留美ちゃんは重々しい足取りで彼らの元に向かって行く。
まぁ初めての事だし練習はしないしで余り気乗りしないのだろう。
その後ろ姿を茂みの中から伺う。
「あ、あの……」
「ん?」
留美ちゃんは彼らの中でしげちーと呼ばれている男の子に話しかけた。
「えっと……その……私鶴見留美……」
おっ、ちゃんと自分の名前を名乗れた。偉いぞ留美ちゃん。
「俺、茂な。っで? どうした、俺になんか用か?」
「えっと……そのー……」
どうやら頭が真っ白になってしまったようで続く言葉が思いつかないようだ。
えーっと、そのー……と言うようなどうしたら良いか分からずモジモジとしている様子が伺えて……私は可哀想に見えて来たんだけれど本当にこれで良かったのだろうかと隣に居る先輩を横目でチラッと見る。彼は何の心配も無さそうに表情1つ変える事無く見守っていた。
「ってか、同じ班の奴らどうしたんだ? 1人か?」
私と同じ気持ちになったのだろうか。彼の方から留美ちゃんに対して話を振ってきた。
「うん……朝ご飯食べて部屋に戻ってきたら皆いなくなってた」
「お、おおぉ……マジか」
第一声にいきなり重い話が出てきて発言に戸惑ってしまっていた。
さらにそこから先ほど迄遊んでいたであろう仲間の2名も留美ちゃんの存在に気づき、彼と彼女の元に集まってきた。
留美ちゃんは人が増えたことに気恥ずかしさが増したのか顔を紅くして指をイジイジとしはじめる。
「しげちーどうした? その子誰よ?」
「あー、ゆーすけ。鶴見留美って名前らしいよ。なんか部屋戻ったら1人だったって」
「マジで? どこにもいなかったん?」
そう言って後から来たうちの1人……随分と顔が整った男の子が留美ちゃんに話しかける。
「うん」
「いきなり?」
「うん、いつの間にかいなくなってた」
「うっわーマジで……置いてけぼりかよ」
質問にはオープンクエッションとクローズドクエッションが存在する。彼は知ってか知らずか彼女の焦り様をみて詳しい状況説明がしにくいと判断したのだろうか、はい、いいえで簡単に答えられるクローズドクエッションを淡々と繰り返して状況の切り分けを行っていた。
小学生なんだけどちょっと垢抜けてる感じがする子だった。
「今日って確かほとんど自由時間だろ? 1人でずっといるのもアレだし、仲間入れてやろうぜ。良いだろきばみー」
多分留美ちゃんが話しかけた子がリーダーなのだろう。あの垢抜けた子に親しげに話しかける。
「全然良いよ。しげちーが言うならそうしよう」
「っとなるとー……どうするしげちー? 女子いるけど高鬼続ける?」
「そういや前にビー子が男子と女子で体力違うから別の遊びが良いとか言ってたな。いや別の遊びにするか」
なかなか気が回るわね。
「ならUNOやろー。俺ちょうど疲れてきたから」
「良いね。しげちーボッコボコにしてやるよ」
「はぁ? いっつも負けてんのお前だろゆーすけ。またビリケツにして上り棒10往復の刑にしてやんぞ」
「お? いったな?」
どうやら留美ちゃんを含めてUNOで遊ぶと言う事に話は落ち着いたらしい。
「……いいの?」
「あぁ、どうせ俺たち班も2人病欠して3人しかいなかったしな。全然良いし……ん? ルミ子デジカメ持ってんじゃん」
「う、うん記念用にお母さんから……ルミ子??」
隣で聞いているせんぱいが『あいつ男版の由比ヶ浜じゃねぇかよ』と呟いているのが聞こえた。
確かに距離の詰め方がバグっているとしか言いようがないです。
「結構撮った? 昨日のカレーとかめっちゃ面白かったじゃん」
「うぅん、全然撮れなかった」
そう言って留美ちゃんは茂君にデジカメを渡す。多分メモリーを見せたんだと思う。
「ふーん……花とか景色とかの写真しか……!?ちょっこれ!」
そう言って男の子3名がカメラの液晶画面に釘付けになる。
「へぇー、俺たちと遊んでいる裏で逢い引きを激写ってね」
「へぇ~!へぇ~!」
「ゆーすけうっせぇ」
一体何が写っていたのだろう。留美ちゃんがなんか気まずそうにこちらに振り向こうとしたがすぐさま思いとどまったのか戻した。
……ちょっとまって?
