ラブライブ!~合同企画短編集~【完結】   作:薮椿

7 / 32
《薮椿より》
 本日は、原作『ラブライブ!』にて『ラブライブ!~奇跡と軌跡の物語~』を投稿している、たーぼさんの企画小説です!

《たーぼさんより》
どうも、初めましての方は初めまして、自分の作品から興味を持って来て下さった方はいつもありがとうございます。
たーぼです。

企画小説楽しんでいただいていますでしょうか。
自分も結構楽しんでます。何たって久しぶりの企画小説なんですから!
おそらく過去最大規模の参加人数となった今回の企画。12月に入ってからの一発目は自分です。平成最後の12月の始まりを貰ったので満足できるような物語を提供できればなと。


今回はいつもの自分の作品で書いてきたものとは少し違って新しい試みをしてみましたので、お楽しみください。
では、どうぞ。


一度きりの言葉

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あの日、あの時、あの場所で。

 

 

 

 

 

 

 

 

 君と出会わなかったらどうなっていたんだろう。

 そのまま何もなく無意味な時間を過ごしていたのかな。それとも違う人と運命的に出会って、もしかしたら恋に落ちて一緒になっていたのかもしれない。

 

 ……なんて、それこそ無意味なことを考えてしまうのは昔からの僕の悪い癖かな。

 それでも、それでもなんだ。無意味でも何でもない。僕の人生においてもっとも大きな意味を持つものが一つだけあるんだ。

 

 やっぱり僕はどう足掻いても、君と初めて出会った場所に君が現れなかったとしても、その次に偶然違う場所で君に出会えたんだとしたらさ。

 

 

 

 

 

 

 その時、僕は必ず君に恋をしていたよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 君と初めて出会った時、その頃はまだ恋というものを知らなくて何も分かっていなかった僕だったけど、今でも覚えてるよ。

 

 誰もが見惚れてしまうような明るくて艶やかな金色の髪のポニーテール。吸い込まれそうになるほど透き通った蒼い瞳。日本人離れしたプロポーション……って言うとちょっと変な意味に聞こえちゃうけど、それも含めて君は誰から見ても魅力的だった。

 

 何の変哲もないカフェ。

 大学の近くにある店でそれこそ社会人や高校生、大学生が多くて僕もよくそこへ通っていた。

 

 時には友人と、時には一人でも行くくらいにはそこでコーヒーの一つでも頼んで勉強や店で読む必要のない本を読んでいた記憶がある。

 確かその時は僕は一人だった。そこに友人がいたら絶対からかわれてたに違いないからね。

 

 今でもはっきり覚えてるよ。当然さ、忘れるなんて到底できやしない。君と出会ったのはあれが初めてなんだから。

 偶然。本当に偶然。君があの店に初めて来て、トレイに乗せたアイスコーヒーを何もない床に躓いて盛大に僕の服にぶちまけたこと。

 

 あんなインパクトのある出会いなんて当たり前だけど僕も初めてだったよ。初対面で君が何度も頭を下げながら謝るもんだから周囲の視線も痛かったなあ。

 こんなにも綺麗な人が案外ドジだったもんだからそりゃあ笑って許しちゃうよね。見た目がいかにもクール系だったからギャップも感じたし。人を見かけで判断しちゃいけないって思い知らされたよ。

 

 それがきっかけで同じ大学に行ってることが分かって、話す機会も自然と増えていったね。

 連絡先も交換して、僕と君の友達も交えて交流もどんどん深めていった。君が高校生の頃にスクールアイドルをやってたことも聞いた。

 

 そんな日々をいくつも繰り返してきたある日、僕は気付いたんだ。

 いつも君といるとき、自分でも気付かないうちに君の顔ばかり見ていた。優しく包んでくれそうな笑顔に、こんな僕の話を笑って聞いてくれる君にいつしか惹かれて。

 

 

 どうしようもないほど君に恋をしたんだよ。

 

 

 ……だけど、現実なんてそう簡単に上手くいかないことのほうが多い。僕はまず自分自身に自信を持つことができなかった。

 頭も良くて誰が見ても振り向くような美しい君と、成績も見た目も人並みかそれ以下でしかない僕。

 

 他人より秀でているものなんて何もなかった。

 自慢できるような成果も誇れるほどの才能も持ち合わせていなかった。

 何か一つでも自信に溢れるものさえ存在していなかった。

 将来やりたいことや本気になれるようなものも出来たことがなかった。

 

