エンドスタート   作:まゆう

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お待たせいたしました!遅くなって大変申し訳ありません…。

今回の話にオリジナルのオペレーターが出てきます。のちに大規模侵攻編で束くんのオペレートを担当してくれる予定です。

では、本編を楽しんでいただけたら幸いです!





篠宮束と那須隊

 キーンコーンカーンコーン。

 

「よし、じゃあ帰りのホームルームも終わりだ気をつけて帰れよ」

 

 チャイムがなりホームルームも終わりやっと長い学校も終わりだ。そしてこれからおれを待つのは防衛任務、今日はB級の那須隊と合同だ。

 

 那須隊の狙撃手である日浦茜とは同じ学校で学年も一緒だから那須隊も特に仲のいい部隊の一つだ。

 

「茜、本部行こう」

 

 隣のクラスの茜を迎えに行くとクラスの女子からキャーキャーと声も聞こえるし、男子からは恨みがましい視線を向けられるけど無視だ。めんどくさい。

 

「あ、束くん!ちょっと待ってて!」

 

 茜は現在のボーダーの最年少女子狙撃手だ。師匠はナンバー2の狙撃手である奈良坂透先輩、本人も努力するタイプだしきっともっと上手くなるはずだ。

 そして、茜がトリオン体で付けてる指ぬきグローブはかっこいいと思う。

 

「お待たせ!」

 

「おう、行くか」

 

「茜ちゃんまたね〜」

 

「またね〜」

 

 茜がクラスメイトたちと一通り挨拶を終えるのを待って歩き出す。

 学校終わりや早退で防衛任務に行くときは見慣れた光景だ。柿崎隊と一緒のときは一つ下の学年の巴虎太朗と一緒だ。

 なので別に茜と何か特別な関係であるわけではないけどそこは中学生、2人で歩いて入れば同じボーダーで仲のいいこともあり勘繰られることも多い。

 茜が男子人気があることも大いに原因の一つだろう。

 

「そんなことないよ!束くんすごい人気あるんだから!」

 

「それこそ、そんなことないだろ。声かけられたこととかほぼゼロだぞ」

 

「それはきっと女子が牽制しあってるからだね」

 

「なんだそれ、めんどくさいな」

 

 おれには全く女子の世界は全くわからない。そもそも牽制しあってるってなんだよ。

 藍とか桐絵みたいにわかりやすければいいのになぁ。

 

「束くんかっこいいし、A級隊員だし女子の憧れなんだよ」

 

「かっこいいかなぁ?それにA級ってだけでそんな風になるもん?佐鳥先輩とか嵐山隊で唯一キャーキャー言われないけど」

 

「束くんかっこいいよ!仲良くない人にはちょっと適当なところあるけど!佐鳥先輩はまぁ…」

 

 おいおい、まぁって茜も大概ひどいな。佐鳥先輩、最年少女子狙撃手からもこの扱い…可哀想だけど、おもしろい。流石だ。とりあえず心の中だけで手を合わせておこう。

 

 茜と校庭に出て学校を出ようとしたときだった。

 

『緊急警報、緊急警報。市街地に(ゲート)が発生します。近隣住民の皆さんは直ちに避難してください。繰り返します』

 

 鳴り響いたのは門が開いた警報。本来なら市街地では聞かないはずのものだ。

 

 そして開いた場所はまさに今おれと茜、そのほかにも生徒たちがたくさんいる校庭だ。

 

「門、なんでここに…」

 

「ど、どうしよう束くん!」

 

 おれもよく理解できてない、誘導装置の故障かはたまたなんらかの別の原因か。

 

 だが今は後回しでいい。原因の解明は超優秀な鬼怒田さんたち開発部に任せておけばいいからだ。

 ならおれたちのやることは単純だ。

 

「やるぞ茜、虎太郎はいないから2人だけだけどあれぐらいなら問題ない」

 

 門から出てきたトリオン兵はたったの2体、戦闘用のトリオン兵であるモールモッドだが問題ないだろう。

 

「そ、そうだよね!私たちがやらなきゃ!」

 

「「トリガー、オン!!」」

 

 起動の意思さえ持てば勝手に起動してくれるが言葉を発する人も多い。今回はボーダー隊員がいるぞ!、という目印にもなる。

 

「篠宮くんと日浦さんだ!」

 

「よかった、ボーダー隊員だ!」

 

