マギカ☆クロニクル   作:サキナデッタ

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※あけおめです。年末イロイロあって投稿出来ませんでした(´・ω・`)
 1月中旬からまた忙しくなってくるので第5話以降は更新ペースがガックンと落ちます。


第3話 始まりの日①

1

 

 

「着いたわよ」

 

「お邪魔しま~す」

 

「おっ邪魔しまーす」

 

 場所は変わってほむらの住んでいるアパート。その部屋の中をさやかは物珍しいものを眺めるように目を配らせていた。

 

「何というか生活感があまり感じられない部屋だね」

 

「まだここに住んでから一週間も経っていないからそう感じるのも無理もないわ」

 

「そか、ずっと病院で入院生活していたんだもんね。でもなんかその割には結構慣れている感じというか、凄い落ち着いている感じが……」

 

「ふふっ、住めば都だよ。さやかちゃん」

 

 まどかはそう答えながら、ソファーの上でごろんと横になっていた。

 

「いや、アンタはくつろぎすぎじゃね? 下手したら家主のほむらより」

 

「だって前、ここに来たときほむらちゃんが『自分の家のように思ってもらっても構わないわ』って言ってたもん」

 

「そのまんま解釈すんな!」

 

「気にしなくていいのよ。変にかしこまっていられた方が逆に困っちゃうし」

 

「いいの? それじゃ、さやかちゃんも遠慮なく_「あなたはダメよ」_なんでさ!」

 

 軽い伸びをしてまどかと同じように寝転がろうとしたさやかだったが、それを制される。

 

「あなたは普段もそうやって他人に対して遠慮しないのね……」

 

「さやかちゃん……」

 

「差別だー、まどかは良くてあたしはダメなんて差別だー」

 

「何言ってるのよ、差別ではなく区別よ」

 

「アタシ達は物扱いか! よりタチが悪いわ!!」

 

「失礼ね、まどかは人よ」

 

「『は』って何だよ?!」

 

「冗談よ。それよりも飲み物を持ってくるけど、二人とも何がいいかしら?」

 

「さらっと話を切り替えられた……」

 

「はーい、私コーヒーがいいなー」

 

「えっ?!」

 

 まどかの言葉にさやかは目を見開く。それはほむらも同じらしく意外そうな表情でまどかに聞いた。

 

「どうしたの急に? 前、来たときは『私にはちょっと合わないかも』って言ってたのに……」

 

「まどか、熱でもあるんじゃないの?」

 

「もう二人とも酷いよ! わたしだって最近、パパにお願いして飲めるように練習してるんだから!!」

 

「別に練習するようなものじゃないと思うけど……」

 

「分かったわ。まどかがそう言うのなら」

 

「じゃあ私もチャレンジしてみますかっ! 転校生、コーヒー三つね」

 

「ブラックでいいかしら?」

 

「おう、転校生のと同じでいいよ」

 

「分かったわ、今持ってくるわね」

 

 そう言い、ほむらはパタパタと台所の方へ向かっていた。二人きりになったところでさやかは先程言えなかったことを言う。

 

「にしてもまどか。さっきのアレは何だったの? なんかコスプレみたいだったけど?」

 

「魔法少女のこと?」

 

「魔砲少女?」

 

「なんだか違う捉え方をされている気がする」

 

「いやいや、あれを魔法って呼んでいいのやら……」

 

「私は別にカッコいいからいいと思うよ」

 

「どこに現代兵器使って戦う魔法少女がいんのさ…魔法ってもっとメルヘンなやつだと思うけど」

 

「さやかちゃんは夢見過ぎなんだよ」

 

「アンタがいうか…普段からノートに可愛らしい絵描いてるアンタが……」

 

「ほらほらその辺にしておきなさい。美樹さん、喉が枯れるわよ」

 

 お盆に三つのカップをのせたほむらが台所から戻ってくる。

 

「サンキュー」

 

「ありがとう、ほむらちゃん」

 

「「…………」」

 

「……砂糖とミルク持ってくるわね」

 

 コーヒーをすする二人だったが、やはり初心者にブラックは厳しいものがあったようだ。

 

 

2

 

 

「それじゃ、本題に入りましょうか」

 