もしかしてアレ。撮ってた?ちょっと止めてよ。恥ずかしいじゃない。
せんぱいも留美ちゃんの行動に多分心当たりがあったのだろう「ぐっ……マジか……」と頭をくしゃくしゃとしながら恥ずかしそうにこちらをチラッと見てはすぐに視線を避けた。バレバレである。
茂みの中でそんなことをしていると状況は突然動き出した。
彼は留美ちゃんの隣に自分の立ち位置を移し、デジカメのレンズを自分と留美ちゃんが映る位置に向けシャッターボタンを押す。
「うぉ、まぶしっ」
「……いきなりなにするの」
流石に留美ちゃんもいきなり写真撮られたことに少しだけ機嫌を損ねたようだ。
「何も写真撮れてなかったしとりあえずコレで一枚、折角の林間学校だぜ? もっと写真撮ろーぜー」
「えっ……」
「いいねぇ。きばみーのスマホメモリいっぱい過ぎて写真保存できなかったし、しげちーだけずりぃだろ、俺もまぜろよ~」
「今度SD買っとく。ってか人のデジカメでしょそれ。返してあげなよ」
「うぅん、いいよ。どうせほとんど撮らなかったし、折角だから使お」
「よっしゃ、お前ら並べ! 記念撮影だ!」
……
その様子を見て胸をなで下ろした。
どうやらうまく仲間に入れたようだ。
あと少しで計画が全て整う。
今回の狙いは彼女に味方をつけること。味方がいるだけで心の持ち様が違ってくる。
そして肝試しに彼女の班と彼らをぶつけ、彼らが留美ちゃんの味方につき、そして時間稼ぎをする。後ほどやって来る後続の班に吹聴した噂と似たような状況を目の当たりにしてもらい、その信憑性を高めてもらう。後続は次第に増えていき噂の伝達も早くなる。それに彼女達が気づきその遊びとやらを止めざるを得ない状況を作る。
その為の事前準備を葉山先輩達にお願いした。
それでも止めない場合。立場は逆転する、ここまで来て駄目だったらここからはもう自業自得、最大限の配慮はしたしそれでも治まらないならもう自身で体験してもらうしか無い。
そう、これでいい。これで留美ちゃんは助かるしこのくだらない遊びも終わる。
例え私たちがいなくなったとしても彼らがいるし。それが例えハリボテだったとしても1人よりまし。
私はそれでやってこれた。
16年生きてきた経験なんてたかが知れている。
知らない事なんて人に教えられるわけがない。
それしか分からないんだから。
「よし……あと少し」
もう少しで計画は完成する。
ただ……
「……」
そんな私の安堵とは逆にせんぱいは神妙な面持ちで何かを考え……前代未聞の衝撃発言を口にする。
「俺も混ざってみるか……」
せんぱいがらしくない発言に開いた口が塞がらない。
いけない、眉間にしわ寄っちゃった。
「なにその前代未聞の衝撃映像見ちゃった見たいな顔」
「そりゃそうですよ。だってあのせんぱいから混ざりたいとかいう発言するなんて……せんぱいの中でなにか心境の変化があったのかとか色々と考えちゃうじゃないですか」
「いやそう言うわけでは無いんだが……お前らは色々と仕事もらって動いている中、俺1人サボってるみたいだろ? うまくあいつらと混ざって仕事やってます感出せば俺はサボってるようには見られない」
うーん。相変わらず流石のクズっぷりな発言ですが、どうしても腑に落ちないですね。
「まぁ……気まぐれだ。気にすんな」
絶対になにかありそう……
「折角だし私も付き合いますよ」
「いや、別に……」
「せんぱいだけだと不審者って思われて悲鳴あげられちゃいますよ?」
「……あり得そうで困るな」
「ですよね。では行きましょうか」
「あれ? もう決まりなの? 俺の意見は?」
私は話を聞かずささっと茂みから身を出し小学生達の元へ向かう。
後ろから後を追うようにせんぱいが身を出す。
「ふぅ~、ようやく山道ぬけましたねぇ~せんぱい」
「お、おう……」
あくまで偶然遭遇した演出をする。
「あっ……あれぇ? もしかして? 皆で遊んでる最中なの?」
ちょうど近くにいた垢抜けた子に声をかける。
「あっ! あい……お手伝いのお姉さんと……彼氏さん?」
……いま逢い引きって言おうとしたよね?ちょっと色々と勘違いしているみたいだけれど悪くない。
「……そんなんじゃねぇよ」
気恥ずかしいのか少しだけせんぱいの顔が紅くなった感じがする、気恥ずかしさからか頭をガシガシと掻いていた。ちょっと面白かった。
ちょうど私たちの存在に気づいたのかリーダー格の子が『おねぇちゃん達どうしたの?』と笑みを絶やさず近づいてきた。既にせんぱいを超えたコミュニケーション能力素晴らしい。
その後を追うように留美ちゃんがじと目でこちらを見ていた。
まぁそりゃそうか。最初から私たちについて来たら恥ずかしい思いする必要もなかったんだから。
まぁ……いい経験だよ! 頑張れ留美ちゃん!
