やはり俺の学校生活はおくれている。   作:y-chan

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#30-1

 それからしばらくキョロ充先輩との会話を続けた後、小学生たちと仲良くしていた葉山先輩からの呼び出しがあった。

 

「戸部ぇー! 、ちょっとこっち来てくれないかー!」

 

「ウィー、はやとくんから直々にお呼び出しキター。そんじゃねヒキタニくんー!」

 

 そういうと颯爽と葉山先輩の元に行ってしまった。なんだったんだあの人は……とりあえず名前が戸部であることがわかった。

 多分2度と関わらないだろう。

 

 ようやく1人になり辺りを見回すと……休憩できるスペースに一色ともうひとり誰だ? ……あぁ、あの時の女の子か。

 珍しいな、ボッチはそもそもパーソナルスペースが広くて一色みたいなエンジョイ勢には近づかないはずなのだが?

 なんであんな距離近いの? 女の子同士だからか? 俺の読み間違えか? やっぱリア充すげぇわ。

 ……それにしても思いっきりカレー作りサボってるんだがいいのかそれ? ズルい。

 

 

 ***

 

 目の前に広がるテーブルをみて俺はリア充による席取り合戦の始まりを予見した。

 

 勝って嬉しいはないちもんめ 負けて悔しいはないちもんめ……ふん! あの子の隣が欲しいか? 欲しいならくれてやる! この世の全てをそこに置いてきた!

 世は戦国時代、男と女によるいい人と仲よくなりたい勢のための席取り合戦の開幕。

 そんなフレコミで持ち込みしたら怒られるかな?

 滅茶苦茶批評されて泣かされて帰されそう。

 

 

 まぁ流石に高校生、席順なんて仲良しグループが先着順で塊で入っていけばいいだろ。

 そんなことを考えていたらサクッと一色が一番端の席を取った。

 おいおいおい……いいのかよ、カレー作りサボっちゃってたあげく先に席取っちゃって……先輩黙っちゃいねぇぞ。

 

 そんな俺の話とはうってかわってそこからさらに女子が両サイド詰めて座った。

 これは意外だ。ここは男女分かれる方式になったのね。

 

 まぁそんなこんなで残る男性陣で適当に座ったのを見計らい、俺は無事彩加の隣をゲットする。

 なぜか目の前に平塚先生が座った。

 

「カレー美味しそうだね! 八幡」

 

 なんかあれだ、ちょっとだけテンションがハイなのはきっとカレーだから何だろうな。

 分かる。カレーってなんかテンション上がるわ。ただし、カレーの中にグリーンピースが入っていたらうれしさが半減するがな。奴は敵だ。

 

「そ、そうだな!」

 

 俺も負けじと彩加のテンションに合わせる。一緒ならさらに美味しくなると思うんだ。

 食事の最高の調味料はその心だ。どの環境下で誰と食べるかで味なんざ変わる。

 そ、今みたく自然豊かで澄んだ空気の下彩加と一緒にとか、ベストプレイスのから揚げとかな。

 ……まぁ、そんなもんだ。

 

「どうしたの八幡? 急に元気になったりしょんぼりしたり?」

 

「ははぁん、さてはその場のノリで無理矢理テンション上げてなんか空回りしてると思って急に我に返って恥ずかしくなったんだな」

 

 真っ正面の平塚先生が急に割り込んできた割にやけにディティールが整った事を言い始めた。多分この人の実体験を元にしているのだろう。……っう、涙があふれちゃう。

 

「いやぁ、まぁ……そんな感じです」

 

 でもちょうど良い。ここは乗っかっておこう。

 

「まあそうですね。カレーをみて昔給食で出たカレーの入った食管を倒してしまってそれから各クラスに頼みながらカレーを分けてもらいに行った記憶が……」

 

「よし、もう話さなくて良いぞ。冷めないうちに食べるカレーはうまいぞ! おかわりもあるぞ!」

 

 それを言われるとなんか不審に思ってしまうのは俺が漫画を読みすぎただけなのだろうか?

 

「っでさー、一昨日くらいにマクバ行ってさー」

 

 ???

