RD/ストラトス   作:ハナガネ

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チャプター 12

「──それにしてもめちゃくちゃな作戦ね」

 

時は5日前──ブリーフィングに遡る。

スコールはRDが立てた作戦に頭を抱えた。

当初、スコールが立てた作戦は物資に偽装し、ACを解体し運ぶこと。ヴェンジェンスに触れないという契約があるため、ACを解体し物資に偽装するのはRD、そこから運ぶのは亡国企業。そのような役割分担でIS学園へと運搬し、再び1つに組み立てる。そして、IS学園の外からはクロエ達IS乗りが、中からはヴェンジェンスが襲撃し、セキュリティを瓦解させる──亡国機業の組織力と技量を鑑みれば、決して不可能ではないと思われる作戦ではあった。

 

「……そうっすね。あれじゃ、篠ノ之束に簡単に狩られると思ったんで」

 

しかし、RDはその作戦に異を唱えた。

 

「アイツがオレを見ない日はない。それは確かっす」

 

RDは分かっていた。一日に何度かぞくりと背筋が凍る瞬間がある。最初は暗殺者か何かがいるのだと思っていたが、補給をする際に軍事施設をハッキングしたという報告とその悪寒が重なっていたことから、それは篠ノ乃束に見られているのだと気が付いた。

確かに、亡国機業は下っ端であっても精鋭揃いだ。だが、精鋭程度では篠ノ乃束という究極には敵わない。パーツを個別に運んだところでマーキングされている以上、即座に破壊されるか、運が良くても何処かで破壊されるかがオチに見えている。

 

「そうね。でも、まさか──ヴェンジェンスの予備パーツを囮にするだなんて」

 

「あれは予備パーツじゃない、既に故障していたパーツ(JUNKED)っすよ」

 

だから、RDは考えた。

ロザリィのヘリから見つかったパーツは後、3回程度なら機体自体を変えられる程の量があった。ただし、それには故障品を使えば、という枕詞がつく。

相手は故障品でどうにかなるほど甘くない。ならば、いっそ囮に使った方が有益とRDは判断したのだ。

 

「故障品を偽装して、態々ルートを分けて?何の役に立つってんだよ」

 

「オレから意識が逸れる。間違いないっすよ」

 

「はぁ!?」

 

「──篠ノ乃束はヴェンジェンスの技術を流出させたくない。それが理由っす」

 

何故、篠ノ之束がACをこれ程までに排除しようとしているのか。それはACの技術が広まってしまえば、世界はISという空の領域を忘れ、文字通り地の獄で再び争いを始めてしまうから──そう、彼女本人は語っていた。

 

「ヴェンジェンスを知ってるオレか、ヴェンジェンスそのものか。オータム、アンタが篠ノ乃束だったらどっちを消したいっすか」

 

「お前だって言ったら?」

 

「お望み通り、世界は闘争を求めることになるっすね」

 

そう、故に──篠ノ乃束は決してACから目を離すことはできない。結果として、RDへのマークが僅かばかりとは言え、薄れるという訳だ。

そしてRDには、それを確信する事実があった。

 

「おかしいと思わないっすか」

 

「何がだ」

 

()()()()()()()()()()()()()()

 

そうだ。束は確かに宣言した。ISのために持てる力を全て使って、RDとACをこの世から抹殺すると。

ならば何故、ベースはまだ存在しているのか。場所も割れている、外に出れば殺意に満ちた攻撃を仕掛けてくる。なのに、ベースには攻めてこない。

それは、つまり──

 

「怖いんすよ、篠ノ乃束は。ヴェンジェンスがオレ以外の手に渡るのが」

 

RDはつまらなさそうにニヒルな笑いを浮かべ、続ける。

 

「だから、そのパーツの目的地を今回の作戦エリア、IS学園に集約すれば篠ノ乃束の興味のピントは技術流出から襲撃準備に合わさる。そして、それに合わせてオレもベースを出発すればACもオレもいないベースに篠ノ乃束の用事はない」

 

「そこで──ロケットの改造品」

 

「もう、ヴェンジェンスは搭載済みっす」

 

「……改めてて聞くけど、正気なの?──ロケットを改造して中に乗るなんて」

 

「そうでもしないと、あの怪物の手からは逃げらない。オレには分かるんすよ」

 

