ラブライブ!~合同企画短編集~【完結】   作:薮椿

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《薮椿より》
 本日は、原作『ラブライブ!サンシャイン!!』にて『ラブライブ!サンシャイン!!~空の器を満たす物語~』を投稿している、銀行型駆逐艦ゆうちょさんの企画小説です!


恋人は天使

テレビでは、つい最近まで紅葉が見頃だと報じていたニュースキャスターが今日は寒冷地方の積雪量について報じている。季節の移り変わりとは早いものだと思いながら外出の用意をする。……今日はコートを着ていこうか。

 

 彼女との待ち合わせ時刻は12:00。今、待ち合わせ場所である沼津駅の掛け時計は30分前を指していた。少し早く着きすぎただろうか、……それにしても街中にはカップルだろうと思われる男女が何組も行き交ってる。

まぁ、それもそうか。何を隠そう本日12月24日はクリスマスイブ。街全体がサンタクロースもニッコリのクリスマスムード全開だ。

 これまでの自分なら「リア充爆発しろぉおお!」と邪念を撒き散らしていただろうが今はそんなことする必要は微塵もない。なぜなら自分相楽 匠(さがら たくみ)もそんなリア充の仲間入り、渡辺曜という天使のような恋人ができたのだから。

 

「ごめん!待ったかな!?」

 

約束の時間を僅かに過ぎた頃、ふと声のする方に振り返ると肩を上下に弾ませながら膝に手をつく天使がいた。

 

「ごめんね、ホントはもっと着くつもりだったんだけど今日が楽しみすぎて寝坊しちゃって……あの……その、怒ってない?」

 

 いつもの元気溌剌な様子からは想像できない薄花色のロングスカートを基調とした大人っぽい服装に加えてそんな潤んだ目で上目遣いをされては怒りという感情を起こす方が至難の技だ。

そんな彼女を見ると自分は心の奥底から溢れ出る恥ずかしさを隠すようにそっぽを向くと早足で最初のデートスポットへと天使のエスコートを開始した。

 

 

 

 

 

 

 

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「ん〜!やっぱり内浦の海はキレイだよね〜!高校時代はここでダンスの練習をしたっけ」

 

大きく伸びをしながら海を見つめる彼女はどこかの写真集に載っていてもおかしくないぐらいに美しい。

 

「で最初につれてきてくれた場所は……カフェかな?」

 

自分が彼女との最初のデートスポットに選んだ場所はつい最近オープンしたばかりの海辺に建つこじんまりとした喫茶店だ。

 

「これがメニュー表か。どれどれ……いろんなメニューがあるんだね!お、このハンバーグ美味しそう……あ、店員さん!これを二つお願いします!」

 

彼女の大好物がハンバーグだということは一般常識として脳に刻み込まれているのでこの注文は想定どおりだ。下調べしたかいがあったと思わず心の中でガッツポーズをしてしまう。

 

「そういえば、匠と付き合い始めてからもう3年が経つんだね〜確か告白されたのは高校を卒業した時だったけ」

  

 注文した料理を待つ間、彼女がしみじみと話すので自分もふとこれまでの過去の出来事を思い出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 曜とは物心付いた頃から知り合いで小さい頃は家が近所だったのもあり毎日のように遊んでいた。

 

だが小学校に入学し、だんだんと女の子を異性として意識し始める高学年。毎日一緒に登下校する二人を見たクラスの輩に「いちゃいちゃカップル」だのと騒ぎ立てたてられ、思春期故の気恥ずかしさが生まれたため毎日一緒だった登下校がバラバラになり、毎日交わしていた「おはよう」「またね」の言葉も次第に無くなっていった。恐らくそれと同じ時期だろうか何か胸の中にモヤモヤとした感情が生まれ始めたのは。

 

 中学も一緒の学校へ進み三年間同じクラスだったが特に何も無し、あったとすれば修学旅行で同じ班だったことと、「おはよう」の挨拶は再び交わすようになったことぐらい。その間にも胸の中の原因不明モヤは増幅していくばかりで、そして卒業の日を迎えた。

結局心に抱えていたモヤは晴れることはなくただ、ゆっくりと存在そのものが記憶から消えていった。

 

