やはり俺の学校生活はおくれている。   作:y-chan

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#30-3 密かに一色いろはは夜風にあたる

 ……あぁ、すごいハイテンションで色々と物事を進めていってたが、こう寝る前のリラックスタイム、ふと今日一日の出来事が脳裏に蘇り、赤面必至の事ばかりですごくムズかゆくて先輩方々の前で悶えるわけにも行かず、外に出ることにした。

 

 そよ風程度の風が度々吹いてお風呂上がりの私にとっては心地よい。薄雲に隠れぼかされ柔らかく照らす月の輪郭を眺めながら深呼吸をする。

 少しだけ身震いし、カーディガンくらいは羽織って凝れば良かったかなと少し後悔した。

 梢がさわさわと揺れるのを聞き我が身振り返る。

 

 絶望したり、号泣したり、相談したり、照れたり、励ましたり、考えたり、伝えたり……とんでもない1日だった。

 

 いや本当に……大変だった。

 

 

 

ふっ……

 

 

 

 

も~やだ~!!! 明日誰とも顔合わせたくない~!!! なーにが『私はこういうやつの終わらし方を知っている』だ! なーにが『それじゃ、ちょっと特別授業しよっか』だ! その場のテンションで何言ってるんですか私は!! ばっかじゃないの!!! バーカ! バーカ!!

 

うずくまり頭を抱え過去の自分がしでかした事を誰かタイムスリップでもして止めてくれないかと切に願った。

 

 

 留美ちゃん聞き流してくれてたりしないかなぁ……。

 これはー……そうだ! せんぱいから借りた本の影響が少なからず出ているからであって……あ~もぅっ!!

 

 それを言い訳にして自分を納得させようとしたら今度は平塚先生からの『ん? 君はあれか? 恋人の趣味に染められるタイプなのか?』という言葉を思い出し、また頭を抱えた。

 

 さらに芋づる式で友達の話の前提を思いっきり自分から崩しているのとか、泣きはらした後になんかこう……甘えちゃったなぁ……とかそんな新鮮な思い出達がフラッシュバックしさらに羞恥心を煽る。

 

 自らの品性も欠片も無い真新しい記憶に全身に鳥肌が走り身震いすら現れた。

 

 まって……ホント待って……恥しかない。羞恥心に殺される。

 

 あの時からもう本性も感情もなにも全然隠しきれてない……ここが学校じゃ無くて良かったと心から思う。なぜこんな事になったんだろう。。中学でもいいなぁ~って人は度々いたしそれでも好きな人に対してここまで感情が前に出た事なんて無かった。こんなにガチ恋決めている自分自身に戸惑いを隠しきれない。

 

 よし、明日からはいつも通りの私に戻る。私が決めた今決めた。

 そう、千葉村から帰ったらいったん考えをまとめて身の振り方の作戦を練りましょう。

 

 そんな決意をした矢先、後ろから砂を踏む足音が聞こえた。

 誰か来たんでしょうか。

 

「あれ? 一色さん」

 

その声に振り返る。

 

「戸塚先輩?」

 

 これは意外な人物と遭遇してしまった。

 戸塚先輩とはあまり関わりが無かったので何か話した方がいいのかな?

 というか、今は男子の入浴時間のはず……戸塚先輩って早風呂なのかな?

 

「一色さんも風に当たりに来たの?」

 

「そうですね。ちょっとお風呂に浸かりすぎたので……それよりも戸塚先輩、お風呂は?」

 

 頬をポリポリと掻きながらちょっと困ったかのように呟いた。

 

「じつは他の人とお風呂に入るって実はまだ慣れて無くて……こう、僕が服を脱ごうとするとなんか視線を感じちゃうんだよね」

 

「っあ~……なるほど。わかります」

 

 すっごい分かる。戸塚先輩なら女でもマジマジ見ちゃう。

 

「八幡や戸部くんにはちょっと悪い事した……かな?」

 

「いえ、男子ってそんな細かいことを気にしないと思いますよ」

 

 なんというか……戸塚先輩の身の安全の為にそういうことにしておきましょう。

 

「そう……だよね!」

 

 どうやら納得してもらえたようで。よかった。

 

「それより一色さん。さっきはすごかったね」

 

「えっ? なんでですか?」

 

「なんか鶴見ちゃんを助けるって色々と考えててさ、だからご飯の時も端っこで一生懸命考えてたんだなぁ~って」

 

 まぁあれはちょっと事情と言う物があってですね……さすがに話せない歯がゆさ。

 

