ラブライブ!~合同企画短編集~【完結】   作:薮椿

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《薮椿より》
 本日は、原作『ラブライブ!』にて『ラブライブ!with:bizarre adventure』を投稿している、苗根杏さんの企画小説です!

《苗根杏さんより》
 どうしてこうなってしまったのでしょうか。
ジョジョのクロスオーバーでも書いてやろうと思っていたのですが、多分アウトなので思い切りSFにしました。
場面転換ややこしかったりするのは演出です。…が多いのは最近のラノベっぽくしたかったからです。ジョジョネタ結局入っちゃってるのは愛です。つまりはそういうことです。
あ、そういえばAqours4thライブ1日目行ってきました。みら僕とかNo.10でマジ泣きしちゃったし、ペンラ振りすぎて筋肉痛だし、東京の空気汚すぎなのにドームすごい綺麗でした。


レディオ・ガ・ガ

 

 

 

「ラグとは、起こるべくして起こるものなんだよ」

「………千歌、ちゃん。出逢えたんだよ、私達」

 

遠い残響は、18人で聴いたものなのか、私だけのものなのかは、今もわからない。

 

2人の穂乃果さんは、引き離されるように消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『富士河口湖町』。

 

遠くで観覧車の光が、田舎の街と湖を照らす。森の中にある『それ』は、対照的に、光一つ差さない場所。異世界のような、あの世のような、少なくとも千代田区とはかけ離れた場所であった。

 

「着いたみたいね。ほら皆起きなさい」

「……ん?寝てらいろぉ?」

「いや呂律…」

「ここが、ガリバーランド?」

「元、ね。今は一応、誰のものでもないみたいよ?」

「空き地みたいなモンやね」

 

来た理由、この9人で、というのもあるが、何故この山梨県のクソ田舎に来たかといえば、もともと。そもそも。『元凶』とも言えるのは、矢澤にこが『自動車の普通免許』を取ったことからだった。

 

カードを堂々と見せて無い胸を張り、自慢話をするにこへ、それに半ば張り合うように真姫がどこかへ皆を連れて行けと言い、私が面白いところを見つけたとガリバーランドの写真を見せ、そこから全員がノリと勢いで『キモ試し』の送迎をお願いすることに。

 

ガリバーランド。とは、ガリバー旅行記という物語をテーマにした、遊園地のことだ。もっともいまは廃遊園地だが。

 

仕舞いには心霊スポット行きたくない組に行きたい組が土下座をする珍事になった。

 

「レンタカー代は割り勘ね」

「分かってるよ、そういう所しっかりしてるもんね」

「どういう意味よ!ったく」

「え?節約家って意味じゃないの?」

「……ほんと、えりちって天然やな」

「んー…?」

 

ポンコツは、決して自分では気付かない。

 

「何かを乗り越えることで、また強くなれるのです…」

「んみちゃー?」

「いぎーっ!?」

「なんで犬の名前?」

「も、もともと私は乗り気ではないのに…何故…」

「押されると弱いよね〜」

 

海未、ことり、花陽、真姫は行かない組だったが、それぞれ『押されると弱かった』『周りに合わせてしまった』『強く断りきれなかった』『自分から連れて行けと言った手前断るのは格好が悪かった』と、結局行くハメになってしまった。

 

そんなこんなで、心霊スポット『ガリバーランド』行きは30分で決まった。

 

「全くもうだよ全くもう!凛ちゃん、手繋いでてね!」

「えへへ、かよちん大胆にゃ〜♪」

「んひぃっ!?せ、背中ぁ!」

「ちょっと希!押さないでよ!」

「えへへ、擽ったいよ海未ちゃん…」

「あ、あんたらいい加減に…わぁっ!?」

 

なんだかんだそれぞれがはしゃぎ合いながら入っていく中、私だけは、入口の前で立ち尽くしていた。『恐怖』、という感情からのものではない。ここまで来ておもちゃ屋で駄々をこねる子供のようなことはしない。

 

『違和感を、感じていた』のだ。

 

誰も『会話をしていない』ということに。

 

そもそも、元に戻って話題を見てみるという意味で、『会話』というものを思い出してみよう。互いの言うことを聞き合い、それに応答する。それが、『会話』なのだ。しかし違う。

 

────皆は、誰と話してるの?