「君たちは何か遊んでるの?」
「うん、ちょうどUNOやろーってなってた」
「へぇ~、そうなんだ! 今日おねぇちゃん達自由時間なんだー。折角だし……混ざって良いかな?」
「んー……女子ルミ子1人だけだし良いよー。……あれ、後ろのも来るの?」
「後ろの……なんで俺お前の付き人扱いされてんの?」
後ろでボソッとせんぱいは呟く
「まぁ良いじゃ無いですか。子どもの言うことですし」
「それじゃ影のとこいこー! 太陽あちーし。ゆーすけーUNO取ってきてー」
「おっけ~」
***
ちょうど影になっている丸テーブルの席を見つけ私の隣にせんぱい、留美ちゃんが座る。そのとなりに続いて仲良し3人組だ。
とりあえず最初に自己紹介から始める。
しげちーと呼ばれていた子は立川茂、外見は何というかまぁ将来柔道かラグビーで青春を謳歌しそうな濃いめのソース顔と筋肉質な体格だ。そしてきばみーと呼ばれていた垢抜けたイケメンの子が伊勢原貴史、頭脳役みたいな立ち位置かメガネの子が青葉祐助。この子もまた顔が整っているに加えて品の良さを感じる。
多分茂君以外はモテてるんじゃないかと思う。
「へぇー、なんか変わった3人組だね」
「まぁしげちーとつるんでる方が絶対いいしね」
「そうそう」
「お前ら絶対なんか裏考えてるだろ?」
「いやいやいや、そんなわけないよなきばみー」
「そうそう。あとでよいしょしただろってお菓子ねだったりなんて。。ねぇ?」
「そういうとこだかんな」
そう言って彼ら3人が笑い合う。
確かにグループの中はすごく良さそうだ。
それからしばらくUNOを周回して雑談をかわし交流を深める。
「そういえばなんで貴史くんはきばみーって呼ばれてるの?」
そのなかで貴史君の全く名前と関係ないあだ名に少し興味を持つ。
するとせんぱいが「ばっ! お前余計な事…」と小さく呟く。何か私は地雷でも踏んでしまったのだろうか。
「給食の時にカレー入った食缶ぶちまけちゃって……そんでかっぽうぎめっちゃカレーのシミが残っちゃって……そのときからあだ名がきばみーって呼ばれてます」
……せんぱい系過去をお持ちの逸材だった。
隣でせんぱいがお前も同類か……みたいな表情をしていた。多分自分と重ねているのだろう。ちょっと気持ち悪い。
「へ、へぇー。でもそれって呼ばれる度に思い出さない?」
「その後の話、しげちーがクラスの皆フォローしてくれて、一緒に他のクラスに分けてもらいに行ってくれたから正直このあだ名って俺としげちーの友情の証って言うかもはや絆?」
男前過ぎるでしょしげちー。
さっきまで自分と重ねていたであろうせんぱいは突如仲間に裏切られ絶望にたたき落とされたかのような雰囲気を醸し出していた。
もちろんそんなのは無視だ。
「へぇー、茂君はすごいね。そういうこと誰にも出来ないよ?」
「え? 友達だったら普通じゃん?」
茂くんは平然な顔でそう言い放った。
小学生であるが故に何も知らない。それ故にこのような事が言えるのだろうと理解しているがその即答は胸に刺さった。
だが、それに救われこうやって仲間が集っていることは事実。
彼こそリア充と言わずなんと言おうか。
「すげぇな、お前」
ほんそれに尽きる。
せんぱいが私の思いまで代弁してくれた。
「だた、相手女子だとめんどくさいんだよね。ルミ子みたいにハブられてる奴って最近すげーよく見るけど、少しでもこっちから絡むと突然なんか女子が集まって『あんたあいつのこと好きなんだー!』とか言ってくるし」
小学生あるあるー。なんか異性助けようとするとすぐにそういう話に持っていって羞恥心を煽って話を有耶無耶にする伝家の宝刀
まだそういう話に耐性のない男子だったら確かにやりにくいよねぇ。相手ともちょっと話しづらい雰囲気になるし正直厄介なやつ。
ただ……やはり噂は外にも漏れていた。
これなら作戦は結構順調に進むはず。
「あーわかるー! めっちゃつっかかってくるよねー!」
「あれほんとだるい」
「アレ……他のクラスに邪魔されない為にやってるみたい」
ボソッと留美ちゃんが呟く。
そして男子三人がそれに驚く。
「マジ?」
「どんだけだよ」
「ってことは〜ルミ子がここにいるの見つかったらまた俺ら囲まれる系じゃね?」