 茫然自失となって校舎の方に逃げていた生徒たちがおれと茜が換装したことに気づいてワッと盛り上がるができたら避難してほしい。

 

「全員校舎の中に入って先生の指示に従え!!近界民はおれたちが処理する!!」

 

 珍しく怒鳴り声のようなものを出したせいで声が上ずったけどある程度の効果はあったみたいだ。校舎の出入り口でたむろしてた生徒たちが先生の誘導に従って避難してくれた。

 

「声うわずってたね」

 

「うるさいぞ、援護頼む。速攻で片付ける!」

 

「了解!」

 

 一体目に近づけば反応して来たモールモッドが武器である二本の鎌のような腕を振り切ってくる。

 

「遅い!」

 

 スコーピオンを二回振るって腕を落とす。あとは弱点の目玉を仕留めるだけだ。

 もう一体のモールモッドは茜に任せよう。

 

「茜浮かせるから仕留めてくれ!」

 

「え…、了解!!」

 

 少し戸惑ったみたいだけどおれの意図は察してくれたみたいだ。

 2体目はおれを無視して校舎の方に向かう動き見せている。その2体目の体の下にグラスホッパーを置く。それに触れたモールモッドは真上に跳ね上がる!上に跳ねればでかい一発で狙撃しても問題ないと思う。

 

 あまり時間をかけたくない、一撃で仕留める!

 

「らっ!」

 

 ズガッン!!

 

 おれのスコーピンがモールモッドを切り裂くのと茜のアイビスがモールモッドに撃ち込まれたのはほぼ同時、周りに被害もないし上出来だろう。

 

 アイビスは狙撃手用のトリガーで威力重視の狙撃銃だ。狙撃手用のトリガーはトリオン能力によって決まった能力が伸びるようになっている。つまり、アイビスだと威力が伸びるようになる。

 

「本部、こちら篠宮。市街地に門が発生、その場にいたおれと日浦で処理しました」

 

 本部に連絡を入れると通信を返してくれたのは忍田さんだった。

 

『ああ、確認した。よくやってくれた、回収班を向かわせているから引き継ぎが済んだら両隊員は予定通り防衛任務に向かってくれ。那須と熊谷には先に向かってもらう』

 

「篠宮了解」

 

「日浦了解です!」

 

 どうやらこうなることを見越して先に回収班を向かわせてくれてたみたいだ。

 

「茜、おれ先生とちょっと話してくるから見ててもらってもいいか?」

 

「あ、うん!わかった!」

 

 茜に現場を任せていったん離れて先生に状況を説明しに行く。

 

「篠宮、一体どういうことなんだ?」

 

 どういう事と言われてもわかることはおれも少ない。とりあえずわかってることを話せる範囲で話しておいた方がいいだろう。

 

「門が開いた原因はわかりません。誘導装置の故障かも知れませんけど今の所詳しくは」

 

「そうか、まだ生徒は帰宅させない方がいいよな」

 

「そうですね、今から回収班が来ますので彼らの指示に従っていただけるといいと思います」

 

 そう言ったタイミングで校門の方から車のエンジン音が聞こえてきた。

 どうやら回収班が到着したみたいだ。ほんとにかなり早く着いたな。忍田さんはどのタイミングで回収班を呼んだんだ…。

 

「回収班来たみたいですね、引き継ぎ済ませて来ます。そのあとすぐに防衛任務なのでおれたちはこれで」

 

「ああ、わかった。気をつけてな!」

 

 回収班と話をしている茜の方に向かって歩くいく。茜と話している回収班の人は俺にとって仲のいい開発部のチーフエンジニアだ。

 名前は寺島雷蔵さん、元凄腕の攻撃手で弾トリガーの流行に切れてエンジニアに転向した経緯を持つ人だ。元は細かったがトリオン体での食事をとりすぎたせいで丸くなってしまった。

 

「雷蔵さん!」

 

「ん、ああ篠宮お疲れ様」

 

「お疲れ様!なんで雷蔵さんが回収班にいるの?」

 

「ああ、鬼怒田さんに行って来いって。原因探るなら現地見て来た方が早いでしょ」

 

「なるほど、確かに!」

 

「2人とも防衛任務に行ってきていいよ。あとはやっておくから」

 

「「了解!」」

 

「行こう、茜」

 

「うん!」

 

 雷蔵さんに場を引き継いでおれたちは学校を出て防衛任務に向かった。

 