 

前で8人が、何者かと……接触している。今、私───高坂穂乃果の背中を押している者と、同類なのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「起きてください!!」

 

よく漫画なんかである、フェードインするような声ではなかった。同時に、それは聞き覚えもない声だった。

 

砂地に倒れていたようで、慌てて起き上がる。服に砂がつく、というくだらない心配──たった今、意識が覚醒したばかりであろうと、矢澤にこからすれば一大事なのだろうが──ではなく、ここが何処なのか、今はいつなのかと確認するためだ。

 

入った…ガリバーランドの門をくぐった所までは覚えている。そう、この何者かも分からない声と、遊園地の入口になかった砂地、そして寝ぼけ眼を刺激するこの光。それを確かめるためだ。

 

「ずら丸、ルビィ、この人…」

「………だよね……今はおちおち喜んじゃあいられないみたいだけど……」

「ずら。『矢澤にこ』さん、『絢瀬絵里』さん、『東條希』さん。ずら」

「!?」

 

ふと会話の聞こえる方……自分達の名前を呼ぶ方へと振り向くと、一面、海。砂地というのは、浜辺だったらしい。低血圧特有の気だるい身体を叩き起こすと、3人の…年下か同い年くらいだろうか、女子高生がいた。

 

一人は、深紅の髪を2つに結い、気弱そうに手を胸の前で縮こませている。エメラルドのような目は、確かに起き上がったにこ、矢澤にこを見ていた。

 

一人は、浜辺に何かを書いている、正確には彫っているに近い?ようだった。右上にシニヨンを作っている。ギラリギラリと目を輝かせ、真剣に。

 

一人は、その横で呆れるように頭を抱えていた。ベージュ、カーキにも似た髪が豊かに流れ、穏やかな眉を顰めている。

 

視点を180度後ろに向けてやると、希と絵里が並ぶように倒れて……いや、その穏やかな寝顔は、三徹明けとも日曜日の昼寝とも似つかない、とても落ち着いたものであった。

 

「後ろの2人も起きるずら!」

「…あ、あの。にこさん、で合ってますか?」

「そうよ?私はあんた達を見た覚えなんてないけど。自慢じゃあないけど、記憶力には自信があるの」

「………………………………」

 

まあ?にこにーに見蕩れるのも無理はないしぃ?今色紙とマッキーを持っていないのを死ぬ程後悔するっていうのも仕方ないと思うけどぉぉ?

 

と言っている間にも、矢澤にこは、この場の『異常性』を感じていた。『そんなわけがない』と。そう、そもそもの話だ。私達はここにいる訳が無いのだ。

 

何故倒れた?ここまでどうやって来た?ここは何処だ?

 

「にこさん」

「…まあにこさんって呼ぶのはいいけど、あんた達の名前も教えてくれない?ちょっと不公平な気がするわ」

「堕天使ヨハネ。天界出身なのだけれど、薄幸の効か、堕天してしまったの」

「うえぇっ、く、くろ…黒澤、るるるらゆるゆら、りゅびぃでしゅっ」

「国木田花丸ずら。こっちは津島善子ちゃん「善子ゆーな!」。で、こっちは黒澤ルビィちゃんずら」

「……ここは異世界なのかしら?」

 

当然の疑問である。

 

「違うわよ!ここは静岡県沼津市の淡島!…の、ハズなんだけど……」

「静岡県ァ?私達がいたのは『山梨県』よ?」

「そうなんですよ!!」

「え、なに?ルビィ達も?」

「はい、オラ…じゃあなくって、マル達、山梨県の『ガリバーランド』って所に…」

 

分かったことの数だけ謎が増えていく一方だ。突如、後ろから何かが、何者が……2人、のっそりと起きてくる。

 

希と絵里だ。

 

「ねえにこ!ここ何処なの!?」

「うちら、ガリバーランド入ったはずよな?なしてこんな海辺におるん?」

「それが………この子達も、そこへ行ったらしいの」

「…………………?」

「そりゃ、まあ。そうなるわよね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「鞠莉さん!鞠莉さんッ!」

「目覚まして、鞠莉!大変なの!」

「…オーゥ……知らない天井……ってええッ!?ベリベリシャイニー!?」

 