 スクールアイドルをやってたくさんの人々を魅了してきた君とは全然違う。

 何もなかったんだ。君の輝かしい過去の話を聞けば聞くほど、僕という人間の矮小さを感じさせられた。

 

 君の笑顔にはいつも見惚れてしまうのに、心の奥底では何もない自分に対して何もかもが嫌になってしまう。

 どれだけ君が好きでも、どれだけ君に恋焦がれていても、自分とじゃあまりにも釣り合っていないと思ってしまった。

 

 生きてる世界が違って見えたんだ。僕じゃ君と付き合えたとして、本当に君を幸せにできるのか。

 凡人でしかない自分なんかよりも、君ほどの女性ならそれこそモデルやお金持ちの人のほうが満足させれるんじゃないか。僕より充分なほどに君を幸せにできるんじゃないかって思うとさ、どうしても伝えようとした言葉が出てこなかったんだ。

 

 何度も何度も言おうとして、今日こそはって決めたにも関わらず最後には足が止まってしまう。

 やっぱり釣り合わないから、自信がないから。もし付き合えたとしても、幻滅されて最後には君から離れてしまうんじゃないかって思ってしまう自分がいるんだよ。

 

 そして僕は自分の気持ちに蓋をした。

 今の関係を壊したくないのはもちろんだけど、それ以上に大切な君を失いたくないから。君の笑顔を奪いたくなかったんだ。

 

 だから僕はあるとき一人になろうとした。

 君を想うことしかできない気持ちをどうにかして抑えるために。つきたくない嘘をついてまで一人になろうとしたんだ。

 

 それなのに、君はそれを許してはくれなかった。

 僕の表情を隠すのが下手だっただけなのか、君が誰かのそういう感情の変化に鋭かっただけなのかは知らないけど、君を避けるようにしていた僕の後ろをずっと着いてきたよね。

 

 所詮僕は君にとって数いる友人の一人に過ぎない。そう思っていたのに、君が僕にここまでする必要なんてこれっぽっちもなかったはずなのに、君の時間を奪ってしまうのに……あんな泣きそうな顔をされたら放っておけるわけないじゃないか。

 

 君の泣き顔なんて世界で一番見たくなかったのに、それを僕自身がさせてしまったことを今でも後悔してるんだ。

 僕のためでもあったけど、何より君自身の幸せのために距離を置こうとしたのが悪かったんだって今なら分かるよ。

 

 君の幸せを一番願っていたのに、君を一番悲しませていたのは紛れもない僕だった。

 だから本当に驚いたんだ。友達だけの関係でいたくて、だけど伝えたい気持ちが一緒にいればいるほど溢れてしまうのが怖くなって離れたのに。最初は信じられなかった。

 

 

 まさか君から告白されるなんて微塵も思っていなかったんだから。

 

 

 何で?

 どうして?

 

 疑問ばかりが出てくる頭とは裏腹に自分の口からは何も出てこなくて、君の口から放たれる言葉を耳に入れることしかできなかった。

 僕のことが好きだから一緒にいれた。僕のことが好きだから避けられるのは耐えられないと。

 

 涙を浮かべながら言う君をその時の僕はどんな顔で見ていたのかはあまり覚えていないけど、嬉しさよりも先に悔しさが勝ってしまった。

 勝手に釣り合わないと決めつけて、勝手にあるかもないかもしれない希望を捨てて、勝手に自分から君を離そうとした僕自身に。

 

 必死に言葉を紡ぎながら想いを伝えてくれる君を見て思ったんだ。

 こんな僕でも良いのかなって。色々なものを持っている君と何も持っていない僕。不釣り合いもいいとこなのに、それでも君は僕を選んでくれた。

 

 人を好きになるきっかけなんて些細なことでもいい。気付いたら好きになってたっていい。

 本当に誰かを想える気持ちがあるなら、たったそれだけでも充分誇れることなんだと思えた。

 

 だから決めた。

 君が僕を選んでくれたのなら、僕はもう二度と君を離さないと。

 

 驚いたよ。絶対に叶うはずのない恋だって思ってたのに両想いだったなんて。

 しかもお互い大学生にもなって初めての恋人だったってことも。君ほどの女の子なら彼氏の一人や二人くらいいてもおかしくないと思ってたんだけど、意外だったよ。

 

 お互いの気持ちも確かめ合えたし晴れて付き合うことになった僕達。そこからの日々は長いように思えてとても早かったよね。

 文字通り楽しいキャンパスライフを送って、様々な季節を君と共に過ごしてきた。

 