 

 

 ・

 

 

 

「ごめんなさい!那須先輩、熊谷先輩、志岐先輩!」

 

「遅れてごめん!」

 

 おれと茜は結局防衛任務には間に合わず30分ほど遅れてしまった。

 

「大丈夫よ、お疲れ様」

 

 遅刻したおれたちに優しく声をかけてくれた人が那須隊隊長である那須玲先輩だ。

 出水先輩と同じくリアルタイムでバイパーの弾道を引くことができる数少ないシューターで、機動力と弾で敵を追い詰めるスタイルを取る。

 生まれつき体が弱く、ボーダーの「体の弱い人をトリオン体で元気にできるか」という研究に協力する形でボーダーに入隊した人で、今ではトリオン体で運動することが好きだったりする。

 ちなみに茜の師匠、奈良坂先輩のいとこで、桐絵のクラスメイトだ。

 

「大変だったわね」

 

 こう労ってくれたのは那須隊攻撃手の男前女子、熊谷友子先輩だ。

 基本的に防御重視で那須先輩の防御に回ることが多いからソロポイントはそんなに高くないけど捌きや返しの技術は一級品でおれたち男性攻撃手陣からも一目置かれている。

 那須先輩と親友同士で玲、くまちゃんと呼ぶ仲だ。おれはくま先輩って呼んでいる。

 

 そして、ここに極度の男性恐怖症で年上に対しては日常生活に支障をきたしてしまうレベルのオペレーター志岐小夜子先輩を加えたのが那須隊のメンバーになる。

 男性恐怖症の志岐先輩がいるから那須隊に混ぜてもらうときは本部の中央オペレーターの人にオペレートしてもらってる。

 

 今回オペレーターをしてくれてるのは宵坂詩音(よいさかしおん)さん、本部所属の中央オペレーターで部隊によっておれをオペレートしてくれる人がいなかったり、混成部隊のときはよく担当してくれてる。

 

「しかし、市街地に門開くなんて災難だったわね」

 

「まぁ、おれと茜のいるところに開いたのが不幸中の幸いってやつだよね」

 

「確かに、2人がいなかったら大変なことになってかも知れない」

 

「ほんと怖かったですよ〜」

 

「原因はわかってないんでしょ?」

 

「はい、誘導装置の故障ではないってことはわかってるみたいですけど」

 

「まぁ、その辺は超優秀な鬼怒田さんたち開発部に任せとけば大丈夫だよ!」

 

「篠宮くんはほんとに開発部のみんなが好きね」

 

「まぁこの子しょっちゅう開発部入り浸ってるしね」

 

 くま先輩の言う通りおれは開発部によく出入りしている。トリガーの調整はもちろん、新トリガーのテスターに呼ばれたり、トリガーで一緒に遊んでみたり、そのせいでポイントを没収されたことも何度もある。

 鬼怒田さんにも何度も怒鳴られてるけどおれはあそこにいる人たちが好きだ。優しくて、優秀でいつもおれを気にかけてくれてる。鬼怒田さんはよく部屋に様子を見に来てくれるしね。

 

「おれはあそこにいる人たちもみんな大好きだからね!」

 

「あんたよくそんな恥ずかしいこと自信満々に言えるわね」

 

「ふふっ、篠宮くんらしくていいじゃない」

 

「そうですよ!私も先輩たちのこと大好きですから!」

 

「茜、あんたまで」

 

 くま先輩が額に手を当ててはぁ、とため息をつく様子を見ながら笑い声が響く。

 そのタイミングで、ふと思い出した。そういえば報告に行かないといけないないんだった。

 

「あ、那須先輩!」

 

「どうしたの?」

 

「さっきの市街地に門が開いた件でおれと茜防衛任務の報告と一緒に来いって言われてたんだった!」

 

「あ、忘れてた!」

 

「そうだったんだ、わかったわ。あとで一緒に行きましょう」

 

「うん、ありがとう!」

 

 そしてこのタイミングでオペレーターから通信が入る。

 

『篠宮くん、門が発生するわ。多いわね、門が5つ、誤差3.14、くるわ!』

 

「那須先輩!」

 

「聞いたわ!茜ちゃんはすぐに狙撃位置について!」

 

「了解です!」

 

 那須先輩の指示を聞いて茜が元から決めてあった狙撃ポジションへ移動を開始する。今日のおれは那須隊のメンバーだ、指示は那須先輩からもらうべきだろう。

 