太陽が真上にある。

 

私、小原鞠莉が車を出してガリバーランドについた頃は、もう『夜の』10時頃になっていた。

 

フルーツ公園の夜景と天体観測を楽しむついでに、心霊スポットにでも寄ってみよう、ということで…私達は、『Aqours』は、『ガリバーランド』に来ていたはず。

 

今、私が寝ていた───というか、おそらく倒れていた場所は、岬とでも言ったところか。昔、漁師が見た話によると、自殺しかけた女を岬の尖った岩がやさしく跳ね返したところから、たまに漁師が大漁、安全の祈願に来る。

 

「それもそうですが……ここ、『淡島』でしたよね?」

「あ、当たり前じゃん…十何年も見てきた海を、忘れる筈が……って言いたいとこだけど、さっきまで…私達…」

「………で、何故あそこに『星空凛』『小泉花陽』『西木野真姫』がいるんですの?」

 

それもそうだ。『いる』、というのは、別にそこらで女子会でも開いている訳じゃあなさそうで、そこに3人が並んで『横たわっている』。

 

いくつも突っ込みたいところはあるのだが、まず、だ。

 

この人達は、間違いなく…『高校1年生だろう』。

 

何を隠そう、私だってμ'sのファンだ。ダイヤまで行かずとも、だが。しかしおかしい。制服姿だし、1年生のリボンをしているのだ。見た目も当時と変わっていない。少しは化粧していても何も問題なさそうなのだが。

 

「どうなっているの?」

「………起こしましょう」

「そ、そうね。放っておくわけにもいかなさそうだし」

「あ、ああっよく考えたら触れるのすら恐れ多いですわ……握手券持ってないのに……」

「いや言ってる場合か!」

 

互いが『会話』をしながら…そう、ガリバーランドに足を踏み入れる直前までのように、会話をしながら3人をゆすってみる。

 

「起きて!こんなとこで寝てたら風邪ひきますよ!」

「あ、細い…うわ、音ノ木坂の制服ってこんな…じゃあなくって!起きなくてはぶっぶー!ですわよ!」

「Hey!朝よ!ホテルオハラのモーニングコール、出張版デース!」

「……んにゃあっ」

「ふぁぁ…」

「…………………」

 

それぞれが薄く目を開け、同時に太陽の眩しさに目を瞑り、またゆっくり瞼をあけてゆく。

 

「…昼!?」

「どうして!?って、ここ何処よ!」

「み、みんなが居ないにゃー!」

「にこ、希、絵里!返事してよ!」

「穂乃果ちゃん!海未ちゃん!ことりちゃーん!…うぇぇ、イミワカンナイにゃ!」

「ちょ、それあたしの…」

「だれか助けてェェ─────ッ」

 

思い思いの混乱と助けの声を出す、かつて女神と呼ばれた───はずの女神が、何故。当時のまま。

 

君にも、考えてもみてほしいのだ。

 

不思議だとは、思わないか?

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわー!う、うっわ!うあー!!」

「ひええ〜……はぁ〜………」

「………海未ちゃん?」

「私に振らないでください。解る筈ないでしょう、この状況」

「そ、そうだよね、ごめん…」

「謝る必要はないのですが、とりあえず事情を聞きましょう。すいません、2人とも」

「んひ〜っ…は、はい、なんでしょうっ」

「我に帰りましたか。ここは…何処ですか?」

「あ、淡島であります。はいっ」

「貴方達は?」

「私達、スクールアイドルの『Aqours』です!私が渡辺曜で、こっちは桜内梨子ちゃんであります!…でも、今は私達2人しかいないみたいで」

「本当は9人、なんだよね……」

「奇遇ですね。私達も………そして、その9人のうち、7人がいないのも…」

「あ、そうですね。『希さん』も『絵里さん』も…」

「穂乃果ちゃん達、いないね……」

「……探しましょう」

「でもどうやって!」

「海未さん、ことりさん!」

「私達も行きます!人探しは多い方がいいですし、探しているものが余程大切なのは一緒です!」

「それに、この街のことは私たちが1番知っています!」

「…お願いします」

「じゃあ、さ。同盟組んだことだし…質問していい?」

「は、はい」

「君たちは…『何なの?』」

「はい………はい?」

「私達のこと、知ってるよね。名前呼んでたし、なんかテンション変だったし」

「それはスクールアイドルで…」

「まだ9人になったばかりですよ。夏休みの合宿を経て…ええ、まだ世間には公表していません。希と絵里の名前を知っているのは、おかしいです」

「そ、それも5年前…ッ!?」

「……5年前?」

「どういう事なのですか…?」

 