 アルバイトして貯金もたくさんしたおかげで二人で同じ家に住むこともできた。

 大学も卒業して、希望通りの会社に勤めることもできた。

 

 今でも不思議なんだ。

 君と出会う前は本当に何もなかった僕。友達と時々遊んだりしながらもどこか輝きのない日々だった。

 

 そこへ君という光が現れてくれたおかげで今の僕がある。

 何も誇れるものがなかった僕にそれができた。君がそばにいてくれるだけで何でも頑張れたんだ。君が家で待ってくれていることを考えただけで仕事にやりがいを持てたんだ。

 

 これだけは断言しよう。

 君のためなら僕はどこまでも頑張れる。

 

 君との未来を想像すれば、君を失う以外なら大体が幸せだった。時には喧嘩することだってあるだろうけど、それ以上に仲直りできる理由を探そう。君との時間が僕の全てだから、僕はそれに命だって掛けよう。

 

 僕達が社会人になって、僕が君に家事を全部頼んだのも僕が一人でどれだけ君を支えられるか試したかった。

 結果的に支えられていたのは僕なんだって家に帰ればいつも思い知らされるんだけどね。君がおかえりと言って笑顔を見せてくれるだけで、疲れなんて吹き飛んじゃうんだ。

 

 二人で同棲を始めてから結構時間もたった。結構良い会社に入れたから給料も良いし休みだってとれる。

 今日は休みをとったけど、それにはちゃんと理由もあるんだ。

 

 いつも君は僕の誕生日だったり記念日にはサプライズで僕を驚かせてくれた。

 本当ならそれは僕の役目なのにいつの間にか君の役割になってるし、でもそれで君が楽しそうに笑うんだからつい任せちゃうんだよ。案外そういうサプライズやいたずらっぽいところもあるんだって新発見にもなって、また君の魅力を一つ知ってしまった。

 

 そして思ったんだ。君はサプライズをするのが結構好きらしいけど、ならサプライズされるほうならどうなんだろうって。

 それを確かめることにしたよ。お互い一緒にいる時間ももう長いし、タイミング的にもそろそろかなって思ってた。

 

 今日、君に伝えることがあるんだ。

 今まで『好き』や『愛してる』なんて言葉はたくさん言ってきたけど、まだ言えてない言葉があるんだよ。

 

 雰囲気作りや高級レストランでムードを作るのも必要かなって思ったんだけど、不器用な僕には似合わないから突然だと思うけど許してほしいな。

 今君は隣の部屋のリビングで温かいミルクティーを飲みながらテレビを見てる。僕は自分の部屋の机でずっとこうして日記を書いている。

 

 今日のに関しては日記というより決意表明みたいなものかな。君と出会った頃を思い出しながらドキドキしてるんだ。

 多分、今日は今までの人生で一番緊張してるかもしれない。口下手な僕が上手く言えるかも分からないし、受け入れてくれるかも分からない。

 

 けど、僕は決めた。

 逃げないために店で買っておいた物もちゃんとある。

 

 ノートを閉じてリビングへのドアを開けると、やっぱり君はミルクティーを飲みながらテレビを見ていた。

 僕を見るなり優しく微笑みながら同じミルクティーを入れてくれた君を見ると、相変わらず優しいなって思うよ。

 

 ミルクティーを一口飲むと甘さが口内で広がっていくと共に緊張のせいで鼓動がだんだん早まっていくのが分かる。

 どうしたの? と聞いてくる君の顔も見れずに俯いたまま顔を上げることができない。おそらく今の僕の顔は真っ赤だろう。

 

 君の質問に上手く口では答えられないのに、心の中だとちゃんと言えるんだ。

『好き』や『愛してる』以上の言葉を言うときが来たんだと。

 

 そんな言葉はもう簡単に言えてしまうけど、今日の今日までずっと言えなかった言葉があるんだよ。

 君以外には使うことのない、一生涯で一度きりしか使わない言葉なんだ。二度は絶対に言わない。君のためだけに用意した言葉。

 

 勇気を出して店で買っておいた物をテーブルの上に置く。

 まだ口には上手く出せないけど、ずっと心配そうにどうしたの? と聞いてくれていた君が驚いた表情になったのはよく見えた。とりあえずサプライズは成功かな。

 

 あとは僕の口から直接言うだけだけど、困ったな。

 あれだけイメージトレーニングとかシミュレーションしてたのに、いざ本番ってなったら全部飛んでしまった。

 

