マギカ☆クロニクル   作:サキナデッタ

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※ストーリーは一つのエピソードを複数に分けて投稿していこうと思います。



第1話 転校生(前編)

1

 

 

 雲一つない清々しい朝。鹿目まどかは軽やかにスキップしながら通学路を歩いていた。

 今日の彼女は絶好調だった。目覚ましが鳴る前に起きれて、父親と庭で育てていたミニトマトの収穫も出来た。そして今いつもの集合場所に一番乗りで辿り着けたのだ。

 

「~♪」

 

 鼻歌を歌いながら友達を待っていると、やって来た通りとは別の方から猛スピードでこちらに近づいてくる人影が見えた。

 その人影の正体は彼女が待っていた友達の一人、美樹さやかだった。

 

「おっはよーまどか。今日は随分と早いじゃん」

 

「おはよーさやかちゃん。今日はずっと楽しみにしてた日だったから浮かれちゃって」

 

「ん? 今日って何かあったっけ?」

 

 意味深な発言に首を傾げるさやか。

 その様子をニコニコとまどかが眺めているともう一人の友達、志筑仁美がやって来た。

 

「おはようございます」

 

「あっ、仁美ちゃんおはよー!」

 

「あら鹿目さん、おはようございます。今日は何だかいつもより元気そうですね」

 

「うん。今日はとっても調子が良いんだ」

 

「何か良いことでもあったんですか?」

 

「ちょっとね。えへへへ~」

 

 上機嫌なまどかを見て、さやかと仁美は顔を見合わせる。

 

(どうしたのでしょう鹿目さん?)

 

(さあ…あたしが来た時もずっとこんな調子で……)

 

(美樹さんも何も知らないんですか? だとしたら…………ハッ!)

 

 まどかに聞かれないように目で会話をしていると仁美が突然あることに気がつく。

 

(どったの?)

 

(さやかさん。これはもしや遂に鹿目さんにも『あれ』が来たのでは…!)

 

(『あれ』って何のこと…?)

 

 理解できないさやかに仁美はそっと小指を立てる。そそを見てさやかの体に電流が走る。

 

「まどかぁ!」

 

「な、何?」

 

「さやかちゃんは嬉しいぞぉ~! まさかあんたに“春”が訪れるなんて!」

 

「な、何のこと?」

 

「またまた惚けちゃって~、デキたんでしょ? 好 き な ひ と ~ ♪」

 

 それを聞き、まどかの顔が徐々に赤くなっていく。

 

「ち、ち、ち、違うよッ!! 別にそういうのじゃ……」

 

「その反応はいるのか! いるってことなんだね?!」

 

「そんなことないってばッ!」

 

「じゃあ何で今日はそんなに上機嫌なのさ」

 

「そ、それは後で分かるよ…ほら早く学校に行こ!」

 

 笑って誤魔化しつつ、まどかは二人の手を掴んで走り出す。2人は訳が分からない顔をしたまま、学校に連れていかれるのであった。

 

 

2

 

 

 場所は変わって見滝原中学校。担任の和子先生の愚痴が終わりクラスの皆にあることを告げた。

 

「今日は皆さんに転校生を紹介します」

 

「そっちが後回しかよ!」

 

 何事もなかったかのように切り替える和子先生にさやかがツッコミを入れる。

 その様子に仁美は微笑みながら、近くの席にいるまどかに声をかける。

 

「それにしてもこの時期に転校生なんて何かあったのでしょうか?」

 

「何でだろうね、えへへ~」

 

「?」

 

 相変わらず嬉しそうに笑っているまどかを仁美は不思議そうに見つめた。

 あまりにも不自然に思ったのかさやかが彼女にもう一度問いかける。

 

「まどか。さっきも聞いたけどもホントに何かあったの?」

 

「すぐに分かるよ。さやかちゃん」

 

「変なまどか」

 