「話を聞いてしまった事もあったので……それにあのまま放っておいて千葉に帰っても……なんだかなぁ~っておもちゃっただけで」

 

「それで行動できるってホントすごいよ。僕だったらただ眺めるだけで終わっちゃいそうだから……」

 

 そう言ってシュンと下を向いてしまった。

 

「そんな事はないですよ。私だってこんな展開になるなんて思っても無かったので……あと、約束しちゃいましたから」

 

「約束それってー……八幡と?」

 

「違いますよ、別の人です。何というか……思い返すと恥ずかしいので余り言えないのですが……この約束があったから今回動けたっていう感じです」

 

 私だってこんな面倒な事は見て見ぬ振りしたいし関わりたいとすら思わなかった。

 でも、こんな恥晒しに色々と知恵をくれた平塚先生には恩があるし、その約束を無下にはできない。

 

「へぇ~、なんか素敵だね」

 

「そんなに素敵な思い出もでもないのですが……でも、憧れてるからこそ守りたいってあるじゃないですか」

 

「なんかわかる! テニスでも好きなプレーヤーの練習を真似するときにこの人は絶対にこんなプレイはしないって思って自分にも言い聞かせたりするしね」

 

「ですです。なので私がやっている事は戸塚先輩がやっている事とほぼ同じ様な事なのです」

 

「あはは、一色さんありがとね」

 

「はて~、私は褒められるような事はしてないですよ~」

 

「うぅん、でもありがと。明日頑張るね!」

 

「ありがとうございます。戸塚先輩」

 

「せめてお手伝いするよ。……って先輩らしくないかな?」

 

 そう言って少しもじもじとした様な仕草がすごく可愛いく映る。

 

「いえ、十分に先輩らしいですよ」

 

「そうかな、ありがとう」

 

 先ほどのはにかむような顔から満面に笑みに変わりなんだろうか、せんぱいの言っていた何かの片鱗を見たかのようだった。

 

「いえいえ、所で話変わっちゃうんですけれど戸塚先輩ってよくテレビで見ます?」

 

 何かに目覚めそうな感情を抑え、私は別の話題をひねり出した。

 

「うん、みるみる」

 

「昨日のテレビに出てたホラトーーーークで出てた情熱テニス芸人って知っています」

 

「知ってる! すごいコアな選手とか知ってる人だよね!」

 

 その後、この話題から外れ、世間話をしていたら別の声が聞こえてきた

 

「あっっつ~。マジ風呂入り過ぎたわ~」

 

 そう独り言を呟きながら歩いてきたのは戸部先輩だった。

 

「戸塚ぁ~風呂空いたぞ~、……っていろはすもいるし。マジレアな組み合わせじゃね?」

 

「ちょっと外出てたら一色さんと一緒になっちゃったんだ」

 

「おぉ~」

 

 分かった分かったって言う感じのニュアンスで戸部先輩が頷く。

 

「ってか戸塚よぉ~、もう風呂入ってこいよ~俺とヒキタニくんサクッと入ってきたし」

 

「うん、ありがとね戸部くん」

 

「いいって事よ…………」

 

 その後に戸部先輩は小さく呟いていたが『一緒に入られてもアレだかんな……』って言葉を私は聞き逃さなかった。私じゃなきゃ聞き逃してたね。

 

「それじゃ一色さん、また明日!」

 

 そう言って戸塚先輩は颯爽とその場を立ち去って行ってしまった。

 

「お~、めっちゃ涼しいじゃん」

 

 そう言いながら近くにあるちょうど座れる廃材に戸部先輩が腰掛ける。

 

「お風呂熱かったですしね、夏ですが夜の高原って結構涼しいですね」

 

「分かる分かる~、まじ水の中にいんのに水分持ってかれるんだよな~」

 

「戸部先輩どんだけ汗っかきなんですか」

 

「なんっつーの新鮮感謝っつーの? それがすげーっつーの?」

 

「それを言うなら新陳代謝ですよ。なんですかその言われて間もないありがとうを難しく言った様な言葉。戸部先輩? 結衣先輩の事全然言えませんよ?」

 

「マジかよ……いやいやいやいや……そんな事ねぇって~」

 

 いやいやいやいや、そんな謙遜しないで下さいよ~

 

「そ、それよか大丈夫かいろはす? 今日なんか体調悪そうだったしなぁ~」

 

 あっ、無理矢理話題変えやがった。まぁ別に良いですけどね~

 