「まじぃ~しんどいな~」
「……」
ルミちゃんの視線が足元に落ちる。カードを支えている手が微かに震えていた。
「見つかったら見つかったでたまたま遊んでるってことでいいんじゃない?」
そう言って貴史くんが話を締める。
留美ちゃんとは今回限り、たまたま1人で見かけたから一緒に遊んでいる。
ここで別れたらまた他人同士の関係に戻るという結論の話の流れになって来ている。
うーん……これはまずい状況だ。彼らには今後とも留美ちゃんを守ってほしいのだから。
さて、どうやって切り返していくか……
……
そこから会話が途切れカードが擦れる音、被さる音のみが周りに響く。
ちょうど1ゲームが終わったあと、とっさにせんぱいが口を開く。
「ずっと我慢してたけどトイレ行きてぇ」
すると即座に茂君も名乗りをあげた
「わかる。すごい結構我慢してた」
同時に周りの2人が吹き出し、さっきの雰囲気などなかったかのように笑い声が辺りに響く。
「ずっとキョロキョロしてたからなんかと思ったらトイレかよ。ってかお兄さんに対してタメ口かよ」
「なんかすごく忙しなかったよな! マジウケる〜」
「マジでやばいんだって。ちょっと行ってくるわ!」
そう言って茂くんが席を立つと同時にずっと神妙な面持ちのせんぱいが口を開いた
「……そうだな。ちょうど近くにトイレあったの確認しててな。そっち行くか」
この人、我に策ありみたいな雰囲気醸し出しておきながら期待させておいてそれですか……
「あっ本当!……余裕なかったから助かる!」
そう言って、茂君とせんぱいはトイレへと駆けていった。
男の子たちは指差して笑っていた。
ひと笑いし、先ほど迄の楽しい雰囲気が静まり返る。
それを察したのか、貴史君が真面目な表情で留美ちゃんに語りかけた。
「そういえばさ、ルミ子」
貴史くんが先に口を開く。珍しく留美ちゃんにだ。
「なに?」
「俺さ、お前のクラスで何やってるか知ってるんだよね。仲良い奴いるし。ってかお前もハブってなかった?」
「……!?」
「ぶっちゃけそういうのって因果応報っていうんだろ?」
「うん……そうだけど。そうなんだけど……」
「それが嫌で助けて欲しくてしげちーに近づいて来たっていうならなおさら嫌。そういう奴ら自分らの困りごとが無くなったらしげちーの事、悪く言い始めるしマジ最悪」
……この仲良しグループにも断るそれなりの理由というものが存在した。
当時は確かにすがる思いで助けを求めた。しかし人は自身の安全が確証できたら欲が出てくるもの。その子も脅威が去ってから欲が出てしまったって所ね。
「別にそんなつもりはなくて……」
「そもそも俺らが助ける必要ないよね? どうせまたしげちーの事悪く言い始めるんだから」
今まで黙って話を聞いていた裕介くんが口を開く。
「……」
彼らへ提示できるメリットなどすぐにはでずに黙ってしまう。
「どうせお姉さんもこいつの話聞いて可哀想と思って協力している感じでしょ。なんかそんな雰囲気出てるよ。ごめんだけど無理。俺らはしげちーに傷ついて欲しくない。」
「しげちーは無条件で誰でも助けるけど、助けた人から嫌われるって結構傷つくじゃん。そういう思いはさせたくないんだ。俺ら」
どうやら全てお見通しのようだ。推測は少しズレてはいるものの『留美ちゃんを助ける』という部分については完全に見抜かれていた。流石メガネキャラ……侮れない。
どうしよう……これでは完全に囲いの形成に失敗してしまっている。
これから別のグループを探すのにも時間がかかるし……
別の案を今から探すしか……
また沈黙の時間が訪れた。
全て見抜かれているうえ、これからの巻き返しをどのように話を進めたらよいか悩む。
そうこう考えていると、近づいてくる砂を蹴る音が聞こえてくる。
「よぉー! もどったぞ!」
満面の笑みを見せながら戻ってきた茂君。
あぁ、これでゲームセットか……
自分の肩の力が抜けていくのを感じる。
まさか小学生に舌戦で負けるなんて思っても見なかった。
「なぁルミ子! お前の話さっき兄ちゃんから聞いたぞ! お前のクラス結構闇深いって噂されてたけどそんな事してたんだな!」
