そしてあまりオリキャラを出さないようにはしていたんですがね。
今回やってしまった。
6月もなんやかんやで色々とあった。
先日一色と一緒に居たことが見事にクラスの連中に知られてあったごたごたとか、重度シスコン疑惑とか葉山先輩とやけに仲が良いからもしかして2人は……とか様々な噂が飛び交っては俺はそれらを否定してなんとか無事6月の最後の週を迎えることが出来た。最後のは流石に限定的な人のみだったから気にする必要は無いだろう。
今日の奉仕部は園芸部からの依頼で、人手が足りなかったらしく肥料を黙々と運んでいた。そのせいか今日は肉体疲労がたまっており、俺はペダルをこぐだけのマシンと化していた。
そんな状態も相まって注意力が散漫になっていたのだろう。帰り道に自転車の前輪タイヤがパンクしてしまった。
どうやらガラスの破片を踏んでしまったらしい。誰だよ酒瓶を道路で割って放置した奴。
状況は最悪でそれはもうバックリと割れてしまっていてこれタイヤ自体買い替えないと無理じゃね? って思う位だ。
まじでついてねぇ……
そんな事よりも俺が今いる所は家まで距離が微妙に遠い。そして手には少し力を加え押してでないと前に進めない自転車。
俺の中に3つの選択肢が思い浮かぶ。
1つ目はそのまま押して家まで運ぶのだ。まぁ今週は電車通学になるだろうが、土日のいずれかに修理すれば大丈夫だろう。
2つ目は自転車を駅の駐輪場にとめて後日取りに行くと言う方法だ。問題を先送りにする方法だ。
3つ目はそれでも関係ない。おれは自転車を漕ぐぞ。
うん、余裕で1番を選ぶだろ普通。3番はアレだ、自転車の修理費が倍額になる恐れがある。
そんな事を考えてベコベコと音を立てる自転車を押して家まで帰る。
日も落ちる時間帯だというのに不快な湿気はそのままで、さらに少し力を入れて押して歩いている自転車がある事から吹き出した体中の汗で制服やらズボンが肌にへばりつく。
「あっちー」
少し歩くとコンビニがあり、一旦自転車を止めそこに入る。自動ドアが開く瞬間に中の冷房が俺に流れてきて先ほどまでの熱を冷やしてくれる。
とりあえず俺は安くで買える紙パック1リットルでレモン味のビタミンドリンクに手を出す。このコンビニを出てからのことを考えると小まめな水分補給は欠かせない。
そしてさっぱりとした飲み物を飲みたいという欲求を満たすもの。さらに安価で手に入る。俺の今の要望を満たすドリンクと言えよう。
一応財布を確認する。残金は100円だ。……足りん。あと20円くらい足りん。
そうだった……今日は力仕事の後に飲み物買って飲んでたら一色に見つかって奢って。あーそれで無くなったのか……くっそ、飲み物なしで帰るとかマジで苦行なんだが……
「あれ? もしかして比企谷先輩ですか?」
後ろから聞き慣れない声で俺の苗字を呼ぶ声が聞こえる。多分違う比企谷さんだろう。しかも先輩とかすごい偶然だな。ここは無視することで『えっ!? 俺じゃなかったんだ……』を避ける処理を八幡脳細胞が自動的に行ってくれた。
「比企谷せんぱーい? あれ? イヤホンしています?」
どんどんと近くなってくる声。うん? 俺の近くに同じ比企谷さんが居るのかな?
そう思い周りを見渡してみると誰も居ない。そうなると状況は変わってくる。この聞き覚えの無い声をした女子は俺を呼んでいるのだ。
とりあえず姿を見ようと俺は振り返った。すると150センチあるかどうかの身長で俺を見上げていた。肩までの伸ばした黒髪、夏日が続いているというのに真っ白い肌と幼いながらも整った顔立ちで俗に言う可愛いと言う部類に入る女子だ。そんな見覚えの無い女子が目の前にいてなにやら困惑の表情を浮かべ立っていた。
「……誰?」
姿はみても結局お前はなんなんだ? という疑問は思い立つ。
それを言葉にのせ表してみた。
「やっぱり比企谷先輩だ! 同じクラスの矢向ですよ!
どうやら名前は矢向というらしい。あー、確か俺の席の列の一番前の奴だ。休み時間よく4人くらいの女子と話してるよな
「あっ、そうなんね。でっ、なんか用?」
とりあえずなんで俺は声かけられたの? すでにジュース1本買えない俺の精神をさらに抉りに来たの?
