ラブライブ!~合同企画短編集~【完結】   作:薮椿

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《薮椿より》
 本日は、原作『ラブライブ!』にて『蒼明記 ~廻り巡る運命の輪~』を投稿している、雷電pさんの企画小説です!

《雷電pさんより》
とってもあまあまなことうみストーリーですよー(


ないちんげーるらぶそんぐ

 

 

 私はあなたのことが好きでした。

 

 

 綿毛のように柔らかく、川のせせらぎのように美しいあなたの声が好きでした。

 私に向けられる温もりに満ちたその笑顔も好きでした。

 かわいらしいちょっとした仕草さえも愛おしく思えてしまう。

 

 

 私はずっと、あなたの傍にいて、あなただけを見つめていました。ただの幼馴染ではなく、私の好きな、愛しい人としてあなたのことを見つめていました。

 

 

 でも、あなたは私のことをそう見てはくれないことを知っています。

 何故ならあなたの瞳には、私ではない人の姿が映っている。

 その人を見ている時のあなたは、よく私の知らない顔を見せる。愛おしそうに見つめ、あの人に陶酔するあなたの横顔を見ると、胸が締め付けられるみたいに痛む。決して私に向けてはくれないのでしょう。

 

 こんなにも私は、あなたのことを想っているのに……

 

 

 

 

~~

 

 

 

「海未ちゃん……私ね、穂乃果ちゃんのことが好きなの……」

 

 何の前触れもなく、ポツンと呟かれる。

 学校帰りにことりの部屋に訪れてきていた私は、悩ましそうにしていたことりから突然聞かされた。

 

 あなたはずるい人です……ちょうどいいタイミングで、いつも私を困らせることを話してくのですから。心を読んでいるのではないのかと、疑ってしまうほどです。おかげで、心が黒い霧に包まれるみたいに陰鬱な気持ちになる。

 

 

「……知っていますよ」

 

 さも何事もないように言葉を返すと、彼女も、うんと二言で言い返す。

 しかし、言葉とは裏腹に、心の中ではうんざりしてしまっている私がいる。

 知っているに決まってるじゃないですか……! あなたの瞳には、いつも穂乃果(私ではない人)が映っている。3人でいる時も、決まってあなたは穂乃果(私ではない人)のことを見つめている。こうして2人でいる時でさえも……あなたは決して私を見てはくれない……

 

 私があなたのことを好きであればあるほど、あなたが穂乃果(私ではない人)のことを話すのが辛いのです。あなたが穂乃果(私ではない人)と一緒にいるのを見るのが辛いのです。

 こんなにもあなたのことを好きであるのに、まるで遠くにいるようなこの関係が耐えられなくなっている。

 いっそのこと、あなたのことが好きであるとハッキリ伝えてしまいたい。

 ですが、そんな大それたことを言えるような性分でもなく、いつも心の隅に秘めさせて口にすることはない。もし、私がそれを口にしてしまえば、きっとあなたは私のことを拒絶するのでしょう。そうなれば、もう二度と私のことを呼ぶあなたの声を聞くことができなくなる。その笑顔さえも私の前から遠退いてしまう……

 ならば私は、悟られることなくこの気持ちを仕舞い込んでしまおう、そう心に決めるのです。

 

 

「穂乃果ちゃんのことが好きなのに、ちゃんと“好き”って伝える勇気がないの」

「そう、なんですか……」

「ごめんね、こんなこと海未ちゃんにしか相談できないから……」

 

 ことりは申し訳なさそうに眉をハの字に引き下げて言う。

 私を頼り、必要としてくれることはとても嬉しい……。その時だけ、あなたは私を捉えて話をしてくれる。

 けれど、それでもあなたの心の中には、穂乃果(私ではない人)が棲み付いている。

 

「“好き”と伝えるだけなら毎日そう言っているではないですか」

「ううん、そうなんだけど……違うの……。そういう“好き”じゃなくってね……」

 

 すると、両手を合わせると口元に添えて、頬を鬼灯のような朱色に染めた。

 

「あっ……」

 