せんぱいも同じ話を茂君にしたのだろう、ここからさらに2人からの話を聞いて彼は決断するだろう。
「そうそう、しげちーあれだよ。ルミ子も実はハブってた側にいたんだって」
すぐさま貴史君が情報を伝える。
「マジで!? ルミ子!」
そう言って大きな声で留美ちゃんを見る。
「うん……だって……怖かったから……」
「あー、なるほどな。そう言う事か……」
「はぁ……はぁ……」
息を切らし耐え耐えながら戻ってきたせんぱい。
大分汗だくなご様子でしたが、タオルもティッシュすら持っておらずどうすることもできなかったのでとりあえず放置することにした。
「なるほどな! おまえ、すごいな!」
意外な言葉が返ってきた。
「しげちー!?」
余りにも意外な言葉をだす茂君に驚きを隠せない2人。
「ちょっとまってよ。元々ハブってた側にいた奴助けるの!? そんなのいつまた裏切られるか分からないじゃん!」
先ほどまで冷静に受け答えしていた祐介くんが焦りながら茂君に話をする。
「んなこと分かってるわ。でもルミ子お前……そんな事を無くそうって動いてたんだな!」
「……!?」
ここで本来の目的が顔を出した。そうだ。彼女は確かに加害者側にいた。しかし自分が被害者となり、この遊び自体が嫌で私に打ち明け無くそうと動いている事実がそこにあった。
策の完成ばかりに目がくらみ、本来の目的を見失っていた自分が恥ずかしく思った。
「でもそれって他のクラスの問題じゃん。俺ら全く関係ないじゃん!」
焦りでズレたメガネをクイッとあげ、焦り口調でそう声をあげる。
「ゆーすけ、関係ないから関わらない? お前がそれを言うか?」
「……ごめん。でもクラス1つが敵になるんだよ? 流石に俺らでも結構怖いじゃん? 俺は怖い……」
ちょうど突破口が見えた。
すかさず私は口を開く
「これはね。林間学校が終わるまでの極秘事項なんだけれど……」
男の子が好きそうな言葉を選びながら言葉を紡ぐ。
すると3人とも聞き耳を立てるかのように私に振り向いた。
「サポートの皆で留美ちゃんの件、結構噂を広げてるんだ。だからクラス1対クラス3くらいの戦力差になると思うんだけど……」
「それなら……まぁできないこともない……」
そう言いながら裕介くんはチラッと貴史くんを見る。
「それはそれなんだけど結局それやったところでって思いますよね? しげちー、俺もゆーすけも言ってるけどこっちに何の得もないじゃん」
「得? 何言ってんだ? もううけてるだろ」
疑問を疑問で返した茂君は何の疑問も抱かずそう言い放つ。
「……あれだ、デジカメ」
息切れのせんぱいがようやく言葉を話した。
それを聞くと同時に、状況に気づいたのか2人は何も言い返せなかった。
それもそうだ。先ほど迄、留美ちゃんは様々な場面でシャッターを切っていたのだから。
「……それだけ?」
「うちのオヤジが時間は戻せないからせめて写真は撮るべき時に撮っとけって言ってた。じいちゃんが写真嫌いで元気な時の写真があまりなかったみたいだから……それに」
少しの間を置いた後、気恥ずかしそうに茂くんは口を開く。
「俺はお前らと小学生最後の林間学校の思い出をそれだけって片づけるのは嫌だ」
頬をポリポリと掻きながら少し声のトーンを小さく言葉が伝わる…
「……しげちー」
この瞬間から一番この林間学校を一番楽しんでいるのはきっとこの子達なのだろうと悟った。
年上であるが故のアドバンテージなんて些細なもので目の前に広がる友情物語は少し羨ましくもあった。
「これが、リア充か……」
「そうですよせんぱい。しっかり目に焼き付けてください」
「眩しすぎて溶けるからやめとくわ。それにしても……俺にもしげちーみたいなやつがいたら今頃リア充になってたんだろうな」
「相変わらず他人任せですね……」
「絶対それはあり得ないです、せんぱいは根っからの陰キャなんですから」と脊髄反射で口に出すところをギリギリ喉で堪える。
そんな私とせんぱいの会話の隣で友情を確かめ合ってるリア充はようやくこちらに顔を向けた。
「そう言うわけでルミ子。協力してやる。条件として林間学校中は俺らのカメラ係な!」
「う、うん!!」
この日初めて彼女がこんな笑みをするんだなって見て思った。
これはなかなかの破壊力だ。