 

 

 

 

 

 

「「5年前……」にゃ?」

「にわかには信じられないわね。けど…」

「ほら、2018年!」

「私達の、『8年後』。ラブライブ1周年の『8年後』だね」

「凛……はたち超えてるにゃ!?今頃カクテルでも…」

「いや、今頃っていうか…」

「私達のいた淡島、『2015年なんだ』けど」

「はぁ!?」

 

互いの状況を確認し、μ'sの1年生と私達はますます混乱していた。

 

まず、μ'sの解散、第2回ラブライブ!が終わってから、5年後に結成されたのがAqours。正確には、先代、つまりダイヤと果南と私で結成したAqoursですら、2013年のこと。

 

次に、この淡島は…いや、この世界、この宇宙は『2018年』。μ'sがいたのは2010年、私達がいたのは2015年。どうやっても辻褄どころではなく、Aqoursですら、この淡島のことを全て知らないようだ。

 

妙にリアリティのある夢だな、などと現実逃避をしている場合ではなかった。

 

仲間が、いないのだ。

 

たとえ夢でも、それは………あってはならないのだ。

 

「とりあえず、仲間がいないのは私達も一緒」

「……あの子達──Aqoursのみんな──は、ここ…淡島にいるとは限らない」

「でも、いまは探してみるしかない」

「『同盟』でも組むつもり?」

「だね、一時」

「っし!そうと決まれば案内するよ!」

「堕天使ヨハネに任せなさーいッ!」

「この島の景色は千代田区にも劣りませーン♪」

「頑張って探すずら!」

「はぐれたらぶっぶー!ですわよ!」

「皆でがんばルビィ!」

「…………………およ?」

「あッ!」

「ああ!」

 

最初に声をあげたのは、ルビィとダイヤだった。

 

歩き始めた私達の前に、今まさに、私達と同時に歩き始めたような1年生と。Aqoursの1年生と、3年生が。μ'sの3年生がいた。

 

鉢合わせ、と言うには、偶然がすぎた。

 

「にこ!!」

「真姫ちゃんッ!」

「絵里ちゃん!」

「花陽…!」

「おっ?」

「ずら!?」

「希ちゃん!」

「凛ちゃん!?」

「あーっ!」

「オーゥ…!」

 

Aqours。μ's。双方の1年生、また3年生が集う。μ'sの方は互いに抱き合って喜び、Aqoursの方は本当に5年前の『彼女達』なのだと口を開けるばかり。

 

高坂穂乃果、園田海未、南ことりを除く、μ'sが。

 

高海千歌、渡辺曜、桜内梨子を除く、Aqoursが。

 

ここに集った。

 

「よかったね」

「ひゃんっ!?」

「ちょ、二次被害っ…うおあっ!」

 

耳元で囁かれた希は、珍しく裏声を出して前のめりになり、間一髪で掴まった絵里のスカートごと地面に突っ伏してしまう。

 

顔からどんどん身体が赤く、暑くなっていき、仕舞いには足が震えたまま希の頭を踏みつける。

 

「ご、ごめん絵里ち、ついうっかりぐふっ」

「…………………」

「透けてるにゃ」

「ひも…」

「ヒューッ」

「…ジーザス」

「み、見ないでェェェ──────ッ!!」

 

遠くからの足音により、絵里さんの『見えざる場所』から、奥の坂道へと。私達の視線は、ピントは、フォーカスは移った。そう、写ったのだ。

 

「ま、待ってください!」

「『真姫ちゃ〜ん!』こっちでいいんだよね!?」

「早い…追いつけないでありますッ……」

「あ、ああっ!?」

「海未ちゃん、ことりちゃん!」

「曜さん、梨子さん…」

「ね!着いてこれば、私達に会えるって!」

「……真姫ちゃん?」

 

