RD/ストラトス   作:ハナガネ

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チャプター 11

『システム スキャンモード』

 

(……よし)

 

懸念だったデータの更新は上手くいったようだ。亡国機業から送られてきた情報とスキャンされた情報とが照合され、以前はエラーだった機体の詳細なデータがHUDに表示される。ブルー・ティアーズ、甲龍、ラファール・リヴァイブ・カスタムII、シュヴァルツェア・レーゲン、ミステリアス・レイディ。残る2機は該当無し(n/a)。篠ノ之束お手製の機体だったか。一機は篠ノ之束の篠ノ乃箒が駆る第4世代とやらの赤椿。そして、もう一機は──

 

「せえああああああ!」

 

織斑一夏が駆る、白式。今回のターゲットだ。

一夏は白式のウイング・スラスターにエネルギーを充填、解放。瞬時加速(イグニッション・ブースト)、流星の如き推進力をもって、ヴェンジェンスへと接敵していた。

 

『システム 戦闘モード』

 

だが、その行動はブリーフィングで渡された資料から予想されていた。RDは瞬時加速よりも速く、後方へハイブーストを吹かし、距離を取る。

逃すまいと白式は突っ込んでくる。速度は白式の方が上。ヴェンジェンスに迫る零落白夜。

だが、なんら問題はない。しっかりと引き付けた上で、RDは右方向へと再びハイブーストを行い、白式の側面に回り込む。

 

「しまっ──」

 

瞬時加速の勢いは急には殺せない。白式はヴェンジェンスを通り過ぎてしまう。

誘われた。一夏は急いでマニュアルでPICを操作し、方向転換を試みるが、その体勢からでは既に遅い。

動きを止めた白式目掛けてガトリングガンの銃身が回り出す。

 

「一夏!ぐっ……うっ」

 

しかし、炸裂する寸前。一夏の前にシャルロットが飛び込んだ。銃弾の威力を受け流そうと、ラファールの盾に傾斜をつけて構える。だが、それはあくまでも銃弾に対する策。シャルロットは急速に削れていくシールドエネルギーと打ち上がっていく盾に相手のスケールを見誤ったことを悟った。

 

「シャル!すまない!」

 

ここで復帰した一夏が、シャルロットの前に展開装甲げ盾を形成、押し負けそうになっていたラファールとスイッチ。そして、シャルロットの手を掴んで離脱せんと再び瞬時加速のチャージを始める。

ピシリ。それは盾にヒビが入った音だった。間に合わない。ならば、シャルロットだけでも──そう思った矢先、ヴェンジェンスのガトリングガンの照準が突如、右に逸れる。

 

「こっちだ、デカブツ!」

 

「わたくし達もいることをお忘れで!?」

 

シュヴァルツェア・レーゲンのリボルバーカノンとブルー・ティアーズのスターライトmkIIIの同時狙撃。

仕留め損ねたRDは小さく舌打ち。即座にそちらに照準を向けるも、2機はヴェンジェンスの後方へと周り、射線から逃れる。

こうも近くを飛び回られてはロックが追い付かない。場が悪いと判断したRDは劇場の壁を蹴って跳躍し、空へと飛び出す。

 

「行った!合わせてよ箒!」

 

「言われなくとも!」

 

だが、それは完全に悪手だ。空は彼女達の領域なのだから。

飛び出したヴェンジェンスを追ってくる甲竜と紅椿。手にマウントされているのはどちらも刃──RDは格闘戦に持ち込む気と読み、以前のようにブーストチャージを仕掛ける。

 

「「甘い!」」

 

だが、彼女達はその読みを読んでいた。急停止した甲竜は刃ではなく砲門を、紅椿はその場で一振の刀で刺突する。

一体何を。RDの疑問は機体が僅かに揺さぶられた事で衝撃に変わる。

赤月から放たれたビームと不可視の一撃──龍咆が命中したのだ。直ぐにブースターを停止、下降を開始し、追撃を躱す。

 

「誘導ナイス!これなら──」

 

機体の背面。楯無は蒼流旋に装備された四門のガトリングガンを斉射し突貫してきていた。狙いは、落ちていくヴェンジェンスのブースター。

 

(クソッ……!)

 

完璧な奇襲だったはず。しかし、その一瞬のアドバンテージはデータからは予想できなかった阿吽の呼吸の連携で覆された。

RDはペダルを踏み込むことで何とか機体の下半身を逸らし、その槍先をブースターから外れさせる。ぶつかり合う槍と装甲。ぎい、という悲鳴を先に上げたのは槍だった。

 

「くっ……!」

 

貫けない。それを理解した楯無はすぐさま後退。

同時にRDも地面へと着地。弾幕をばら撒きつつ、慣性とブースターで滑りながら反転。全員をカメラに捉えられる距離まで後退する。

 

(……手強い)

 

それは、RDの心の底から漏れ出た純然な彼らへの評価。ついさっきまでは『ヤバい』感じはちっともしていなかったのだが、こうして彼らとしっかりと相対すると分かる。

油断ならない相手──1人1人であればヴェンジェンスの脅威足り得ないが、彼らが連携した場合、こちらの命を脅かす脅威であると。

 

(織斑、一夏)

 

その要は、間違いなく唯一の男性操縦者の一夏。彼の操る白式の零落白夜も確かに危険だと脳が警告を発しているが──真に恐るべきは、各国のエリートの彼女らを慕わせるカリスマ。