 そして高校生、お互い別々の高校へと進学し曜との関わりは無くなるかと思われた……だが今思えば神様の助けだろうか、運命の赤い糸とも呼べるラブライブが自分と曜との関係を大きく変えることになる。

 

『最近この沼津にある廃校寸前の高校にスクールアイドルが誕生した』そんなことを高校の友人から聞き八割方興味本意で沼津での夏祭りへ出向いたときそこで見たのだ。スクールアイドルAqoursの一員として笑顔満開で踊る幼馴染みの姿を。そしてそこで過去に抱えていたモヤの存在が記憶の奥底から蘇り、ついにその正体気づいたのだ。モヤの正体は「(幼馴染み)への恋心」だと。

 

 

「ほんとあの時はびっくりしたよ。高校の卒業式から帰ってきたら家の前に立って待ってていきなり『好きです!』って言うんだもん。……でも凄く嬉しかったんだよ?だってずっとその言葉を10年以上待ってたんだから」

 

 

 

 そう、曜が高校を卒業した日、自分はずっと抱えていてようやく気づいた自分の想いを素直に幼馴染みへとぶつけた。ただ一言、「好きです」と。

その言葉を聞いて彼女は初め、目を見開いて驚き、沈黙の時間が流れた。

「そりゃ突然来てそれはねぇよな」なんて心の中で毒づいていたその刹那、曜は突然自分に飛びつき、強く抱きしめると「ずっとその言葉を待ってたんだよ?」と言いながらと大粒の真珠のような涙を流してくれた。自分はそんな彼女の抱擁に応えると、「待たせてゴメンな」と今にも目から溢れ出そうな涙を寸前で堪えながらそう返答した。

かくして、その時から自分達の関係は「幼馴染み」から「恋人」へと変化したのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こちらがご注文頂いた炭火焼きハンバーグです。大変お熱いので気をつけてお召し上がりください」

 

暫時の刻思い出話に浸っていると注文の品がやってきた。彼女の大好物であるハンバーグ、熱々の鉄板に乗っており焼き目がしっかりとついているうえに、まだ「パチパチ」と肉の焼ける音がしているのが食欲を存分にそそられる。

 

「じゃあ、いただきまーす!……ん〜美味しい!匠も食べてみなよ!」

 

いつだったか、「美味しく食べる君が好き」だなんてコマーシャルがあったが今その意味がようやく理解できた気がする。美味しそうにハンバーグを頬張る彼女はとても幸せそうだ。10分もしないうちに鉄板にデカデカと乗っていた炭火焼きハンバーグはあっという間に消え去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「あわしまマリンパーク!!暫く来てなかったよ」

 

 腹ごしらえも済んだところで向かった先は本日のメインデートスポットともいえるあわしまマリンパークだ。

 

「ねぇねぇ、早く入ろうよ!」

 

キラキラと目を輝かせる彼女は子供の頃に戻ったかのように駆け出すと館内へと進んでいく。そんな彼女を微笑ましく思いながら自分も駆け足で後を追った。

 

「なんといってもイルカ、アシカさんは見ないとね!あ、あと遊歩トンネルにも行かないと!」

 

島に渡ると直ぐにアシカのショーの案内があったため早速アシカのいるステージへと向かった。流石クリスマスイブ、ということでショーの会場は何人いるのか?というぐらいに人で溢れかえっていた。

 

「わ〜凄い人だね…………あの……手、握ってもいいかな?」

 

 彼女からそんな風に聞かれてきっぱり「NO」と答える人間は果たしてこの地球上に存在するのだろうか?

自分は何も言わずにポケットに突っ込んでいた右手を出すと彼女の左手と絡ませた。

 

いきなり結ばれた手に驚きながらも彼女は強くその手を握り返してくれたのだった。

 

「……なんか懐かしいね。小さい頃もこんなふうに一緒に見たことあったよね」

 

 

手をつなぎながら見るアシカのショーは子供の頃を思い出しながらもお互い握る手の大きさに自分達の成長を感じたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「このトンネル!二人で一度来てみたかったんだぁ!」

 

