1
ここはとある魔女の結界の中。
そこの住人達は自分達の住処を荒らされていて激怒していた。
怒りの対象はその者達を狩る者、魔法少女。
「$B$3$3$+$i=P$F$$$1(B !!」
怒りの言葉をその者に向ける。
だが相手はその言葉を聞き入れることはなく一匹ずつ的確に射抜いていくのだった。
「あなた達には悪いけども一気に決めさせてもらうわよッ!」
見滝原の魔法少女、巴マミは周囲から大量のマスケット銃を召喚してそれを合図と共に一斉に彼らに向けて放つ。
「$BDK$$(B !!」
「$B$*4j$$$d$a$F(B ……」
それぞれ言葉を残して倒れていく。それと共に辺りの景色が変化していき、魔女の作り出した空間はゆっくりと消えていった。
「どうやら今のは使い魔だけしかいなかったみたいだね」
魔女の空間が完全になくなったことを察知したマミは変身を解いて、結界の外で待っていたモノと向き合う。
「使い魔とはいえ、放っておくわけにはいかないわ。キュゥベえも分かってるでしょ?」
「まあ、使い魔をどうするかは君達、魔法少女の自由だからね」
「もうまたそんなこと言って」
少し困ったような顔をキュゥベえに向けるがすぐに真剣な表情へと変わる。
「それにしてもホント急に数が増えたわね…魔女も使い魔の数も……」
「確かにそうだね」
「今までこんなことなかったのに、何が起きてるのかしら…?」
「……それよりもマミ、さっき追おうとしていた魔女の反応はどうだい?」
その言葉を聞いて急いでジェムで反応を探る。
しかしソウルジェムは何の反応を示すことはなく、魔女はとうにいなくなっていた。
「逃げた? いえ、これはおそらく」
「また例の魔法少女が仕留めたようだ」
「ちょっと時間を取られ過ぎたようね」
「惜しかったね。あと少しで彼女の正体を知れたかもしれなかった」
「……キュゥベえの方はどうなの。何か彼女について調べていたんじゃないの?」
「僕にも他にやることがあってね。その魔法少女のことだけにこの街に留まり続けるわけにもいかないのさ」
「それだったらここに居て大丈夫なの?」
「勿論この件も目的の対象だ。キミと一緒に行動してたのは一番効率が良いと考えていたからだよ」
「ごめんねキュゥベえ、何の手がかりも得られなくて」
「気にすることはないさ…でもそろそろ進展が欲しいね」
キュゥベえにそう言われて、マミも真剣な顔つきになる。
「えぇ…次こそは確実に尻尾を掴んでみせるわ」
2
「さっ、今日も張り切って魔女探しに行きますかー!」
「こ、声が大きいよさやかちゃん……」
「大丈夫よ。誰かに聞かれたとしても変人扱いされるのは彼女くらいよ私達には関係ないわ」
「そっかぁ良かった」
「おい」
私が転校して来てから数日が経った。
あの日から私はまどかと美樹さやかの二人と共に行動するようになり、今は帰り道がてら魔女や使い魔を探しに行こうとしていた。
「そんで転校生、今日はどこをパトロールするつもりでいるのさ」
「……そうね。西の住宅街の方に行ってみようかしら」
「確かにあそこはこの時間帯だと人も多そう」
「決まりね。ここ最近になって魔女の数も増えてきてるから用心しながら探しましょう」
「うん!」
「オッケー」
この時間軸にやって来て新たに気付いた異変がもう一つあった。
それはさっき言った通り、魔女の数がこれまでのループと比べても明らかに多いこと。
これまでだとグリーフシードの取り分も増えることになって特に困ることはないのだけども、大幅に弱体化して一戦一戦が死闘になる今の私ではかなり厄介な問題だ。
本当はまどかや美樹さやかを魔女との戦いに巻き込みたくはなかったけども、それはどうしようもない。
彼女達の協力なしでは、魔女や使い魔とまともに戦えないからだ。何か良い方法があればいいのだけども……
「ほむらちゃん、どうしたの?」
不思議に思ったまどかがこちらを覗き込んで来る。
今どれだけ考えた所で解決策が見つかるわけではない。
まどかの素質に依存するしか今の私には手がないのだから。
「何でもないわ、さっ行きましょう」
「…………うん」
★
魔女の出現場所を予測して住宅街に着く。
すると僅かではあるけどもソウルジェムが反応を示した。
「ほむらちゃん、ソウルジェムが!」
「えぇ…この近くに魔女がいる」
「…………」
反応を頼りに住宅街を歩いていく。
しばらく歩いているともう廃墟となったマンションに辿り着いた。
「転校生、上ッ!!」
美樹さやかに言われて見上げると、マンションの屋上のフェンスから身を乗り出している女性の姿を捉えた。
遠くからでここからでは魔女の口づけも見えないけど、様子を見る限りだとビンゴみたいね。
「は、早く上に行って止めにいかないと!!」
「そ、そうだね。ほら急ぐよ二人とも!!」
「その必要はないわ。見てみなさい」
