった。
マミも同じく魔女の突然の行動に面を食らい、数秒思考を停止してしまう。
だがすぐに我にかえり急いでほむらのフォローに回ろうとする。だが……
『繧ク繝」繝槭ワ繧オ繧サ繝翫う』
彼女の前に使い魔達が立ちはだかり行く手を阻む。
「一体何なのこの妙に統率の取れた動き…普通の魔女じゃ考えられない……」
マミが使い魔に時間を取られている間にも、ほむらへの攻撃は止まらない。
重なるダメージに耐えられなくなったほむらは後方へと大きく吹っ飛ばされてしまった。
「ほむらちゃん!」
「ッ!! まどか、アンタ何する気?!」
それを見たまどかが慌てて飛ばされたほむらの元へと向かおうとするが、さやかに止められてしまう。
「離して! このままじゃ、ほむらちゃんが!」
「アンタが行っても魔女にやられるだけだって!」
「でも黙って見てるだけなんて出来ないよ!!」
黙ってみているわけにはいかない。あの時と同じほむらちゃんは見たくない……
まどかは路地裏で初めて魔法少女の世界にふれた時のことを思い出していた。
不気味な異空間、見たこともない奇妙な生物、そしてどこからか聞こえたあの声。
『助けて…まどか……』
「行かなくちゃ…ほむらちゃんを助けなきゃ…!!」
『彼女を助けたいのかい、鹿目まどか」
「えっ?」
ほむらを助けるために必死に駆け寄ろうとしていたまどかにキュゥべえが囁いた。
『忘れたのかい。ボクはキミ達の願いを何でも叶えることが出来るんだ。
だから暁美ほむらを救うことだって可能だ』
「どういう……こと?」
急な発言に理解が追い付かない。
戸惑いを顕にしているとキュゥべえは短くこう言った。
『まどか、ボクと契約して魔法少女になってよ』
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次回、第12話 願いと決断②
次話は"見習い軍師"の後に投稿します。
PCで文章を書く習慣をつけれるように頑張ります( ゚Д゚)