ラブライブ!~合同企画短編集~【完結】   作:薮椿

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《薮椿より》
 本日は、原作『ラブライブ!』にて『ラブライブ!~1人の男の歩む道~』を投稿している、シベリア@妄想作家さんの企画小説です!

《シベリアさんより》
 ご紹介に預かりました、絢瀬絵里が大好きなシベリア@妄想作家です。気軽に「シベリア」とお呼びください。今回はあまり書き慣れていない、いわゆる一人称視点で書かせていただきました!普段は三人称、神視点と言われるもので書いているので、自分の作品を読まれている方からすれば少し新鮮かもしれないですね!ではどうぞ、お楽しみください!


あの人を眺めて

「であるからしてこの公式は────」

 

とある大学の数学の講義。今日もこの教授の話は長い。理系科目が少し苦手な僕にとってはこの講義は苦痛でしかない。でも必修だから取るしかない。でも、こんなつまらない講義にも楽しみがある。

目立つ金髪、その魅力に誰もが目を向けてしまうこの学校の有名人。ついこの前まであの伝説のスクールアイドルμ'sに所属していた、絢瀬絵里さんだ。

僕はその人がいるからこんな講義に出ていると言ってもいい。μ'sに入っている時からこの絢瀬絵里という人に惹かれていた。

 

───久しぶりに、自分は恋をしたのかもしれない。

 

気づいたら目が絢瀬さんを追っていた。男友達にも茶化される始末だ。それに、「あんな美人に恋人がいないはずないだろ」と言われたが、確かにそうだ。

色々気になって僕は今日もあの人を追っている。

 

 

 

 

「そしてこの年に中大兄皇子は───」

 

絢瀬さんは友達が多い。講義の前だって友達と話しているし、数人で固まって講義を受けている。僕もあんな自然に話せたらなと思いながら教授の呪文のような言葉を聞き流す。どうせ言っていることはレジュメに書いてあることだ。

絢瀬さんは正直僕なんかと住む世界が違う。僕なんかが声をかけてはいけない。だから僕はあの人の後ろ姿をただ眺めるだけ。でもちゃんと教授の顔を見ているようにしている、抜かりは無い。

でももし絢瀬さんと話せるようになったら、きっと僕の大学生活は薔薇色になるたろう……

 

 

 

 

 

───お昼。学内の食堂にて

 

 

「あ、絢瀬さん。こんにちは」

「こんにちは。あなたもお昼?」

「そうなんだ。一緒でも大丈夫かな?」

「えぇ、大丈夫よ」

 

食堂に行くと珍しく絢瀬さんは1人で座っていた。僕もちょうど1人で、今日は絢瀬さんと2人でお昼を食べることになった。たまに一緒になることはあるけど、2人っきりというのは初めてかもしれない。いつもは2人とも仲のいい人達と一緒にいるから、一緒になっても6人ぐらいのうちの2人になってしまう。今日は僕の仲のいい友達はサークルのミーティングがあるらしいし、絢瀬さんの方も同じ理由で今日は1人で食べるつもりだったらしい。そう考えるとちょっとラッキーなのか?

 

「そういえば、数学基礎の課題終わった?」

「ううん全く。基礎っていう割に中々高難度だよ、あれ」

「そうかしら?私は案外簡単な方だと思うけれど」

「絢瀬さんは流石だなぁ……」

 

絢瀬さんは頭が良い。まだ基礎の講義が多いけど、教授がする質問には必ず正解の解答をして、講義後も教授と中々に専門的な会話をしている。それもあってか、絢瀬さんは教授からの人気も高い。

 

「あ、そうだ!今度友達と喫茶店で課題しようってなってるんだけどあなたも一緒にどう?」

「えっ……!?」

 

もしかして僕、絢瀬さんに誘われた……!?

女軍団の中に僕が……

 

「もちろん、あなたのお友達も一緒にね」

 

知ってた

 

「そうだね。みんなにも声をかけておくよ」

「ありがとう。わかったら連絡してちょうだ……あっ」

「どうかした?」

「そういえば私達、連絡先交換してないわよね?」

「そ、そうだね」

 

こ、これは、まさか……!?