その隙を狙ってRDが考えついた作戦が、ロケットを改造して、ヴェンジェンスを搭載。撃墜されるよりも前にIS学園を強襲すること。最初は背中にロケットブースターを取り付ける事も考えたのだが、エネルギーバリアでも張らなければ機体が持たないと直ぐに分かった。ならば、と代案で1番近いロケットに積載することを考えついたのだ。

 

「……スコール!なんでこんな新入りの戯言を聞いた!?私達に、何の利点があるって言うんだよ!」

 

たまらず、オータムが叫ぶ。言葉こそ悪いが、それはもっとな正論だ。

そう、この作戦は仰々しくやっているが、内容はたかだかAC一機を送るだけ。それに反してかかるコストは莫大だ。あまりにもRDを特別扱いしすぎている。

 

「……いいえ、オータム。私達にもメリットはあるわ」

 

「オータム……?」

 

スコールはオータムの頭を撫でながら、宥めるように話す。

 

「彼に意識が向くということは、私達に目が向けられなるということよ」

 

「……それについてはオレが説明するっすよ」

 

「テメェは黙ってろ!」

 

「落ち着いて下さい、オータム様」

 

胸ぐらを掴もうとテーブルに乗り、近付いてきたオータム。クロエが制止する。

クロエはオータムの剣幕にも微動だにせずRDに目配せ。それに合わせてRDはため息をついた後、この作戦最大のメリットを提示する。

 

「……確かにアンタらの乗るISは優れてるっすよ。自由な飛行能力、機動力、操縦桿を使わない能動的な操作感覚。そんな兵器で飛び回られちゃ、既存の兵器はマトモに弾も当てられず、勝てるはずもない」

 

「何が言いてぇンだ!?あぁ!?」

 

「ただ、逆に言えば諦めて見逃すという手段も取れるってことっす。別の対応出来る驚異に力を裂くと言い替えてもいいっすね。でも──ヴェンジェンスは違う」

 

RDは一歩、前に踏み出しクロエを下げる。そして、RDはオータム、エム、スコールを順番に睨み上げる。

 

「オレのヴェンジェンスは空高くは飛べない。だけど、装甲の堅さと総合的な火力はISの何倍も上。つまり──敵の目をより長く引きつけるには、うってつけの存在」

 

ISと違い、ACの主戦場は地上。幾らでも狙えば、届かせることができる。

だが、それは届くだけ。装甲を貫通し、を損傷を与えるにはあまりにも火力が足りない。威力が足りないなら、数を増やす必要がある。だからこそ、相手はACに大きく戦力を当てる必要が出てくる、というわけだ。

だが、そこに口を挟んだのはエムだった

 

「……そのヴェンジェンスとやらの有用性があるとしよう。だが、強襲に何故ロケットを使う?撃墜される可能性の方が高い。白騎士事件を忘れたか」

 

「篠ノ乃束と織斑千冬がミサイルを2000発以上を落とした話っすよね?問題ないっすよ」

 

「……何故だ?」

 

「今回は届きさえすればいい。対空装備で弾頭は壊せてもACは壊せないからっす」

 

「中国から日本に渡る間に撃墜されねぇと思ってんのか!?あぁ!?」

 

「ロケットの弾道は予告無しの低空飛行で、中国の軍事施設の上空は通らない。完全撃墜の可能性は極めて低い。後、それに関しては一つ情報をロケットの発射と同時に中国政府にスコールに流して貰って対処するっす」

 

「『その中にRDが乗っている』ね』

 

中国政府はそれは間に合うかどうかはさておいて、ミサイル自体を撃墜しようとは試みるだろう。

だが、ここにRDが絡むと話が変わってくる。

 

「篠ノ乃束は、オレを消せばその国にISの技術を提供すると言っている」

 

「それが迎撃の対策と何の関係がある」

 

RDは親指で首を描き切るジェスチャーをエムに見せつける。そして、口角をゆがめて言った。

 

「──そんな餌を前にして、国同士が連携すると思うっすか?」

 

今の時代、IS技術の進歩はそれだけで国家の優位性を高める。

放たれたロケットの中にRD──つまり、IS技術を向上させる卵がある。ならば、中国は日本にロケットが向かっていると伝えるだろうか?

