ラブライブ!~合同企画短編集~【完結】   作:薮椿

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《薮椿より》
 本日は、うぉいどさんの企画小説です!


想いよひとつになれ(仮)

 ────それは唐突に起こった。

 

『記憶喪失ぅー!?』

 

 自己主張の激しい日光が窓際から燦々と照りけてくる、浦の星女学院のスクールアイドル部部室。その部屋から7人の少女のそれはそれは愉快な大声が飛び出してきた。この部室にはいま9人いるのだが、そのうち7人が叫んだのだ。一体全体、どうして彼女たちはこんな叫ばないといけないのだろう。それはある少女が原因だった。

 

「そう……千歌ちゃん、私たちのこと覚えてないって。今日が休みだったからいいけど……」

 

 ここにいる9人の少女たちはスクールアイドルAqoursとして活動している。その中のリーダー格である高海千歌が記憶喪失になってしまっていた。

 

「記憶喪失……らしいんですけど、私……千歌って名前しか思い出せなくて……」

 

「そ、そんな……」

 

 メンバーの一人、桜内梨子が悲痛な叫びをあげる。親しい友人が記憶喪失なのだ。それはショックを受けた顔をしていた。千歌が記憶喪失であることを1番に知った渡辺曜はその場から一時動けなかったほどだった。

 

「でも、記憶喪失なんて……」

 

「oh......なんてことなの……」

 

「ど、どうすればいいんですの……?」

 

「ちちちちちち千歌ちゃんが記憶喪失うううううう!?!?!? どどどどどどうしたら……」

 

「ルビィちゃん、落ち着くずら。本でも記憶喪失ものは読んだことあるけど、流石に対処法は……」

 

 松浦果南、小原鞠莉、黒澤ダイヤ、黒澤ルビィ、国木田花丸は各々がショックを受けたような悲痛な表情を浮かべていた。しかし、こいつは違った。

 

「記憶喪失……ッ! それは気分が昂る響きね!」

 

 そう、津島善子だけが、この状況を楽しんでるようだった。

 

「善子ちゃん、ここはそんな展開じゃないずら」

 

「いーや、ずら丸、それは違うわね。これはチャンスよ!」

 

『チャンス?』

 

 善子と千歌を除く7人が頭の上にはてなを浮かべた。こんな大変な状況で楽しむ要素がどこにあるのだろうかと。

 

「今の千歌は記憶喪失……。即ちそれは、千歌に自分が都合のいいことを吹き込ませることが可能なのよ!」

 

『……!!!』

 

 さて、この善子の一言で、一体何人が反応しただろうか。少なくとも2人は反応した。それは誰もが予想しなかった結果。しかし、マンガなどをよく読む善子は違った。善子は考えた。この事実を有効活用し、自らの”リトルデーモン”を増やすのだと。

 

「そ、それはいけませんわ! 記憶が戻ったあとの千歌さんにどんな影響が……それに、こんな状況でそんなギャグみたいなもの……許されませんわ!」

 

「この小説がシリアスになるわけないじゃない!!!」

 

 とんでもないメタ発言をぶっ込んでくる奴である。

 

「そ、それはそうですけど……」

 

 真面目の化けの皮被ってるだけだったよこいつは。

 

「そうでしょう! だからね、こうするの……。千歌……貴女は私のリトルデーモォン……」

 

「り、りとる? でーもん?」

 

 怪しげな手の動きをしながら千歌に語りかける善子。記憶が無くなりより純粋となった千歌はそれを信じようとするものの、先程の会話により疑心暗鬼になり始めてる。

 

「それで、私を騙そうとでも……?」

 

「そ、そんなこと……ない……。ご、ごめんなさい」

 

 善子は千歌の目がマジだったので速攻で謝った。めちゃくちゃ怖かったらしい。

 

「いやぁ、分かればいいんですよ」

 

 だが、そんな目から一変、千歌は無邪気な笑顔を浮かべながら微笑んで、善子の行いを許した。もう、千歌を怒らせまいとそっと誓う善子だった。それと同時にAqoursのメンバーは千歌になにか吹き込むのはやめようと、そっと暗黙の了解を得たのだった。