「待ってました!」

 

「それじゃ、説明するわ。まずさっきの怪物は魔女といって……」

 

 

 

 それから魔女と魔法少女に関する説明は10分にわたり、さやかは大体の事情を知った。

 

「ふーん、つまりその魔女っていう怪物が町の人達を襲って、ソイツらから皆を守る正義のヒーローが魔法少女というわけね」

 

「訂正するほど間違ってないね」

 

「そうね」

 

「へぇ~、皆の平和の為か…なんか憧れちゃうな。それに何でも願いが一つ叶うなんて」

 

「私も最初は、ほむらちゃんから聞いたときはおんなじこと言ったよ」

 

 まどかの含みのある言い方にさやかは首を傾げる。

 

「最初は、ってどういう意味? まどか、アンタもほむらと同じ魔法少女なんでしょ?」

 

「ううん、違うよ」

 

「えっ…じゃ、じゃあさっき変身したアレは何だったの?」

 

「それがわたしにもほむらちゃんにもサッパリで……」

 

「どういうこと? 魔法少女って皆あんな感じなんじゃないの?」

 

 首を傾げるさやかを見て、ほむらは懐から紫色の宝石を取り出す。

 

「ん? なにこれ?」

 

「これはソウルジェムといって、さっき話に出てきたキュウべえという生き物と魔法少女になる契約を果たした際に生み出される宝石なの」

 

「そのソウルジェムは魔法少女の力の源みたいなもので、それがなくなっちゃうと魔法少女として生きていけなくなっちゃうんだって」

 

「ふむふむ…じゃあまどかにもそのソウルなんちゃらってのが__あっ、転校生! この宝石ちょっと汚れてるけども、そんなに大事なものだったらもっと丁寧に扱った方がいいんじゃないの?」

 

 汚れらしきものに気付いたさやかはハンカチを取り出して拭き取ろうと手を伸ばす。がそれをほむらに制されてしまう。

 

「この穢れはそんな外部的なものによるものではないわ、さっきも言った通りソウルジェムは魔法少女の力の源。だけどもそれは決して無尽蔵にあるわけではない。 魔力の使用や持ち主の精神状態の変化によって穢れは溜まっていくのよ」

 

「へぇーーー」

 

「……本当に理解したのかしら?」

 

「んで話は戻るけどもまどかにもそのソウルジェムってのはあるの?」

 

「ううん、持ってないよ。そもそもわたしそのキュウべえって子にも会ったことがなくて…」

 

「……どゆこと?」

 

「前例のないイレギュラーな現象ってことよ。初めてまどかが変身した時も……今にして思えば奇妙な出来事だったわ」

 

「その話さ、どんなのかアタシにも教えてよ。二人が初めて変身したときの話を」

 

「あ、それじゃわたしが話すよ。あの時のこと、ほむらちゃんうろ覚えだったし……」

 

「なら代わりにお願いするわ」

 

「うん。あれはね……」

 

 そうしてまどかは話し始めた。あの日の出逢いのことを、人生の転機を……

 

 

 

 

 

 わたしはお買い物の帰り道に河原で黒いちっちゃな野良猫と遊んでいた。

 

「よしよし、ネコちゃん気持ちいい~?」

 

「にゃー」

 

「本当に人懐っこい子だね。もしかして他の人からもご飯を貰ってたりしてたのかな?」

 

 顎の下をそっと撫でてあげるとそのネコちゃんは気持ち良さそうにゴロゴロと喉を鳴らした。

 愛くるしいその姿を見ながら、ふとあることを思い付く。

 

「そうだ。折角だからこの子に名前をつけてあげよう。どんな名前にしようかな~」

 

 少しの間、考えてネコちゃんにこんな名前をつけた。

 

「エイミーなんてどうかな?」

 

「にゃっ!」

 

 名前が気に入ったのかエイミーはわたしにスリスリと服の下から身を寄せてきた。

 

「ちょっと…服の中に入らなっ…あははっ! くすぐったいよ~!!」

 

 じゃれるエイミーと遊んでいたら、急にエイミーはわたしの手から離れて道路に向かって走り出した。

 

「うにゃっ!」

 

「わわっ、どうしたの急に…ってダメだよ!! そっちは車が通って危ないよ!!」

 