 

「良かったら連絡先交換しない?」

 

そう言って絢瀬さんがスマホの画面を僕に見せてきた。その画面には大体の人がしているメッセージアプリのQRコードだった。これを読み込めば絢瀬さんとはそのアプリ上で言う"友達"になれるわけで、それで……

 

「喜んで!」

 

とかなんとか考える前に反射的に僕は絢瀬さんと連絡先を交換していた。それからしっかり登録出来ているかの確認のスタンプが送られてきた。

 

「スタンプ来たかしら?」

「うん、来たよ。ありがとう」

「こちらこそ。何かあったらそこに連絡してね」

「了解」

 

それから少し談笑してお昼を食べ終わり、次の講義の教室が同じ建物にあるので一緒にその建物まで向かった。

 

 

「あ、じゃあ私こっちだから」

「わかった。……じゃあまた」

「えぇ、また」

 

『また』の後は使う場合省略されがちだが、案外その意味というのは相手に伝わっている。この場合、『また会いましょう』や『また今度』や『また後で』などそういう感じの意味だ。つまり何が言いたいかというと、絢瀬さんとの関係は今日この時限りではないということだ。

 

「……今日は赤飯かな?」

 

今日の晩御飯のメニューが決まった瞬間である。

 

 

 

 

 

───3限目の講義の教室にて。

 

 

教室の後ろのドアから入ると、すぐ近くの席に友達3人が座っていたので俺は空いていた席に座った。

 

「オッス……って、なんかいいことでもあった?」

「えっ、わかった?」

「そりゃあそんな幸せそうな顔してたらな」

「顔に出てたか……」

「それで、何事?」

「聞いてくれるか友よ。実は───」

 

僕はさっきの昼の出来事を自慢気に話した。そしたら隣に座っていた友達に肩をポンと叩かれた。

 

「……大丈夫か?」

「なんで!?」

「いやいや、お前があの絢瀬絵里さんと連絡先を交換なんて有り得ないだろ」

「おう喧嘩か?いいぜ、表に出ろ」

「まぁまぁ。信じられないなら証拠を出せばいいんじゃない?」

「確かに。えっと……はい」

 

僕はメッセージアプリを開いて絢瀬さんの連絡先を表示してみんなに見せた。すると3人とも信じられないという言葉を顔に出しながらその画面を見つめていた。

 

「疑ってすまなかった」

「グッジョブ」

「正直信じてなかったけど、良かったね」

「え、酷くね?」

 

それから少し話して、3人とも絢瀬さんが話していた集まりに参加することが決まったので早速絢瀬さんに報告した。絢瀬さんからは「OK」というスタンプと、追記のメッセージが送られてきた。

 

『あと友達と話してて、喫茶店で課題するだけじゃつまらないから、そのあとカラオケとかゲームセンターに行こうって話になったの。それも確認しておいてね』

 

僕はそのメッセージに返信して、みんなにそれを伝えた。なんか、これって友達と遊ぶ約束をしている時みたいでワクワクする。というか、友達なのか……!?

 

 

「レジュメ配るから後ろにまわしてください。足りなければ前に余りがあるので取りに来てくださいね」

 

幸せな気分に浸っていると講義が始まった。絢瀬さんの後ろ姿を眺めることがルーティンのようなものになっていたのか、やっぱりこの講義はいつもよりやる気がわかない。まぁ、大学生の本業はアルバイトでも遊びでもなく勉強だ。しっかり単位を取らないといけない。なので僕は講義に集中する。

 

「そしてこの日に信長は熱田神宮に───」

 

意識が薄れてゆく……眠い。隣の友達は興味深そうに話を聞いている……凄いな。僕はもう限界、だ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───お〜い、起きろ〜」

 

僕は誰かに軽く体を叩かれて目を覚ました。どうやら僕は眠ってしまっていたようでまだ頭がぼーっとしていて、軽く頭痛もする。

周りを見まわすともうみんな教室を出だしていたり、出る準備をしていた。教授は質問などしてくる生徒の対応や片付けをしていた。

そうか、講義は終わってしまったんだ。またガッツリ寝てしまった。

 

「はぁ……起こしてくれてありがとう」

 

ついついため息が出てしまう。

 

「どういたしまして。……あとヨダレ出てるぞ」

「はっ!?まじか」

 

友達に囁くように指摘された僕は素早くハンカチで口周りを吹いた。僕はどれだけ爆睡してたんだろう。

 

「よく寝てたよな。まるで催眠術にかかったみたいだったぞ」

「まぁ、あの人の話し方は眠くなるけどな」

「ははは、確かに」

 

まだ教室に教授がいるのによくそんなことを話せるなと感心しながら教授の様子をチラッと確認したけど、どうやら席が後ろの方でさらに話し声も小さかったので聞こえていなかったみたいだった。とりあえずは安心した。

 

「とりあえず昼飯食いに行くか」

「そうだな」

「やっと飯だ〜」

 

この講義が終われば待ちに待った昼休み。

今日は朝時間があったので簡単な弁当を作ってきた。メニューは玉子焼き、ウィンナー、ポテトサラダ、ご飯だ。なおそれでは足りないのでいつも売店でプラスで何かを買っている。ちなみに僕は実家暮らしだ。