 ズキッ、と胸が痛む。()()だ……あなたはまたそんな顔を見せる。愛おしそうに想いを寄せている乙女の様相に気持ちが揺らいでしまう。私には向けられることのないあなたの素顔を、ただ見つめることしかできないことが苦しい……。

 

 でも今は、あなたに選ばれなかった悲しみだけを抱くしかありませんでした。

 

 

「――海未ちゃんはどうなの?」

「えっ―――?」

「海未ちゃんも好きな人にそういうことをしてみたいって考えたことないの?」

 

 突然、ことりに言われて一瞬どきっとしました。

 私のこの気持ちを伝えたい相手こそ、目の前で私のことを見つめるあなたなのだと言うことを言えずにいました。

 もし声にして伝えてしまえば、あなたはきっと私から離れていくのでしょう。それが恐ろしかった……

 

「い、いえ……私は、一度も考えたこともありません……」

 

 否。

 決してそんなことはありえません。

 

 もし私があなたにこの想いを伝え、あなたがそれを受け入れてくださったのならどんなによかったことだろうか。あなたが傍におり、私に傾けられる声を聞きいて心を躍らせ、私に微笑む姿を永遠と眺めていたい。あなたの肌に触れ、その温もりを感じてみたい……あなたとの深愛に浸り続けていたい………

 

 果てしない思いを巡らせていると言うのに、口にしてしまう虚偽に胸を苦しませてしまう。

 

 

「そっか……ごめんね、変なこと聞いちゃって」

「い、いえ……そんなことは」

「私、ちゃんと伝えたいの、この気持ちを。それに、ね……私、穂乃果ちゃんのことを考えちゃうと“好き”以上のことしてみたいって思っちゃうの。でも私、気が弱いから自分では言えない……。この気持ち、どうしたらいいんだろうね……?」

 

 切なく言葉を紡ぐあなたは儚く見えた。繊細で、触れてしまえば崩れてしまいそうな脆さ。どうしてあなたは好きな人のことを想う時、女々しい姿を私に見せるのですか? そんなあなたを見て、私がどう感じているのか知っているのでしょうか? 私も……あなたをそうさせられるような人でありたかった……。そうしたら、今のあなたをそっと抱き込んで慰めてあげられただろうに………

 

 

 

 

 

……なら……いっそのこと―――

 

 

 

 

 

「……してますか?」

「えっ……?」

 

 

 

 叶うことのない願いと言うのであると言うのなら……いっそのこと―――

 

 

 

 

 

 

「私の身体をつかって、ことりがしたいことをしてみてはどうでしょう?」

 

 

 

 

 

 

―――あなた()()たい―――

 

 

 

 

 

「う、海未ちゃんっ……それって……?」

「ことりは、私のことを『穂乃果』だと思ってください。それでことりのしたいことを私に」

「で、でも……海未ちゃんは……」

「ことりは、ちゃんと伝えたいのでしょう? 『穂乃果』にその気持ちを?」

「そ、それは……」

「なら、私で試してください。あなたがその気持ちを伝えきるまでの練習だと思ってください」

「海未……ちゃん……」

 

 あぁ……私はなんてひどい人なのでしょう……

 ことりの気持ちを弄び、私の思い通りにさせようとしていることに引け目を抱いてしまう。

 でも、仕方がなかった……こうでもしなければ、苦しさのあまりこの胸が張り裂けてしまいそうだった。

 

 ことりが穂乃果(私ではない人)のことを好きでいい……

 ことりが私のことを見てくれなくてもいい……

 

 ならせめて、あなたを1人占めできる瞬間が欲しかった……

 

 私は、それで構わないから……

 

「いいの、本当にいいの……?」

「ええ、構いませんから……」

 

 醜い願いだと言うのに、あなたは何も知らない赤子のように興味を示そうとする。無垢なあなたは何も知らなくていい……あなたはただ私にその声を、瞳を、温もりを与えてほしい。紛いモノでも構わない、穂乃果(私ではない人)にしか与えないモノを、私にも注いでほしいのです……。

 

 

「海未ちゃん……」

 