 道路の方はたくさんの車が走っていた。このままじゃ、車に轢かれてしまうかも……

 

 怖くなったわたしは急いで立ち上がって止めようとした。そうしたら向こうの方から女の子がやってきて、車道へと走ろうとするエイミーを抱えあげた。

 

「全くあなたは…いつもいつも世話が焼けるわね」

 

「にゃー」

 

「ふふっ、くすぐったいわ」

 

 頬を舐められて微笑んでいる女の子を見て、ふとこう思ってしまった。

 

(綺麗な人だなー、それに何だかカッコいいかも……)

 

 初対面のまだ話してもいない人になに考えているんだろ、と心の中で笑っていると突然わたしに電流が走る。

 

(あれ、この人どこかで……)

 

 なんて考えていると、その女の子はわたしの視線に気づいたのかこっちを向いて、腕に抱えているエイミーをそっとわたしに渡してきた。

 

「危なかったわね、この時間帯の道路は車がたくさん通るから大事がなくてよかったわ」

 

「えっと…その、ありがとうございます。その子をた、助けてくれて」

 

 ちょっと緊張しながらお礼を言うと女の子は少し可笑しそうにわたしを見ていた。

 

「まるでこの子の飼い主みたいね。でもこのままだったらエイミーだけじゃなく、あなたも危なかったのよ」

 

「えっ?」

 

 わたしは女の子の発言を不思議に思った。エイミーって名前はついさっき私が勝手に名付けたはずなのにどうして知っているんだろうと。

 

「どうしたの?」

 

「えっ、あの、その…どうしてその子の名前がエイミーって知っているの?」

 

「…………」

 

 気になって聞いた質問に女の子は言葉を止めてしまう。なにか考えているようでもあったけれど、それが一体何なのかはわたしにはさっぱりだった。

 

「さっきあなたがこの子のことをそう呼んでいるのを聞こえたから」

 

 その言葉に一瞬、そんなに大きな声で喋っていたっけ? と疑問に思ったけども、深く考える前に目の前の女の子の服装が目に入った。

 

「そうだったんだ。ところでその制服って見滝原中学校の制服だよね?」

 

「えぇ、あなたと同じ学校の生徒で中学2年生よ」

 

 同い年! そう聞いて感情が高揚する。

 

「そうなんだ! 私も同い年で2年生なんだ!!

 あっ…わたし、鹿目まどかっていうの。あなたの名前は?」

 

「ほむら。暁美 ほむらよ」

 

「へぇ~、ほむらちゃんって言うんだ。何だかとってもカッコいい名前だね!」

 

「!!」

 

 ふとほむらちゃんが驚いたような顔をした。

どうしたんだろう? わたし変なこと言っちゃったかな?

 するとほむらちゃんが少しおどおどしながらこう尋ねてきた。

 

「へ、変な名前じゃないかしら……」

 

「そんなことないよ、寧ろほむらちゃんのイメージにピッタリだよ!」

 

「そうかしら?」

 

「うん、だってほむらちゃん、スゴいカッコいいし!」

 

「ええっ?!」

 

 慌てるほむらちゃんの姿を見て、今さっき自分の言っていたことを思い出して顔を赤くする。初対面の子になに言ってるの?!

 

「名前負けしてない…わよね…?」

 

「勿論だよ!」

 

 あまり自分の名前に自信がないのかな? そんなことないよ、と言うように強く首を振るとちょっと不安そうにしていたほむらちゃんの顔が和らいだ。

 

「ありがとうまど…鹿目さん」

 

「まどかでいいよ、わたしもほむらちゃんって呼ぶから。ねぇ、ほむらちゃんちょっと今時間あるかな?」

 

「特にないけど…どうかしたの?」

 

 エイミーを地面に降ろして、河原の原っぱの上に腰かける。そしてほむらちゃんの方を見て言った。

 

「もしよかったら、わたしとちょっとお話ししてくれないかな…って」

 

 この時わたしはどうしてこんな大胆なことを言ったんだろう。

 他の初対面の人に対しては絶対にこんなこと言わないはずなのに…もしかしたらこの子の持つ不思議な魅力に惹かれたのかもしれない…その理由は自分でもよく分からなかった。

 