「今日は一色さんと一緒じゃないんですね」
「なんで俺と一色がワンセットで考えられてんだ?」
「えっ!? だって彼女じゃないんですか?」
「ちがうっつーに」
「うっそだ〜、だって普通にデートしていたじゃないですか」
この話題はあの場面を見られてからと言うもの耳にタコができるほど聞かされた話題だ。
正直誰が話そうとも俺の持ち合わせている答えはひとつだ。
「ちげーよ、部活の一環だ」
「へー。そうなんですね」
すげーどうでも良いみたいな反応だな。ここが会話の切り上げ時か。
「そんなもんだ。そんじゃ俺行くわ。んじゃな」
俺は紙パックを陳列棚に戻し出口へと向かおうとした。
「あれ? 比企谷先輩? 買っていかないんですか?」
矢向は首をかしげて俺に問いかける。あれ? 今の去り時じゃなかったの?
「買おうと思ったら金が無かった」
「何ですかそれ」
矢向がふっと微笑みを浮かべる。
「ちょっと待ってて下さいね」
突然矢向は俺が陳列棚にもどした紙パックを取り、レジの店員の元へと小走りで向かい少し話をしてまた戻ってきた。
「今日はツケで良いですよ。支払いは済ませておきました」
そう言って俺に紙パックの入ったビニール袋を差し出した。
なにそれこわい。いきなり何しちゃってんのこの子。
「なにお前? 同じクラスってだけで飲み物奢ってもらう理由はないんだが」
「あくまでツケですよ? 後日ちゃんと支払してもらいますから」
奢るじゃなくて後払いにしてくれるのね。まぁ何の理由も無いのに奢ってもらうよかいいが……
「それに……同じクラスの男子が全身汗びっしょりで飲み物も買えない状態とか流石に可哀想だなーって思っただけですよ」
あっ、同情されてんのね俺……。
「10日で1割の利子とかつかねぇよな……」
「そんなのしませんよー、ただー……ここうちのコンビニなんで定期的に利用して貰えると嬉しいですねー」
そう言ってぐっと親指を立てる。
あーなるほど、コンビニオーナーなのねおまえんち。
フランチャイズにあまり良い噂は聞かないが大丈夫なのかと少し思ったが、まぁそんな世話な話をしても仕方ないだろう。
「まぁ……考えとくわ。とりあえず助かったわ」
俺は彼女が差し出した紙パックを受け取り鞄へと入れる。
「いえいえ、ぜひぜひ今後ともご贔屓に」
そうしてニカッと歯並びの良い歯を見せながら笑みを見せた。少しぼーっとその笑顔に見惚れていた。
……っぶねー。勘違いするところだったぜ。
「ってかなんで比企谷先輩そんなに汗びっしょりなんですか?」
「俺の自転車がパンクしたから押して帰ってんだ」
「えーっ、悲惨ですね。今日は朝の占い最下位だったんですかね?」
「中間くらいだったはずだぞ」
「ちゃんと朝の占い見てるんですね。きっとラッキーアイテム持っていなかったからですよ」
「妹が毎日みるんでな。今日のラッキーアイテムは狸のぬいぐるみだったな」
「妹さんいるんですね。へぇ〜私持ってますよ? 売りましょうか?」
「いらねーよ。そんじゃ俺そろそろ行くわ。ありがとな」
「はい。またのご利用おまちしてますねー」
「考えとく」
そう言って俺は矢向と別れ、自転車を押して歩く苦行を再開させた。
そして途中で水分補給しようとして気づいたことがある。
「ストローねぇ……」
***
自転車がパンクしてることから今日は電車だった。
しかし運が悪かったのかどうやらお客様トラブルとかで遅延が発生したと駅構内にアナウンスが流れる。
このまま遅延が続くと確実に遅刻だな。まぁ遅刻の常習犯である俺はそれにすら動揺しないんだがな。
電車到着のアナウンスが流れ、車両がゆっくりと停止する。遅延のせいか、電車には結構な人数が確認できて俺もこれに乗るのかと思うと憂鬱になった。
そんな電車も電車が詰まっているというアナウンスがたびたび繰り返され、停止しては進んでを繰り返す。地獄だった。
そして駅にたどり着いた時、始業の時間にはまぁ全力疾走すれば間に合うが、そこまでしてまで俺には守るべきものはない。皆勤賞なぞ入学4日目でくれてやったわ。
もうこれは急ぐ必要も無いと考え、今日あらたに貰った小遣いを使って自販機で飲み物を買いベンチで飲み干すまでゆっくりした後。
ゆっくりと歩いて学校へ向かうことにした。
まぁ、担任は軽く注意する位だし俺は正々堂々と俺は教室に入る。
「比企谷。私の授業に遅れてくるとは良い度胸じゃないか」
目の前に居たのは平塚先生だ。あっ、今日1限目現国だったか。しくじった。
「いや、あれっすよ。電車が遅延してたんですから仕方ないですよね?」
「なるほど。前みたいな正義の味方とかよく分からん言い回しをしなくなったのは褒めてやろう。しかし噓をつくのはいかんな、お前は確か自転車通学だっただろうが」
なんでいきなり噓をついていると言う話が出るんですかね? 八幡噓つかないよ?
