エンドスタート   作:まゆう

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またまたお待たせしてすいません。原作突入です。
今年の投稿はこれで最後になりますが、来年もよろしくお願いします。


原作開始
篠宮束と空閑遊真


 少し肌寒いけどトリオン体なら寒さも暑さも関係ないのでそよそよとそよぐ風に打たれるのが気持ちいい。地面にではなくて、屋根の上に立っている分余計に風が気持ちよく感じるような気がする。

 

 現在おれは防衛任務の真っ最中。午後の気持ちいい風と空にでてる太陽のおかげでだいぶ心地いい。戦争をしてるなんて忘れてしまいそうだ。

 

 だけど残念ながらそんな穏やかな昼下がりの防衛任務が終わってしまったことを知らせる通信が入ってしまった。

 

『防衛任務に出ている各隊員に緊急通達!!』

 

 しかもその通信はなぜか現在防衛任務にお邪魔させてもらってる諏訪隊のオペレーター小佐野瑠衣先輩じゃなくて本部の中央オペレーター室に詰めている沢村さんからだ。

 

「ありゃ、これはなんか異常事態かな」

 

『現在三門第三中学にイレギュラー(ゲート)が発生!嵐山隊と諏訪隊と合同任務中の篠宮隊員はすぐに現場に急行してください!』

 

 ここ最近イレギュラーな門が市街地に開くことが頻発してる。普通の門は本部の誘導装置に誘導されるから警戒区域内に発生するはずだけど、誘導装置が故障してないにも関わらず市街地に開くらしい。今まではおれの体験したやつも含めて偶然にも非番の正隊員の近くで開いたから被害は出ていないらしいけど今回はよりにもよって三中だ。あそこは確かボーダーの正隊員はいなかったはずだ。

 現在イレギュラー門の原因を鬼怒田さんを筆頭に開発室の皆さんが寝る間を惜しんで解析してるけど成果はなかなか出ていないらしい…。

 

 それにしても、嵐山隊じゃなくておれも行くの?

 

「沢村さん、おれも行くの?嵐山隊より遠いけど」

 

『あなたの機動力が必要よ。全速力でお願い!』

 

「了解。諏訪さん、てなわけで一旦持ち場離れます!」

 

『おう!行ってこい篠宮!』

 

『オペレーターとして宵坂さんをつけるわ』

 

『ありがとう、沢村さん!しおんさん案内よろしく!』

 

『ええ、任せて。時間がないから急いでね』

 

『了解!』

 

 さて、行くか。おれはグラスホッパーを起動して三門第三中学までの道を駆け抜ける。

 

 

 

 ・

 

 

 

 

 タンッと校舎の塀を飛び越えて三門三中に到着すると生徒たちはほぼ校庭に避難していて、校舎の壁にモールモッドが一体張り付いて登ろうとしている。校舎の中で激しい音も聞こえるし中でどうやら暴れてるのもいるみたいだ。

 

「篠宮現着、処理を開始します!」

 

『数はモールモッドが二体、篠宮くんの判断で仕留めて』

 

『了解!』

 

 ボーダー隊員だ!と言う声を後ろに聞きながらグラスホッパーを起動、モールモッドを横に捉えるところまで飛び上がって腕を二度振るう。

 スコーピオンを2つ無理やり繋げたマンティスによって切り裂かれたモールモッドを踏みつけ叩き落としつつさらに上へ。

 

 おれがモールモッドを倒したのとほぼ同じくらいに暴れる音が止まっていた。

 考えられるとすれば残っていた生徒が殺されたか、なんらかの戦闘が終わったかだ。

 

 少し申し訳ないが窓を蹴り破って校舎の中に入る。すでにモールモッドが派手に壊してたし気にしないことにしよう。

 

「…これは…」

 

『もうやられてるわね』

 

 しおんさんの言った通りおれの目の前にはすでに倒され動かなくなったトリオン兵、そしてトリガーを起動している白髪のちびっことメガネの中学生だ。

 

 取り敢えず報告するにしても何するにしても事情を聞いてからだな。

 

「ボーダー本部所属、篠宮束だ。この近界民は君が?」

 