 やっぱり人生最大に緊張してるからかな。

 でも、言わなくちゃいけない。これだけは絶対に言わないと何も意味を成さないんだから。

 

 付き合ったときから決めたことがある。

 君を一番幸せにできるのは他の誰でもない僕だと証明すること。これからの人生の全てを君に捧げる準備はできているんだ。それが二人の幸せに繋がるのなら僕は喜んで差し出せる。

 

 それでももしこの先に何か不幸なことがあるなら、それは君を失ったときだけだろう。今の僕はさ、もう君が隣にいない未来なんて考えられないし考えたくもないんだよ。

 こんなことを思ってしまうほど僕はきっと君に溺れてるのかもしれないね。こんなことを言ったら君は笑うだろうけど、僕の愛は本物なんだって分かるまで伝え続けるよ。

 

 だってもう僕は君を知ってしまった。君のせいで『愛』を知ってしまったんだ。

 おそらくこの先引き返すことのない道を君と歩んでいくための感情。君も知っているんだろ?

 

 一緒にいるだけで泣いてしまうこともあった。幸せすぎて苦しいって笑う君を見ていつまでも一緒にいたいと思った。自分のために生きてきたつもりだったのに、いつの間にか君の喜びが僕の幸せになっていた。

 

 だからそろそろ言わなきゃいけない。

 それにしたって正面にいる君がそんな涙を浮かべているのを見ると、やっぱり僕は色々と顔に出ちゃうタイプらしい。

 

 僕が不器用なのを知ってるから君は僕からの言葉をずっと待ってくれている。もう何を言うかも分かっているはずなのに……君はいつでも優しいんだね。

 最大限に僕を理解してくれているのは君だけだ。だからこそ僕も分かる。

 

 君から告白されたとき、悔しかったのには他にも理由があった。

 それは男として自分から告白すべきだったのに、君から告白させてしまったこと。変な理由をこじつけて自分から逃げていたこと。

 

 僕はずっとそれを引きずっていた。付き合ってからも、今も。

 だから、今度はもう逃げない。君からじゃなくて、僕から言うために。

 

 ムードも何もないけど許してほしい。

 不器用な僕だけど、この気持ちだけはどこまでも真っ直ぐだから。口を手で覆い隠しながら涙を流す君を見て思う。

 

 あの時は悲しい思いをさせてしまったせいで君を泣かしてしまった。それがずっと嫌だった。

 だけど、今の君が泣いている理由は何なのか。今の僕なら分かる。答えなんてもう分かっているけど、僕もこの幸せを零さないように言うよ。

 

 テーブルに置いた小さめのケースを開ける。形のない愛を少しでも形にするための誓いの輪。どこにも見当たらない愛だけど、僕達の間なら確かに感じられるんだ。

 捨てるものは君のいなかった過去。孤独だった生き方と引き換えにしよう。

 

 僕はもう覚悟はできた。

 君のいない未来にもう未練なんてない。

 

 

 

 

 

 一生涯で僕が一度きりしか言わない言葉。

 君のためだけに用意した言葉。

 

 

 

 他の誰でもない、僕が君を世界で一番幸せにするから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「僕と結婚しよう、絵里」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




《たーぼさんより》
 さて、いかがでしたでしょうか?


 一人称にして最後のセリフまでオリ主の独白で攻めてみました。
 そして新しい試みとしてはですが、『読み切り風』に書いてみました。
 短編企画ならではというか、だからこそ挑戦できるのではないかと思った結果ですね。読み切りらしく突然始まり、終わりはこれから先の物語を彷彿とさせるような出来に仕上げました。これは読んでくださった方々が少しでもこの先の物語を気になったり読みたくなったのだとすればこちらの思惑通りです。

 ヒロインは推しの穂乃果でもなく2年生の海未やことりでもなく、まさかの絵里でした。
 金髪クォーター美人、可愛いですよね。絵里のちょっとしたギャップや女の子らしさを感じていただければ嬉しいです。

 30人を超える企画となっております今回、まだまだ先もクリスマスまで毎日投稿されるので最低でも一日1作品は読めますね。いやー、贅沢じゃ。
 そんなわけでありがとうございました!
 よろしければご感想などいただけるととても喜びます。企画小説ならではの試みをしているので、それに対してや内容への感想とか貰えると助かるのでじゃんじゃんください!

 というわけで、今回企画を立ち上げてくださった薮椿さんと一緒に盛り上げてくれる参加者の方々、読んでくださった皆様に感謝を。
 次に自分の作品で出会えることを願いつつ、今回はここまでにしたいと思います。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。