焦って建物の中に入ろうとする二人を止めて、屋上の方を指さす。
女性は両腕を横に大きく広げてそのままゆっくりと前へ倒れていった。
「なッ?!」
「いやあああああ!!」
二人の悲鳴が廃墟全体に響き渡る。
私はすかさず変身をして地面を強く蹴って飛び上がった。
落下してくる女性の姿を見ながら両手を上に掲げ、しっかりと腕でキャッチする。
そしてそのまま落ちていき、無事に地面に着地した。
少し足に強い衝撃が走ったけどもこの程度ならどうってことはないわね。
あの人のようにスマートな救出は出来なかったけども今回も助けることが出来た。
ホッと息をついて女性を優しく地面に横たわらせる。
そこに顔を真っ白にさせたまどかと美樹さやかがやって来る。
「ほ、ほむらちゃん。その人……」
「大丈夫よ。気を失ってるだけ」
「あーすっごいヒヤッとした……」
「魔女の口づけを受けた人は今みたいに飛び降りたり、有毒ガスを発生させたりして命を絶とうとするの」
「ゆうど…って流石にそれはオーバーじゃ…?」
「あまり答えたくないけども真実よ。
さっ、そんなことよりも早くこの建物の中にいる魔女を倒しに行くわよ。まどか行けるかしら?」
彼女の方を見るとかなり顔色が悪そうに見えた。
この子にはさすがにキツイ話だったみたいね……
「だ、大丈夫…何とか行けるよ……」
「そう。それなら良いのだけども」
そう言って自分のソウルジェムを彼女に差し出す。
いくらまどかとはいえ初めは渡すのに若干の抵抗を感じてしまったりもしてたが、数回の変身をしてる内にすっかり慣れてしまった。
まどかは受け取ったソウルジェムを手で優しく包み込みそっと目を閉じる。
彼女の体から桃色と紫色の光が溢れて輝き始めて、同時に私の意識がゆっくりと自分の肉体から離れていくのを感じた。
そして私達は呪文を唱えた。
これまでの時間軸には存在しなかった新たな力を、希望の未来を築き上げるための『魔法の言葉』を。
「『変身!!!』」
魔法少女に変身した私達は近くにあった割れたガラスで自分達の姿を確認してみる。
身体的な特徴はどちらかというと私に近い感じがするわね。背丈や髪の長さ、あとは顔つきも私よりだし。
それにしても…まどかのせっかくの可愛らしい顔が私の要素なせいで少し無愛想に見えてしまうのは癪ね。まどかはカッコよく見えるから全然いい!って言ってたけども。
『美樹さやか』
「何? どったの転校生?」
『私の身体とその女の人のことを任せてもらっていいかしら?』
「オッケー任せちゃって!」
改めて自分の容姿を確認した私は美樹さやかに頼み事をする。
それに対してさやかはサムズアップをして了承してくれた。
『さあ行くわよ、まどか!』
「うん。あの人の為にも頑張ろうね!!」
そうして私達は魔女の潜む廃墟の中へと侵入していった。
★
中は魔女の結界と直接繋がっていたみたいで辺りは特有の禍々しい雰囲気に包まれていた。
私達はそこを慎重にそして早足で進んでいく。
『用心して…いつどこで使い魔が襲い掛かって来るか分からないわ』
「うん。でもこの結界、前と違って凄い静かだね」
『逆に静かすぎて不気味だわ。何か罠を用意してるかもしれない』
「魔女もそんなことするの?」
『ええ、中には外見で相手を油断させて不意を突いて一気に仕留めたりする恐ろしい魔女もいるわ。私の知ってる人もそれで……』
「えっ?!」
しまった…うっかり口を滑らせた。
普段だったら魔法少女の現実を教える為に話していたかもしれないが、ここは結界の中だ。
余計なこと言って彼女の気を乱すわけにはいかない。
「ほむらちゃんって見滝原に来る前も魔法少女をやっていたんだよね? その時も今みたいに誰かと一緒に戦っていたりしたの…?」
『…………』
「ほむらちゃん?」
『その話はまた今度にしましょう。ほらもう少しで最深部よ』
「あ、ホントだ! 使い魔全然いなかったね」
『となると考えられるのは……
入った瞬間すぐに戦いを始められるようにしておきましょう』
まどかは頷き、盾の中から銃と爆弾を取り出す。
銃火器の類はこの時間軸では入手することは不可能…今後のことも考えるとなるべく温存はしておきたいわね。
『今回は爆弾をメインに戦っていくわ。必要だったらどんどん使ってくれて構わない、幾らでも揃えることは出来るから』
「わ、分かったよ」
私の発言に驚きながらもまどかは最深部への扉を開く。
するとそこにはフロアの中央に魔女がそしてその周りにはとんでもない数の使い魔が守りを固めていた。
両者とも身体の大半は黒いモヤで覆われていて、体にはバイクの部品みたいなものがついている。
銀の魔女。その性質は自由。
コイツは他の魔女とは違って常にフロア内を移動し続ける。
突進攻撃はかなり厄介でくらうとひとたまりもない。きっとまどかでも無事ではいられない。
だからコイツとの戦闘では……!