 おれの質問にメガネくんは少しうろたえて、白髪のちびっこはどうしようかと考え込んでいるようだったが、メガネくんが前に出てきて事情を説明してくれた。

 

 メガネくんは一度白いちびっこに目配せをしてからおれの質問に答えてくれた。

 

「C級隊員の三雲修です。この近界民は僕のトリガーを使って彼が倒しました」

 

 

 ふむ、C級のトリガーは訓練用に出力を押さえられている。C級のトリガーを使ってモールモッドをこれほど鮮やかに倒したと言うことはかなりの実力があると言えるはずだ。

 つまり、この白いちびっこはこちらの世界の住人ではない可能性を否定できない。

 

 近界民である可能性を、だ。

 

 おれは一度しおんさんとの通信を何も言わずに切った。これからする話を本部に伝えるかは白いちびっこ次第だ。

 

「まずはC級隊員がおそらくトリガーを使ったであろうことは置いておく」

 

「えっ?」

 

「今はそんなことよりも、白いちびっこお前に聞きたいことがある」

 

「空閑遊真だよ。それで、なに?」

 

「そうか、なら空閑。…お前は近界民か?」

 

 白いちびっこ改めて空閑の目付きが少し厳しくなりまとう雰囲気が変わったように感じた。どこか飄々とした印象から歴戦の戦士のようなそんな感じに。

 そしてメガネくんのあの狼狽えよう、答えはわかってしまったようなものだけど実際に聞くことに意味がある。

 

「誤魔化すのは無理そうだな。…お前の言う通りおれはお前らで言うとこの近界民だよ」

 

 やはりおれの予想は当たったようだ。遠征について行った以外でトリオン兵ではない人型の近界民にあったのは初めてだ。

 

「あんまり驚かないんだな。オサムは近界民が人なのも知らなかったのに」

 

「おれはあっちの世界に行って人型近界民には会ったことがあるんだ。C級にはその辺説明されてないからメガネくんがわからないのは仕方ないよ」

 

 近界民達の世界は『近界(ネイバーフッド)』と呼ばれている。

 そして門を開いて近界の世界を探索する遠征と呼ばれるものがボーダーでは極秘に進められている。おれは一度同行したことがあるが未知の世界の探検は不謹慎だけどワクワクした。

 

 ちなみに現在はA級のトップチームが三部隊合同で遠征に行っている。予定ではそう遠くないうちに帰還するはずだ。

 

「それで、どうするの?ボーダーに報告すんの?」

 

「いや、それはお前次第だ」

 

 意外そうな顔をする空閑にその理由を教えてやる。

 

「さっきも言ったがおれはあっちの世界に行ったことがある。だから近界民にもいいやつがいることも知ってる。もっとも…、お前が四年前こっちの世界を攻め込んだ国のやつなら話は別だ…」

 

 一拍おいて続ける。果たしておれはふつふつと湧き上がるこの憎しみをうまく隠せてるだろうか。

 

「その場合は悪いが、ここで捕獲させてもらう。…それが無理なら殺してやるよ…」

 

 ああ、無理だ…。どれだけ時が経っても、あの時の怒りを憎しみを無くすことなんてできない。おれの家族を殺した国を許すことなんてできるわけがない。

 

 だけど、その怒りだったり憎しみをその国以外に向けるのは違うと思う。それをおれは風間さんや桐絵から教えてもらい、近界への遠征で学ぶことができた。

 

「でも、多分お前は四年前とは関係ないだろ」

 

「ふーん、なんでそう思うの?」

 

「…おれの勘だ!」

 

 嫌な沈黙が俺たちの間を流れた。

 

 まぁ、取り敢えず嵐山隊もそろそろつくだろうし早めに戻った方がいいだろう。

 

「取り敢えず、この件はおれが預かる!上のこいつはメガネくんが倒したってことでいいな」

 

「あ、はい。わかりました」

 

「敬語じゃなくていいよ。おれも中学生だ」

 

「あ、うん。わかった」

 

「メガネくん、名前は?」

 

「あっ、…三雲 修です。えっと…」

 

「篠宮束、呼びやすいように呼んでくれ」

 

 そう言ってメガネくん改め三雲くんに手を伸ばす。

 

