やはり俺の学校生活はおくれている。   作:y-chan

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たまに実体験ネタを出すとこう…くるものがありますね…


#5-2

ひとしきり買い物を終えて、ショッピングモールから出た。

 

頂点を過ぎ、傾いた太陽が行き交う人々を照らし細長い影を作り出す。

その影はひとつふたつとすれ違い、増えたり減ったり大きな影に飲まれたり2つの影が重なったり様々な模様を映し出した。まるで人間関係の縮図を目の当たりにしているかのように思えた。

 

「買い物楽しかったですね!せんぱいっ!」

 

その声で俺は現実逃避から引き戻された。

 

日の傾き具合からかなりの時間を一色の買い物に付き合わされたのだろう。

両手いっぱい買い物袋持たされてるしね…

どっからそんな金出てくんの?

もしかして:パパ活してる?

 

結局、実験と言いつつ、体の良い荷物持ちが欲しかったという感じなのだろう。

 

次からどんな誘いも断ろう。絶対にだ!

 

一色よ…買い物も終わったし、もう…俺に用ないだろう?

別にもうご飯とかいいからさっ…帰ろ?

駅向かってるよねこの道?

 

一色を先頭で歩かせ、俺はそれについて行く。

だって広い歩道じゃないし、迷惑だろ普通?

 

俺の辞書に横並びという文字はない。

基本後ろでついて行く金魚の糞スタイル。

あらやだ、糞だなんてはしたない。

 

ならセンスある男、比企谷八幡のもっと洒落の効いたネーミングセンスを見せてやろう。

 

ドラクエスタイル。

 

もうちょっと頑張って考えろや。

 

「せんぱい何か食べたいものあります?」

 

一色が歩きながら後ろを振り返り質問をしてくる。

 

こら、ちゃんと前を向いて歩きなさい。

 

「もうご飯とかいいから帰りたい」

 

「どれだけおうちが恋しいんですか」

 

「外に出て半日たつと家に帰りたくなる病気なんだよ」

 

「ハッ」

 

ちょっと?一色ちゃん?お行儀のよくない笑い方しないの。俺が泣いちゃうでしょ?

 

「せんぱいは私を家まで送っていく責任があるんですからね!ちゃんと最後まで付き合ってもらいますよっ!」

 

えっ?なんだって?

 

どっかのラノベ主人公みたいな難聴じゃないが、こいつ今俺に崩壊の呪文唱えなかった?聞かなかったことにするわ。

 

「ちょっとまて、駅までじゃねぇの?」

 

「女の子にこんな大量の荷物を持って帰れとかせんぱいは女の子の取り扱い方が本当になってないですね」

 

そんじゃ取扱説明書出してくれよ。

俺の目の前に居る不良品を交換する案内番号さがすわ。

 

「その大量の荷物を買ったのはお前なんだが…」

 

「そういうわけでよろしくお願いしますね!せーんぱいっ!」

 

だめだ、聞いちゃいねぇ…

 

 

***

 

結局、一色に連れられ、駅前のレストランに入ることにした。

 

入ったところは、またもや木の雰囲気を出したレストランだ。

何か森ガールが生息してそう。

ゆるふわ系な一色もぱっとみ森ガールっぽく…見えないな、森ガールに謝れ。

 

ただ洒落た感を出そうと書体崩し過ぎて店名何書いてるか読めねえ。

本末転倒じゃねぇか、大丈夫かこの店?

 

俺たちは広々とした4人掛けの席に案内される。

対面に腰掛け、俺はようやく両手の紙袋から解放された。

 

両腕に血液が流れてくるこの感覚…

俺、生きてる!!

 

「せんぱいはこういったお店とかこないんですか?」

 

一色ちゃん?もしかして知ってて聞いてる?ねぇ?知ってて聞いてるでしょ!

 

「基本サイゼだな、安いしドリンクバーついてるし長居できる」

 

「女の子と一緒にいるときはサイゼの事は忘れましょ?」

 

サイゼはいつまでも俺の心の中にいる。

ズッ友だよっ!!

 

「小町ならそんなこと言わないのにな」

 

「むー…女の子と一緒にいるときはほかの女の子の名前出すのはNGですからね?」

 

「その女の子と一緒にいるときはって奴、枕言葉になってないからね?多用するのやめよ?ちなみに小町は妹だ」

 

そんな女の子女の子言われたら意識しちまうだろうが。

 

「本当に妹いるんですか?そうは見えないんですが?」

 

え?なに?一人っ子に見える。

小町居なきゃ俺、存在意義ないからね。

 

「おいやめろよ。小町は俺の想像だけの存在じゃねーぞ」

 

この世界が夢の中で、交通事故に遭ってから俺はずっと病院のベッドで寝たきりだった。その前は小町という想像上の妹を作り出して生活していた。母は言った『八幡、あなたに妹はいないの』とかそんな展開いらないから。それならむしろ異世界転生させてくれよ。

 

「そうなんですね〜、じゃあ今度紹介してくださいよ〜」

 

「えっ?普通に嫌なんだけれど」

 

「えー!?何でですか〜?」

 

「小町に悪影響を及ぼすだろ」

 

「人を悪の元凶みたいに言わないでくださいよ」

 

「お前の、あの…なんだ…?打算的な表情?っていうのか?仕草?小町が真似したらどうすんだよ」

 

「どうなるんですか?」

 

「小町がそんなの覚えたらお兄ちゃん逆らえない…」

 

一色が少しんー?と考え事をしているらしい可愛い仕草一瞬だけして、ッハっと何かに気がついたあと、ちょっと興奮気味にまくしたてる。

 