技量こそ周りの彼女らに劣るものの、彼がいなければこの卓越した連携をこなす信頼関係はできなかったのだろう。

成程、これがIS乗り。これが、世界を導くもの。これが──

 

(……オレの命を奪おうとするものか)

 

急速に頭が冴えていく。

ACという唯一無二に驕り、慢心していた。その慢心が招く結果をよく知っていたはずなのに。

ここは敵地で、戦場。後ろ盾も完全には信用ならない。頼れるのはやはり、自分のみ。

目の前の敵をしっかりと捉え、必要な情報のみを集約、操縦桿を握り直す。

 

「行くぞ」

 

そして、ヴェンジェンスは彼らに向かって突撃を開始した。

 

 

ブースターの破壊に失敗した楯無の頭の中には疑問が駆け巡っていた。

アーマードコアと呼ばれたこの兵器は、篠ノ乃束が直々に破壊し、後はパイロットであるRDトドメを刺すだけとなっていたはずだった。

だが、現にヤツはIS学園に現れ、こうして敵対している。鍵を握っていると思しき織斑千冬に先程から何度もコールしているのだが、電波障害が発生しているようで中々繋がらない。

救援も望めず、現有戦力で対応するしかない。つまり──いつも通り。

楯無はプライベート・チャンネルを開く。

 

『みんな聞こえてる?』

 

『楯無さん!な、何なんですか、アイツ!?』

 

『落ち着いて。あれは、アーマードコア。織斑先生、篠ノ之束博士が言うには──異世界の兵器だそうよ』

 

『『『い、異世界!?』』』

 

代表候補生達が驚くが、楯無は直ぐに続ける。

 

『現状、アーマードコアについては詳細不明。でも、さっきの動きを見るに、ハイパーセンサーのように360度見渡しているわけじゃないのと、ISのように自由に空を飛べるわけじゃないと思う。でも、警戒して。何をしてくるか──来た!散開!今の事、頭に入ってるわね!』

 

『『『はい!』』』

 

空へ、地上へ、立体的に包囲網を展開するIS乗り達。

対して、ヴェンジェンスは──その包囲網へ真っ直ぐに突っ込んんだ。

 

「!?何する気かしらないけど!」

先にいたのは鈴。ガトリングガンの銃口から射線を見切り、その合間に龍咆を構え、放つ。

だが、先程違いヴェンジェンスはその速度を緩めることなく、左へと旋回。更に火を噴かしてブーストし、鈴との距離を一瞬で詰める。

 

「鈴さん!」

 

「これくらい──違う!セシリア!」

 

「え──」

 

正面にいた鈴は上空へと回避しようとして、直ぐに気がつく。ヴェンジェンスの左手に握られていたレーザーライフル(ULR-09/R)の照準が向けられようとしていたことに。

だが、セシリアは反応が遅れた。ヴェンジェンスが突っ込んできたがためにできた死角によって、左腕が確認できなかったからだ。

一条の光がセシリアに閃き、直撃。

 

「ごめん!」

 

だが、それよりも早く、セシリアへ照準を変えた鈴が甲龍に搭載されたもう1つの衝撃砲、崩拳で吹き飛ばした。タッチの差で位置がズレたブルー・ティアーズはなんとか直撃を免れた。

だが、負った損傷はそれでも重篤だった。レーザーライフルが掠めた左の浮遊武装(アンロック・ユニット)、それに付随していたブルー・ティアーズ1機は完全に消され、セシリアはPICの操作もままならぬまま、彼方へと吹き飛ばされていく。

 

「セシリア!」

 

「余所見をするな!」

 

ラウラの叫んだ通り、ヴェンジェンスは次のターゲットを背後にいたシャルロットに選定していた。シャルロットは迫り来るヴェンジェンスを空中へと飛び上がりつつ、アサルトライフル『ヴェント』を両手に構え、迎え撃つ。

だが、ヴェンジェンスは避けなかった。その銃弾の雨をノーガードで突っ切り、お返しと言わんばかりにガトリングガンを唸らす。

 

「シャルロット!」

 

不味いと見たラウラは素早く左側面からシュヴァルツェア・レーゲンのリボルバーカノンを、さらにその近くにいた楯無も合わせてガトリングガンを背後から放つ。

だが、ヴェンジェンスはそれも回避せずに、シャルロットを一直線に追う。

 

「箒!」

 

「ああ!」

 

ならばと、ヴェンジェンスへと正面から突貫する一夏と箒。エネルギーの刃を形成し、すれ違いざまに斬る。

100、80、40。距離が縮まっていき、ハイパーセンサーが送受者の意図を読み取り、狙うポイント──ヴェンジェンスの関節部をマークする。20、10──0。

 

「うわあっ!?」

 

刃を振りかぶった彼らの世界は突如、真っ白な光に染め上げられた。狙いを失った箒は上へ、一夏は右へと旋回しようとする。

しかし、一夏の脳天から強い衝撃が走る。同時に、身動きの一切が取れなくなった。

 

「一夏あっ!」

 

届く、箒の絶叫。何も、見えない。それでも何か危険が迫っていることだけは確かだと理解し、一夏は必死に白式を飛ばそうとするが、全く動かない。重い。何かが腹の上にのしかかっている。

 

『……捉えた』

 

響く、静かな男の声。

ようやく彩りが戻った一夏の目が捉えたのは、自分を押し潰す鉄の柱と大きな穴。

鉄の柱はヴェンジェンスの脚、大きな穴は向けられたレーザーライフルの銃口。

 

それに一夏が気が付いたのとレーザーライフルが発射されたのは全くの同時だった。

 

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