RD/ストラトス   作:ハナガネ

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チャプター 13

ブースターを再起動。出力の落ちた左脚部のブースターは再び出力を取り戻す。

零落白夜──雪羅になる前の白式より存在していたISの固有能力、単一使用能力と呼ばれるもの。確かその効果は自身のシールドエネルギーを対価に絶対防御すら断つ諸刃の剣。

だが、まさか。レーザーライフルすら両断し、それどころかヴェンジェンスを破壊に届く力とは。

そして、先の連携。攻撃が致命傷にならないと踏んだからこそ攻めの姿勢で崩しに行ったが、もう繰り返せるものでは無い。

 

(……追ってこい、IS乗り)

 

RDは織斑一夏の位置を確認して、反転。グライドブーストで彼女達の総攻撃に突貫しながら、入り組んだIS学園の内部へと滑り込む。

 

()()3()。追ってきてくれているな)

 

HUDに地図を表示。流石、世界最高峰ということあってIS学園の敷地は広い。その上、敷地面積の殆どを余すことなくアリーナや研究棟、校舎が所狭しと建物が並んでいる。

それはつまるところ、ACにとって最高の環境だった。

 

「いたぞ!」

 

追ってきていたのは、レーゲン、ラファール、甲龍の三機。

先頭にいたレーゲンが会敵と同時にリボルバーカノンとワイヤーブレードを放ってくるが、RDはそれを建物を盾にすることでやり過ごす。

 

(来る)

 

「やあああああああっ!」

 

直ぐに角を曲がってきたのは甲龍。1つに束ねた双牙天月をガトリングガンの弾を弾く為なのか、回転させて突っ込んでくる。

だが、先のミステリアス・レイディの攻撃でただの刃物による近接攻撃は大したダメージにならない事は分かっているはずだ。

 

()()1()。本命はこっちか)

 

ならば、やはり来ていた。

ラファールが裏から回って近付いきていることを先から撒いていたリコンが感知。動きがないことを見るに、建物の影で待っているのだろう。その目的は左手に隠されたパイルバンカー、灰色の鱗殼(グレー・スケール)を打ち込むためか。

 

(なら)

 

ヴェンジェンスはあえて、甲龍に追い詰められるように下がっていく。そして、反応の近くまで到達した瞬間、ヴェンジェンスを白い校舎を踏み台に跳躍、加速した。

 

「な!?」

 

「え!?」

 

驚きの声を上げたのはシャルロットと鈴、両名。

ラファールはグレートスケールを、甲龍は双牙天月を振り下ろそうとした。完璧な裏取り。だが、それはヴェンジェンスが飛んだ事で危うく衝突寸前という最悪な形に終わる。

スキを見せた、狙われる。そう予期した2人はすぐさま目配せでシールドエネルギーに余裕がないラファールの前に甲龍が前となり、建物の裏へ下がろうとする。

 

「ラウラ!」

 

「わかっ、ている!」

 

だが、RDが狙いをつけたのはスキがあった2機ではなくレーゲン。ロック性能の高いFCS(UFC-11GLANCE)のおかげで、レーゲンが見えてから直ぐにロックが完了。それとほぼ同時にチャージしていたレーザーライフルを発射する。

越界の瞳を発動させていたことにより、レーゲンは機体をバレルロールすることにより不意打ちじみた攻撃を紙一重で回避。そして、その手にプラズマが発生させ、瞬時加速で接近してくる。

RDはすぐさまブースターを停止させ、慣性にしたがい降下。ガトリングガンで牽制しつつ再び建物を蹴り、また別の建物を蹴りとブーストドライブを連続させ彼女らから離れる。

そして、同時に隠れていたビットから放たれたミサイルも迎撃する。

 

(ブルー・ティアーズ……落ちていなかったのか)

 

さらにもう一機から放たれたミサイルはハイブーストで躱し、着地。

同時にヴェンジェンスの四方から青いレーザーが飛来する。

 

「先程のお返しですわ!」

 

(くっ!)

 

ヴェンジェンスは着地の硬直で動けない。青いレーザーは全て、ヴェンジェンスに命中する。

 

(装甲は貫通していない!)

 

だが、ビットで良かった。BT兵器はまだ試験段階、APを確認するにヴェンジェンスの装甲を貫通するほどの威力はまだ有していないようだ。

 

「ふっ!」

 

紅い影が一瞬でヴェンジェンスの横を通り過ぎていく。遅れてさらに減少するAP。

 

(紅椿か!)

 

通り過ぎて、空へと再び戻っていく紅椿。どうやら、腕部に切り掛かられたようだ。

ロックしてレーザーライフルで狙い撃とうとしたが速過ぎる。通常の巡航速度ですら、先のレーゲンの瞬時加速の比ではない。RDの狙いは直ぐに浮遊していたブルー・ティアーズへと変更される。

ビット兵器の効果が薄いと見たブルー・ティアーズは直ぐにスターライトmkIIIを構えていた。RDは直ぐにガトリングガンで阻止を試みる。

 

「撃って!」

 

しかし、届かない。ティアーズの前に形成されたミステリアス・レイディの水のシールドによって銃弾の威力が殺されていく。

直ぐに貫通するだろうが、それはレーザーの光が閃いた後だ。

 

(ちいっ!)