 ことりの繊細な指が私の肩をそっと撫でた。そのままゆっくりもう片方の手を私の腰に添えられて、身体を引き寄せられた。ことりは目線を合わせないように右肩に顔を埋めると、生温かい熱を帯びたあなたの吐息が肩から伝わってくる。

 

――熱い、あなたの熱で溶けてしまいそう。

 

「――――っ!」

 

 一瞬、声にならないモノが口から出てしまいそうになった。電流のような刺激が身体中を走り、背筋がぞくぞくしてしまう。

 

――だめっ、気持ちをしっかり保たせなくては。

 

 そう自分に言い聞かせるのですが、初めて実感することりの熱に眩暈しそうになる。

 あなたはいま、私の知らない熱を私に注いでいるのだ、と。聞かずともわかってしまう自分がいる。わかっていても、欲しかった。あなたのすべてを知りたかったから。

 私の知らないモノを誰にも与えてほしくなかったから、そっと、彼女の身体を抱き返した。

 

「脱がしても、いい?」

 

 琥珀色の潤んだ瞳が訴えかけてくる。迷いのある声色で言うのに、あなたの手はすでに私のシャツの裾に手を伸ばしている。直接肌に触れたいのでしょう、わかりきっていたことだ。それに私が拒む理由もない。

 

「かまいま、せん……」

 

 高鳴る胸の鼓動が邪魔してうまく口にできない。

 いつの間にか、顔も熱くなり、どこからともなく汗も吹き出始めだしていた。

 

 いくね。

 相槌をかけるような声をあなたは口にすると、私のシャツに両手をかけ、ゆっくりとボタンが外される。身体を見せられることに恥ずかしくなる私は、うつむき様に耳まで顔を赤くさせているのでしょう。私もあなたにしか見せない姿を晒すことに……

 

 シャツを取られ、ブラだけになった私をあなたは見る。まじまじと、隅々まで見られているような視線を感じがする。そんなあなたの目は、いつものようなやさしいものではなく、とても研ぎ澄まされていて……

 

「肌、白くて……きれい……」

 

 どこか妖艶な顔をしていた。

 

 けれど、そんなことりに私は、悦びを感じた。

 少しずつ、私の知らないあなたを見つけることができて、それを私にしか見せてないことに悦んだ。

 もっと私に見せてほしい……

 そのためなら、私の身体が汚れても構わなかった。

 

 ことりは手を伸ばし、上半身に触れ始める。

 

 肩。

 胸。

 お腹。

 

 目につくところはどこでも触れて、じっくり感触を確かめている。

 あなたに触れられるだけで、くすぐったく身体を反応させてしまう。

 触れたところが熱くなって、火照りだす。

 体内の熱を吐きだそうと、息も荒くなる。

 

 でも、それがあまりにも心地良くって、軽く癖になりかける。

 

――あぁ……もっとあなたに触れてほしい……

――あなたの肌の温もりを身体に刻み込んでほしい……

 

 自然にあなたを強く求めるようになるのに、時間はいらなかった。あなたに触れられている、抱きしめられているだけで私は、理性を持っていかれそう。私の中のドロドロとした黒いモノが流動し、嬉しそうに悦んでいるのがよくわかる。あなたが私だけを求めていることへの愉悦感と、純粋なあなたを汚していることへの背徳感が絶妙に混ざっている。

 仕方のないこと。私はあなたのことをこんなにも思っているのに、あなたは振り向いてもくれなかった。私を見てくれなかったことへの失意には何度も泣かされてきた。

 だから、あなたがそうして、必死に私の身体をむさぼろうとする様子が嬉しかった。

 

――もっと……もっと私を見て……!