 

3

 

 

 それからわたしはほむらちゃんと色々なことをお喋りした。

 

「そっか、ほむらちゃんは来週から学校に転校するってことになっているんだね」

 

「ええ、学校生活を上手くやっていけるか不安だったけど、こうしてまどかと仲良くなれたのだから心配なさそうね」

 

「ダメだよ。ちゃんとわたし以外の子ともお友だちにならなくちゃ」

 

「善処するわ」

 

「も~」

 

 そうやって話しているといつの間にか辺りは暗くなり始めていて、河原から見える夕日も地平線の向こうへ沈んでいこうとしていた。

 

「まどか、そろそろ家に帰らないとご家族に心配をかけてしまうんじゃない? だいぶ暗くなってきたわよ」

 

「わっ、本当だ! わたしお使いの途中だったのに!!」

 

「ごめんなさい、私のせいで時間を使わせちゃって」

 

「謝らないでよ。わたしはこうしてほむらちゃんと仲良く一緒にお話し出来ただけでもとっても素敵な時間だったなって思ってるから」

 

「あなたは…本当に優しいのね。そうだ最後にいいかしら?」

 

 目を細めて笑うほむらちゃんだったけれど、その瞳はどこか悲しそうなもののように感じだ。そして次の瞬間、ほむらちゃんの雰囲気が一気に変わった。

 

 

 

 

 

「まどか。貴方は自分の人生が、貴いと思う? 家族や友達を大切にしている?」

 

 

 

 

 

「……えっ?」

 

 突然の変わりようにわたしは戸惑いを隠せないでいた。どうしたんだろう急に? ほむらちゃん、冗談を言っているわけでもなさそうだし……

 そんなことを考えているとほむらちゃんはさっきまで話していた時よりも低い声でわたしに語りかけてきた。

 

「お願い、質問に答えて」

 

「えっと…大切に思っているよ。家族も…友達も…勿論、ほむらちゃんもわたしの大切な友達よ」

 

「そう、なら良かったわ。貴方は、鹿目 まどかのままでいればそれでいい。今まで通り、これからも。だから今の自分とは違うものにはならないって決して約束して」

 

「う…うん」

 

「それじゃ、また学校で会いましょうね」

 

 ほむらちゃんの話す言葉はとても鋭くて、その言葉はわたしの身体の奥まで貫いていくような気がした。

 なんとかしてそれに頷くとほむらちゃんはさっきまでとは違う、柔らかい笑みを見せながらわたしの前からいなくなっていった。

 

「ほむらちゃん…不思議な子だったなぁ……」

 

4

 

 それからわたしはエイミーと別れて家に帰ろうと道を急いでいた。

 遅くなっちゃったからパパきっと困ってるかもしれない…帰ったら謝らないと……

 

 そう思いながら走っていると、ふと何処かから声が聞こえてきたような気がした。

 

『…んな…で……』

 

「??」

 

「今…誰か? 気のせい?」

 

『…だ。誰…助け…』

 

「誰なの? 何処にいるの?」

 

『助けて…まどか……』

 

 誰かが自分に助けを求めている。それを知った瞬間、わたしは駆け出していた。一体誰の声かは分からない。でもあんな悲痛な声を聞いてこのまま放ってはおけるはずがなかった。

 闇雲に走っているはずなのに、本能がこの道を行けと明確な指示を出しているような気がした。

 

 必死に走っていたせいか、いつの間にか見たことのない場所に来てしまった。一体ここは何処なのだろう?

 とりあえず、元来た道に一旦戻ろう。そう思って足を動かそうとしたとき、何かがわたしの足に引っ掛かり転んでしまう。

 

「わっ!! 痛てて…わたし、何につまづい__」

 

 

 

 

 

 わたしの足元にあったのは確かにモノだった。物ではなく者だ。そこに倒れている人に酷く見覚えがあった。

 ついさっき私と友達になって一緒にお喋りして笑っていた『あの子』

 

 

 

 

 

「ほむらちゃん?!」

 

 血まみれでボロボロになって倒れているほむらちゃんの姿がそこにあった。

 

 

☆See you! Next story……★




次回、第4話 始まりの日②

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