やはり俺の学校生活はおくれている。   作:y-chan

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別視点を用意してみました。

良い日をお過ごし下さい。


#6-3-view iroha

最近は教室がやけに賑わっている。

多分GWが近いからだと思う。

 

そのGWの予定を埋める相手として私はよく誘われる。

毎年の事なのだが今年は全て断っていたりする。

その理由は初対面の人から2人きりで遊びに行こうと誘われるのが今年は非常に多いからだ。

 

私とせんぱいが一緒に遊びに行った写真が出回った辺りからそういう人たちが増えていった気がします。

 

誘い文句をよく聞いてみると、せんぱいが私を誘えるなら自分もワンチャンあるのではと言うような根拠のない理由でした。

 

せんぱいは誘っていないです。

私が誘ったのです。

 

そこをはき違えないで頂ければと思いました。

 

あといきなり肩触られるとか頭撫でられるとか正直キモいんですが、体裁を取るために一旦我慢しています。正直ストレスがたまりますね。

 

まぁ、担任に相談するという事も手段の1つではありますが、そんな事したら学校内での私の立ち位置が危うくなってしまいますので、それは最終手段であり、まだそこまでの領域に踏み込んでいる訳ではありません。

 

そんな事を考えているとまた、私の席にちょっと緊張した面持ちの男子がやってきた。

まーたGWのお誘いでしょうね。

 

「一色さん、GWさ」

 

もう聞き飽きました。

 

「ごめんなさぃ、GWはもう予定埋まってて…」

 

相手に本当に申し訳なさそうにみえるこの表情は手慣れたものだ。

これで断ればヘタに踏み込まれずに済むので非常に有用だ。

 

「そ、そうなんだ…わかった…」

 

そう言って寂しそうに去って行く名も知らぬ男子を見ながら私は思う。

今現在、私の手帳のGWの予定は真っ白だ。

私はこれからこの予定を埋める予定なのだ。

とりあえずせんぱいの予定を聞き出し、そのまま言質を取らなければなりません。

 

あの人絶対GWは暇ですよね。

暇じゃなければ逆に何の予定が入っているか詳細に伺う必要があります。

事と次第によっては同伴も覚悟してもらいます。

 

なので、私のGWの予定は現在埋まっています。

嘘はついてないよ。

…それにしても、せんぱい?

 

私は教室の端にある先輩の席を一瞬だけ視界に入れる

 

放課後であるにもかかわらず、なんで席から立とうとしないんですか?

せんぱい今日日直でもないですし、何ですか誰か待ってるんですか?

私を待っているとか?

 

凄く嬉しいですが教室で待たれると他の人の目があるのでちょっと恥ずかしいです。

駐輪場で待ってて下さいってメールしようかしら。

 

そんなこんな考えていたらまた1人GWの予定を埋めに男子がやってきた。

 

「一色さん、あのさぁ」

 

彼の口調からやけに自信が漏れ出ている。

あー、これは対応間違えると面倒くさい勘違い系男子だ。

私の直感がそう判断した。

 

「GWさ、一緒に遊び行かない?」

 

私、あなたと喋った記憶が全くないのですけれど。

それよりも名前なんでしたっけ?

 

まずは敬語抜きで喋れる仲になる事から始めなきゃダメなんじゃないでしょうか?

 

そんな状態でいきなり遊びに行かないって、色々とすっ飛ばしすぎています。

まず順序を守りましょうかって話です。

 

「あー、GWなんですがちょっと予定が詰まっていて」

 

「それってまたあの人とかな?」

 

彼はせんぱいの方を見てそう言った。

 

「まぁそれもありますが」

 

反射的にそう答えてしまった。

一瞬ヤバっと思ってせんぱいの方に視線を向けたら、そんな話聞いてねぇって顔していた。

せんぱい?お行儀が悪いですよ。聞き耳立てちゃダメですよ。

 

「まじか。あの人と一緒で大丈夫?」

 

大丈夫? うん大丈夫ですよ。

だってせんぱい私のおうちまで知っていますし。

ちゃんと送ってくれますしね。

 

「大丈夫って何ですか〜?」

 

「だってあの人ダブっているし、それにたまに本読みながらニヤってしている所とか怪しいじゃん」

 

あーなるほど。

確かに私も1度勘違いしましたね。

ダブってるからって不良とかそんなイメージ。

でも話してみると博識だったりするから不良とかではないんですよね。

学校ちゃんと来てるし。

 

何かしらの理由はあるんだと思うけれどちょっと聞きづらいんですよね。

 

あと、せんぱいが読んでいる本って、確かライトノベルって奴ですよね。

たしかせんぱいが前に力説していたのを思い出しました。

人目気にせずに笑えるって事は面白いのかな?