『この魔女は常に動き回るけどもこちらへの突進攻撃にさえ気をつければ問題ないわ。
あと取り巻き達が噴射する粉塵にも注意して、放っておくと視界を奪われてしまうから積極的に処理していって』
「うん!」
『鬟帙?縺励※縺?¥縺懌?シ』
『来るわよッ!』
侵入に気付いた魔女が轟音を鳴らしながら使い魔と共にこちらへ向かってくる。
『避けるのと一緒に爆弾を設置していって、その後は銃で使い魔達を倒しましょう』
「えっと…爆弾は確かこのスイッチを押して……」
不慣れな手つきで起爆スイッチを押してその場に放り投げる。
それと同時に急いで横へ転がって、密集してる使い魔達に視線を向ける。
『銃の扱いはもう説明しなくても大丈夫そうかしら』
「もうすっかり慣れちゃったよ…毎日魔女との戦いで使ってるからね……」
『それならよかった。さあ少しでも数を減らしていくわよ』
「いいのかな……」
そんなことを話していると後ろから爆音が聞こえてくる。
魔女が突進してきたら同じ要領でダメージを与えていく…油断せずに立ち回ればどうってことはなさそうね。
『もたもたしてると魔女が向かってくる…急ぐわよ』
「う、うん!」
3
まどか達が魔女と交戦してる中、結界の外で謎の二人組が監視をしていた。
一人は黒のローブを身に包み、目元をフードでしっかりと隠している少女、もう一人は右目の眼帯が特徴的な黒の服を纏った少女だった。
「どうだい調子は?」
『今魔女と交戦してます。特に苦戦することなく戦ってますね』
「ふーん…やっぱあの女が邪魔ってわけか、何て言ったっけ…名前?」
『鹿目まどかです』
「ああ、そんな名前だったね」
『それと結界の外にも暁美ほむらの身体を預かっている美樹さやかがいます』
「確かあの身体は今は魂の入ってない抜け殻なんだよね? だったらこんなまどろっこしいことしないで、あの青いのごと殺してしまえばいいんじゃないの?」
『そ、それは……』
「ダメよ」
サラっととんでもないことを言う眼帯の少女に黒ローブの少女が恐怖を感じていると背後からもう一人、白のローブを纏った少女が現れる。
その少女を見るや眼帯の少女の目がキラキラと輝く。
「キミも来ていたんだね!」
「どうしても気になってね…それよりも今はまだ直接手を出すべきではないわ」
『そ、そうなんですか?』
黒ローブの少女の疑問に彼女は静かに頷く。
「厄介なのは暁美ほむらだけじゃないわ。鹿目まどかも彼女と同じように危険な存在…うっかり契約のきっかけを作ってしまうと面倒ごとが更に増えてしまうのよ」
『はあ…では一体どうするんです?』
「その方法はもう考えてある。
今までは直接魔女や使い魔を送り付けていたけども、次はちょっと趣向を変えてみるわよ」
白ローブの少女はそう言って、ほむらを抱えているさやかに視線を移して笑みを浮かべる。
その顔はとても凶悪で黒ローブの少女は猛烈な寒気を覚えたのだった。
☆See you!! Next story……★
次回、第8話 見滝原の魔法少女達②