やはり俺の学校生活はおくれている。   作:y-chan

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またもや遅れて申し訳ない。
ようやくあのひとが出せます。


#15-3

 俺と目が合った雪ノ下先輩は目をそらすことなくじっと俺を見続けていた。

 しかし、先ほど別れを告げた知り合いにまた遭遇すると言うのはなかなか気まずいもので、何か喋らないとと言葉を探る。

 

 探している最中に雪ノ下先輩から先手で言葉が出る。

 

「あら、比企谷君? また会うなんて偶然って重なるものね。てっきりお家に帰ったものだとばかり思っていたわ」

 

 俺もお家に帰りたかったが、一色に捕まって帰る事が出来なかったんだよ。

 

「まぁ、一色に連れ回されているだけですよ。どうやら由比ヶ浜の誕生日プレゼントを選びたいんだと言う話で連れ回されているんすよ」

 

「奇遇ね。私も由比ヶ浜さんの誕生日プレゼントを買いに来た所よ」

 

 おっ、女子同士で考えつくことは同じなのかどうかはわからんが、男子にはないシンパシーみたいなのがあるんだろうな。

 いや単純に誕生日を知っていたから買いに来ただけだろう。

 俺は誕生日を知っていた時点でキモがられるけどな。

 

「ひとついいかしら?」

 

 そう言って俺を上目づかいで見る雪ノ下先輩に少しドキッとする。

 

「え、えぇ。いっしゅよ」

 

 つい緊張してウィッシュの別種みたいな返事になっちまったぜ。

 

 その言葉を指摘すること無く雪ノ下先輩は言葉を続けた。

 

「プレゼントが重なっても由比ヶ浜さんを困まらせてしまうから差し支えなければ何を買ったか教えて貰っても良いかしら?」

 

 あぁ、そういうことか。まぁ確かに消耗品以外被ったらどれをフリマに出そうか悩むレベルだよな。

 

「まぁ、一色がエプロンで、俺がこれっす。首輪」

 

「……あなた、何か特殊な性癖を由比ヶ浜さんに押しつけようとしてない?」

 

 雪ノ下先輩からやけに鋭い軽蔑の視線を感じるがそんな事は一切考えて無い。純粋に犬の首輪なのだぞ?

 ってかいきなり人を変人扱いするのはデフォですかね?

 

「首輪見せただけでその発想にいたる雪ノ下先輩の方がちょっと危ないっすね」

 

「私も首輪だけではその発想にはならないわ。あなたがあげるからその発想になったのだけれど」

 

 えっ? 俺そんなに不審者ですかね? 結構普通な高校生生活送ってるはずなんすけれど。

 

「まぁ……一色さんがいるのだったら問題はなさそうね」

 

「えーっと? 一色は俺の保護者ですかね?」

 

「そうじゃないの?」

 

 えっ? いつの間に雪ノ下先輩からそんな絶大な信頼関係を築けたの一色ちゃん?

 なんか扱いが俺より上なんですけれど、俺のヒエラルキーどこいったよ?

 

「どこをどうしたらそう見えるんですか?」

 

「普通に見てたらそうなるわよ」

 

 この人俺をおちょくってんのかな?

 

 そんな事を考えながら半目で微笑を浮かべる雪ノ下先輩を見ていたら買いものを終えた一色の声が背中から聞こえてきた。

 

「せんぱーい! おまたせしました……って雪ノ下先輩!?」

 

「一色さん。私の顔を見ただけでそんなに驚くことかしら?」

 

「い、いえそうではなくて。なんと言いますか……先日はあの〜……。失礼しました」

 

 そう言って一色はぺこりと頭を下げる。

 

「えぇ、いきなり泣いて飛び出してしまうのだもの。心配したわ。」

 

「ですよね……すみません」

 

「詳しい話は由比ヶ浜さんから聞いてるから安心して」

 

「雪ノ下先輩、ありがとうございます」

 

「いえ、私も配慮が足りてなかったかもしれないから気にしないで。ただ……あなたも物好きなのね」

 

 そう言ってフッと微笑を浮かべる雪ノ下先輩と少し顔色を赤める一色が楽しそうに喋っていた。

 なんだなんだ? 由比ヶ浜だけでは飽き足らずまさか一色にも……道理で仲がよく見えるわけだな風紀が乱れて良いと思いますっ!