「あ、よろしく篠宮」

 

 おずおずとおれを握手してくれた三雲くんの次は空閑と握手だ。

 

「よろしくな空閑」

 

「おう、よろしくなタバネ。遊真でいいよ」

 

 なんというか、開けっぴろげなやつだな。仲良くなれそう気がする。

 

「おーけー、よろしくな遊真。さて、早いとこ下に戻ろう」

 

 多分だけど遊真は悪いやつじゃない。おれはおれの勘に従うことにして三雲くんと遊真を連れて生徒たちが集まっている校庭へと向かった。

 

 

 

 ・

 

 校庭につくと、わぁ!と歓声が響いた。生徒を守ったボーダー隊員だ。こうなるのはよくわかる。

 

 取り敢えずおれは三雲くんと遊真を生徒たちの輪に残して、もうすでについていた嵐山さんたちのところに向かう。

 

「嵐山さん!お疲れ様です!」

 

「ん?篠宮か!よくやってくれたな!」

 

 嵐山さんがバシバシとおれの背中を叩いてくる。シスコンにしてブラコンの嵐山さんの弟妹はこの中学校に通っているから感情が振り切ってる気がする。

 はっきり言えばすごく痛い…。

 

「あ、嵐山さん!痛い痛い!」

 

「ああ、すまないな篠宮!だが流石だな!」

 

「その下に落ちてるのはおれがやったけど上のやつはおれじゃないよ。おれは間に合わなかった」

 

 嵐山さんは不思議そうな顔をしてる。

 それはそうだろう、おれじゃないなら誰がやったんだという話になるからだ。

 

 おれは人混みの真ん中にいる三雲くんを拝借して嵐山さんの前まで連れて行く。

 

「上のを片付けて生徒を助けてくれたのはこいつだよ」

 

 嵐山さんの頭にはきっとハテナが浮かんでることだろう。なんせ連れて来たのは見るからに弱そうなメガネだ。まぁ、倒したのはこいつじゃないわけだけど嵐山さんに伝えるわけにもいかない。

 

 三雲くんに目配せすれば少し慌てて自己紹介をしてくれた。

 

「C級隊員の三雲修です。待っていたら間に合わないと思い、自分がやりました」

 

「C級…!」

 

 三雲くんの顔が曇る。おれのときは遊真の問題があったから置いておいたことだからな。

 

 でもまぁ、嵐山さんなら頭ごなしに怒るようなことにはならないだろう。

 

 嵐山さんが三雲くんの肩をがっと掴む。

 

「そうか、よくやってくれたな!」

 

 三雲くんが呆気にとられている。テレビで見る嵐山さんは爽やか全開だけど実際のこの人はちょっと天然も入ってる熱血爽やかだからな。面食らって冷や汗かいてもしょうがない。

 

「この学校にはおれの弟と妹も通ってるんだ!ありがとう!」

 

 そう言って嵐山さんは弟妹の元へと向かって行く。

 

「面食らうでしょ。あの人ブラコンでシスコンなんだ」

 

「えっ?…いや、それよりもなんで…」

 

 三雲くんの疑問は多分、隊務規定違反をしたのに褒められたこと、いや賞賛されたことだろう。

 嵐山さんも隊務規定違反だってことはわかってる。それでも、C級でありながら市民を守るために武器を取り、そして守ったことを賞賛したんだ。

 

「お前は市民を守ってくれたからだよ。間違いなく死人が出なかったのはお前のおかげだ」

 

「…ありがとう…」

 

 三雲くんが困り顔をやめて少しほころんで感謝の言葉を口にしてくれた。

 

 まぁ、それでも違反は違反。なんかしらの処分はあるだろうけどね…。

 

 さて、ここまでおとなしくしてたキツめの声がこのタイミングで聞こえてきた。

 

「嵐山さんも篠宮くんも、違反者を褒めるような真似をしないでください」

 

 まぁ、藍ならそう言うだろうなぁ。わかってた。

 藍の言うことも一理あるっていうよりは正しい。いかに人を救ったとはいえ違反は違反だ。

 

「だが、彼は人を救ってくれたわけだし…」

 