「おれはどうする?」

 

「篠宮くんは自由に動いてもらって大丈夫よ、小夜ちゃんは篠宮くんのオペレーターと情報を共有してね」

 

「了解!」

 

『情報共有完了したわ、いつでも動いてくれて大丈夫よ』

 

 那須先輩からの指示から時間もたいして経たないうちに情報の共有は完了したみたいだ。やっぱり壱岐先輩もしおんさんも優秀だ。

 

「くまちゃんは私と篠宮くんのサポートをお願い!」

 

「任せなさい!」

 

「くま先輩よろしくね!」

 

 そう言い残しておれはグラスホッパーを起動、トリオン兵に向かい一気に突き進む!

 

『しおんさん、敵の数は?』

 

『バンダーが8、モールモッドが12、バドが6の計26体ね、大型や飛行型は那須さんや日浦さんに任せて篠宮くんはモールモッドを優先的に狙って』

 

『了解!』

 

 トリオン兵の群れに突っ込みすれ違いざまにモールモッド一体の弱点を裂いて、もう一体の腕を落とした。

 そして腕を落とした一体をもう一振りで倒してからさらに動く。集団を相手にするときは止まらないのが鉄則だ。囲まれてしまったらいくら雑魚だといってもめんどくさい。

 

『右からモールモッド1、正面バンダー1、日浦さんが目の前のは狙撃するわ、篠宮くんは右を』

 

 その指示を聞く前に体は反応している、でかいのは茜たちに任せてる、ならでかいの無視したって構わない。目の前に捉えたモールモッドに腕を二度振るえば一振りで両腕は落ちる、二振り目で弱点を切り裂いた。普通なら届かない間合いでもマンティスは届くからね。

 

『流石ね、残りのノルマは8体よ。この調子ならどうにか無事に切り抜けられそう』

 

『みんな強いから当然だよ』

 

 おれはまだ三体しか倒してないけど多分くま先輩が倒したんだろう。茜の狙撃と那須先輩の射撃ででかいのも飛んでるのも減ってるし、おれはおれの仕事を果たそう。

 

 そう、気持ちを入れ直して次に向かおうとしたときだった。

 レーダーに2つの敵を示す点が市街地の方に向かってるのが見えた。

 

『しおんさん、トリオン兵が!』

 

『バンダーが2体市街地に向かってるわ!迎撃して!』

 

『了解!』

 

 茜の射線では弱点を捉えられないしあの距離じゃ那須先輩も届かない、ならおれが直接行って斬った方が早い。

 

 グラスホッパーにテレポーターも併用して一気に距離を詰める!

 だけど間に合わない!二体のうち、一体が砲撃の態勢に入っている!

 まずい、と思ったとき、ドゴオォォォン!!という音とともに茜のアイビスを使った一発が砲撃の準備に入っていたバンダーを狙撃した。弱点は打ち抜けずまだ動いてはいるが砲撃の軌道は空に逸れた。

 

 その隙を逃さない!

 

 グラスホッパーを使って弱点に届く間合いまで飛び上がる。

 

 マンティスを使って一体目、そして二体目を片付ける。

 

 結局そのあとは特に大きな問題もなく多くのトリオン兵をしっかり4人で片付けることができた。

 

 珍しく一気に大量のトリオン兵が出てきたりイレギュラーな門に遭遇したり今日は厄日なのかもしれない。

 

 

 

 ・

 

 

 

「「「失礼します」」」

 

 意外にも多くのトリオン兵が出て少ししんどかった防衛任務を終えておれたちは今本部長室へ防衛任務の報告とついでにさっき起こったイレギュラー門に対する説明をしにきた。

 

「こちらが防衛任務の報告書です」

 

「ああ、ありがとう。随分と多かったみたいだな」

 

「はい、少し驚きました」

 

「まぁ、おれたちなら余裕だったよ!」

 

「束、あまり慢心はするなよ。いずれ足元をすくわれるぞ」

 

 忍田さんにそう言われたがそれはもちろんわかってるつもりだ。

 

「もちろん、わかってます」

 

 慢心は自分だけじゃなくて周りも危険にさらす。だったらおれが慢心なんてできるわけがない。

 

「どうやら余計な心配だったようだ。さて、では束、日浦。先ほどのイレギュラー門についての現場での状況説明を頼む」

 