 

 赤くなる身体は更なる欲を求めた―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……『穂乃果』……ちゃん……」

 

「―――――!」

 

 

 その刹那、熱した身体に悪寒が刺した。

 強欲になりかけていた頭も冷静になり、我に帰る。

 

――あなたが、穂乃果(私ではない人)のことを呼んだから……

 

 私を見て、私に触れて、私を感じているはずなのに、あなたはここにいない穂乃果(私ではない人)の名を呼ぶ。

 

 

『私のことを「穂乃果」だと思ってください』

 

 

 ふと、自分が口にしたことを思い出し、落胆する。あなたは、どうなっても私のことを見てはくれないのだと……。あなたのその熱も、穂乃果(私ではない人)に向けられていくものなのでしょう。その事実が私を無情にさせる。

 

 熱が冷めかけようとしていた。

 

「こっちも、触るね?」

 

 それなのに、あなたの願いだけは断れなかった。

 私の身体も、尚もあなたのことを欲したから……

 

 私は小さく頷きながら、あなたに、この身体を明け渡した。

 

 

 

 

 

~~

 

 

 あれから、ことりの方からせがまれるようになった。

 どうやら、この身体だけの関係を気に入ってくれたらしく、何度も呼ばれては身体を重ねた。

 初めは、あなたに触れられる快感に喜びを抱いたが、次第に薄れだす。あなたが私のことを意識していないことが大きかった。

 最初に自分でそう言ったではないか。それなのに、私ときたらことりと肌を合わせることで、あなたが私のことを意識してくれるものだと、心のどこかで望んでいた。あなたに触れられるだけでよかった、と言うのに……。すれ違うだけで我慢していた私も強く意識し始める。

 

――やはり私は、あなたがほしい……。

――身体だけでなく、その心も……。

 

 身体だけでもあなたを1人占めしたかった。なのに今では、心まで欲しい、だなんて願うようになっている。乾いた唇があなたを求めている。けれどあなたは、穂乃果(私ではない人)のために、と私に与えてくれなかった。

 あなたとこうして触れ合うことで、あなたの身体の隅々まで私は知った。なのに、唯一知らないのは、あなたとの口付け……。あなたの、心許す相手にしか与えないもの。それがあなたの心なのだと言うのなら、それさえも奪い取ってしまいたかった。

 

 けれど、その機会も与えられぬまま、月日は過ぎ去っていった。

 

 

 

 

 

~~

 

「海未ちゃん」

 

 放課後。

 いつものように相槌を打ってくる。

 あなたはそうやって私に合図を送って、そういう日なのだと知らせてくれる。

 

「わかりました」

 

 そう返すと、いつものようにあなたに手を差し伸べて手を繋ごうとした。

 

「あっ……ご、ごめんね」

 

 けれど、あなたは戸惑う様子で手を引いた。()()()ならこうして手を繋いでくれると言うのに、どうしてか今日に限ってあなたは手を引いてくれなかった。

 ふと、ことりの顔を見ると、そわそわした様子を伺わせていた。

 何かが違う、そうした違和感を抱いた。

 

 

「ことりちゃん、海未ちゃん。また明日ね!」

 

 教室を出ようとしていた穂乃果が私たちに言う。

 

 私は穂乃果が去る直前の顔を見てしまう。

 そこには、今まで見たことのない穏やかな顔をした穂乃果が。それも、私を見てではなく、私の隣の……。

 

 

 

 チクッ―――――

 

 

 

 痛い、小さなとげが胸に刺さったみたいだ。

 

――まさ、か………

 

 嫌な気持ちになる。

 

 もやもやとした気持ちが煙のように立ち上り、私の心を覆った。

 知りたくない、その理由を。穂乃果がことりに見せるその顔の意味を、私は知りたくない。

 いつもと違う反応。ことりから与えられるほんの些細なことが、私の心を傷つける。

 

「さ、いこ?」

 

 あなたに言われて我に帰り、あなたの家に行く。

 いつもとは違う、小さな間隔をあけながら……

 

 

 そして、この違和感が現実となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

~~

 

「私、ね……穂乃果ちゃんと付き合うことになったの」

 

 

 えっ―――――?