今度貸して下さいと言ってみよう。

 

…っあ、そうだった、彼の返答忘れてた。

 

「あー、大丈夫です。怪しいだけで特に無害なので」

 

「うーん、それでも俺心配かな。どうかな俺も一緒に」

 

別に心配される必要が無いんですが…

一緒にってせんぱい逃げちゃうじゃないですかやめて下さい。

 

「別に心配される必要は無いですよ。偶然にもせんぱいとは何度か話しましたし」

 

「へぇ、もしかして比企谷先輩の事…気になるとか?」

 

悪いですか?

 

「そんなわけ無いじゃないですか。そう思われている事自体心外ですよ」

 

でも恥ずかしいのでこの場は濁させてもらいます。

せんぱいの反応が気になります、今どんな反応してます?

 

チラチラとせんぱいの様子をうかがって見てみましたが半目でした。

せんぱい?言葉の裏を読んで下さいね。

 

「そうなんだ。ならさ、彼との予定はやめて俺と遊ばないか?」

 

この人は何を言っているんですかね?

 

「それはなんでですか?」

 

「彼よりも俺の方が一色さん楽しませられるっていう自信かな?」

 

自信過剰も甚だしい。

私とあなたは実質初めましてです。

それなのにあふれ出るその根拠のない自信は何でしょうか?

 

「へぇ〜、そうなんですね」

 

「だから…」

 

とりあえずこう言った早とちりで勘違いな人には何の飾り気もない率直な断りを入れた方が伝わりやすい。

 

「ごめんなさい、お断りします」

 

「えっ、な、なんで?」

 

うん、やっぱりこうかばつぐんだ。

 

「だって、そういう人に限って大体とりあえず女の子が喜ぶようなお店選んで、とりあえず当たり障りない話題を話して、とりあえず買い物してって…何でしょう当たり障りないテンプレですかね?そこに私も当てはめようとしている感じがしてるんで」

 

「それが普通なんじゃないかな?だって俺ら高校生だし」

 

私、可愛いんですよ。

そんじょそこらの女子と一緒にしてもらっては困るわけで、誰よりも男子の誘いを受けていて遊びに行っているわけですよ。

 

もう単なるテンプレじゃ満足できないんですよ。

それがわからないなら普通の女の子誘っとけって話なんですよ。

 

「そうだね。それが普通だね。でも私は普通じゃ満足しない。だから断っています」

 

どうやら今の言葉が彼のプライドに傷を付けてしまったらしい。

 

「なんだよ…それっ!」

 

いきなりのことでかなり驚きました。

彼は机を思いっきり叩きました。

それは初めて男子から向けられた怒りの表現で、怖いって気持ちが全身を駆け巡った。

ちょっと泣きそうになりました。

 

そんな中、ヘタレで不格好ではありますが、言葉で立ち向かおうとする人が居ました。

案の定せんぱいです。

 

「おい、いい加減」

 

なんだろう、今までの怖いって気持ちが消えていきました。

私にはせんぱいが味方してくれる。

 

「うるせぇっ!」

 

うるさいのはどっちですか。

せんぱいに対する口の利き方がなっていないですね。

私も怒りますよ。

 

なんで私がこんな人に怖がらなくてはならないのだ。

むしろ立場が危うくなっているのは相手の方じゃないか。

 

「なに、一色の同中の奴らから聞いたけれどいつも男とっかえひっかえしてんじゃないの?」

 

もう大丈夫。怖くない。

 

「そんなわけ無いじゃないですか。私だって選ぶ権利はあります」

 

誰が言ったかは分からないですが昔の話を掘り返してまで言う事ですかね?