 嵐山さんが三雲くんをかばおうとするが残念ながら藍にはあまり効果が無いであろうことはおれも、もちろん嵐山さんも分かっているはずだ。

 

「確かに彼がやったことは評価に値します。ですが彼はC級隊員です。これを許せば他のC級隊員にも同じような違反をする人間が現れます。ヒーロー気取りの実力不足な隊員が現場に出れば、いずれ深刻なトラブルを招くのは火を見るより明らかです。C級隊員に示しをつけるため、ボーダーの規律を守るため、彼はルールに則って処罰されるべきです」

 

 まぁ、藍の言うことはもっともだ。大いに正しいけど、この場で言うようなことでもないし、なんだったら処罰するかどうか決めるのもおれたちじゃない。

 

 まぁ、こいつの性格上、対抗心が出てしまってこんな言い方しかできなかったんだろう。もうちょっと柔らかくなれば色々と楽なのにな。

 

 そしてその藍につっかかったのは遊真だった。

 

「お前なんで遅れて来たのに偉そうなの?助けたのはオサムで間に合ったのはタバネだろ」

 

「なっ…、あなたは誰?」

 

「オサムとタバネに助けられた人間だよ」

 

 おっと、なんとなく分かってたけど好戦的だなこいつ。三雲くんは止めようとしてるが止まらない。

 

「そもそもお前は間に合ってないんだから何も言う資格ないだろ」

 

「確かに私は間に合わなかったから何も言う資格はないかもしれない。でもね、彼はまだ訓練生であるC級で基地外ではトリガーの使用許可はないの。トリガーを使って人助けをしたいならボーダーの許可が必要よ、当然でしょ?トリガーはボーダーのものなんだから」

 

「何言ってんだ?トリガーはもともと近界民のもんだろ?」

 

 おっと、この流れはまずい。藍がやり込められそうな気がしてならない。プライドが高くてそれだけの実力もあるけどなにせ隙も多いやつだからなぁ。

 

「おまえらはいちいち近界民に許可とってトリガー使ってんの?」

 

「あなたボーダーの活動を否定する気…!」

 

「おい、落ち着きなよ藍。遊真はそんなこと言ってないだろ」

 

「あなたは黙ってて!」

 

 聞く耳持ってくれない。もうどうにでもなってしまえと思ったので、成り行きを見守ることにする。

 

「…ていうかおまえ、オサムが褒められるのが気にくわないだけだろ」

 

「なっ…」

 

 図星突かれちゃったか〜。こうなったらもう逆転は不可能だ。

 

「何を言ってるの⁉︎わっ…私はただ組織の規律の話を…」

 

「ふーん、おまえ…つまんない嘘つくね」

 

 そしてこのタイミングで手を打つ音が二度聞こえた。

 

「はいはいそこまで」

 

 この言い争いに終止符をうち仲介してくれる人は嵐山隊の名バランサー、とっきー先輩だ。

 

「現場調査は終わった。回収班呼んで撤収するよ」

 

「とっきー先輩!おつかれ!」

 

「うん、おつかれ。木虎の言い分もわかるけど、三雲くんの処罰を決めるのは上の人だよ。オレたちじゃない。ですよね?嵐山さん?」

 

「なるほど!充の言う通りだ!今回のことはうちの隊から報告しておこう。いいな、篠宮」

 

「了解、嵐山さん」

 

「よし、三雲くんは今日中に本部に出頭するように。処罰が重くならないように力を尽くすよ。本当にありがとう…!」

 

「…そんな…こちらこそ…」

 

 嵐山さんと三雲くんが握手をしてこの騒動はお開きとなった。

 

 本部に戻ったあと通信を切ったことをめちゃめちゃしおんさんに怒られたけど、今度野良猫の写真撮ってくるので許してください…。

 

 最終的にはホクホクしてたしまぁいいか。




楽しんでいただけたでしょうか?いただけたら幸いです。

今年ももう終わりですね、来年はもっと面白いものを作れるように頑張りたいです!

そして、平成最後のコミケに行けなかったのがとてもくやしいぃ…。
一回しか行ったことないんですけど…

では、来年もよろしくお願いします。

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