 頭の上に?マークを浮かべていると急にクラスがざわめき始めた。

 教室に転校生が入ってきたのだ。その転校生の姿にさやかは思わず声をあげる。

 

「うわっ、スッゲェ美人……」

 

「はい、それでは自己紹介行ってみましょう」

 

「暁美ほむらです。よろしくお願いします」

 

 転校生暁美ほむらは深々と頭を下げる。

 それから先生が彼女について話そうとしたとき、まどかとほむらの視線が合った。

 

「あ、こっち見た」

 

「♪~」

 

 パタパタとまどかが嬉しそうに振ると、ほむらも笑顔で手を振り返す。

 その光景にクラスにいる全員が驚きの表情を見せた。

 

(これは!! もしや鹿目さん!!)

 

 何かの空気を感じ取って目をキラキラさせる仁美を除いて。

 

 

3

 

 

 それから昼休み、まどかとほむらはHRでの仲良しそうなやり取りについてクラスメイトから質問攻めされていた。

 さやかと仁美はそんな様子を遠目で眺めていた。

 

「凄いよね~あの転校生、容姿端麗で頭脳明晰と来た。まどかったら、いつの間にあんなハイスペックなのと友達になったのやら」

 

「ふふふ…出逢いというのは突然起こるもの、きっと私達が知らない内に二人にはイロイロなことがあったに違いないですわ」

 

「あたし達の知らない内に何かあったのやら…てか仁美もどうしたの? 今朝のまどか以上に生き生きしてるけど」

 

 様子の変化に戸惑っていると、まどかがげっそりとした顔をしながら戻ってきた。

 

「た、ただいまー……」

 

「お帰りー、でも残念でした。あたしらにもちゃーんと説明してもらわないと」

 

「そのことなんだけども、ほむらちゃんと一緒に学校を回りながらでも…いいかな?」

 

「いいけども、あの転校生の周りにまだいっぱい人いるみたいだけど」

 

「大丈夫。保健室に連れていくって名目で連れ出せばいいから」

 

「それって保健委員としてどうなの…ってもう行っちゃってるし!」

 

 ツッコミが終わる前にまどかはトテトテと人混みの中へ入っていってた。

 

「さやかさん、取り敢えず先に外に出て待ってましょう。ああ…2人の運命の出逢い、馴れ始めがどんなものか楽しみですわー」

 

「あーもうツッコむのも疲れてきた……」

 

 

4

 

 

 学校の様々な場所を回って4人は屋上で昼食を取ることにした。

 

「ほうほう…つまりまどかは転校生が転校する前に運命の出会いを果たしたというわけなのか~」

 

「う、運命って…さやかちゃん、それは大袈裟だよ」

 

 二人の出会い話を聞いたさやかがニヤっと笑う。まどかは少し困った顔をしながら、答えるがその顔には少しだけ赤みがかかっていた。

 

「そんなこと言って鹿目さん、凄く嬉しそうな顔で暁美さんに手を振ってたじゃないですか」

 

「あの時の皆の驚いた顔ときたら……」

 

「さやかさんだって同じだったじゃないですか」

 

「逆に何で仁美はあんなに目キラキラさせてたのよ」

 

「それは…恥ずかしくて口に出せませんわ」

 

「何想像してたんだ!!」

 

 コントのようなやり取りをするのを見ながら、まどかとほむらは並んで昼食を食べていた。

 

「面白い人達ね」

 

「うん。二人ともわたしの大事な友達なんだ」

 

 箸でおかずを摘まみながら嬉しそうにまどかは答える。ほむらはそれを聞いて優しい笑みを見せながら購買で買ったパンの袋を小さく畳んだ。

 

「あれ? ほむらちゃんお昼はそれだけ?」

 

「ええ、あまり食事に時間を取りたくないから」

 

「ダメだよ! せっかく退院したばかりなのに、それだけだったらまた身体壊しちゃうよ?」

 

 頬を膨らませながらまどかは箸を手渡す。受け取ったほむらは箸を持ちながら不思議そうな顔をする。

 