 

 

 何の前触れもなく、また、ポツンと呟かれる。

 ことりの部屋に連れて来られて間も無くのことだった。

 

「今日ね、思い切って告白してみたの。そしたらね、穂乃果ちゃんもことりのこと、好きだって言ってくれて。それでね、ことりは、穂乃果ちゃんの恋人さんになれたの」

「そ、そう、ですか……」

「それでね、それでね! 思いきってね、穂乃果ちゃんと、キス、しちゃった……!」

「………えっ?」

「キスした時ね、ふわぁ~っとした感じになってね、とっても幸せな気分になったの―――」

 

 

 あなたはとても嬉しそうに頬を赤くさせながら話をする。

 私は――おそらく、蒼白させた顔で聞いているのでしょう。

 

 

「――好きな人にするのって、こんなにも胸がスッキリするものなんだね♪」

「…………っ」

 

 胸を締め付けられる息苦しさに悶えながら……

 

「それで、ね。海未ちゃんとのこの関係を、辞めようかなって思うの」

「………」

 

 立て続けに襲われる落胆。

 

「穂乃果ちゃんに自分の気持ちを伝えたくって、その練習みたいにやってきたけど、もう必要ないかなって思うの」

 

 私の心に、ぽっかり穴があいたような気持ち。

 

「海未ちゃんから誘ってくれて……いっぱいしてくれたから、ことりは自信を持てたの。感謝してるよ。でも、これ以上は迷惑かなぁって……」

 

 

――あなたがいなくなったら、わ、わたし……わたしは……

 

 

「海未ちゃんにも好きな人がいるだろうし、これ以上したら戻れなくなっちゃうかもしれない」

 

 

――わたしはもう……あなたなしでは……

 

 

「海未ちゃんは、伝えないの? 好きな人に、海未ちゃんの気持ちを?」

「……わ、わた……し、ですか……?」

 

 聞かれると、ぼやけた様子で聞き返してしまう。すべてが上の空になりかけていたから……

 

「伝え、たいです……で、ですが……その人は、きっと……受け入れてくれないでしょう……」

「そんなことないよ、海未ちゃん。海未ちゃんの好きな人はきっと、受け入れてくれるよ。だって、海未ちゃん、こんなに魅力的なんだもん」

「―――――っ!」

 

 

――――ドクン

 

 

 突然、胸が強く高鳴りだした。

 初めて、かもしれなかった。あなたから、ことりからそのように言われたのは……。あなたは今、私のことを見てくれている……。ずっと見てほしかったと切に願っていたことが、ようやく叶えられたような気がした。

あなたが私を意識してくれている――、それだけで私は悦んだ。

 もっと見てほしい……もっと私のことを意識して欲しい……。切なる願いとして胸に秘めていたことが現実となった。なら、私の、もうひとつの願いも……叶えられるのでしょうか……?

 

「本当に、受け入れてくれるのでしょうか……?」

「大丈夫だよ。絶対、受け入れてくれるよ! 私の好きな海未ちゃんだもん。間違いないよ!」

 

 

 

――――プツン

 

 

 

 す……き……?

 い、いま……ことりは、私のこと……好き、と……?

 あの、ことりが……わたしのことを……好き……

 

 あたまが、よくまわらない……でも、ことりが、わたしのことを好きでいてくれたことだけはわかりました。そう、だったのですね……わたしは、てっきり、好かれていないものだと思っていました……。でも、違うのですね……。わたしと、ことりは……()()()、だったのですね……!

 

 あ、あは……あはは……あはは……

 

 

 その瞬間、頭を鈍器のようなものでぶつけられたかのような衝撃を受けた。同時に、何か大切なモノを失ってしまったような、崩壊してしまうような気分となる。

 目の前が、真っ白になって……何も見えなく……盲目的になってしまう……

 

 

 

 

 

 

「海未ちゃん、どうしたの? 顔色悪いよ?」

 

 あぁ、ことりがわたしのことを心配してくれている……。なんてやさしいのでしょう……。あなたのそのやさしさ、わたしは好きなんですよ……?

 

「海未ちゅん……? どう、したの……? ことりの手を握りだして……?」

 

 あたたかい……ことりのては、なんてあたたかいのでしょう……。ずっとずっと、握り続けていたいです……

 

「う、海未ちゃん……! い、いたい、いたいよ……! 強く握り過ぎだよ……!」

「ことりは、受け入れてくれるのですね……?」

「えっ? な、何を……?」

「私のこの気持ち、受け止めてくれるのですよね?」

「―――っ! も、もしかして、海未ちゃん……!」

「はいっ! ことり、私はあなたのことが好きです!!」

 

 やっと、言えました……。口にした瞬間、胸に詰まっていたモノが取り除かれたような開放感がありました。あぁ、胸がスッキリすると言うのは、こういうことだったのですね!