私だって選ぶ権利はありますよ。

 

何もせずに待ちぼうけするよりも、選びに行く行動力はありますよ。

他の女子と一緒にしないで下さい。

それが嫌いなんですよ。

 

「てことは高校になって、あれと出会ったから変わった系か?」

 

中学生の時点で出会ってますし、そこまであなたに語る必要はないです。

あなたの目的自体もうお断りしていますし、もうここからは蛇足ですね。

適当に受け流させてもらいますね。

 

「だから、せんぱいとは本当に何も無くて」

 

「知ってるぜ。入学当初から仲が良かったじゃん?駐輪場で待ち合わせしたりな」

 

本当に人の目ってどこにあるか分からないですね。

あの時はあの手この手でせんぱいを誘っていた時期じゃないですか。

 

それにしても本当に諦めの悪い方ですね。

ベクトルさえ間違えなければ良い人なんでしょうけど。

 

「それは、相談があったので」

 

「なんだよ相談って」

 

適当にでっちあげようかな。

葉山先輩狙ってますーとか宣言したくないし。

 

「…それはこれから起こる事だ」

 

急にせんぱいからよく分からない横やりが入った。

私も何のことか分からなかったが

 

「一色さんはいるかな?」

 

この声、この言葉を聞いて理解した。

葉山先輩だ。

 

せんぱいはこれから起こる事と言った。

つまりは葉山先輩が来ることは予定調和だった。

 

あぁ〜…

 

ほんっっとぉ〜にあの人、なんなんですか。

 

私を打算的とよく言えますね。

ここまであざとく事を運んでくるのはちょっと…かなりぐっときますね。

 

まさかこの状況になる事を先読みしてたんですか?

こんな手を打ってくるなんて思ってもみなかったですよ。

 

えっ?これ私のためだけに仕組まれた事ですよね?

…せんぱいの事だからこれを他の女の子にもやりかねないですね。

 

そうなるとやはりせんぱいを保護する必要があります…

その作戦会議の為、いまは戦略的撤退をさせてもらいます。

 

また戻ってくるので覚悟しておいて下さいね!

せんぱい。

 

えへへぇ〜。にやけが収まらない

 

***

 

 

私は葉山先輩に連れられ特別棟の渡り廊下にある休憩スペースにたどり着いた。

そこで葉山先輩は自動販売機で飲み物を奢ってくれました。

 

「すまない。時間を取らせてしまって」

 

「いえいえ、むしろご指名頂いて感謝感激です」

 

まさかこうして葉山先輩とお話し出来る日が来るなんて思ってもいなかったです。

 

「そう言ってもらえると助かる。早速本題なんだが一色さん、サッカーに興味は無いかな?」

 

「凄く興味あります!」

 

いやぁ、そこまで興味があるわけでもないですけれど、あの葉山先輩からのお誘いですし断るわけにはいかないじゃないですかぁ〜。

 

「そうか。ならサッカー部のマネージャーなんてやってみない?」

 

「えぇっ!?良いんですか?なんか入部規制を敷かれていた位競争率高いって聞きましたよ?」

 

せんぱいには話はしませんでしたが、サッカー部は葉山先輩人気のせいもあって、マネージャー枠に入部規制が敷かれているのは知っていたんですよね。

 

元々せんぱいと約束を取り付ける口実なだけだったんですが、まさか入部の約束を取り付けるなんて…

実はとんでもなく優秀だったりしますあの人?

 

「あぁ、彼が勧めるんだ。是非とも入部して欲しい」

 

葉山先輩も認めちゃってるし。

 

「え?…せんぱいがですか?」

 

「そうだ。仕事はできるからこき使って欲しいとのことだよ」

 

あー…なるほど。

仕事しないマネージャーしかいなかったから仕事出来る人を持ってきたから使ってくれ的な感じで交渉が進んだのがよくわかりました。

ドナドナですね。

 

「な、なるほど〜」

 

「っと言うわけで、この入部届を書いてもらって、正式にマネージャーになってもらおうかな」

 

まぁ、葉山先輩とお近づきになれたことだし、このくらいは目をつむってしっかりとマネージャーを全うしますか。

 

ここまでしてくれたせんぱいの顔に泥塗る訳にもいきませんしね。

 

「はい、わかりました」

 

「練習はGW中にもあるんだけど、これそうかな?」

 

なっ!?

ちょっとそれは聞いてない。

しかし、お願いしているのが葉山先輩だ…クソ〜、これは断れない…

せんぱい?恨みますからね!!

 

「だ…大丈夫です…」

 

こうしてせんぱいと過ごすはずだったGWはどうやらサッカー部員のお世話へと様変わりしてしまうみたいです。

 

今年のGWはとても休めそうになさそうです。

 

 


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