「これって……」

 

「わたしのお昼、少し分けてあげる」

 

「でもそんなのあなたに悪いわ」

 

「いいの。わたしが好きでやってることだから」

 

 どうぞ、と言いながら弁当箱をほむらの前に差し出す。少し戸惑っていたが、おかずを箸で摘まんで口の中に含んだ。

 

「どう…かな?」

 

「とても美味しいわ。ありがとうまどか」

 

「えへへ…でもこれパパが作ったものなんだけどね」

 

 照れるまどかだったが、ふと横から生暖かい視線を感じて振り向く。するとさやかと仁美が満面の笑みで二人のやり取りを見ていたの。

 

「いや~、見せつけちゃってくれますねぇ~」

 

「ご馳走さまでした。鹿目さん、暁美さん」

 

「ちょ、ちょっと二人とも!」

 

「それにしても人が悪いな~まどかは。

 さやかちゃんというものがいながらあんな美少女にも手を出してたなんてコノコノ~」

 

 指で軽く小突きながらまどかをからかう。そんな二人を見て、仁美の目が再び輝く。

 

「こ、これが三角関係というものですか!」

 

「違うよ!」

 

 まどかが顔を赤くして叫ぶ。

 しかしさやかは悪ノリをそのまま続ける。

 

「そう、そして最後にまどかは運命の選択を求められる! あたしかあの転校生、どちらを選ぶのか…!!」

 

「修羅場ですわー」

 

「もう二人とも!!」

 

「「あははは」」

 

「そんで転校生はどう? この学校に馴染めそう?」

 

 三人の仲が良さそうな様子を楽しそうに見ていたほむらにさやかが声をかける。

 

「ええ、これまであまり人と接したことがなかったけども何とかなりそうよ」

 

「何か困ったことがあったら、このさやかちゃんにお任せあれ! でも転校生にはまどかがいるか」

 

「そうね。まどかから何でも相談してって言われてたから大丈夫だと思うわ」

 

「ん? 今何でもって……」

 

「おっとそこまでよ。……にしてもそんなに面倒見てもらうなんて羨ましいねぇ~、そうやってまどかの気を引いて何か良からぬことを企んでいるのかな~?

 そうはさせぬぞ~、何てったってまどかは私の嫁になるのだからな~!」

 

「…………」

 

 そう言っているのをほむらは呆れた目で見ていた。

 

「さやかさん」

 

「何?」

 

 一人で盛り上がっているさやかに仁美がそっと話しかける。

 

「ちょっとしばらくの間、鹿目さんと暁美さんを二人っきりにしてみませんか?」

 

「別に構わないけども何で?」

 

「気になるじゃないですか。二人っきりだと一体どんなことをするのか」

 

「……いいね。コッソリ覗くってワケか」

 

「二人で何話してるの?」

 

 コソコソと話しているのを不思議に思ったまどかが間に入って来る。

 

「別に何でもないよ。ね~、仁美」

 

「そうですわ。というワケなのでさやかさん、私達は邪魔にならないように別の所で食べましょうか」

 

「どういうなの……」

 

 困惑するまどかだったが、ほむらは立ち去ろうとする二人を引き留めた。

 

「別にそんな気を遣わなくてもいいのよ。まどか以外ともお話し出来る相手が欲しいし」

 

「それは嬉しいです。ならさやかさん、私は残らせてもらいますわ、では……」

 

「うぉい! 何、さりげにさやかちゃんをハブろうとしてるのさ!」

 

「美樹さん、あなたの心遣いとても嬉しかったわ。その気遣いが無駄にならないようにたくさん話させてもらうわね」

 

「おう、頑張れよ…じゃなくて、それ言ったの仁美! お気遣いしたのは私じゃないよ!」

 

「ごめんなさい、あなたが『私に構わず行ってらっしゃい』って顔をしてたからつい」

 

「どんな顔だよ!」

 

「さやかさん早速、暁美さんと仲良くお話を……」

 