 ことりも嬉しそうです。こんなに身体を激しく動かして、喜びを表しているだなんて。よっぽど私の告白に胸を躍らせたのでしょう。

 

「だ、だめっ……海未ちゃん、だめだよっ……! こ、ことりには……穂乃果ちゃんが……!」

 

 

 ほの、か……?

 その言葉を耳にした時、とても嫌な気持ちになります。せっかくスッキリしたと言うのに、汚されたような気分です……。

 不愉快です……あなたが、そんな言葉を吐くことが……!

 

 

「穂乃果など知りません!! ことりは、私だけを見ていればいいのです! 私の名前だけを口にすればいいのです!! 今こうしているのは、穂乃果じゃない、私です!! あなたの好きな私が、しているのですよ!!」

 

 私の邪魔する者など要りません。あなたには、私の他に必要ないのですから……!

 

「それに、あなたは受け入れてくれると、そう言ったではないですか? あの言葉は嘘なのですか?」

「そ、そうじゃなくって、それは私のことじゃなくって、海未ちゃんの好きな子のことで……」

「私が好きなのは、ことりです! それ以外などありえません!!」

 

 まだ私の気持ちに理解できていないところがあるのでしょうか? やはり、あなたに強く認知してもらうためには、あなたの心に直接触れなくては……

 

 

「海未ちゃ……んっ!?」

 

 強引に、あなたの唇に口付けを交わす。私の、好きという気持ちを証明するために。

 しかし、口付けと言うのは、なんと素晴らしいのでしょう。口にする言葉よりも深い気持ちを伝えることができる、最大の証明手段。それも、口溶けるような感触も共に味わえるなど、まさに一石二鳥です。

 

 

「……はぁ、はぁ……やめよう? ね? もうやめようよ、海未ちゃん? 今なら間に合うよ……?」

 

 涙を流すまで気持ちがよかったのでしょうか? うふふ、ことりもかわいらしいところがあるのですね。それで止めようだなんて……もっとしたくなるじゃないですか……!

 

「だ、だめっ!! こ、こんなこと穂乃果ちゃんが知ったら、海未ちゃん嫌われちゃうよ!!」

「―――――っ!!」

 

 また、穂乃果……穂乃果穂乃果穂乃果穂乃果穂乃果ほのかほのかほのかほのかほのか……鬱陶しいのですよ……

 

 

 

「そんなに穂乃果に言いたいのですか? 構いませんよ、言ってくれても? でも、あなたが話せば、あなたがこれまで私とこうしてきたことがバレてしまいますが……いいのですか?」

「…………っ!!」

「酷い人ですよね……穂乃果のことが好きなのだと軽々しく口にしながらも、あなたはこうして私と身体の関係をつくった……。とんだ背信行為ですよ、あなたのしたことは?」

「そん、なっ……!」

「もし、穂乃果にこのことを知られたら、真っ先に困るのはあなたです。私と何度も身体を交らせて汚れたあなたを見て、どう感じるのでしょうか? きっと、あなたのことを拒絶するのでしょうね」

「い、いや……いやだ……穂乃果ちゃんに嫌われたくないよ……」

「なら……私の恋人になってください。そしたら、誰にも話しませんよ?」

「えっ……や、そ、そんなの……」

「選択の余地があるとでも? あなたには、そんなものなどありはしないのですよ?」

「………は、い………」

 

 ふふふっ、いい子です。ことりは賢いですから、どうすればいいのかわかっていますものね。

 あなたを、誰の手にも渡しはしませんから……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~

 

 それから数週間後―――

 

 

 晴れて恋人同士になりました、私とことりは、あれから2人でいる時間が増えました。なり立ての時は、お互いに緊張しているところもありましたが、次第に打ち解けていくようになりました。

 そして今日も2人で………

 

 

「ねえねえ、ことりちゃん。今日は一緒にどこか行こうよ!」

「えっ、あっ……うん……」

「そうだよ! 恋人同士になってからあんまり2人っきりになったことがないんだから、今日こそは2人だけの時間を過ごそうよ!」

「う、うん……そう、だね……そ、それじゃぁ―――」

 