否、伝えない。何がなんでも本土で打ち落とそうとするだろう。

 

「問題のISっすけど……ベースからIS学園までは大体1000km。ロケットの速さは本来第二宇宙速度──ただ、今回はそれだとヴェンジェンスとオレが耐えられないんで、マッハ4から6までに抑えるっす。その距離、その速度ならISであっても中々、捉えられるものじゃないってのはアンタらが1番分かってるはずっすよね」

 

「なら着陸は?そもそも、そのGにお前は耐えられるのか?」

 

「着陸は落下傘とヴェンジェンスのブーストで緩和するっす。Gの問題はヴェンジェンス用の耐Gスーツを着て五分五分と言ったところっすかね」

 

「こう、言ってはなんだけど──RD、あなたかなり無謀よ。死にたいの?」

 

スコールのその言葉にRDはすぐさま吠えた。

 

「自己犠牲?冗談じゃない、オレはオレでアンタらに乗ってやりつつ生きる最善の方法を考えてるんすよ」

 

「それにしては、随分と荒っぽいように思えるのだけれど?」

 

「ヘリとか船とかトレーラーとかで運ぶよりかはまだ、生存確率が高い。それだけっす」

 

RDとスコールの視線がぶつかり合う。互いに何も発せず、タダでさえ悪い空気はさらに重くなり、軋む音を幻聴する。

 

「……わかったわ。予定通り進めましょうか」

 

「ほう」

 

「スコール!」

 

エムはRDの見る目を変え、オータムは何を馬鹿な、考え直せと言わんばかりにと叫ぶ。

 

「決まりましたね」

 

それらをピシャリと遮るようにクロエが淡々とタブレットを操作し、作戦を改めてまとめる。

 

「オータム様が先行し、ターゲットの織斑一夏から白式をリムーバーで回収。その後、脱出するエム様と私、クロエは他のIS乗り達を足止め。そしてRD様はロケットでIS学園に突入し、残りの仕事──打鉄を回収をする間、セキュリティを引きつける。これでよろしかったでしょうか?」

 

「いえ、一つ聞いてもいいかしらRD?」

 

「なんすか」

 

「ジャンク品でも装甲はあるんでしょう?」

 

「まぁ、優れてるとは言い難いっすけど。それでも外からの攻撃なら数回は耐えられると思うっすよ」

 

「そう。なら、私の姪、ダリル・ケイシー……いえ、レイン・ミューゼルをコックピットに乗せてあなたと偽装するのはどうかしら?あなたがいいと言えばだけど。IS乗りとバレないように専用機も外すわ」

 

「篠ノ之束を騙すなら……構わないすけど。中にはACを吹っ飛ばせる量の爆薬が詰まってる。何かあれば中に人がいようと容赦なく吹き飛ばす、いいっすね」

 

「構わないわ」

 

ひらひらと手を振るスコール。それを確認したクロエがこほん、と小さく咳払いをする。

 

「では、作戦は5日後。RD様はこの後、北京から運ばれてくるパーツと交換で物資に紛れ、ベースへと帰還し準備をお願いします。作戦の総指揮はスコール様が、現場指揮は私、クロエが務めさせていただきます」

 

──こうして作戦は決行された。入念な下準備とブラフ。

 

そしてついには裏の裏をかき──篠ノ之束を出し抜いた。全てが上手くいった。

 

 

 

 

そう思われた──彼らにも大きな見落としがあった。

 

(んなっ……に!)

 

IS学園、現在。織斑一夏を追い詰めていたはずのRD、ヴェンジェンスは急速に飛び退いた。だが、脚の一部のブースターの出力が上がらず、着地地点で体勢を僅かに崩す。

地表に空いた2つのクレーター。その狭間にいるのは撃ったはずの織斑一夏。

 

(これ程か、零落白夜──!)

 

RDはHUDに表示されたAPを見て驚愕した。これまでほとんど跳弾していたはずなのに、白式──零落白夜が発動した雪片弍型その一振がヴェンジェンスのAPを1割も削ったのだ。

ぞくりと震えた。実力がないと思っていた織斑一夏に『ヤバい』と本能が訴えかけてくるが、それは遅れてきたのではない。

 

たった今、見逃せない脅威となったのだ。

 

そう、彼ら──いや、RDの誤算。

それは、ヴェンジェンスの装甲をも貫通する、エネルギー無効化エネルギー攻撃(TE属性無効化TE属性攻撃)を持つ天敵の存在──すなわち、織斑一夏が搭乗する、ターゲットの白式そのものだった。

 

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