「さすがだねッ」

 

 ツッコミを連発して息を切らしているさやかにまどかと仁美は笑みを浮かべていた。

 

「どう見てもおちょくられているようにしか見えないのだけど……」

 

「あなたの扱いは大体分かったわ」

 

「扱い?!」

 

「まどかの言っていた通りね」

 

「まどかァ! 転校生に何吹き込んだ!!」

 

 よく晴れた昼下がり、屋上全体にさやかのシャウトが響き渡った。

 

 

5

 

 

 それから放課後、仁美と別れた三人は夕暮れの中で共に歩いていた。

 

「どうだったほむらちゃん、学校楽しかった?」

 

「まどかに志筑さん、あと美樹さんも一緒だったからとても楽しかったわ」

 

「私はこの一日で疲れがどっと溜まったよ……」

 

「さやかちゃん、無理しないでね」

 

「何か困ったことがあるなら力になるわよ」

 

「主にあんたら二人のせいだ! くそぅ…転校生には弄られるし、嫁は取られるし、散々な一日だったわ~」

 

「「それは大変だったね(わね)」」

 

「他人事?!!」

 

 そんな他愛のない会話をしながら、帰路を歩いていく三人。しかしそんな平和な時間は長く続かなかった。

 

 

 

 突如、彼女らのいる空間が歪んだ。

 

 

 

 目の前で起きている異変にさやかは戦慄する。

 

 歩いていた道路が消え、電灯も近くにあった公園も無くなり、辺りには見慣れない奇妙で不気味な空間が広がる。

 そしてその空間の中央に人ならぬ謎の生物が佇んでいる。その姿はまさしく異形、これまで見てきたどんなものよりも恐ろしく、おぞましく、狂気を感じさせるものだった。

 

 突然現れた『異常』に怯えながら、さやかはまどかの腕にしがみついた。

 

「一体何なの? 何がどうなってるの?!」

 

 今のさやかに出来ることは恐怖をまぎらわす為にただ大声をあげることだけだった。

 だがまどかは違った。怯えるさやかに優しく手をかけたのだった。

 

「大丈夫だよ、さやかちゃん」

 

 さやかを落ち着かせようとする彼女の顔には恐れは無く、不思議な頼もしさが彼女にはあった。

 

「私が何とかして見せる」

 

「まどか」

 

 ほむらに呼び掛けられて一瞬まどかはきょとんとするが、笑って言い直した。

 

「ううん、『私達』が……だね」

 

「行くわよ」

 

 ほむらはそう言って指にはめてあった指輪を外してまどかに手渡す。

 まどかがそれを指につけると、突然二人の体がまばゆい光に包まれた。ほむらは紫色の光を、まどかは桃色の光に。

 

「さやかちゃん、『ほむらちゃんの身体』頼んだよ」

 

「えっ?! 何、どうなってるの?!」

 

 連続して起こる不思議なことにさやかの頭はもうパンク寸前になっていた。だが二人はそんなことは一切気にせずにいた。

 するとほむらを包んでいた光は急に消え、彼女はその場に倒れ混んでしまう。

 

「ちょ……て、転校生?!!」

 

 倒れるほむらにさやかが呼び掛けるが反応はない。慌てふためくさやかだったが、二人に起きている変化は止まらない。

 

 まどかを包む光はより強さを増し、桃色と紫色の二色の光をその身に纏っていた。

 手を胸の前で組み、閉じていた瞳を開く。

 

 そして『二人』は唱えた。

 

 

 

 

 

「『変身!!!』」

 

 

 

 

 

 二人を包む眩い光に、さやかが思わず目を瞑ってしまう。そして光が弱くなり、視界が晴れて目を開けられるようになるとそこには……

 

 不思議な服装を身に纏った親友の姿があった。

 

 

 

☆See you! Next Story……★




※旧作よりも日常パートを増やしてみました。次回もお楽しみに~♪

次回、第2話 転校生②
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