 アシカのショーを見終わった後、彼女の手を引きながら向かったのは淡島遊歩トンネル。宇宙を表現したのか、はたまた内浦の海を表現にしたのか、トンネル全体には紺碧色の光のアーチがかかり、天井には星や、魚を形どった光が散りばめられていてこのトンネルを見るためにわざわざ県外から人が訪れるほどらしい。

 

「うわぁ……まるで光の世界にいるみたいだね。あ、この赤い光、ペンギンの形してるよ!この青色はイルカさん!それでこっちはさっき見たアシカさん!」

 

トンネルの天井に散りばめられた光のアートに嬉しそうに眺める姿はまるで子供のようで、新しい形を見つけるたびに指をさしてはヒマワリのような明るい笑顔を振りまく。自分は彼女のこんな底なしの笑顔が大好きだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「はぁ〜久しぶりに来れて楽しかった!展示されてた魚の種類が増えてたよね!?」

 

 

 時間が経つのは早いものだ。お昼すぎには入ったマリンパークから出てきてみれば太陽が西へと傾き、あたりは黄昏時といったところだろうか。

淡島を出ると自分は夕焼けの見える砂浜に彼女を連れてきた。

 

 

 

「なんか今日はあっという間だったね〜これからももっといろんなところに行きたいな」

 

そう言いながら彼女は砂浜にゴロンと寝転がった。それにつられて自分も隣に寝転ぶ。

 

「あ~寒い!やっぱり12月の海は寒いよ〜……今日は本当にありがとう。最高のクリスマスイブだった!」

 

そう話す彼女の表情はとても満足そうだ。

 

 ……渡すなら今かな?

 

おもむろに左のポケットに手を突っ込むと中から小さな箱を取り出し自分の横に寝転がる彼女の頭にポンッと乗せる。

 

「ん、これって…………わぁ!綺麗なアクセサリー!」

 

彼女が嬉しそうな声を上げながら箱に入っていたライトブルーの宝石が付いたネックレスを夕焼けの光にかざした。すると、彼女のイメージカラーである鮮やかな青色をした宝石は地平線に沈む太陽からの光を受けてキラキラと一等星のごとく煌めいた。

 

「こんなプレゼントまでくれて……大好きだよっ!」

 

そう言うと彼女は潤んだ瞳を伏せながら自分に強く抱きつく。まるで告白をしたあのときのようだ。

 

 

「自分も曜が大好きだぞ」

 

 

 

 

 

 

そう言って彼女の頭を撫でようとしたのだが……何故か声が出ない。ここで自分はあることに気がついた。

 

 

 

そういえば今日のデートの中で自分は言葉を発していない……?

 

 

 

そんなことを考えていると頭に響くように声が聞こえてきた。

 

「ーーみ!!おーーて!!」

 

だんだんと声は大きくなっていく。突然、瞼が重くなり始め、ゆっくりと視界がぼやけ始めた。

 

 

そして、自分はその流れに抗うことなく静かに目を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 目を覚ますとそこにはさっきまで見ていた嬉しそうな表情をする彼女……ではなく対照的な不機嫌な表情をする彼女の顔があった。

 

 

「今日はクリスマスイブだからデートしようって約束したのに……!約束の時間になっても来ないから家に来てみたらニヤニヤしながら寝てるし……もう知らない!」

 

そう言うと彼女はそっぽを向いてしまう。この一連の流れを見てようやく「あれは夢だった」のだと気づいた。

 

「ごめんな曜!今すぐ準備するから待っててくれ!!」

 

そう言いながらベッドから飛び起きると自分はおもむろに彼女の頭を荒く撫でた。

 

「ひゃっ!?……もう、早くしてよ?それにしてもさっきどんな夢を見てたの?」

 

「えっ?うーん……幸せな夢だったぞ」

 

「何それ!?ねぇねぇ〜教えてよ〜!」

 

 

プクッと顔をふくらませる彼女を横目に笑みをこぼしながら急いで服装を整える。

今日は12月24日でクリスマスイブ、これまでの自分ならリア充に邪念を送っていただろうが今は違う。

何故なら僕には幼馴染みであり恋人の天使がいるのだから。

 

 

 

 

 

 

「よし、やっと準備できた!お待たせ。曜」

「うん、それじゃあ行こうよ匠。あわしまマリンパークに向かって全速前進ヨーソロー!」

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