 

「それじゃ比企谷君。私は別のお店に行くからちゃんと一色さんをエスコートしてね」

 

「そうですよせんぱいっ! しっかりエスコートしてください」

 

 えっ? まだなんかあんの? 手早く帰りたいんだけれど。どうにかごまかせねぇかな?

 

「由比ヶ浜の誕生日プレゼントも買ったことだし。俺たちもそろそろ駅に向かおうぜ」

 

 駅までエスコートするからさっさと帰ろうという俺の希望と一色の要望も取り入れた完璧な返し。我ながら惚れ惚れするぜ。

 

「折角ですし、もう少し付き合って下さいよせんぱい〜」

 

「まだ買うもんあんの?」

 

 俺の頑張って考えた自信作が数秒で打ち崩されて自身が喪失しそうだわさ。

 

「ちょっとだけあれですよ。書店によりたいもので」

 

「めずらしいな。勉強か?」

 

「それもあるんですけれど、ひとつ続きの気になるラノベがあったので」

 

 そういえば俺こいつにいくつか貸してたな。そんなかでも気になるのがあったのだろう。

 まぁ俺の勧めた本で続きを気になってくれるって言うのは悪い気はしないよな。

 

「……それ買ったら帰るぞ……」

 

「は〜い」

 

 そんな俺らのやりとりを見ていた雪ノ下先輩が何かため息をついていたのは何故だろうか。あまり深く考えないようにした。

 

 

 ***

 

 

 それから俺と一色は本屋へ、雪ノ下先輩は別の店で由比ヶ浜のプレゼントを買うと別れた。

 

 一色が買いたいと言っていたラノベは俺も結構好きな奴でタイムトラベル系の奴だ。

 VRゲームをしていたらいつの間にかコールドスリープされていて気づいたら2000年後の未来になっていた。タイムリープでコールドスリープになる原因を探るべく冒険が始まると言う内容のラノベだ。そそるよな。

 

 続きは俺の家にもあるのだが、結構面白いから自分で揃えたいという一色の要望を聞き、書店へと足を進めたわけだ。やはり好きな物は自分の手の内に置いておきたいというコレクター欲求はあるよな。

 

「ちょうど、全巻揃っててよかったです」

 

「そうだな。まぁ巻抜けして途中から読んだらこの間の間に何があったのかわからないモヤモヤ感がハンパねぇしな」

 

「まぁその時は別の書店に行きますよ。最終的にはせんぱいの家に借りに行きます」

 

 俺これ揃わなかったらずっと付き合わされていたのかよ……最初の書店で全部揃ってて良かったと心から思うわ。

 

 一色がレジに並んでいる間、俺はまた外で待つことにした。

 

 のんびりと書店前にあるポスターを眺めてアニメ化するんだなこのWeb小説とか考えていたところ、かすかに聞き覚えのある声が耳に入ってきた。

 

 俺はその微かな声を手がかりに視線を向ける。

 

 するとどうも見覚えのある1人ともう1人の面影。雪ノ下先輩と? あと……誰だ? 格好を見る限り女性である事は確かだ。何かトラブルにでも巻き込まれて居るのだろうか?

 あの容姿だからな……芸能スカウトとかの誘いなのだろうか。流石すぎるぜ。

 

 流石に毎日顔を合わせる奴がトラブルに巻き込まれて居るのに見て見ぬ振りは出来ないしな。もう少し近づいて状況を探ってみるか。

 

 そうして俺は別の店舗の商品を見る振りをしながら2人に近づく。

 

「雪乃ちゃんつれないなー、たまにはお姉ちゃんと一緒に遊んでくれたっていいじゃない? こんな大きな所で偶然会ったんだしこれはもう運命じゃない?」

 

「あなたの遊びにいつも振り回されているのは誰だと思っているの? これ以上私に迷惑をかけないで」

 

 相手の誘いに対してやけに攻撃的な感じだな。やっぱりあれか? スカウトとかそんな類いの奴か。それとも昔の知り合いか……どちらにせよ相手が迷惑がっているのにしつこく誘うことは迷惑行為にあたる。店員呼ぶか。

 

 そう思い俺はインフォメーションセンターへ向かおうとしたが、そこでやめろやめろとあれほど言ったにもかかわらず大声で俺を呼ぶ声が響く。

 

「せんぱーい。お待たせしました!」

 

「ちょっ!! おまっ!?」

 

 するとその声に気がついた2人の視線が俺に注がれる。

 

「比企谷くん」

 

「あれ〜? 雪乃ちゃんの知り合い? 珍しいね!」

 

 その人はとても整った顔立ちで艶やかな黒い髪。そして透き通った白い肌に合わさり表現豊かな表情で華やかさが醸し出していた。まぁ要するにすっげぇ美人が俺の目の前にいるのだ。

 

 くっそ、見つかってしまったらこれはどうするか?

