RD/ストラトス   作:ハナガネ

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チャプター 09

学園祭はその始まりから盛況を迎えていた。

毎年、騒がしいものであることには変わりないのだが──今年は更にそれを加速する要因がある。それは生徒会長が考案したルール。各部活対抗の催し物で1位になった部活に織斑一夏を入部させる権利を得ることができるというものだった。

 

「……」

 

だが、その考案者である更識楯無は浮かない顔をしていた。

 

「亡国機業──」

 

生徒会長は側面の1つに過ぎない。彼女は暗部用暗部──要するにカウンター──を代々担ってきた『更識家』の十七代目当主だった。

手元にプリントアウトされた資料に記されたのは動向が怪しい秘密結社『亡国機業』、そして──

 

「RD」

 

世間で今や知らぬ人などいないテロリスト、RDの写真。彼女は世界中が血眼になってまでRDという男一人を探しているのか、その本当の理由を知る者の一人だった。

篠ノ之束。進出希望の奇人にして天才にして──今や、たった一人を除き誰もが抗えぬ天災。臨海学校に実妹である篠ノ乃箒に与えた専用機『赤椿』の性能テストのためだけに銀の福音事件を起こしたと報告を受けていた。

そんな超人ですら他人に頼ってでも是が非でも抹消したい存在が、RD。その男がアーマードコアと呼ばれる兵器に乗り、学園祭に現れると織斑千冬から聞かされたのは4日前の話。

そして、それは丁度、探っていた亡国企業が大きな動きを見せたのと合致していた。

 

「偶然、にしては出来すぎね」

 

それは、アメリカの代表候補生、ダリル・ケイシーの専用機がメンテナンスのために送られてくることになったIS『ファング・クェイク』を輸送中のVTOLが何者かに乗っ取られかけたという事件。ファング・クェイクはダリル・ケイシー本人がまだ手元にあった専用機でVTOLを撃破し、本人の手で回収され事なきを得た。問題は誰がそれをハッキングしたのか。直ぐに残骸をIS学園に運び込み調査をしたが、手がかりなるような形跡は発見されなかった。しかし、怪しげな物品を積載したトラックの調査、潜んだスパイの徹底的なあぶりだし、地下道や裏道への張り込みなどで連日、亡国機業の手先を捉えていたことから、この事件にも関与していると楯無は見ていた。

 

(何処に、いる)

 

だが、それだけだ。RDと幹部はどれだけ探しても見つからなかった。

彼らは潜入を取り止めた訳では無い。この学園の何処かに既にRD、ひいては亡国企業の一味は潜入していると楯無の長年の勘が叫んでいた。

だからこそ、今、こうして全てを洗い出しているのだが──まるで見つからない。

 

「ん……?」

 

その時、モニターに知らない人物から、一通のメールが届く。このコンピュータは極秘のもの。それはつまり、自身の正体を知るものか──怪物的な技量を持つ誰かからの干渉だった。

 

「……あはっ」

送られてきた内容と差出人の名をを確認し楯無は笑った。それは、今回限りの最強の援軍からのメールだったのだから。

 

「こうしちゃ、いられない」

 

援軍──篠ノ乃束が送ってきたのはリアルタイムのIS学園の地下区の透過映像。それは、ダリル・ケイシーが回収したIS『ファング・クェイク』が収められていたコンテナを捉えていたのだが──その中にあったのはあるべきはずのISではなかった。

更識楯無はすぐさま部下に任務を下した。そのコンテナの中でじっと身を潜めている頭の無い未完成の鉄巨人──アーマードコアに搭乗しているパイロットの抹殺を。

 

 

演目『シンデレラ』

それは名目ばかりでその実態は織斑一夏の同日同居の権利をかけた、バトルロワイヤル。襲いかかる襲撃者(ヒロイン)からの攻撃を何とか躱していた、一夏はふと観客席にいた人物に目がいった。

 

「ラウラ……?なんで、観客席に」

 

広い観客席の中央の奥。そこには先まで自分を追い回していたはずのラウラが凛とした佇まいで着席していたのだ。

 

「貰った!」

 

「あぶなっ!……え?」

 

織斑一夏はタクティカルナイフの攻撃を回避し、目を疑った。

 

「なんで、ラウラが?今、観客席にいたはずじゃ」

 

そこにいたのは、紛れもなくドレスに身を包んだラウラだったからだ。

 

「何を言っている嫁。私はその王冠をずっと狙っているッ──!」

 

再び振るわれたナイフを前転で避け、さらに後ろから狙撃してきたセシリアの狙撃もそのまま地面に手を付き、跳ね起きる事で躱す。

そして、一夏はもう一度観客席を見た。

いなかった。そこには1つの空席があるばかりだった。

 

(今のは、一体──)

 

「隙ありッ!」

 

「うわぁ!?」

 

だが、その思考も振り下ろされた箒の一閃で断ち切られた。惚けている暇はない。一夏はともかく射線を切るため、更衣室へと逃げ込むのだった。

 

 

『こちらクロエ。皆様、作戦実行時刻です。RD様、ACの準備の方はどうでしょうか。どうぞ』

 

「こちらRD。一時はどうなるかと思ったすけど、何とか整ってるっす。どうぞ」

 

立ち上げたACの状態は良好。また、新しくヘリから入手した武器の換装も既に済んでいた。

 

『こちらクロエ。会場内からターゲット、織斑一夏は更衣室に向かったのを確認。オータム様、エム様、配置についてください。どうぞ』

 

『ちっ、こちらオータム。てめぇが指図してんじゃねぇ』

 

『こちらクロエ。今回の作戦の現場指揮は私です。従ってください。どうぞ』

 

『……こちらエム。まもなく作戦エリアに侵攻し、オータムの支援に当たる。どうぞ』

 

『てめぇの支援なんか要らねぇよエム!……ちっ、織斑一夏を捉えた』

 

『こちらスコール。落ち着きなさい、オータム。確認するわ。目標は白式の奪取と警備の誘導。作戦時間は60分、時間厳守。特にRD──あなたは遅れた場合、一人で日本中のIS乗り達と眠れない激しい夜を過ごしてもらうことになるわ。どうぞ』

 

「こちらRD。了解。どうぞ」

 

『こちらスコール。つれない返事ね。まぁ、いいわ。時計を合わせるわよ3、2、1──今。現時刻をもって、オペレーション・ナイツパージを発令。ミッションの完全遂行を祈るわ。オーバー』

 

通信終了。HUDの右端に表示されたカウントが進んでいる事を確認。作戦が始まった。大きく息を吸って、操縦桿を握り直す。

 

「……行くぞ」

 

『メインシステム 戦闘モードを起動します』

 

復讐は闇より今、動き出す。

 

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