 

「―――ことり?」

「………っ! う、海未……ちゃ、ん……?」

 

 うふふっ、私が後ろにいたから驚いているのですね。とてもかわいらしいです。

 

「今日は、私との用事があったはずですよね? 忘れましたか?」

「えっ、やっ……そんなの、聞いて―――」

「―――忘れましたか?」

「―――っ、お、覚えてる、よ……うん、行こっか……」

「えー? 今日も海未ちゃんとなの?」

「ご、ごめんね、穂乃果ちゃん……また、今度ね……」

 

 雑踏を跳ね退けるようにことりの手を強く握りだすと、さっさとこの場から去りました。私とことりの時間が減ってしまうではないですか。2人だけの時間は、一刻も逃がしたくないですから……。

 

 

 

「う、海未ちゃん……あの、ね……」

 

 

 その前に――――

 

 

 

「ことり」

「……っ! な、なあに、海未ちゃん……」

「どうして穂乃果(私ではない人)などと話をしているのですか? もうしないようにと言ったではないですか?」

「そ、それは……ほ、穂乃果ちゃんの方から話をしてきたから、つい……」

「つい、ではないですよね? この前も同じことを言いましたよね? どうして私の言うことを聞いてくれないのですか?」

「ご、ごめんね……わ、私、頑張るから……だ、だから……」

「そうですか……そんなにお仕置きが欲しいのですか……」

「………っ! ち、ちがっ……!」

「……何か?」

「う、ううん……い、いけないことりに、お仕置き、してください……」

「はい、よくできました。それでは、行きましょうか♪」

 

 2人でこうしていられる時間がとても嬉しいものです。時々、こうやって私の言うことを聞いてくれない時もありますが、ちゃんと(しつけ)をしてあげさえいればわかってくれるのでしょう。

 私が、ことりのことを誰よりも愛していることを……

 

 ただ最近は、笑うことをしなくなり、鋭く細めた眼で見ることが多くなりました。あなたの笑顔、素敵でしたのに、見られないのは少し残念です。

 代わりに、身体を交らせている時には、私の名前を必死に呼びかけてくれるあなたにうっとりしてしまいます。あなたが私のことを求めていることが、嬉しくて堪らないから。もっと、あなたから声を聞きたくって、ついつい力が入ってしまいます。

 

 かわいいかわいい私のことり。

 初めからこうしてしまえば、こんなに苦しまなくても済みましたのに。それに気付けなかった私も愚かでした。ですが、今では、私の虜。私のために鳴き、私だけを見つめてくれるかわいいことり。もう二度と、あなたを手放すことのないようにしましょう。

 

 

 籠のなか閉じ込めて―――

 

 あなただけのために―――

 

 

 いつか、私の本当の愛が届くように祈ってます。

 

 

 

 

 

 私だけの、小夜啼鳥(ナイチンゲール)―――

 

 

 

 

 

~fin~

 

 

 




《雷電pさんより》
ドーモ、雷電=デス。

普段は細々と独自路線展開を更新を続けている人です。
今回のお話は、とってもぴゅあぴゅあな話を書かせていただきました。

いやー、ことうみはいいなー(白目
海未ちゃんの一途なところ、すごいなー(遠い目


…と、書き終わってから思った次第です。。。

この話をどのように捉えて頂くかは、読者様にお任せいたします。

感想などありましたら、どうぞどうぞデス。


さて、こうした企画に参加させていただきましたが、大変ありがたいと思っています。
まさか、自分が小説を書くきっかけになった、あの薮椿さん方の企画に参加できるだなんて……嬉しいですね!!
最初は何書こうか考えてなく、不参加でいようかと思いましたが、過去の没プロットを発見して書けると思い今に至ります。
まだ自分の妄想世界は限界でないのだという発見をすることができ、これからもそれを糧に執筆し続けていきたいと思いました次第です。

今回は、企画していただきありがとうございました。







自分の次の作家さんのお話は、自分のよりも格段とおもしろい話があると言うことなので、お楽しみに♪
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