 さて、ここでやっとおれと茜にとっての本題だ。

 

「本日の午後4時過ぎ、中学校の校庭に門が発生、出てきたトリオン兵はモールモッドが2。これを日浦隊員とともに殲滅、回収班に引き継いだのち防衛任務に向かいました」

 

「ああ、間違いないか?」

 

 おれの言葉に間違いがなかったかどうかを茜に確かめる。

 

「間違いありません!あ、もう一つ」

 

「なんだ?」

 

「大きな被害もなく、転んで怪我をした人が数人でた程度でした」

 

「そうか、ありがとう」

 

 茜の補足説明に忍田さんが笑って頷いた。忍田さんはこういうふうに緊張感を解くのが上手いと思う。

 

「大きな被害が出なかったのは幸いだが、現場に居合わせた隊員として何かおかしなことなどはなかったか?」

 

 忍田さんの質問におれも茜も首を横に振る。おかしなことと言われても市街地に門が開かれたこと以外に何もない。

 

「そうか、現在もまだ原因は調査中だ。各隊員に非番の場合も市街地に門が開いた場合、優先的に対処するように伝えておくしかないな」

 

「あ、わかってると思いますけど一つだけ」

 

「ん、どうした?」

 

「迅さんにも頼るべきだと思います。大事ですからね」

 

 こんな事態の時は迅さんの未来視のサイドエフェクトは有効だ。あの人の力があれば解決までの時間は短縮されるだろう。

 

「ああ、すでに迅には伝えて調査も頼んでいる」

 

 どうやらおれが一言付け足す必要はやはりなかったらしい。

 

「さて、那須、日浦、束ご苦労だった。あとはゆっくり休んでくれ」

 

「「はい、失礼します」」

 

「またね〜忍田さん!」

 

「束、少し待ってくれ」

 

 挨拶を残して部屋を出ようとすると忍田さんがおれを呼び止めた。

 那須先輩たちは一歩おれより先で立ち止まっておれは忍田さんに振り返った。

 

「どうかしたの?忍田さん」

 

「ああ、いや大したことじゃないんだが」

 

 頭に疑問符がポコポコで始めたところで忍田さんが続けてくれた。

 

「あまり無理をするなよ。また修行をつけてやる」

 

 これを言うためにわざわざ呼び止めたんだ。少し笑ってしまって忍田さんが気にしてしまった。不器用な人だ。

 

「ごめん、忍田さん変な意味じゃないよ?」

 

「そうか」

 

「ありがとう!無茶はしないよ、みんなもいるし!」

 

 忍田さんは少し笑って頷いた。

 

「そうだな、今のお前には仲間がいる。那須、日浦、束のことを頼んだぞ」

 

「はい、任せてください」

 

「了解です!」

 

 忍田さんに頼まれていい返事を2人が返す。なんかとても気恥ずかしい…。

 

「ほら!2人とももう戻ろう!またね忍田さん!」

 

 赤くなってしまった顔を誤魔化すようにして2人を出口の方に押しやって部屋を出る。

 出るときの忍田さんの顔は笑っているように見えた。

 

 

 

 ・

 

 

 

 本部長室を出て本部の廊下を3人で歩く。このあとは特に予定はないからランク戦でもしようかなぁ。

 

「篠宮くんはこのあと予定ある?」

 

「ううん、ないよ!ランク戦でも行こうかと思ってたところ」

 

「じゃあうちの隊室でお茶でもどうかしら?いい茶葉があるの」

 

「お菓子もあるよ!」

 

 那須先輩と茜の誘いは予定のないおれにとっては魅力的な相談だ。

 

「じゃあお邪魔しようかな!でも、志岐先輩は大丈夫?」

 

「大丈夫よ、篠宮くんは年下だし少しずつでも慣らしていかないと」

 

 那須先輩、思ってるよりスパルタだ…。

 

 まぁ、那須先輩がいいって言うならお邪魔させてもらおう。たまにはお茶でもいいしながらゆっくりするのも悪くない。

 それが気心知れた仲間なら尚更だ。

 

「行きましょうか、くまちゃんがお茶を入れて待ってるわ」

 

「「はーい」」

 

 茜と2人で返事をして那須隊の隊室まで歩く。

 

 最後は平和に忙しかった1日は過ぎていった。




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次回からはワートリ本編に入ります!
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