 

「あれ? 雪ノ下先輩。今日はよく会いますね。隣の人はどなたですか?」

 

 普段通りに雪ノ下先輩と会話を始める一色。流石のコミュニケーション能力だ。

 

 一色の言葉に若干戸惑いながらも、弱々しく言葉を出した。

 

「……姉さんよ」

 

 雪ノ下先輩、姉がいたんですね。完全に一人っ子だと思ったわ。しかし見比べてみるとそうだな、確かに顔の作りで似ているところは多々ある。多分表情の豊かさでこの違いが出てるのだろうと俺は判断した。

 

「え〜っ!? 雪ノ下先輩お姉さんいたんですね!」

 

 するとそのお姉さんが雪ノ下先輩と会話の選手交代と言わんばかりに言葉を出す。

 

「雪乃ちゃんの姉の陽乃です。宜しくねっ」

 

「私、一色いろはって言います!」

 

「うす。比企谷っす」

 

「へぇ〜、2人ってもしかして恋人同士とか〜?」

 

 いきなり懐に入ってきやがったぞこの人。

 すげぇリア充ってそんな芸当出来るんだな。俺絶対出来ねぇよそんな事。

 

「えっ! そっそんなわけでは無いですけれど……」

 

 しどろもどろになりながら一色が答えるがチラチラと俺に視線を向けるのは辞めてね。俺こう言う話題でどう喋れば良いかわからない子だから。

 

「え〜違うんだー。なんか雰囲気的にそんな感じしたから絶対そうだなーって思ったんだけどなー。なら今日はデートなんだ。やるねー」

 

「えっ、と……今日は友達の誕プレを選びにきたんですよ〜なのでデートではないですよ?」

 

「えー、お姉さんすごくラブコメの波動感じちゃったんだけれどなー」

 

 ラブコメの波動って何だよ。女子ってそんなの感じ取れるの? 相手の恋愛戦闘力見ただけでわかっちゃうの? やべぇよ。生きてる次元が違うわ。とりあえず否定させて貰うか。

 

「そんなことは無いですよ。だってこいつ別に好きな人いますし」

 

「へぇ〜……そうなんだ。ならさならさっ比企谷君? 雪乃ちゃんなんてどう?」

 

「いや、いきなりそんな話をされても困るんですけれど」

 

「そうよ姉さん。いきなり変な話をしないで」

 

「そう〜? 雪乃ちゃんとなら結構お似合いだと思うんだけれどなー。そうだ比企谷くん、もう誕プレ買っちゃったの?」

 

「まぁ。買いものは終わりました」

 

「それならちょっとお姉さんと付き合わない? お姉さん比企谷くんにすこし興味でちゃった。カフェでお話ししましょ」

 

 そう言って陽乃さんは俺にぴったりとくっついて人差し指のグリグリ攻撃を執拗に続ける。

 これはきっとしんのすけもイチコロだろう。

 

 ……ってか胸、胸っ!!? 当たってんだけれど、やべぇやべぇやべぇ……なんだこんなの知らないっ! あっあと良い匂い。

 

「ちょっ! せんぱい!!」

 

 その声ではっと我に返った。

 っは良いが、一色の目の光が消え、かがやくいきさながらの侮蔑の視線が俺を射貫く。

 

 どうにか理性を取り戻し陽乃さんを引き剥がす。

 

「ちょ、流石に初対面で近づきすぎですよ」

 

「あはは〜、比企谷くん面白いねぇ〜」

 

 この人におちょくられているのだろうか。さっきから天真爛漫の言葉の通り行動の先が読めない。

 

「一色ちゃん可愛いぃ〜、お姉さん抱きしめたくなっちゃうよぉ」

 

 一色も自分が遊ばれていることに気づいたのか頬を赤くし俯いた。

 

「あっ……、ごめんね一色ちゃん。お姉さん調子人乗り過ぎちゃったかな? 大丈夫だよ、比企谷くん取らないからねっ」

 

「ちがっ、だからせんぱいとはそんな関係じゃなくてっ!?」

 

 そういうとさらに一色の顔が真っ赤っかになる。

 あの一色いろはが雪ノ下姉が相手になると手のひらで踊らされている。

 