 

仕留めきれたかもしれないが、後方へブースト。そして見えてきた大きな建物の隔壁をガトリングガンで破壊しつ、退避する。

 

(AP問題なし、右腕左腕共にまだ残弾に余裕はある──なら、試すか)

 

ISは速く、空を飛ぶ。空の自由を奪うために退避したが、彼女らもそれは分かっているはず。むやみに突っ込んではこないはずだ。

だが、RDの狙いはそうでは無い。一点、気が付いたことがあったのだ。

向かう先は一つ。隔壁こそ閉鎖されているが大方、ISの搬入口であろう通路を突き進む。通路にはけたましい赤いランプが回り、アラートが響いている。おかげで通路には人の気配はしなかった。

最後の隔壁を突き破ると、眩しい光に包まれる。たどり着いたの、IS学園で対抗戦などが行われる広いアリーナだ。

上空にはやはりというか既にIS乗りが集合しており、一部の隙もなくこちらの様子を伺っていた。

だが──撃ってはこない。いや、撃っても意味がないのだ。

一瞬の膠着。それを崩したのは紅椿だった。

 

「押し切るっ!」

 

急加速、一瞬にして迫ってくる。あの速さなら捉えきれないという判断か。

 

「なっ……!?」

 

(そうだと思った!)

 

RDは紅椿の接近に合わせ、グライドブースト。急旋回を持って、紅椿とのチェイスを開始する。

 

「……くっ、制御が!」

 

紅椿はヴェンジェンスよりも速い。しかし、それは小回りを効かすためには速度を落とす必要があるということ。大して、ACはグライドブースト中、旋回能力が急激に上昇する。

アリーナが広いため大回りで追う紅椿、小回りを効かせ右へ左へと回り、ついに後方に回るヴェンジェンス。当然、それを他のメンバーが黙って見ていた訳では無い。虎視眈々とヴェンジェンスを穿たんとしていた。

 

(──そこだ)

 

ロック。ヴェンジェンスのノーチャージのレーザーライフルが紅椿を狙い撃つ。

 

「くっ!」

 

紅椿は浮上し、展開装甲によりレーザーライフルを防御。更には直ぐに出力を変更してそのエネルギー刃状に形成し、射撃武器のように飛ばしてくる。

だが──それはヴェジェンスの前で威力を失い、掻き消えた。

 

(やはり──そうだ。有効射程距離は兵器と変わらない!)

 

RDは不思議に思っていた。何故、空を飛べるのにヴェンジェンスにわざわざ接近してくるのか。物理的なダメージ(KE)なら、まだ分かる。だが、ミサイル(CE)レーザー兵器(TE)すらもこちらの攻撃が届く距離まで接近してくるのは違和感があった。

そして、気が付いた。ISはその機体性能に反して、武器の有効射程がさして長くない。それこそ──遠距離戦を得意とするブルー・ティアーズを除けばヴェンジェンスと同じか、むしろそれより少し下か。

そう、ISとACは空を飛ばずとも撃ち合えるのだ。そこにRDは勝機を見出した。

 

(まずは──)

 

弱っている奴から落とす。目をつけたのはラファール。FCSがランチャーを構えたラファールに捉え、ガトリングガンでミサイルを迎撃しつつ追う。

 

「同じ手は何度も食わないよ!」

 

ラファールはランチャーをすぐさま高速切換(ラピッド・スイッチ)でヴェントに持ち替え、ヴェンジェンスと撃ち合いに持ち込む。ヴェンジェンスの弾は避けられ、ラファールの弾は多少当たりこそするが弾かれる。

そう──この距離だ。

 

(ここだ)

 

RDの射撃を停止。そして──誰もいない虚空へとレーザーライフルを撃った。

 

「シャル──!」

 

「えっ──?」

 

(──命中)

 

「うわああああぁぁ!?」

 

広いがために軌道を読まれたラファールに光の本流が直撃。耳障りな破砕音がアリーナ中に響き渡り、絶対防御が発動。シールドエネルギーが尽きたラファールは急速に地へと落下していく。

 

(一人、撃破)

 

RD──彼の本名は『Ray Dominato』。ドミネイト、イギリス英語のそれはアメリカ英語でドミナントと呼ばれる。

 

ドミナント。それはかつて遠い過去に示唆された戦う素質のある者達の呼び名。また、RDの知らない未来では彼らのような才能あるもの達は刈り取る部隊が組まれる程に恐れられ──厳密には違うが──その存在を形容した似たような言葉がある。

 

『黒い鳥』

 

その全てを焼き尽くす伝説は、彼を終わらせた一人の傭兵(イレギュラー)から始まった。

 

そして、今──この世界にも新たな黒い鳥が生まれようとしていた。

 

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