「そうですね。昼間は結構苦しかったですけれど今は大丈夫です」

 

「おぉ~ならいいけどさ。優美子がすっげー口にしてっから流石に心配したわぁ~」

 

 おぉ……三浦先輩に心配されるとは……本当に申し訳ありませんとしか言いようがないんですが……いや、本当に。

 

「ってかそうそう、話変わんだけど最近俺のクラスちょっと変わっててさ~」

 

多分これは戸部先輩の配慮だ。重い話はこれ以上しない方向に進めたいのでしょう。

私もそれに同意し口を開く。

 

「変わってる? どんな風に?」

 

「優美子が最近テニス部に入り浸ってっしょ?」

 

 あ~、なんかテニス部の練習に交じって三浦先輩がいるのを見かけた事が何回かある。

 

「あれ? 三浦先輩はテニス部じゃないんですか?」

 

「それが違うんだな~」

 

チッチッチと人差し指を左右に振りどや顔を決める。

 ……なんかムカつきますね。

 

「前にテニス部の戸塚と試合した事があったっぺ」

 

「はぁ」

 

「んでそこで優美子が手加減忘れて……あぁっと、優美子って中学ん頃テニスで県大会出場してんだよ」

 

「へぇ~意外! すごいですね! 三浦先輩」

 

「そそ、そのすっげー腕前の優美子が手加減忘れて戸塚と対決してから結果戸塚が怪我しちまってよ~」

 

「えぇ!? 大丈夫なんですか?」

 

「まぁ戸塚の怪我は擦り傷程度だったらしいんだけど、優美子がやけに責任感じてんだよ。んでテニス部に入り浸って監督みたいな事してんの」

 

「なるほど、そういう理由があったんですね。初めて聞きました」

 

「んで、話が戻んだけど、基本俺と隼人君、優美子で二年生の俺のクラスって隼人君、優美子が言えばはい決まり~みたいな? そんな感じだった訳よ。ただ最近優美子がいねぇからってやけにつっかかってくる奴らがいてすげー面倒くせぇのよ~」

 

「へぇ、そういうのもあるんですね」

 

 クラスカーストって言うんですかね? そういうの感じた事は無いですけれど。

 

「まぁ最初につっかかってきた相模さんって言うんだけれど、そいつら速攻で優美子が……っと。これは秘密だったわ」

 

 何をしたんでしょう三浦先輩。相模? 相模……どこかで聞いたような……まぁいっか。

 

「んで、それはそれでサクッと解決したわけよ」

 

 パチンと指を鳴らしながらどや顔を決めてきた戸部先輩にはため息しかでなかった。

 

「それはよかったですね」

 

 ここから俺武勇伝とか聞かされるのかぁ~。あーチョー面倒くさい。

 

「ただなぁ~最近またタチが悪いのがおきてんのな~」

 

 しかし予想が外れ、声のトーンが若干下がった。

 

「また? 前にも何かあったんですか?」

 

「それな、前にもなんつーの? 俺らグループの空気悪くする感じのメールとかあったんよな~」

 

 あー、なんかクッキー作ってたときに同じ様な話を聞いたことあるような~。

 

「っで、それとは別に最近やけに後輩に絡んで俺らの事なんやかんややろうとしてる奴らがいるみたいなんよな~」

 

「えっ……後輩? と言う事は1年生にですか?」

 

 私は特に何も聞いていないんだけどなぁ~。

 

「そそっ! なんつーか俺がなんか裏でワルやってるとか優美子が色々やって金稼いでるとか噂流してる奴らがいるってサッカー部の後輩が言ってたんよな」

 

「へぇ~……」

 

流石に0から動かないと思っていましたけどそれを聞くとマイナスに振り切っちゃいますよ戸部先輩?

 

「いろはす? 俺やってねぇからな?」

 

「分かってますよ~」

 

 2年生も大変なんですね~。なんか色々と楽しそうに和気あいあいとした雰囲気なのに。

 

「まっ、そんなわけでなんか聞いたらそっこーで俺とか隼人君にメッセおくってくれ~」

 

「はーい、承知ですー」

 

 そういった種はさっさと潰しておきたいのでしょうね。そんな話を聞いたら連絡くらいは入れてあげる事にしましょう。

 

 

「さて、そろそろ私も湯冷めしちゃいそうなので部屋に戻りますね」

 

「お~。俺もう少しここいるから~」

 

 そう言って戸部先輩は手をヒラヒラとさせ別れの挨拶をする。

 それを確認した私はその場を後にした。

 

 

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