 

昼休み、そんな目立ったイベントもなく時間は過ぎていった。それに3人とも次の時間の講義があるが、僕はないので何をしようか迷っていた。図書館に行くか、食堂でゲームをしているか、適当に辺りをぶらつくか。サークルにも所属していないから暇つぶしの方法が困る。やっぱり入るべきなのか?でも面倒くさそう。

 

 

 

 

───図書館。

 

 

悩んだ末に、僕は図書館で本を読むことにした。古典文学に興味があるので、とりあえず竹取物語を読んでいる。現代では「かぐや姫」という物語で広く知られている。

図書館の雰囲気は好きだ。静かだし、本を読んでいると自分だけの世界に浸れる気がする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何読んでるの?」

「ああ、これは『竹取物語』だよ。教科書にはほんの一部分しか載ってないけど、こうして全体を読むと中々面白いんだよ」

「そうなのね。また私も読んでみようかしら」

「オススメするよ」

 

 

 

 

 

って、僕はなんでこんなことを考えてしまうんだ。そんなこと有り得るはずがないのに。集中だ、集中……

 

 

 

 

 

『君って本を読む時ってそんな顔するのね』

 

 

 

 

───ダメだ、集中できない。とりあえず読むのを辞めて外のベンチに座ろう。

 

外にあるベンチに座っていると自然と落ち着く。特に大きな木下のベンチは格別だ。風が木を揺らしている音を聞きながら当たる空気はなんとも気持ちいいものだ。そこは僕のオススメスポットだ。

 

「ん、あれは……」

 

そんなベンチに座っている僕の目の前を通り過ぎたのは絢瀬さんだ。ひと目でわかった。でも、いい匂いしたなぁ……あれが美人の香りってやつかな?

でもどこに行くんだろう……気になる。

 

気付いたら僕は絢瀬さんを追うように自然に歩き出していた。動作もトイレに行く人を装って、しっかりトイレの方向には向かった。じゃないとただのストーカーになるからね。

あ、でもどうやら絢瀬さんは図書館に用事があったみたいだ。よく見たら腕に本を抱えていた。なので僕はそのままトイレに向かった。

 

 

 

 

「ふぅ……」

 

トイレを済ませて手を拭きながらどこかで休もうと食堂とはまた別の、机や椅子が沢山あるスペースに向かった。その途中、図書館前で絢瀬さんが何やら女の人と話しているのが見えた。

あの人見たことあるぞ……確かこの大学のチアリーディング部の部長さんだ。ということは勧誘?絢瀬さんがチアリーディングかぁ……確かに似合うかも……

 

 

 

───揺れるポンポン、揺れるミニスカート、揺れる2つの膨らみ。その姿に誰もが目を奪われる。

 

『フレ、フレ、頑張れ!』

 

 

 

 

 

 

うん、いい。

あ、チアリーディング部の部長さんが帰っていく。あの様子じゃ断ったんだろうか。

絢瀬さんはやれやれという顔を浮かべている。きっと色んなところからスカウトを受けているんだろう。容姿端麗、成績優秀、そしてあの絢瀬絵里だし、どこのサークルも欲しいと思うのは当たり前だろう。

 

講義の終わりを告げるチャイムが鳴った。そろそろ教室に行かないと。

 

 

 

 

 

 

───夕方。

 

僕は今日の講義が全て終わって帰路を歩いてきた。今日も疲れたなぁ……というか大体の講義で寝てたから講義を受けた気がしない。帰ったら復習でもしとくか……

 

「あっ、絢瀬さんだ」

 

絢瀬さんは帰り道の途中にあるカフェで飲み物を飲んでいた。時々周りをキョロキョロとしているし、誰かを待っているのかな?

もしかして、僕だったりして……?

 

 

 

「あ、いたいた。待ってたのよ」

「ごめんごめん」

「はい、あなたのコーヒー頼んでおいたわよ」

「ありがとう、絢瀬さん」

「ふふっ、もう名前でいいわよ?友達なんだから」

「そ、そう……?え、絵里、さん」

 

 

 

 

 

そんなわけないよね〜。ってこっち向いた……!?まさか本当に僕を……!?

 

 

 

「やぁ、お待たせ」

 

 

 

と、絢瀬さんに声をかけたのは僕の横を通っていった男の人だった。あらやだイケメン。

てか誰なんだあの人。絢瀬さんとあんなに仲良く話す人なんて大学にいたかな?