「もしかして今口説いてました?いろは、お前の表情ひとつで俺は何でも尽くしていけるとか遠回しにくさい台詞を言ってもせんぱいはただキモいだけなのでもっとストレートに言ってくださいごめんなさい」

 

お前の頭の中ハッピーセットかよ。

わざとやってるだろ…

 

「ツッコミどころ多すぎてどこツッコめば良いかわかんねぇよ…」

 

「ですよね〜」

 

一色はふぅっと嘆息し、背もたれにもたれかかる。

 

「それじゃ、とりあえず何か頼みましょっか」

 

「そだな」

 

ふざけたやりとりを終え、俺たちはメニューに視線を落とす。

 

おいおい、サラダ1つで野口氏が一枚で足りないお値段ってなんだよ。

 

どんな高級店に入ったんだよ一色。

 

「おい、ここどんだけ高級店だよ、俺そんなに金無いぞ」

 

俺の不安な表情を察してくれたのか一色が『あ〜』と何か思い出したかのように説明を始めた。

 

「あっ、せんぱい。言い忘れてましたけれど、ここのお店、大皿を取り皿で分けるスタイルらしいので単品料理頼むと痛い目みますよ。量的にもお財布的にも」

 

それ中華料理店じゃね?明らかに中華な雰囲気だしてないでしょ。イタリー系中華とかそういうコンセプトのお店なの?何それ新しい。でも遠回しでお一人様禁止してるよね?え、ちがうの?フードファイター育成してんの?それもどうかと思うぞ。

 

「せんぱい嫌いな物ってあります?」

 

「トマトだな」

 

「それじゃこれにしましょう」

 

一色がメニューに載っている写真を指したのが、

トマトばかりを使用した贅沢パスタ。写真を見るだけでも判るこのゴロゴロと入っているトマト。

 

一色ちゃん?これは何の嫌がらせかな?

 

「ここってトマト美味しいんですよね〜」

 

「もっと別の選択肢もあるだろ?」

 

「もー、わがままですねー。ならハーフアンドハーフで頼みましょ」

 

「お前ブーメランって言葉知ってるか?胸に手を当てて自分の行いをよく振り返ってみ?」

 

すると一色は俺が言ったとおりに胸に手を当てて目をつむって考え始めた。

 

こうみると大分可愛いなこいつ。

 

「私可愛い」

 

俺の感心返しやがれ。

 

「半分トマトの奴と半分ボロネーゼでいいだろ」

 

「承知です〜」

 

一色が従業員を呼び、手際よく注文を終える。

 

「何かつかれた…なんでこんな取り分けするタイプの店選んだ?」

 

「やだなぁ、せんぱいに取り分ける女子アピールするために決まってるじゃないですか〜」

 

「それ言ったら全て台無しじゃね?」

 

「いいんですよ〜、こう言うのってむしろ隠しているよりも最初に言っていた方が好印象なんですよ?」

 

「たしかに、一気にお前への警戒度が限界値振り切ったわ」

 

「そう言いながら少し期待してたりするんですよね?せんぱいっ」

 

「そ、そんな事は無いぞ?」

 

「せんぱい…勘違いしちゃって、良いんですよ?」

 

上目遣いで俺に顔を近づけて猫なで声で一色はささやく

 

あーこの会話の流れに雰囲気…非常にまずいな。

 

「信用ならねぇ奴が信用できない言葉吐いてもな…」

 

「えー、私せんぱいから信用されてないんですかー?」

 

「あぁ、お前が漫画のキャラだったらいつか俺を裏切る」

 

「何ですかその例えキモいですよ」

 

なんで漫画で例えようとするとキモいとか言われるの?

お前ら漫画嫌いなの?読むだろ少年漫画よりもエグい少女漫画って奴を。

 

「でもでも1周回って信用しても良いかなって思いません?」

 

「マイナスをマイナスで乗算するとプラスになるようにか?…んな訳あるか。借金を借金で乗算しても借金が途方もない金額に増えるだけだ」

 

「えー、じゃあどうやったらせんぱいに信用されるんですか〜?」

 

「企業秘密」

 

「周りには内緒にしますから教えて下さいよ〜」

 

「そういう奴ほど信用ならねぇ。…俺の友達の友達の話だが、好きな人いるかと聞かれ、大丈夫!内緒にする!つってたから話したのに翌日にはクラス中に広まっていて、好きな人には何故か告白していないのに振られるという珍事があってな」

 

「どんな悲しい過去背負っちゃってるんですかせんぱいは…」

 

「お、俺の話じゃねーし」

 

「だってせんぱい友達いないじゃないですか〜」

 

「ぐっ…!」

 

とりあえず話をそらせる事が出来た。

勘違いしても良いという甘い台詞とあの仕草も合わさってくると物凄い攻撃力生んでくるな。魅了成功率にどんだけ極振りしてんだよ。

危うく言葉を鵜呑みにするところだったわ。

 

「ってか先輩にも好きな人いたんですね-」

 

「…中学は思春期真っ盛りだったからな。黒歴史しかねぇ」

 

もう思い出したくもない事ばかりだ。

 

「へぇ〜、気になりますね。どんな子がタイプなんですか?」

 

「お前と真逆なのがタイプだな」

 

「それ私が目障りで生理的に受け付けない男子に言い寄られた時に言う台詞ですよ」

 

「おまえ、なかなか酷いな。若干引いたわ」

 

「せんぱい?ブーメランって言葉知ってますか?」

 

「さーて、飯まだかなー」

 

「あー、話そらした〜。…別に良いですけれど〜」

 

ぶすーっとふくれっ面でコップを傾ける一色を見ながら俺は小町と一緒に居るかのような楽しさを感じるのであった。

 

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