渡辺曜、園田海未、南ことり、桜内梨子。そして、幼い……西木野真姫がいた。

 

「ヴェェ!?あ、あたし!?」

 

本人が一番驚いているようだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「穂乃果さん」

「なあに?千歌ちゃん」

「これさあ…」

「うん!」

「どうなってんの!?」

「わっかんないや!!」

 

私のことを穂乃果さん、などと呼ぶファンは、高海千歌ちゃん。私達、μ'sの影響でスクールアイドルを始めたらしい。

 

そして私達を囲んで、こぞって写真を撮影したり声をかけたりしている老若男女様々な人は、私と千歌ちゃんを『アニメの中のもの』だと思ってるらしい。馬鹿げてる、とは思う。けどね、ここまで大掛かりなドッキリは、ここ────山梨県が全協力でもしない限り、無理だと思う。

 

ふふん、冴えてるでしょ。なんて言ってる暇はないけど……。

 

「あ、時間がー!しつれーしまーす!」

「そ、そうだー!新幹線が来ちゃうのだー!」

「『新幹線なんて山梨には通らないけど?』」

「えッ」

「……にげろっ」

「ちょっ、待って穂乃果ちゃん!」

 

とりあえず、分かってることはみっつある。

 

ひとつ。

 

この子は、私と同い年だ。沼津?の、浦の星女学院ってとこの、高校2年生。

 

ふたつ。

 

私達は、アニメのキャラだ。『私達のμ's』も、『千歌ちゃん達のAqours』も、ラブライブ!という、プロジェクトの。

 

みっつ。

 

ここから逃げて、みんなと会わなければならない。

 

「東京!」

「え!?」

「東京、行くよ!」

「な、なんで!」

「なんとなく!皆、いるかもしれないし!」

「え!?じ、じゃあ私は淡島へ…?ん……!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これで、良かったんですか?」

「うん……待ってると思う」

「貴方は、あたしなのねッ…?!」

「そだよ!あたし、西木野真姫!」

 

私は驚きっぱなしだった。

 

この少女……西木野真姫は、私達の知っている、いや、私達の出会った西木野真姫とは、『すこし違う』。『すこし』、と言っても、『上と下』……という問題ではない。『右と左』、という問題だ。

 

『パラレルワールド』。

 

東京行きの機関車は、優しく、私達を揺らす。

 

「ああ、本当に私は夢じゃあない所にいるの…?」

「現実でもないけどねー。『夢と現実』のハザマ、そこが、ガリバーランド」

「じゃあさ、ちっちゃい真姫ちゃん「誰の『何』が小さいですってェ───ッ……」ち、違う違うッ!このロリロリしてる、パラレル真姫ちゃんのことだから!」

「フン、紛らわしい言い方しないでよね」

「アンタの早とちりよ!でね?その……『そっちの私達』って、どうなったの?」

「んー…死んじゃった」

「ひっ」

 

花陽さんが、小さく細い悲鳴をあげた。

 

私の体温がスっと下がるのが、青ざめてゆくのが分かった。この子は、『8歳の頃の姿に戻され』、『10年を1日にされた』。ガリバーランドに入ったのだ、パラレルのμ'sも。

 

μ'sは…………『この子と一緒にいたパラレルのμ's』は、『死んだ』。

 

何故とは。

 

何故か。

 

今にわかる。

 

「……ずら丸?さっきから寝てるの?うーんだのなんだの…」

 

口から垂れる涎をハンカチで吹いてやる。次の瞬間、私もまた、津島善子もまた、悲鳴を喉の奥から…腹の奥から叫ぶことになる。

 

私のヴィヴィアン・ウェストウッドの白いハンカチには、刺繍のように、くっきりと。赤い、紅い、明い『血』がついていた。

 

「…よ……し、こ……………ちゃ………」

「!!」

「花丸さん!?」

「花丸ちゃんッ!!」

「ぐあっ」

「ワッザ!?」

「にゃあっ…!」

 

何が……起きている?