「先生!」
そう言って手をあげた女子が居た。矢向だ。
「矢向か、どうした?」
「一応比企谷先輩の言っている事なんですが昨日自転車がパンクしてたみたいなんですよ。あと確かに電車遅延してましたよ」
ナイス矢向! 俺の自転車事情を知る第三者からの話があるとすれば流石にこれは不問になるだろう。
「私も焦って全力疾走でなんとか間に合ったんですけれど……」
あっ、最後のそれいらないぞ。矢向
どうやら最後まで聞き逃さずに聞いていた平塚先生の目が光る。
「ほう比企谷? なぜベストを尽くさなかった」
「いやアレです、ベストを尽くすのは人生のここぞというときに限られるわけで登校くらいの日常でベストを尽くしてしまっては身が持たないという事ですよ」
「何を言っているのだ。スーパーサイヤ人も常時維持する事でムダな出力を抑えられるようになるのだ。常にベストを尽くす事でさらに成長が出来るというのに貴様というやつは」
いやちょっと何言ってるのか分からないです。少年漫画理論を持ち出されても正直困るんすけれど。
「はぁ……まぁいい。とりあえず席に着け」
「うっす……」
良かった感謝の正拳突きを打たれなくてすんだ。
そのまま自分の席に向かう途中、ちょうど矢向の席を横切る。
「良かったですね。比企谷先輩」
ちょうど俺にしか聞こえない声量で声をかけられる。
「お前最後のはいらなかったぞ」
「まぁ良いじゃないですか。あっ、休み時間に昨日のお金徴収しますね」
「へいへい」
そう言って俺は自分の席に着いた。
***
1限目の授業も滞りなく終わり、俺は矢向の席へと向かった。
「矢向」
そう言って矢向はゆっくり俺に顔を向ける。その顔は微笑みで満ちていた。
と同時に両手をお椀型にして俺にさっさと支払えと要求してくる。
「ほれ」
そのお椀型に投げるように金を支払う。
「まいどー!」
そんな事をいいながら渡した金を触りながらほっこり笑顔だ。
「守銭奴かよ」
「いいじゃないですか、お金は大事ですよ?」
「まぁそれはそうだが」
「それにしても比企谷先輩そこそことっつきやすいですね」
「はぁ? どういうことだ?」
「最初は留年した問題児には関わらないでおこうって思っていたんですがね。たまに放課後比企谷先輩を見かけるんですけれど、ちゃんと部活もやってますし昨日だってほかの部活の手伝いとかしてますしね。もしかしたら私は何か前提を間違えてたんじゃないかって思いまして。そして話しかけたら案の定おもしろい先輩でしたーって感じですよ」
「お、おぅ」
なんか俺が知らないところで高評価が出されているのは何というか照れくさいというか……悪くはないな。
「おっ? おっ? もしかして照れてます??」
「うっせ。とりあえず返したからな」
そう言って俺はさっさと席り机に伏せて2時限目まで休憩としゃれ込むつもりだったが、伏せた瞬間から何か消しゴムのカスか何か小さい物を俺に投げている奴がいる。
チラッと薄目で投げてくる方向を確認したらふくれっ面で消しゴムの破片を投げている一色がうつった。
……何してんのこの子。
俺は無視を決め込むことにした。
八幡クラスのイベントを少し考えておりまして、相模(弟)ともう1人くらいは必要かなって思ったので今回オリキャラを追加した次第です。
引っかき回す役も矢向ちゃんに頑張って貰いますかね。
はるのんだとゆきのんが理由に無いと動きそうにないので悩んだ末のオリキャラです。
よろしくやって下さいな。