 

「でも、本当にどうする? 千歌ちゃんこのままなの、ルビィ嫌だよ……」

 

「でも、おらでもこれは流石に治せないずらよ……」

 

 ルビィと花丸がしょぼんとしたように落ち込む。それにつられて部室の空気がどんよりと重くなってきた時、それは訪れた。

 

「千歌ちゃん」

 

 そっと千歌の隣に立つのは梨子だ。梨子はすぅと息を吐くとそのまま相手の頭に直接語りかけるような美しい声色で千歌に話しかけた。

 

 

 

 

 

 

 

「千歌ちゃん、実は私と貴女は恋人同士なのよ」

 

 

 

 

 

 

『はぁ!?!?』

 

 今度は部室全体が騒がしくなった。それはそうだ。先程善子の1件で嘘を吹き込むというのはまずいだろうと全員で暗黙の了解を取り決めたばかりだった。しかし、こいつには無意味だった。何故か。そんな暗黙の了解、見てもいないし感じてもいないのだこいつは。桜内梨子は止まらない。

 

「え、でも桜内さんは女の子……ん?」

 

「ここでは女の子同士でお付き合いをするのが当たり前なのよ」

 

 何言ってんだこいつという目で見つめるAqoursのメンツ。もはや止められないと悟った面々は静観することにした。誤解は後からとけばいいや、と。しかし、それが悪手となった。

 

「そこにいる黒澤姉妹だって、そういうお付き合いしてる訳だし」

 

「「んん!?」」

 

 突然の爆弾投下。もはやここまで来るとミサイル飛ばしたようなものだろうか。

 

「え……? ルビィ……さんと、ダイヤ……さんって姉妹……え、だって姉妹……?」

 

「姉妹だってそういうお付き合いをするのが、ここ内浦よ」

 

「梨子ちゃん今年の4月に来たばかりだよね!?」

 

 千歌は困惑し、梨子がボケ、曜がつっこむ。偶然ながら千歌の記憶が消える前の状況だ。まぁ、そんな事、この場ではお茶を濁すことすら出来ない訳だが。

 

「ま、待って! ルビィとお姉ちゃんが!?」

 

「り、梨子さん! 貴女なんて事を! 違いますからね、千歌さん! ここでも普通に男女のお付き合いをですね……!」

 

 ルビィが困惑しているため、ダイヤが必死に宥めようとする。しかし、現実は非情だった。

 

「え、ダイヤさんは男の人とお付き合いを?」

 

「は!?」

 

 ここに来て千歌の天然スキルが発動したのだ。記憶を失っても尚その天然さは健在である。

 

「ダイヤ……いつの間に……」

 

「Amazing! 驚きだわ!」

 

「ち、違いますわよ! というか、貴女たちそこに食いつきますの!?」

 

 幼なじみの成長にうるっと来ていた果南と鞠莉にツッコミを入れたダイヤは、はぁ……とため息をついた。どうやら怒涛の展開すぎて疲れてしまったらしい。

 

「そっか、私の周りってこんな変な……うっ、頭が……」

 

「え、なにか思い出したの!? 千歌ちゃん!」

 

「正直、これで思い出されても私たち複雑なんだけどね!?」

 

 千歌は頭を抑え、頭痛を訴え始める。それを見た梨子は記憶が戻るのでは? と期待している。だが、それ以外のAqoursメンバー(主に黒澤姉妹)はかなり複雑な表情をしている。それはそうだろう、梨子に場を掻き乱されたまま話が進もうとしているのだ。収集のつけようがない。

 

「思い……出した……」

 

 なんかアニメの主人公みたいなものすごく真剣な表情でAqoursメンバーを見つめる千歌。

 

「なにか思い出したずらか?」

 

「は、はい。一部ですが思い出しました」

 

「い、一体どんな記憶よ」

 

 花丸と善子は千歌からのなれない敬語にたじろぎながらもどんなことを思い出したのかを促す。

 

「なんか、超高校級って……」

 

「それ違うやつ!?」

 