「そう? なら早くしないと雪乃ちゃんが持って行っちゃうかも知れないよぉ?」

 

 それよりもさっきから違和感が俺の不安を煽る。

 いや、モテない男子ほど女子からアプローチして欲しいという願望が強い。なぜなら自分達は受け入れるだけで良いからだ。世間一般的に男子から女子へのアプローチが常識となっているなか、そういう女子は早々にいない。いるとしてもそれは必ず自分にメリットのある人間である事が絶対条件になるはずだ。

 

 だからこそ俺は陽乃さんに対しての違和感がある。

 女子はそんな事をするはずが無いのだ。美人ならさらに自分から攻めずとも勝手に寄ってくる。その理にかなわない行動に違和感がある。ということは今受けているこの行動は偽物だ。自分から攻めていく建前の行動力。

 それは仮面という表情だけの言葉では収まらない。

 建前のパワードスーツ……長いな。強化外骨格とでも言えばわかりやすい。

 

 そう考えると、いままでそれに振り回されていた自分が少しだけ恥ずかしくなる。しかし同時に、冷静さを取り戻した。

 

「かんっぜんに遊ばれてんなお前」

 

「せんぱいっ! 何見てるんですか! 助けて下さい!」

 

 そう言って半泣き状態の一色が俺に助けを求めるが俺は目の前のキラーマジンガに勝てる気がしないのだが……

 

「姉さん……いい加減にして貰えないかしら」

 

 雪ノ下先輩が低い声で苛立ちを隠そうとせずに侮蔑の視線を向ける。

 

「あっ……雪乃ちゃんごめんね。ちょっと二人があまりにも初々しかったからちょっとからかってみたかったの」

 

「もういいでしょ」

 

「私的にはまだもう少し遊びたかったけれど、雪乃ちゃんがあれだし今日の所は退散するね。またね一色ちゃんと比企谷くん」

 

 そう言って颯爽と陽乃さんはどこかへと去って行った。

 なんというか……ゲリラ豪雨のような人だったな。

 

「なんて言うか……すごいお姉さんですね〜」

 

「そうだな」

 

「ごめんなさい。姉がああいう性格で迷惑をかけたわね」

 

「なんて言うかすごいですね」

 

「そうね。姉は何でも出来て誰からもほめられる人よ」

 

「そうでしょうね。じゃないとあんな建前の化身のような芸当は出来ませんよ」

 

「……比企谷くん? どういうことかしら」

 

「なんと言うんでしょうね。モテない男の理想と言いますか。向こうからしゃべりかけて来てくれて、人なつっこくて表情豊かで美人でスキンシップもあってってもうなんか良い事づくしで逆に怪しいんですよ」

 

「よく客観視出来てるわね。その通りよ。ああいう行動全て姉の外面なのよ。長女である姉は挨拶回りや会食、パーティーに連れ回された結果出来たのがあの仮面よ」

 

 会食? パーティー? 雪ノ下先輩の家は金持ちなのかな? まぁ姉もあんだけ美人でなんか高そうな服を着ていたのだ。

 どっかの令嬢であるのは確かだろうよ。

 

「まぁ俺も、親父にはよく言われていますし。距離の近い女には気をつけろって」

 

 そのあとでお袋にめちゃくちゃ怒られたとかそんな話を小町から聞いたがな。

 

「そんな理由で気づかれるなんて姉も思ってもないでしょうね」

 

「せんぱーい、私流石に疲れました〜」

 

 力なくふらふらと俺の元に寄ってきた一色。

 そういえばこいつが今回1番の被害者だな。

 

「なんで助けてくれなかったんですか〜……」

 

「俺がくちだしたらさらに被害が増大したかも知んねぇだろうが。あそこは雪ノ下先輩が言ってくれたのが正解だ」

 

 俺にあれを説き伏せる力は無い。俺は無力だ。

 

「それならちょっとだけ休憩しましょーもうちょっと疲れましたー」

 

「そうね。比企谷くん近くにカフェがあるからそちらに移動しましょう」

 

「うっす。わかりました」

 

 雪ノ下陽乃に今日使う思考力をごそっと持って行かれ俺も甘い物で糖分補給したかった。

 そして俺たちは若干ふらふらにナリなりながらもカフェへと足を進めるのだった。




引っかき回し役のはるのん登場です。
言葉ひとつ考えるだけでも結構大変やなこの人……
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