 

この場で起こっていること自体は、その状況は、理解できた。ラメ入りの黒いスライムみたいな、また天を、空を、宇宙をふさぐ雲みたいな、そんな…車内だった。

 

触手?ケムリ?それとも、人?分からない。

 

とにかく、ここから出る方法とは、ふたつある。

 

「があっ……!」

「こ、この…ッ!」

「……………」

 

こいつに、『フラッシュ』に殺されるか。それとも…。

 

『それとも……フラッシュを……』

『…クーックック!このヨハネにかかればッ!』

『やめるずら』

「……だ、てん、し…」

 

小さな真姫さんが、もっと小さく、呟いた。

 

「ウォォォォォオオオオオオオオオオッ!!」

「……!?……………!」

 

無言の叫びが、聞こえた気がした。私の手から出た、『黒炎』に反応するように。

 

肩甲骨と膝に力を入れ、腹の底から。さっきの悲鳴とは違う、雄叫びのようなものをあげる。呪文なんて洒落たものはないのかと、少しだけ幻滅してしまった。

 

しかし、良いのだ。

 

ずら丸が、いや、ずら丸を、助けられた。

 

「うっそーん……」

「お姉ちゃん、ほんとに堕天使だ…!」

「よよよ、よく分かんないけど、このヨハネにまっかせなさいッ!」

 

ぶちかますッ。

 

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ」

「ッ………!?」

「ま、魔法……!」

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラアラオラオラオラオラオラオラオラ」

「み……み!みみっ!」

「オラァ────────ッ!!」

「未来じゅらぁぁぁ〜〜〜〜〜〜ッ!?」

 

もうひとつの、ここから、パラレルから出る方法。みんなと元の世界に戻る方法。みんなが、笑顔になれる方法は。

 

津島善子に、戻れる方法とは。

 

『フラッシュ』を倒し、思い出の場所に行くことだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こ、コスプレ…かあ……ちょっと楽しそうかも…」

「言ってる場合じゃあないですよ!」

「う、うん、逃げなきゃってことは分かってるけどさぁ……!」

「「多すぎるでしょおおおおおおおお!?」」

 

もうダメかもしれない。

 

ラブライブのファンこと、『ラブライバー』という存在があるらしく、私達から言わせればラブライブだけを好きになるのは不自然なのだが、ラブライブ……というのは、『作品名らしい』。

 

フィクションになっているのだ。

 

『私達の物語』と、『千歌ちゃん達の物語』が。

 

Aqours、とは、私……高坂穂乃果が一応リーダーとなっているμ's解散。つまり第2回ラブライブの5年後。いや、あのアキバライブの5年後、浦の星女学院を廃校から救うため、スクールアイドルで入学志望者を集めるために結成…私達の真似事などと千歌ちゃんは言っているが、こっちからすれば恥ずかしくてそれどころではない。

 

音ノ木坂、そしてμ'sが5年後も伝説として語り継がれていること。それから、スクールアイドルが増え続けていること。本気で私達を尊敬して、ラブライブで優勝しようと燃えている子がいること。

 

そしてこれがアニメになった時、こんなにも熱狂的ファンが増えていること。偶然逃げてきたココリのアニメイトに入った時なんて、もう恥ずかしさで倒れそうだった。

 

「今何時!?ここどこですか!?」

「し、し……しおやま?あ、えんざん!」

「アキバまであと何キロ!?」

「…………ひゃくじゅうななきろぉぉぉぉ!!」

「うわぁぁぁぁぁぁ?!丸1日だぁぁぁぁ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何時間、経った?」

「分かんない……」

「………1日くらい、ずら」

「うっそお!?」

「イッツトゥルー。23時間は確実に過ぎてるわ」

「にっこにっこにー☆」

「るっびるっびるー♡」

「やっとる場合かァ─────ッ!仲良しか!そこのツインテ2人組!」

「テンションで乗り切る術は長く続かないわよ……医者の娘が言うのよ、信じて頂戴」

「まっきまっきまー♪」

「はっ倒すわよ!?」

 

危険を感じて機関車の中から一旦降りたはいいものの、そこから歩き続け、フラッシュを薙ぎ払いながら───ほかのメンバーも、あたしと同じく魔法が使えないので、鉄パイプなり使って───切り抜けてきた。

 

ヨハネの半自動的な治癒魔法にも助けられ、どうにかアキバまで来られた。

 