 

 ふと聞こえた二年生先輩方々の会話。マクバってなに? マックの新しい呼び名? スタバの親戚? どっかのIT企業の社長の名前か? もしや……ゲーセンでやけに殺気立っている区域にあるあのゲームの新作か!? 選択肢ありすぎだろ……

 

「戸部ぇ、まずマクバってなに?」

 

 三浦先輩の鋭いツッコミ。俺も思ったし。

 

「マクバってあんじゃん、ジャスコのちっこい版みたいなスーパー」

 

 なんとなく皆あぁ~って察しているが彼ら彼女らが今後マクバって言う言葉を耳にすることも使う事も無いだろう。

 俺もそうだ。ただやけに汎用性がありそうだから今のうち商標登録しといた方がいいぞ。

 

「とべっちまだジャスコって言ってるんだ~」

 

「結衣、お前今俺を馬鹿にしただろ? 一応いっとっけど俺お前よりテストの点数上だかんな?」

 

「あー! それ今言う!! サイテー!」

 

「いや、あんたら2人点数的に変わらないでしょどっちも赤点だったし」

 

「戸部、一応中間明けにサッカー部の試合控えてるからな。中間で赤点取ったら試合に差し障るから真面目に勉強しろよ」

 

「うぃ~……ってかなんで俺だけ?」

 

「そうそう、そうやって隼人君が戸部君に勉強を教える流れになってさ! 放課後に次第に愛が芽生えて行くんだよ! はやとべうっひゃー!」

 

「海老名、擬態しろしっ!」

 

 すげぇな、マクバの話からコロコロ話題変わんぞ。

 これが陽の者の力なのか……

 

「ってかさーヒキオー?」

 

 ……さて俺も適当に彩加と話をするかー、どんな愛を語り合おう……いや待て愛を語り合うとかオタクじゃねぇんだし馬鹿なんじゃねぇの。

 

「あ゛ぁ? ヒキオ!!!」

 

その怒声に俺の頭の中が真っ白になった。

 

「……え?」

 

真っ白になった頭からなんとか絞り出せた声であぁ……俺の安らかな日常は終わりを告げたと思った。

 

「呼んでんの、ちょっと来な」

 

 えっマジでぇ!!!? 酒の悪がらみかよ……めっちゃ怖いんだけど。

 まぁ流石に先生居るしな、大丈夫だよな俺。

 

「んで。なんか用ですかね?」

 

「あーそうそう。ヒキオ、あんた1年っしょ? あーし、三浦ね。んであいつが戸部、向かいにいるのが海老名。隼人と結衣はしってるっしょ。わーた?」

 

 

 

 ……ははぁん、この人ギャルルンギャルルンしてるが実はいい人だなぁ?

 どんな無理難題を突きつけられるか覚悟していたが箱を開いてみるとたいした事は無い。自己紹介だ。

 そういや俺が一方的に名前知ってるだけでやってなかったな。

 

 

 

「1年の比企谷です」

 

 

 

 そう言いつつ軽く会釈すると二年生方々から「よろしくー」やら「うっすー」やら「比企谷君は攻めかな? 受けかな?」という返答が……最後のおかしくない?

 うぉ……こう改めて自己紹介ってするとこっ恥ずかしいのな。

 

「ヒッキー、すごい棒読みー」

 

 あはは~と笑い声をかけてくる由比ヶ浜。

 

「うっせぇ。こちとらそんな頻繁に人前で自己紹介した事ねぇんだよ」

 

 大体クラス替えをしたあとのオリエンテーションで自己紹介して、それ以降、雰囲気とタイミング見計らって名前覚えろよ的な感じだよね。

 

「ってか結衣と付き合ってんの? よく一緒にいるし」

 

「へっ? ……はわわ!! そ、そんなこと無いし! ただ同じ部活なだけだよ」

 

 由比ヶ浜はいきなり話題を振られあわわあわわと両手を振って否定する。

 

「へぇ~、後輩にタメ口で呼ばせてる辺りそれなりに気がありそうな気がするんだけど~?」

 

「そ……そんな事……ないよ?」

 

 ちょっ……何でそんなちょっとは考えてるみたいな表情でこっちみるんですかね?

 実は同い年って言う事隠そうとしてるんだと思うが。

 

 その助けを求める視線を外す。それにしても視界の端にいる一色は話に参加せず黙々とカレー食ってなにやら林間学校のしおりとにらめっこしていた。

 君そんなに林間学校楽しみだったの?……ん?