 これ以上はいけない。メタ的なやつでダメです。

 

「……じゃなくて。えっとぉ……桜内さんの部屋のうすいほ」

 

「ものは叩けば治ると言うわよね!!!」

 

 何かを言おうとした千歌の頭にチョップをかました梨子。乙女の秘密のためなら犠牲は問わないのだ。千歌は犠牲になったのだ。犠牲の犠牲にな。

 

「ちょ、梨子さん!?」

 

「WOW! It’schop?」

 

「結構いい角度入ったねぇ」

 

「冷静に解説してる場合じゃないよね果南ちゃん!?」

 

「あわわわ、千歌さん大丈夫!?」

 

「本性現したずらね」

 

「リリー……貴女……」

 

 各々が個性的な反応を見せる。善子は若干引いてるみたいだ。

 

「ち、違うのよ! 千歌ちゃんに他の手段で思い出させる方法もあったんだけど、咄嗟にできるのがこれだっただけなのよ! 他にも考えてたのよ! ほ、ほら! μ'sの映像見せるとか!」

 

 梨子はとても焦った様子で弁明を図ろうとしている。だが、最後の発言自体はとてもいい発言をしていた。

 

「それですわ! μ'sのファンの千歌さんならμ'sの映像を流すだけ……いや、高坂穂乃果さんの写真を見せるだけで1発ですわよ!」

 

 ダイヤは非常に興奮した様子で話していた。早速千歌に見せようということになり、部室のパソコンを使用し、映像を流すことにした。曲は『ユメノトビラ』だ。千歌が大好きな曲のひとつだったりする。

 

「ほのかさん……? これは……思い……記憶が……記憶が……」

 

『記憶が!?』

 

 8人全員が身を乗り出して聞く。

 

「出てこない!」

 

『ズコー!』

 

 素晴らしい流れだった。もはや新喜劇やった方がいいのではないかと思うくらいな、綺麗な流れだった。それはまるで優雅に煌めきを放ちながら流れ、そして光り輝きながら流れ落ちるナイアガラの滝のようだった。いや意味わからん。

 

「私は……なんなの? どこから来たの?」

 

「ずっと遠くからだよ」

 

「答えてるようで答えてないよね? 梨子ちゃん?」

 

「それじゃSKY Journeyずら」

 

「すかーい」

 

「歌うんですか鞠莉さん!?」

 

 なんて言う茶番を繰り広げていた彼女達。そんな時、1人の来客が訪れる。その人物は大きい袋を持って現れていた。リボンの色から察するに2年生だろう。曜達とも面識があるみたいだったのでクラスメイトでは無いかと彼女たちは察する。

 

「千歌ちゃんここにいた! 探したんだよ……」

 

「どうしたのなっちゃん?」

 

「あ、曜ちゃん。実はね、貰い物でみかんが大量に余ったから千歌ちゃんに渡そうと思ってね。はい、千歌ちゃん」

 

「みかんだー! ありがとう! なっちゃん!」

 

「うん、千歌ちゃん達も練習頑張ってね! それじゃ!」

 

「ばいばーい!」

 

 袋いっぱいのみかんを千歌に渡すとそのまま彼女は帰っていった。

 

「さて、千歌ちゃんの記憶を戻すにはどうすればいいか……もう1回初めから……」

 

「私の記憶がどうしたの?」

 

「うん、千歌ちゃんの記憶がね……。んん?」

 

 曜が千歌の記憶を戻すためどうするかと悩んでいると、先程貰ったみかんを頬張りながら記憶について聞いてくる千歌がいた。

 

「千歌……さん? 記憶は……?」

 

「へ? 記憶? あー、そう言えばなんか昨日の夜にみかん食べようとして足滑らせたところから記憶ないなぁ。それがどうかしたの?」

 

 おそらくこの時、Aqoursのメンバーの思ったことはひとつだろう。彼女達の想いはひとつになった。それは彼女達の言葉となって放たれる。

 

『なんじゃそりゃ!!!』

 

 騒がしくも平和な日常は続いていく。

 

 ……これでいいのか。

 

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