それに絢瀬さんのあの顔……あれは誰にでも見せるような顔なんかじゃない。あんな顔をする絢瀬さん初めて見た。

 

───あぁ、そうか。あの人、絢瀬さんの恋人なんだ。

 

わかっていた。絢瀬さんみたいな美人に恋人がいないはずなんてないんだから。あんな人が独身ならこの世の誰もが独身だと言っても過言ではない。

叶うはずもない恋が終わった僕は、絢瀬さんから目線を外して帰路をまた歩き始めた。

 

 

 

 

次の日から僕は絢瀬さんを見つめることはなくなった。偶に目で追ったりはするけど、前ほどではない。友達からは調子が悪いのかと心配されたけど、事の始末を話したらご飯に連れて行ってもらえた。

しかし、何もやる気が出ない。正直もう講義なんてどうでもいい。前までは絢瀬さんを眺めると理由で来ていたに等しい。だけどその理由がなくなった今、多少なりとも大学に来る意味を見失いかけている。

 

「はぁ……」

 

小さくため息をついてしまった。

腕を動かしたらその拍子に消しゴムが転がってしまった。後で取ればいいかと別の消しゴムを用意した。

 

「ねぇ、落としたわよ」

 

その時だった。斜め前の席の人が消しゴムを拾って声をかけてくれた。

 

「あっ、ありがとうございます」

 

僕はその人の顔が見えるように視線を上げてお礼を言った。でも、その人の顔を見た僕は不覚にも言葉を失ってしまった。

 

「いえいえ」

 

その人は何食わぬ顔で僕に消しゴムを手渡すとまた前を向いて教授の話を聞いた。

僕はしばらくぼーっとしてしまった。何故ならその人は、憧れ続け、いつまで経っても話しかけることが出来なかった絢瀬さんだったから。

絢瀬さんは誰にでも優しい。絢瀬さんと同じ大学に通っていると知ったその日、絢瀬さんは道に迷っているおばあちゃんに道案内をしていた。そこから僕は絢瀬さんを目で追うようになった。決して見た目だけで判断した訳では無い。絢瀬さんのそういう所に僕は惹かれた。

μ'sに所属していた時は、ただ絢瀬さんの歌に、姿に魅了されただけだった。でも僕はμ'sの絢瀬絵里だから好きだったのではない、絢瀬さんだから好きだったんだ。きっと絢瀬さんの恋人も僕と同じ気持ちなんだろう。

人の心というのは簡単で、いいことがあるとすぐ機嫌が良くなる。例え嫌なことがあってもだ。なので僕はそこから講義に集中できた。

 

そして僕はこの時決めたことがある。

恋を叶えようとすることは諦めよう。でもこの好きという気持ちは胸にしまっておいて、普段通りの自分でいよう。

そしたらきっといつか……絢瀬さんと友達になれるかもしれない。

 

 

 

 

「絢瀬さん、さっきはありがとう」

「ど、どうして私の名前を……!?」

「驚くことじゃないでしょ。だって絢瀬さんはこの学校の人気者だからね」

「……………」

「ど、どうしたの?」

「あっ、ごめんなさい。私のこと、元μ'sの絢瀬絵里って見てくる人が多いものだから」

「あぁ、確かにそれもあると思う。僕もμ'sは好きだったし。でも、ここにいるのは僕と同期の絢瀬さんだからね」

「ふふっ、嬉しいわ。ありがとう」

 

 

決してこれは恋への一歩じゃない。

でも、それでいい。絢瀬さんには心に決めた人がいるし、僕は絢瀬さんと知り合いになれたから。当面の目標は、絢瀬さんと友達になることかな。

 

 

 

僕は今日も視界に入ってくる絢瀬さんの後ろ姿を見てしまっている。帰り道も同じ方向だからか、毎回絢瀬さんが恋人といる姿も見ている。眺めることしか出来ない悔しさもある。

でも、その悔しさは決して苦ではない。絢瀬さんの好きな笑顔は恋人と一緒にいる時しか見せないあの笑顔だし、絢瀬さんを眺めることが幸せに感じるから。

 

 

───僕は、ずっとモブで構わない。

 




《シベリアさんより》
ありがとうございました!如何だったでしょうか?
あまりこちらで色々語るのは避けますが、ここで綴った気持ちは自分の中で思っていることでもあります。推しは眺めていたいんですよね。
さて、私事ではございますが、前書きで紹介して頂いたメインとなる作品はもうすぐ最終章を迎えます!何気に3年程書いている小説です。総集編があるので是非そこからでも読んで見てください!
薮椿さん、企画に参加させて頂いてありがとうございました!
読者の皆さんも企画はまだ続きますのでお楽しみください!
それではごきげんよう!アデュー!
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