 

「そうそう、多分これはブラフだよ」

 

 なっ!?視線バレたかった

 

「結衣と見せかけつつ実は隼人君狙いだって私分かってる! ギャフー!」

 

 ……いや、腐ってたわ。

 

「海老名、擬態しろし」

 

 スリッパで叩いたかのような爽快な音をだしながら三浦先輩は海老名先輩の頭を叩く。

 それ痛くないの? めっちゃ笑ってる。狂気の沙汰だろ。

 

「それにしても……いろははどうかしたのか?」

 

 葉山先輩が疑問を問いかける。

 

「まぁ~……ちょっと……ね……」

 

 そう気まずそうに由比ヶ浜が表情を変えると葉山先輩は何か察したらしく

 

「あぁ、すまん。……任せるよ」

 

 とだけ言葉にし話題を切った。この事から察するにあれだろう。昨日からなにも食べてなかったんだろうな。食いしん坊め。

 

 

 

 

 

 ……わざと冗談で思考を覆い隠して逃げても分かってしまったら無意識的に思考は走るものだ。

 

 

 

 

一度思考が走りだしたら彼女へ向かう視線も頻度を増す。

いつもの彼女となにが違うのかすぐにわかる。

 

 

 

 

 大分……傷つけてしまったようだ。

 

 

 

 相変わらずカレーを食べながら……林間学校のしおりを読んでいる。

 ただいつもとは違う。よく見ると目が腫れているのは分かった。

 女性陣が一色を端に置いた理由がよく分かった。

 それはあまりみられたくはないものだ。

 

……俺のしたことは間違っていたのか?

そんな疑問すら感じてしまう罪悪感がある。

 

一色いろはには俺で心を消費し、傷つく位なら俺を切り捨てろと伝え、それでもなお傷ついてしまう。

これが一過性であるかは解らないがそうでなかった場合、俺は一色いろはとどう接すれば良いのだろうか?

 

そんな答えもでないまま俺が居なくなれば終わりと決めつけてうまくやるという言葉の表面上を撫でるように作業的に事を進めた事を後悔した。

 

「どうした比企谷? 全てが終わった顔をしてるぞ?」

 

 平塚先生をみる。そういや2人だけ戻ってくるのがやけに遅かったな。

 ふと平塚先生の着ているベストに汚れがついているのを見つける。泥とかでは無い何か。

 ……なんとなく予想がついてしまう。

 

「いえ、自我崩壊に陥りそうになってるだけなんで……」

 

「副助詞の選択が間違っていないか?この短時間でどうやったらそこまで落ちるのだ。そんなに三浦が怖かったのか? ほら、たらふく食って忘れろ。おかわりもあるぞ!」

 

 だからそれ死亡フラグ。

 

「八幡、大丈夫?」

 

 そう言って心配そうに俺を見つめる彩加。

 

「キャラが濃い先輩が勢揃いしてたからな。少し驚いただけだ」

 

「君も負けてはないと思うが?」

 

 あなたには負けますよ? 平塚先生。

 

「それは違います。キャラが濃い人間ほど周りに影響を与えますが、俺は居ても居なくても影響を与えない無害な人間です」

 

「何を言ってるんだ? 十分影響を与えてるじゃないか? 戸塚だって君がいるから君の隣にいるのではないのか?」

 

「うん、八幡がどこ座るのかなって……ちょっと待ってた」

 

 何この超可愛い生物。キュン死するぞ。

 

「まぁ、それは友達……ですからね」

 

「なら自分をあまり蔑むな。それをみた友人が傷つく事だってあるんだ」

 

「いや、俺は俺が一番大事だと思っていますし」

 

「はたして本当にそうかな?」

 

 平塚先生の視線は俺から外れ……ちくしょういやらしい事しやがる。

 

「そう言えば八幡は何で最後まで席選ばなかったの?」

 

 まぁ一色の動向を見たかったというのはあったが……

 堂々と先に座っていったから少し拍子抜けだ。

 

「至極簡単で考えるのが面倒だったからな。余った席ならどこでも良かったりする」

 

「そっか……余り物に福があるって言うしね! いいと思うよ」

 

「!?」

 

 なんかすごい勢いで目を見開き閃いた! って顔をした平塚先生を目の当たりにして涙ぐみそうになったがここは現実を突き詰めてやらんとな

 

「実はな、余り物に値なしって投資言葉があってだな……相場の供給が過多の場合、価値が下がるって奴なんだが」

 

「へぇ、そんな言葉よく知ってるね! 八幡は物知りだね」

 

「ちょっと家の本読みあさってたら覚えただけだ」

 

 軽い悪戯心で彩加とそんな会話をしてチラッと平塚先生の様子を覗く。

 まさか殺気を纏って睨まれるとは思わなかった。どんだけ必死なんだよ。誰かもらってやって!

 

 

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