「もう、千代田区……だよ……」

「ここからアキバドームに行けば!」

「うん、皆に会える…はず」

「よし!絶対ここから脱出するわよ!皆一緒に!」

 

自分でも、周りの皆と『やってしまった』と叫びたくなった。全員、頭を抱えるなりホリーシットと嘆くなり、思い思いの表情を浮かべる。ヨハネはもう、魔法を打つ構えに入っている。

 

背後に、気配。

 

「にっ……こ、にっこ……………にー☆…」

「………!??」

 

突如、無言の爆発。

 

破裂音も、悲鳴も、聞こえない。誰の耳も汚さないような、爆発だった。

 

「え"っ」

「わ、私…打ってない、んだけど…?」

「ほんと……どーなってんの……」

 

驚く暇もなく、ヤツらが次々に仲間の屍を吸い込んで襲ってくる。

 

「ギャー!?な、何回見ても苦手なのぉぉ!!」

「あっち行きなさい!しっしっ!」

「タロットの残弾、あと1ケースや…一気に決めるで!」

「背中は預けたよ、ルビィちゃん!」

「凛さん、任せてください!」

「エリーチカさん…行きますわよ」

「ふふん、言われなくてもっ」

 

いざ。

 

「あばだけだぶらー!!」

「いや空気読んでよ善子ちゃん!?」

「ヨハネよ!さ、さっさと行きましょ!」

「うわわっ、ちょ、早いよぉ!」

 

私とて、黙っている訳にはいかない。私の決めゼリフこと落とし文句こと宇宙一スクールアイドルの呪文は、この可愛い可愛いピンクの唇からしか発せられないのだから。

 

「にっこにっこにー☆」

 

爆風しか来ない、マゼンタの爆発。一撃必殺にして残弾無限。

 

「見えてきたよ、ドーム!」

「よし、全力ダーッシュ!!」

「いけー!おせー!」

「突っ走りますわよ!」

 

長い間、連れ添った街。

 

Aqoursにとっては、遠い、そして、憧れの舞台なのだろう。

 

「思い出だ!!」

「これが、私達の!」

「輝きだぁぁぁ!!」

 

不可抗力だった。

 

意識がふっと遠のいた。

 

倒れた……いや、地面に伏す直前。フラッシュは何かを、何と言っていたかは聞こえなかった。思い出の中のμ'sと、台詞が重なっていたからだ。

 

「………………」

 

吸い込まれてゆく。

 

突如として意識の消えた、ガリバーランド入りとは別に、少しずつ。

 

「………………」

「……μ's?」

「Aqours………」

「わすれない…」

「…うん、忘れないよ………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「久しぶり……真姫ちゃん」

「穂乃果…シンガーでもやってるの?」

「まあね。ニューヨークで路上ライブ?ってかんじ」

「相変わらず歌が好きなのね」

「真姫ちゃんもね!」

「……さて、そろそろ『私達のμ's』も戻ってくるわ」

「『こっち』は?」

「もうじき起きるでしょう」

「そっかー。もー、感謝してよね?私と千歌ちゃん。私がいなかったら死んじゃってたし」

「私も疲れちゃったわ……けど」

「また、来たみたいだね」

 

「彼方ちゃん、ここでいいの?」

「ん〜。たぶんー?」

「しっかりしてくださいよ!」

「しずくちゃんは元気いいねえ。なんかいい事あった?」

 

「さて」

「皆で行きますかー!」

「ふふ」

「えへへ」

 

 

 

 

 




《苗根杏さんより》
 改めまして、ジョジョ好きなラブライバー挿絵描き小説屋さんこと苗根杏です。他にもいろいろ肩書きはありますがキリがないのでやめます。本文より多くなっちゃう。
さあ、UA8000や3000ごときの私がこんなとこにいていいのかと乗るバス間違えた感ある私ですが、普段はこんな改行なんてしないしSFなんて初めてなので、なんかぎこちないです。
満足していただけたでしょうか。
ここでは『それは何より』と、感謝とも皮肉ともとれる言葉しかかけられませんが、この企画の数多くある作品のひとつになれた事だけで嬉しいです。あまり長くても蛇足ですし、ここらでバイバイしましょ。ちゃおー。
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