RD/ストラトス   作:ハナガネ

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チャプター 24

「お久しぶりです。IS学園の皆様、並びに織斑千冬様。本日付けで束様の側近に就任いたしました、クロエと申します。よろしくお願いします」

 

「……どういう、ことなんだよ」

 

作戦終了後、クロエと織斑一夏を始めとするIS学園の面々は邂逅した。

一触即発の剣呑な威圧を涼しい顔で受け流すクロエに、今にも殴りかからんとする一夏。

 

「まぁまぁ、一旦落ち着いてよいっくん」

 

「でも、束さん!コイツらは、俺の仲間を!」

 

「えぇ、危害を加えました。仕事でしたので」

 

「お前!」

 

その間に入り取り持つ束。行動を起こしているのは一夏ただ一人ではあったが、その後ろに控える彼女達の殺気はその怒気の何倍も強いものだった。

 

「おい、束。説明しろ、何故お前が肩を持つ……返答次第によっては──ここで」

 

特に──彼女の親友、織斑千冬の怒りは臨界点に達していた。打鉄用のブレードを強く握りしめ、それを振るうことも躊躇わないと言わんばかりにヘラヘラと笑う束を睨む。

 

「まぁ、仕事の契約だよ。RDを倒すためのね──そっちの方がちーちゃんの希望に沿えると思ったし」

 

「……」

 

「そっちの生徒には誰一人として怪我人は出なかったし良かったと思うけど」

 

束の返答に直ぐに千冬は返す。

 

「生徒達に危害を加えない。それを考慮してくれたのは感謝する……だが、私は違うだろう」

 

「いえ、あなたも同じです。ブリュンヒルデ、私の前ではあなたも含めて足手まといにしかならない」

 

「何……?」

 

口を挟んだクロエが束の後ろから淑とした足取りで、一夏の横を通り過ぎ、千冬の前に立つ。

 

「ほざいたな小娘」

 

「事実ですから。私の戦闘にあなた達は追い付けない。お気に召さないと言うのであれば、相手になりますが」

 

「やる?フィールドなら用意するけど?いい戦闘データも取れるだろうし」

 

「……ちっ」

 

ただ、流石に千冬も世界最強とは言え一端の社会人。言葉こそ荒らげたが、挑発に乗ることなく引き下がる。

 

「一つ、いいでしょうか」

 

その隙に割って入る人物がいた。ラウラだ。

織斑の姉弟と同じように表情には不満が現れてこそいたが、流石に軍人。キチリと背筋を正し、挙手した。

 

「あー……ドイツの強化因子素体(アドバンスド)か。何?」

 

「いえ、質問させて頂きたいのは篠ノ之博士ではなく──貴様だ、クロエ」

 

そうして指を指したのは、すぐ目の前のクロエ。

ただ、クロエもそう来ることは分かっていたのだろう。千冬に一礼すると、ラウラの方へ向き直る。

 

「ここでもう一度問う……貴様は何者だ」

 

「C0037──いえ、今はラウラ・ボーディッヒだったわね。ならばラウラ、こう答えようかしら。私はあなた、あなたはもう一人の私、完全な私」

 

「やはり、祖国の……!」

 

「ええ、そう。あなたが祖国と呼ぶ国で生み出された不完全な存在。人として生まれず、物と化したモノ。命をすり潰し、戦う肉人形に作り替えられた──化物。これで満足?」

 

「き、貴様ッ──!」

 

「ラウラ!ダメだ!」

 

ラウラが堪らずクロエの胸倉を掴みにかかろうとするが、その横に控えていた箒がラウラの事を後ろから羽交い締めにして、何とか止める。

 

「姉さん。私からも聞かせてください。何故、亡国機業などと手を組んだのですか」

 

「……」

 

「笑っていないで、答えて下さい!」

 

「──箒ちゃん」

 

束は一瞬のうちに、羽交い締めにされていたラウラを気絶させて大人しくさせると、そのまま箒の顔の輪郭を撫でる。

その途端ビクリ、と箒の肩が強ばり、先までの威勢を失う。それは傍から見ても分かった。慈しむように、人間が愛玩動物を撫でるのと同じように箒は姉の束によって、降伏させられていた。

 

「部屋を片付ける時ってさ、散らかるよね?」

 

「え……?」

 

「それと同じだよ。効率的に世界を綺麗にするために、私は手を組んだのさ──ね?」

 

「……っ」

 

クロエに向けられた、その柔らかい視線。それはクロエに同意を求めるものなのか、或いは。

──だが、その問いを聞き返すことはできなかった。

 

「アラート!?」

 

突如として、研究所に鳴り響く大音量のアラート。瞬間、先までの生活感あるスペースは反転し、収納。一瞬にして、監視カメラ、各種周辺のセンサーのデータが部屋の上部より現れたモニターに映し出される。

 

「束!」

 

「……ちっ、やっぱり生きてたか」

 

テーブルのディスプレイに映し出されるは、大きく立ち上る土煙。突き上げられた石がパラパラと崩れ、そして大きく時化た海から吹いた風がその煙のヴェールを晴らす。

そこにいる全ての人物がデジャビュをその光景に強要される。

それは再び地の底より、這い上がる。

 

「ヴェン、ジェンス」

 

復讐の名を冠するアーマードコア。それはくるりと旋回した後、銃口をこちら──遥か先で決して見えないはずのカメラに合わせ、発砲する。

 

『分かっている』

 

そう、言わんばかりにヴェンジェンスは束の研究所の方角へと進み出す。

 

「束さん!俺達、出ます!今度こそ──」

 

「いや、待とうか」

 

「姉さん!?」

 

「篠ノ之博士!?」

 

束は恨めしそうにヴェンジェンスを見ながらも、直ぐに口角を上げて笑い、そして言った。

 

「向こうが来るっていうんだ。願ったり叶ったりだよ。今度こそ、目の前で、私の手で、完全に、破壊してやる──協力してくれるかい?」

 

「「「……っ!は、はい」」」

 

誰がその言葉に逆らえると言うのか。少年少年達は見えぬ力によって頷かざるを得なかった。

 

 

「……どこへ行く」

 

アラートから5分。皆が作戦準備に入る中、千冬はラボの外にいた。

その視線の先には銀。

 

「……準備です。私の機体は少々、特別ですから」

 

「機体も展開状態(オープン)にして、目も開いた状態で準備と抜かすか」

 

相手はクロエ。コツコツと歩きながら自身の体を確かめるようにチェックしており、研究所から離れて行っていた。

 

「ブリュンヒルデ、あなたこそ何を?」

 

「論点をずらすな。一つ、お前にアドバイスしてやる──あまり舐めた真似はするなよ」

 

「……そうですか」

 

クロエはその足を止め、そして溜息を吐いた後、踵を返す。

交錯し、火花を散らす銀と黒の視線。激しく競り合うも、直ぐにすれ違う。言葉を交わすことなく、クロエはラボへと戻っていく。

 

──どうして来てしまったのですか、RD様。

 

 

 

 

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